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業界人ブログ ― 「森田 富士夫氏(物流ジャーナリスト)」のブログ
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毎月21日更新!

森田 富士夫氏(物流ジャーナリスト)

第三者に徹して客観的な立場から報道・言論活動を展開している専門ジャーナリスト

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若い創業経営者に感じること
2018/6/21 更新

 この時期は人事の季節でもある。オーナー経営の会社では、昔から親しくしていただいた経営者が退任し、子息の若い経営者に事業を継承することが多い。資本と経営が分離している企業からも、5月から6月にかけては社長交代の挨拶状が来る。取材その他で長年にわたってお世話になった経営者が第1線から退くことは、世の中の定めとはいえ一抹の寂しさを感じる。一方、新たに社長に就任した経営者には頑張ってもらいたいと思う。

 これらの社長交代とは別だが、最近、創業社長にけっこう会っていることを思い出した。これらの会社は一般的に社歴が短い。創業10年とか起業してから5年程度といった会社である。だが、保有車両数でみると4、50台規模になっている。そのような中には30歳代前半の若い創業経営者も4、5人いる。最初は軽トラックからスタートした人たちが多かった。このような人たちは、若い創業者だけに事業に意欲的で話をしていて楽しい。

 
同じ若い経営者でも2代目や3代目と創業経営者では明らかに違いがあるように感じる。まず、創業経営者は現場感覚を失っていない。それに対して2世、3世は現場経験を経ていたとしても、あまり現場臭を感じさせないのである。この違いは、おそらくドライバーとの接触などにおいて、微妙な差になっているのではなかと思う。創業社長も若い年齢ほどデジタル管理などに詳しいが、同時に、アナログなメンタル面も持ち合わせている。

 また、創業社長は何事においてもどん欲だ。それに対して2世、3世の若い経営者は全体的にスマートである。どちらが良いか悪いかという問題ではない。どちらにも長短がある。そして中には2代目、3代目なのに創業者的な良さを持っている経営者もいる。反対に創業者なのに2世、3世の長所を持ち合わせている経営者もいる。このような人たちを自分では「1.5世」と規定しているのだが、「1.5世」には優れた経営者が多い。



数値の裏づけをもって語る経営者
2018/5/21 更新

 ある企業に久しぶりに取材に行った。この前、最後に訪ねたのは10年以上前で、単行本の執筆のために取材に協力していただいた時である。したがって同社の代表者にお会いするのはそれ以来だが、久々の会話にもかかわらず、この間の時間的なブランクを全く感じなかった。代表は70歳代後半になられたが、相変わらず発想が面白く、年齢を感じさせない。マーケットの変化に対応した新サービスに取り組むなど意欲的である。

 同社を10数年ぶりに訪ねたのは、ある新サービスの立ち上げに関する取材を進めている中で社名が出てきたからである。その新サービスと同社とは直接的な絡みが考えられない。しかし、同社が関わっているのが不思議だったので、会って話を聞こうと思ったのである。それに久しぶりなので懐かしいという気持ちもあった。案の定、代表者の話では事業としての絡みは考えていないとのこと。どうしてもと頼まれて参加したという。

 
たしかに同社のコアビジネスとその新サービスは、一見、共通しているように受け止める人が多いだろうと思われる。だが、違うのである。新サービスに参入すれば売り上げは増加する。しかし、収益性が低下するのは明らかで、コアビジネスの足を引っ張る結果になる可能性が高い。ここは「足し算」ではダメで、「引き算」の発想が必要だという点で意見が一致した。そこで、当初の取材目的とは別に、同社の今後の事業展開を聞くことにした。

 同社が昨年秋から着手し、今年度に本格的に展開しようとしている新事業は、社会の変化に適応したサービスだ。マーケットの変化、新市場の可能性などについて、同氏は即座に具体的数値の裏づけを示しながら説明し、資料をコピーしてくれた。キチンとした数値の裏づけを持って取材に応えられる経営者は優れた経営者である。高齢になっても、多くの若い経営者より柔軟な発想をしている。まだまだ現役で行けるなと感じた次第である。



中小トラック運送事業者同士のM&Aが増加
2018/4/21 更新

 運送業界では労働時間短縮が大きな課題になっている。長時間労働というと真っ先に頭に浮かぶのは長距離ドライバーだが、長時間労働なのは運行管理者なども同様だ。深夜、早朝の対面点呼などをキチンと遂行するには、運行管理者がその時間に事業所にいなければいけない。一定人数の運行管理者がいて、長時間労働にならないように交代勤務の体制ができている会社なら良いが、多くの事業者はそこまでの体制にはなっていない。

 なかには経営者が自ら深夜、早朝の対面点呼をして法令順守に努めている中小事業者もいる。このような真面目な経営者には敬意を表するが、問題は現状のような経営をいつまで続けられるかだ。後継者候補がいても、事業を継承して自分と同じような生活を続けることを求めることができるかどうか。後継者候補の方も、親の生活をみていて、会社勤めの方が良いと思わないだろうか。後継者がいないという背景にはこのような事情もある。

 
そこで運送業界でもM&Aが増えている。この4年の間に20社を買収し、30億円弱だった売り上げが単純合計で約140億円にまで拡大した事業者がいる。同社に取材して記事を書いたら、かなりの反響があった。記事に対する問い合わせを分類すると、大きく3つに分けられる。1つは企業買収の話が持ち込まれている事業者。2つ目は逆に後継者難などで悩んでいる事業者。3つ目は第三者的な立場から記事に関心を持った事業者である。

 M&Aを仲介する会社だけではなく、マイナス金利で本業では利益が出せない金融機関も積極的にM&Aを奨めている。仲介手数料を得るだけではなく、買収資金も貸し出すというセット商法だ。したがって金融機関が持ち込んでくる案件には、財務内容などが悪い事業者はないと考えても良い。融資した買収資金が回収できなくなるような愚は犯さないからだ。買収する側の事業者は競争力強化を目的としている。M&Aが増えている背景だ。



長距離輸送に2マン運行という「ニッチ」
2018/3/21 更新

 長距離輸送は労働時間の問題などをどのようにクリアするかが大きな課題だ。その1つの方法として中継輸送がある。全国にネットワークを持っている大手事業者なら、社内で中継輸送することができる。だが、中小事業者は自社だけではできないので、他社と提携して中継輸送するしかない。また、トレーラならシャーシを引き継いでヘッドだけUターンすればよいので比較的容易だが、単車では相互に他社のドライバーが乗務することになる。

 中小事業者のドライバーが単車で長距離輸送しているケースが圧倒的に多く、労働時間の短縮が最も求められている。だが、異なる事業者間による単車での中継輸送は、実現性においての難易度が1番高い。その際の大きな障壁の1つが、「他のドライバーに運転させたくない」、あるいは「他社のトラックに乗務したくない」というドライバー心理だ。長距離輸送では着替えなどの私物も携帯し、休息も社内で取っているので理解できなくはない。

 ところが長距離輸送を2マンでおこなっている事業者がいる。昨年11月に取材した佐賀県の事業者(1月UPの事業者レポート参照)もそうだが、最近取材した埼玉県の事業者も2マン運行をサービスの「売り」にしている。前者が貸切輸送なのに対して、後者は中ロットの積合せだが、両社とも九州〜首都圏間で2マン運行している点は同じだ。九州〜首都圏の運賃で、2マンによって運行時間を短縮して車両回転を増やせば採算が取れる。

 これが、どこかで必ずフェリーを使わなければならない首都圏〜北海道との違いである。首都圏〜九州は途中でフェリーを利用することも可能だが、陸続きとして運行計画を立てることができるからだ。ところで、1台のトラックを複数のドライバーが運転することに対する抵抗感はないのだろうか。そのようなドライバー心理を両社ともクリアしているから2マン運行が可能になり、リードタイムの短縮というニッチサービスを実現している。



運賃・料金値上げへの姿勢と取り組み
2018/2/21 更新

 昨年11月に改正「標準貨物自動車運送約款」が施行になった。これに伴ってほとんどの事業者が運賃や諸料金の認可申請をしているものと思いきや、どうもそうではないようだ。関係者の話によると、新運賃・料金の届出状況はかなり低いという。ましてや、標準運送約款の改正をキッカケに荷主と交渉している事業者となると、さらに少ない。

 これでは何のために標準運送約款が改正されたのか分からない。行政がそこまでバックアップしてくれているのに、それを活用しないのはもったいない。そこで何社かに取材した。すると以下のようなことが分かってきた。1つは、荷主と交渉して運賃・料金値上げを実現しているような事業者は、約款改正以前から交渉をしてきた、ということである。

 また、これらの事業者は値上げ要請の理由として、ドライバー確保のための賃金アップや、労働時間短縮に伴うコストアップを前面に出している。つまり標準運送約款の改正に関わりなく、経営を維持してサービスを継続的に提供するためには値上げせざるを得ない、という姿勢を明確にしている。経営責任や取引先に対する責任というスタンスなのである。

 このような事業者の多くは、この間、不採算部門から撤退しているのも共通している。採算が合わなければ取引しないのは企業経営の基本だ。もちろん約款改正を機に作業料などの有料化を実現した中小事業者も少数だが存在する。これらの事業者から話を聞くと、やはり交渉に応じてもらえなければ撤退しても良い、という覚悟で臨んでいるケースが多い。



事業拡大に慎重な事業者が少なくない
2018/1/21 更新

 建築資材などをメインに運んでいる中小事業者である。戸建住宅や集合住宅(アパート)用の建築資材のメーカーなど4、5社の荷主と取り引きしていて、同社の売上の約70%が建築用資材関係である。取引先ごとに異なる資材だが、積み合わせて同じ現場に運ぶようなケースは少ない。ビルなどの建築現場ではないので、道路事情などから4t車の平ボディやユニック車での納品が一般的で「建築戸数が増えているので荷動きは良い」という。

 だが、積極的に仕事を拡大して増車しようとは考えていない。建築資材関係の売上構成比が高く、リスクが大きいからである。さらに「東京オリンピック後は景気が後退し、また国内市場の縮小も進む」と予測しているからでもある。そこで「増えた仕事は傭車で対応し、当面は様子をみている」という。もちろん建築資材関係以外の業種の荷主の新規開拓を進めるが、平ボディやユニック車という現在の経営資源を生かせる分野の荷主が主な対象だ。

 一方、半導体関係の精密機器を主に、精密機器輸送を得意としている中小事業者である。同社の売上の約3分の1が精密機器関連だ。納入先での搬入・据え付け作業もあるので、たいていは2マン運行になっている。この間、半導体分野の設備投資が増えているため事業は順調という。だが、このままの状況が続くとは思っていない。目安は東京オリンピックで、「それまでに別の輸送分野で事業の新しい柱をつらないといけない」と考えている。

 この事業者は、「昔のような増産のための設備投資ではなく、現在は効率化のための設備投資」で、同社の仕事も増えているという分析だ。さらにオリンピック以降は設備投資の勢いも変化してくると予想する。そこで「2020年ぐらいまでに、もう1つの柱をつくることが必要」というのである。このように両社とも持続的景気拡大の実感がなく、また、今後の事業拡大にも慎重な姿勢を示している。労働力確保が難しいから、という理由ではない。



週休3日制導入の中小事業者も
2017/12/21 更新

 今年も残すところ20日になってしまった。何年か後に2017年を振り返ってみると、トラック運送業界にとって大きなターニングポイントになった年と総括できるのではないかと思われる。ドライバーの労働時間短縮や賃金水準の引き上げなどをバックアップする諸施策を行政が打ち出してきた年だからである。今年ぐらい行政が業界支援に力を入れたことは、かつてなかったのではないか。そのような意味で画期的な1年といえる。

 中大型車の荷待ち時間の記録義務づけや、荷主勧告制度の運用見直し、標準貨物自動車運送約款の改正などが、ドライバーの労働条件の改善に向けて大きな支援策であることは言うまでもない。取引条件の是正を進め、労働条件の改善を図るための力強い武器になる。だが、どのような武器も使用しなければ無に等しい。行政の支援策を有効に活かすかどうかは事業者自身の姿勢と行動にかかっている。ここから先は自力で打開するしかない。

 行政が業界支援策を打ち出すとともに、宅配便のドライバー不足や過重労働などもこの1年は注目を集めた。未払い残業代の問題も含めて、必然的にドライバーの労働条件の改善への認識が高まったといえる。ただ、社会一般が注目したわけではない。荷主企業の担当者からの関心が高まったのである。それは、ドライバー不足で自社の荷物が運べなくなったら大変で、また、トラックが確保できても需給関係から運賃が高騰しては困るからだ。

 一方、トラック運送事業者の側でもドライバーの賃金引き上げや労働時間短縮への取り組みが強まった1年だった。そうしなければドライバーを確保できないからである。そのような中である中小事業者(保有台数50台強)は、変形労働制による週休3日の正社員制度を新年から導入する。さらに週休4日の正社員化も検討中である。正社員としての雇用の門戸を広げるとともに、今後の最大残業時間規制への対応でもある。



まだまだやることがある
2017/11/21 更新

 ある地方のトラック協会が主催するセミナーに行った。終了後に、ちょうど2年前の11月に取材で訪ねた運送会社の社長が挨拶に来て、立ち話だったが近況などを少し聞くことができた。その社長は、「さきほどの話を聞いていて、まだまだやることがあると思いました」という。とくに、これからは社員満足度を高めていかなければならない。可能な限り「ベースアップもしなければと、現在、来春の賃上げ額を検討中」なのだという。

 この事業者は保有台数が30数台で従業員数は約60人(パートを含む)。地場産業と連携し、地元特産商品のネット通販の物流を担うなど、地元企業と共同して販路拡大にも寄与しており、3年前には地元の県の優良企業表彰も請けている。この中小事業者が、どのくらい賃金を上げるべきかで悩んでいる。極端な考え方をすれば「利益が出なくても良いから、赤字にならない範囲まで人件費を増やす」、という決断をするかどうか、である。


 同じような状況まで賃金を先行して上げた中小事業者を何社か知っている。これらの事業者が共通して話すのは、「利益が出なくなれば、運賃交渉に際しても土俵際という切迫感が出てくる。この本気度が交渉相手にも伝わる」という点だ。いずれも運賃値上げを実現している。それだけではなく、全社一丸となって仕事に取り組むようになってきた、という。そのため、新規開拓など売り上げも増え、賃上げしても逆に利益が多くなったことだ。

 一方、ある県ト協のセミナーにいった時、「どうしたら社員が定着する会社になるのか具体的に説明してくれ」という質問があった。結論から言えば労働時間を短縮し、賃金を上げることであり、それをどのように実現するかは各事業者の諸条件によって異なってくる。もちろん取引先との交渉も不可欠なのだが、先のような質問をする経営者ほど、「そうはいっても、荷主が云々…」と経営者としての責任を避ける傾向にある。



物流への関心は本当に高いのか
2017/10/21 更新

 宅配便の値上げやサービスの見直しなど、この間、宅配便事業者の動向については、マスコミでもしばしば取り上げられてきた。そのようなこともあって、トラック運送業界の関係者の多くが「最近は物流への関心が高まってきた」とか「今ほど物流が注目されたことは過去になかった」といったことを口にするようになってきた。だが、本当にそうだろうか。それほど物流が世間の関心を集めているのだろうか。水をさすようだが、はなはだ疑問だ。

 たしかに荷主担当者などには、ドライバー不足の中でどのように輸送体制を維持するかといった懸念があることは事実だ。荷主は販売先に荷物を確実に届ける責任があり、トラック不足で納入できなければ大問題になってしまう。同時に、サービスの供給量が制限されるようになれば、必然的に運賃が上がることになる。物流担当者としては物流コストの上昇はできるだけ抑えなければならない。このように荷主の担当者の関心は高まっている。


 一方、トラック運送業界では労働時間短縮が大きな課題である。賃金を下げずに時短を進めるには原資の確保が不可欠だ。厚労省は時短推進のための環境整備を後押しし、国交省も運賃・料金など収入確保のための条件を整えるなどバックアップしている。これほどの行政の援護はかつてなかった。そのため業界人の多くは物流に対する一般の人の関心が高まっていると錯覚しているのではないか。荷主担当者も広い意味で物流業界関係者に過ぎない。

 だが、現実はそうではない。一般の人たちの関心は「宅配便」なのである。とくに「ネット通販」がらみの「宅配便」には非常に高い関心を示す。しかし、物流一般に関しては一般の人たちの関心は依然として低いのが実態だ。それはオンラインの記事への反応などを見ると良く分かる(他のライターも共通して指摘)。そのような現実を踏まえて、一般の人たちの物流への関心を引くにはどうすべきか。業界は戦略的に考えなければならない。



働き方改革と生産性向上
2017/9/21 更新
 最近は「働き方改革」という言葉を頻繁に耳にするようになった。かくいう自分も働き方改革と書いたり話したりしている1人だ。働き方を変えようという取り組み自体は良いことだ。長時間労働の結果として過労死などといった問題が生じるのは、普通に考えれば異常な事態なのである。何のために働くのかといえば、直接的には生活するためであり、もっと広い意味では人として生きるためである。本来、労働はそのための手段に過ぎない。

 ところが現実には、働くことそのものがあたかも目的であるかのようになってしまっている。長時間働かないと生活の糧が得られない、といった現実もある。このような異常が常態化してしまうと、それが当然であるかのような錯覚に陥ってしまう。働き方改革という政策を素直に受け止めれば、人間らしく正常な状態にしようということだ。必要なだけ働いて、日々の生活や人生を楽しむ。そのような社会が実現できれば一番良いことである。

 ところで働き方改革とは何か、という問題である。もちろん様ざまな面から捉えることが必要だ。だが、働き方改革の柱になるのは、労働時間を短縮し、収入を増やすということに尽きるだろう。時短と収入増が働き方改革の2本柱である。ところが、トラック運送業界の実態は長時間労働で低賃金であり、かなりハードルが高いことになる。そのような現状からいかに働き方改革に取り組むかは大きな課題で、難しいことも事実だ。

 現状のままでは労働時間短縮も難しい。かりに労働時間を短縮できたとしても、それに伴って賃金が下がってしまう。当面は賃金水準を維持しつつ労働時間短縮をいかに図るか、という段階である。労働時間短縮も賃金アップも、それを可能にする原資が伴わないと画餅になってしまう。では原資をどのようにして得るかというと、生産性を向上するしかない。つまり、働き方改革と生産性向上は表裏の関係にある。この両方を同時に進めるしかない。


ヒアリにヒヤリ
2017/8/21 更新
 経済のグローバル化は必然的な流れであり、国境を超えた経済活動の拡がりを食い止めることはできない。だが、それに伴ってリスクも拡大する。リスクといっても様ざまだが、ヒアリなどもその1つだろう。報道で知ったのだがアメリカでは1年間に100人ぐらいがヒアリで亡くなっているという。「ありんこ」というのは小さくて可愛いアリの愛称だが、中には危険なアリもいる。それもジャングルなどではなく、身近な存在になってきた。

 日本でヒアリが見つかったというニュースを初めてテレビで見た時には、まだ実感に乏しかった。だがその後、いろいろな港で発見されるようになった。そのようなニュースの中で、海コン輸送に従事している女性ドライバーがインタビューされているのを見たら、知っている会社のユニフォームだったので、にわかにヒアリの危険性を身近に感じるようになった。海コンのトレーラ輸送をしているドライバーにとっては新たなリスクの1つである。

 さらに内陸部の物流センターでも海コンの中からヒアリが出てきたというニュースがあった。このように物流業務に携わる人たちにとっては、ヒアリは現実的なリスクの1つになってきた。小さいので発見しにくいだけでなく、もし見つけても在来のアリとの違いなど素人目には瞬時に判別することが難しい。今後は輸入貨物がさらに増加してくる。物流現場で働いている人たちにとっては、実に厄介なリスクの拡大である。

 実は先日、関税検査の現場を見る機会があった。中国からのコンテナだったのだが、X線検査機を通したあと、荷物のいくつかを抽出して開封して調べる見本検査だった。関税検査を見学するのは初めてなので、それはそれで興味深かったのだが、ヒアリは大丈夫だろうかと自然に足元に視線が向いてしまう。輸入貨物を取り扱う現場では、働いている人たちへの注意喚起も重要になっている。これもグローバル化にともなうリスクの1つだ。


ネット通販商品の宅配で一部トラブル
2017/7/21 更新
 アマゾンの宅配で指定日時に届かなかったり、未着なのに配達完了になっているとか、あるいは再配達の連絡が取れないなど、6月以降、一部で一時的に混乱が生じたようだ。ネットでみると、ユーザーからけっこういろいろな意見が出されている。とくにヤマト運輸に代わって、地域限定契約の「デリバリープロバイダ」が担当している地域で問題が発生したようである。事業者間のサービスレベルの差が具体的な形で表れたのだろうと思われる。

 このような状況を反映して、テレビや新聞、週刊誌などがヤマト運輸とネット通販大手の値上げ交渉の進捗状況などと併せて、未着などの取材を進めて一部で報道された。とくに「デリバリープロバイダ」と商品の遅配などの関連でいえば、「デリバリープロバイダ」のどこに問題があるのか、今後は大丈夫なのだろうか、といった視点からの採り上げ方が多かったように思える。ネット通販の利用者の関心の高さを如実に反映しているといえる。

 だが、「デリバリープロバイダ」も全事業者が一律ではない。30年近くも前から1都3県で即日配送サービスを展開してきた事業者もいる。ネット通販が現れるずっと以前からである。したがってこのような「デリバリープロバイダ」には即日配送や翌日配送のノウハウが蓄積されているはずだ。一方、Amazon「プライムナウ」や同「フレッシュ」の宅配で実績のある事業者もいるが、ヤマト運輸から移行した宅配はそれらとは少し違う。

 一部では「デリバリープロバイダ」が金融機関を介して下請けを探しているが、仕事を請けて大丈夫か? といった声も出ている。報道されているように運賃も最初は車建て契約だが、いずれは個建てになるだろうという懸念があるからだ。個建てでは、宅配便事業者から委託されている現在の運賃より多少高くなったとしても、配送密度の関係から配送効率が低下すると予想されるからだ。いずれにせよ当面はマスコミの注目度も高いだろう。


マイナス金利と事業継承
2017/6/21 更新
 最近は銀行も必死だ。中小事業者に対して大手事業者と資本提携するようにと、銀行がしつこく勧めてきたという話を聞いた。資本提携とは聞こえが良いが、大手事業者からの出資を受け入れ、実質的には傘下に入らないかということである。最初は資本参加だが、いずれは完全子会社化を視野に入れているのだろうと思われる。この中小事業者は子息が他業種の企業に勤めている。そこで銀行は、子息も同席させて事業継承の意思を確認したという。

 同社の社長から、なぜ最近になって銀行がこのような話を持ってくるのだろうと聞かれた。そこで、マイナス金利の影響で新たな稼ぎ口の開拓に迫られているのではないか、と話した。M&Aの専門会社もあるが、銀行も企業譲渡・譲受の仲介に力を入れてきたのだろう。銀行なら取引先である中小事業者の財務内容には詳しいし、後継者問題などもある程度は分かっている。一方、取引先には健全経営の中小事業者を傘下に収めたい大手事業者もある。

 財務内容などが良好な中小事業者でも、後継者は大きな課題になっている。後継者候補がいないのではなく、将来性が不透明なので経営を譲る側も躊躇するし、継承する側にも自分の好きな道を歩んだ方が良いという考えが生じる。そのような事情から、最近はトラック運送業界でもM&Aが増えてきた。しかも、経営が行き詰まってからの譲渡ではなく、企業価値が高いうちに売るという傾向が強まっているのだ。

 ある中小事業者は「できの良い子には自分の好きな道を歩ませ、親からみて一番心配な子に運送会社は継がせる」という。その話を別の事業者にしたら、即座に「それは良い考えだ」という反応が返ってきた。それでは従業員はどうなるのか、可哀そうではないか。ということで経営能力のある従業員に会社を譲渡するようなケースも少しずつみられるようになってきた。それにしてもマイナス金利の影響で、銀行がM&A仲介に力を入れてくるとは。


荷物がひとりでやって来る! かも知れない?
2017/5/21 更新
 宅配荷物の受取人の所に荷物がひとりでやって来る…近い将来そんな時代になるかも知れない。時間帯を10分刻みで指定し、望んだ場所に自動運転の車両が宅配ボックスに入った荷物を届けにくる。受取人は宅配ボックスを開けて荷物を受け取る。ヤマト運輸がDeNAと始めた「ロボネコヤマト」の実証実験はそんな可能性を秘めている。実用化までには様ざまな課題があるだろうが、ここでは夢のある試みとしてポジティブにみることにしよう。

 DeNAとヤマト運輸は4月17日から来年3月31日までの間、神奈川県藤沢市の国家戦略特区で、将来の自動運転社会を見据えた「ロボネコヤマト」プロジェクトの実用実験に取り組む。実験に取り組むのは「ロボネコデリバリー」と「ロボネコストア」のサービス。「デリバリー」は専用EV車両の荷台に保管ボックスを設置し、荷物の受取人が10分刻みで選択した時間帯に、希望する場所に行って荷物を受け取れるというサービス。


 自動運転が前提だが、実現すると受取人の所に「移動宅配ボックス」がやって来る。ドライバーが各戸に荷物を届ける仕組みが一変し(100%ではないが)、働き方も変わる。また集合型住宅では、宅配ボックスがいつも塞がっている、という固定式の利用回転率の低さが解消できる。戸建て住宅の宅配ボックスも、居住者の設置費用負担がなくなり、1家族だけの使用による低稼働率という問題も解消できる。シェアリング・エコノミー効果だ。


 利用者のメリットは、現在の時間帯指定(2時間)と比べ時間コストが削減できること。一方、宅配便事業者にとっては再配達コストの削減、ドライバー不足への対応になる。社会的な面からみると、物流におけるAI活用になり、ラスト・ワン・マイルのイノベーションによる生産性向上、宅配ドライバーの労働条件の改善や働き方改革にもなるだろう。さらに産業構造面からみると、労働集約型産業から装置型産業への転換という見方もできる。


待機時間の記録義務づけの注意点
2017/4/21 更新
 国土交通省は、到着時刻から荷物の積込や荷卸し作業が始まるまでの待機時間を、乗務記録に記載することをトラック運送事業者に義務づける。待機時間はドライバーの長時間労働の大きな要因の一つだ。集荷(納品)地点への到着時刻、荷積み(荷卸し)の開始時刻などを乗務記録に記載することで、荷主都合による待ち時間の実態を把握し、ドライバーの労働時間短縮などの改善を図ろうとするもの。待機時間の有料化などの基礎データにもなる。

 対象は車両総重量7.5t以上か最大積載重量が4.5t以上の車両。積込場所や納品場所において待機時間が長いのは、拠点間輸送の車両に多いためである。同省では「貨物自動車運送事業輸送安全規則」の一部を5月に改正し、6月から施行する予定である。待機時間の乗務記録への記載の義務化によって、ドライバーの拘束時間の短縮などにつながれば良い。とくに長距離幹線輸送のドライバーの労働時間短縮は業界の大きな課題である。


 だが到着時刻と積込み(荷卸し)開始時刻の記録化で注意すべき点は、見かけ上の待機時間短だ。たとえばジャスト・イン・タイム納品では、受け荷主への到着が指定時間通りなので、見かけ上は納品先での待機時間はない。だが、指定時間に遅れるとペナルティが課されるので安全をみて早めに近くまで行っている必要がある。しかし、早く着き過ぎてもいけないので、受け荷主の近くのコンビニなどでドライバーが時間調整しているのが実態だ。


 同様に、従来は工場や物流拠点の敷地内で待機させていたのを、敷地外で待機させることで到着時刻から積込み(荷卸し)開始時刻までの記録上の「時間短縮」を図り、責任を逃れようとする姑息な発荷主(着荷主)や元請事業者がでてこないとも限らない。それでは、ドライバーへの負担増と引き換えに、表面的な「待機時間短縮」の実現になってしまう。可能性としては大いにあり得ることで、それをどのように防ぐかも併せて考える必要がある。

「ヤマト旋風」の裏表と便乗
2017/3/21 更新
 ヤマト運輸の料金値上げや一部の時間帯での指定見直しという話題が駆け回っている。昨年11月下旬ぐらいから宅配便ドライバー不足の話題が少しずつ出てくるようになった。実際に昨年暮れには遅配なども一部で起きたが、新年度からの値上げ交渉に向けたリークだなと思っていた。しかし、火のないところに煙は立たないので、ドライバー不足は事実である。そこで筆者も時流に便乗して、テレビなどでドライバー不足の話をしていた。

 すると2月上旬に東洋経済オンラインから話があって「ネット通販の激増で日本の宅配便は崩壊する」をUPしたのが2月19日。その4日後に日経新聞がヤマト問題を大きく取り上げたので筆者もいくつかのテレビやラジオ、週刊誌などに出る機会を得た。この間の報道で共通しているのは、ヤマト運輸を好意的に取り上げていることである。たいていはヤマト運輸のドライバーを過酷な状況に追い込んでいる元凶はアマゾンというストーリーだ。


 その理由はアマゾンが最近まで主要メディアにCMを出していなかったからとも推測される。そのようなシナリオは分かりやすく視聴者受けするし、営業からもクレームが来ない。コメンテーターもネット通販業界に詳しい専門家より、物流にスタンスをおいている筆者などの方がキャスティングとして良い。だが、いつまでも同じような構成では視聴者が飽きてしまう。そこで最近はヤマト運輸を切り口にして、運送業界の未払残業代に焦点を当てるような報道がでてきた。


 これは一部の弁護士がネタを流しているものと推測される。過払い金利の払い戻しで稼いでいた弁護士が、未払い残業代にターゲットを転換して久しいが、運輸業界は彼らの美味しい市場なのである。それはともかくヤマト旋風は凄い。運送業界を挙げて取り組むよりも同社1社の動向の方が世間の関心をひく力を持っている。運賃値上げ、ドライバーの労働条件改善の追い風が吹いている。運送業界はヤマト旋風のチャンスを上手に活かすべきだ。


ドライバー不足は深刻だが採用は慎重に
2017/2/21 更新
 厚生労働省によると昨年12月の職業別の有効求人倍率は、全体で1.36だった。しかし、「自動車運転の職業」の有効求人倍率は2.70である。「自動車運転」という分類なので、トラックだけではなくバスやハイヤー・タクシーなどが含まれているものと思うが、有効求人倍率は全体のほぼ2倍という数値だ。自動車運転職の募集に対して、いかに応募者が少ないかが分かる。ちなみに「運輸・郵便事務の職業」も3.35なので人気が低いようだ。

 路線バスのドライバーはそれほどでもないが、タクシードライバーは高齢者が多い。バス会社などを定年退職した人がタクシー会社に再就職している。元トラックドライバーと言う人もけっこういる。通運会社は鉄道駅の近くにあるが、一般の運送会社はたいてい駅から遠いところにあるので車でないと不便だ。そこで駅から取材先の運送会社までタクシーに乗ることが多い。行き先を告げると、自分がむかし働いていた会社だといったこともある。

 今でも昔の同僚と飲み友達なので最近の社内事情もいろいろ知っているということで、取材に向かう運送会社の裏情報を事前に聞き出すこともある。それはともかく、タクシーのドライバーは全体的に高齢だ。「年金という補助金があるから成り立っている業界」と揶揄する向きもあるが、あながち的外れとはいえない。トラックドライバーも全体的に高齢化が進んでいるが、タクシードライバーと比べると、まだ若い人が多く働いている。

 それでもドライバー不足が深刻だ。しかし、いかにドライバー不足であっても採用は慎重にしなければならない。最近は、違法薬物の使用者も増えている。まだ日本では、応募者に対する薬物チェックなどをほとんどしていない。日本の場合、昔はそれでも大丈夫だったのだが、最近は採用を判断するときに慎重に検討する必要がでてきた。もし、採用後に何か事件を起こしたら、企業の社会的責任だけではなく、取引停止といった事態も想定される。



親事業者に“長時間待機”の経費負担を新設
2017/1/21 更新
 積込や納品時における長時間待機はドライバーの長時間労働の大きな原因の一つだ。また残業代の増加や車両回転率の低下などコストにも関わってくる。そもそも待機時間は全くムダな時間であり、ゼロであっても仕事に何ら支障がない。したがって待機時間ゼロは理想だが、現実には難しいだろう。だが、待機時間を限りなくゼロに近づけるような努力をしなければならない。それには荷主と事業者の協力、元請・下請事業者間の協力が必要だ。

 ある発荷主は、委託した事業者が指定時間に到着しても一定時間以上待機させられた場合、着荷主に対して待機料を請求して事業者に支払っている。このような荷主は稀有な存在で、現実には実運送事業者の長時間労働だけが問題視される。だが、必ずしも荷主と事業者との関係ばかりとはいえない。発・着の拠点とも、たいていは事業者が業務を受託して行っている。したがって、その気になれば事業者同士でかなりの部分を解決できるはずだ。


 公正取引委員会は昨年12月、「下請代金支払遅延等防止法に関する運用基準」を改正した。この運用基準改正において、トラック運送業界で注目されるのは、親事業者に対して、@(荷主からのキャンセルなどによる)下請事業者への運送委託発注の取り消しにおいて下請事業者が要した費用負担や、A指定時間に到着しても親事業者の都合で待ち時間が発生した場合の必要費用の負担などが、違反行為事例として新設されたことである。


 違反行為として新たに加えられたり新設された事例のうち、トラック運送業界に関連するのは以下のような項目だ。@下請代金を据え置くことによる買いたたき、A一律一定率の単価引下げによる買いたたき、B取引先の都合を理由とした買いたたき、C従業員の派遣要請、D労務の提供要請、E取引先の都合を理由とした発注取消し、Fその他の発注内容の変更・取消し。下請法なので元請と下請事業者の関係になるが、関係改善につながれば良い。



Gマーク2万3414事業所に
2016/12/21 更新
 全日本トラック協会によると、今年度の安全性優良事業所(Gマーク)の認定は9033事業所で、既存認定事業所と合わせたGマーク数は2万3414事業所。これは2016年12月現在の全国のトラック運送事業所数8万4173事業所の27.8%に相当する。トラック運送事業所の4分の1以上がGマーク事業所ということになる。Gマークを貼って走行している車両は60万5146台で、営業用トラックの44.0%になった。

 最近はGマークの付いたトラックをかなり見るようになった。営業トラックの4割以上がGマーク車両なのだから当然と言える。そこで、次の2点が問題になってくる。1つはGマーク認定が取れない事業所だ。事業所を開設して間がないなど資格要件を満たせないケースは仕方がない。問題なのは会社として認定基準にほど遠いような場合である。もう1つはGマーク車両でも、疑問に感じるような運転をしているドライバーを見かけることだ。

 ところで47都道府県のうちGマーク認定取得率が一番高いのは新潟県である。43.5%で3年連続の首位だ。2位が長野県の38.4%で、運輸局別でも北陸信越運輸局管内は37.8%と全国の運輸局の中で最も取得率が高い。それにしても新潟は2位に5ポイント以上の差をつけての1位である。何か特別な取り組みをしているのだろうか。同県トラック協会の関係者によると、県ト協独自の資料なども作成し、相談期間も設けているという。

 まず5月中に上越、中越、下越の県内3カ所で説明会を開く。この時に、全ト協の資料と併せて活用するのが同県適正化で独自に作成した資料である。次に6月の1カ月間は県ト協で申請などの相談に応じている。そのため適正化6名のうち2名は6月の1カ月間は事務所に常駐している。また、巡回訪問も6月は近場で予定を組んでいて、相談申し込み件数が多い日には、巡回から早めに協会に戻って対応できるような体制にしているという。



マーケティングしてますか?
2016/11/21 更新
 マーケティングしてますか?」…というのはセミナーのサブテーマである。メインテーマは「地方の経営戦略」だ。先日、全国運送事業研究協議会(全運研・水野功会長)の全国研究集会が三重県鳥羽市で開かれた。そのテーマがマーケティングである。シンバホールディングスの安里享英社長の特別講演のあと、3つの分科会に分かれて研修会を開いた。いずれも事例報告の講師は各地域で特異な戦略を展開し、業績を挙げている経営者である。

 ご存知のようにシンバHDは沖縄に本社をおく企業で、中核の事業会社はあんしんである。安里社長はあんしんの社長も兼ねている。あんしんは沖縄県内のBtoBでは最大手の物流会社で売上高は約70億円。沖縄というマーケットの規模からすると断トツのシェアを持っている。「くらしを運ぶ、ものを運ぶ、あんしんとアイディアを運ぶ」をモットーに、衣食住にわたって周辺離島も含め、物流プラットホームを構築している。

 第1分科会のテーマは「老舗は革新の連続」で講師は宮ア本店の宮ア由至社長。ファシリテーターは神奈川大学名誉教授の中田信哉氏である。同社は四日市市に本社を置く酒造会社で170年の歴史をもつ。老舗であるがゆえに絶えず革新を図らなければならないと強調した。第2分科会はビーイングHDの喜多甚一CEOが「運ばない物流の価値創造」のテーマで報告。ファシリテーターは当ブログの執筆者でもある神奈川大学の齊藤実教授。

 ビーイングHDの本社は金沢市で、中核事業会社は物流会社のアクティー。創業30年でグループ年商140億円を超えた。第3分科会は北海道物流開発の斉藤博之会長が「地域物流と共同配送」のテーマで講演。筆者がファシリテーターを務めた。18年前に札幌市で創業し、現在はシンガポールにも現地法人をもち、北海道の産品を東南アジアにデリバリーしている。いずれも各地域の市場の特徴に応じた企業戦略で成功している事例だ。



人材確保・育成には生産性向上が必要
2016/10/21 更新
 10月6日に鳥取県米子市で全日本トラック協会の全国事業者大会が開かれた。分科会のテーマは、第1分科会が「トラック業界の交通安全対策の推進ついて」、第2分科会は「トラック業界の人材確保及び育成について」であった。両分科会ともそれぞれ3名の事業者がパネリストとして、当該テーマに関する自社の取り組みなどについて事例発表。その後、コーディネーターの進行によって討論するというパターンである。

 3人のパネリストのうちの2人を過去に取材していることもあって、第2分科会の方を傍聴した。人材確保と育成がテーマだが、パネリスト全員が、人材確保や育成の前提として生産性向上に言及したのが印象的だった。当然のことではあるが、生産性の向上が伴わなければ、労働条件を改善することはできず、優秀な人材を採用することは難しい。賃金水準や多様な働き方など労働条件が改善できなければ、応募者が来ないからである。

 また、10年後、20年後のキャリアパスが示せなければ、若くて有能な人材はこない。若くて真面目であれば、長年にわたって働くことを前提として企業を選ぶ。すると人生設計ができないような会社では、若くてまじめな人ほど敬遠するのは当然である。一方、企業側としても社内での教育・育成制度は長期に勤務することを暗黙の前提にしているはずだ。職業訓練所ではないのだから、辞める人を対象にした教育・育成制度はありえない。

 パネリストの1人は、取引先との協力による労働環境改善に触れた。物流効率化によって労働時間を短縮し、車両も4台から3台に減らすことができた。さらに長距離輸送部門では中継輸送による労働時間短縮も研究段階という。もう1人のパネリストも、待機時間を把握して、時間削減かそれとも時間に対する対価の請求かで対応し、改善されなければその取引先からの撤退もあり得るとしている。そして生産性向上のカギは時間管理と強調していた。



外国人研修生だけの改善サークル
2016/9/21 更新
 若い女性が集まるとワイワイ、がやがや、そして明るい笑い声。これは万国共通だ。「女3人寄れば姦しい」という。女を3つ書いて「かしましい」という漢字になるが、姦×3ではなおさらである。先日、ある会社の改善サークルの中央発表会にいったら、フィリピンからの女性研修生9人で構成するチームがブロック予選を勝ち抜いてエントリーされていた。いくつかの企業の発表会に行くが、外国人研修生のサークルの発表を聞くのは初めてだ。

 この会社では昨年1月から、フィリピンからの研修生を受け入れるようにした。1年を経過すると仕事の習得状況など簡単な試験をし、合格するとさらに2年、計3年間の研修が受けられる。第1期生は全員が合格して現在は研修2年目である。さらに2期生を今年1月から受け入れて、1期、2期生合わせると約40人が現在、研修している。このうち1期生のなかの9人で構成するサークルが、予選を通過して中央発表会に選出されたのである。

 基本的作業については研修生向けに英文のマニュアルを作成した。だが、1期生たちが作業詳細についてのマニュアルを自主的に作ったという。そのため2期生は基礎的な作業を短期間で習得できた。それでなくても、みんな若いので覚えが早い。日本人のパートの人たちはたいてい40歳代以上である。それに対して研修生たちは20歳前後なので、作業ミス削減の目標値が全体では40ppmだが、研修生たちはすでに10ppmをクリアしている。

 研修生たちは日本人のパートの人たちに交じって各作業部門で働いている。だが、改善サークルはフィリピン人だけで構成するようにした。改善テーマは「ピッキング作業のセットミス削減」だった。サークルとしての目標達成のほか、個人でも競争して優勝を競うことにした。反対に1番ミスの多い人には皆が嫌いな納豆を食べる罰ゲームも決めた。発表の最後は罰ゲームの様子を動画で紹介。ワイワイ、がやがや、底抜けに明るい笑い声だった。



イメージとは実体の反映である
2016/8/21 更新
 「業界の社会的地位の向上を図りたい」、「業界のイメージをアップしたい」、「トラックドライバーの社会的評価を高めて誇りをもって働けるような業界にしたい」、などなど…。よく耳にする言葉である。業界関係者なら誰も異論を述べる人はいないだろう。まったくもって、その通りである。また、そのように実際にしたいものである。だが、肝心なのはスローガンではなく、それを実現するには、具体的にどのようにしなければならないか、である。

 その点では、どうも大きな勘違いをしている人が少なくないような気がする。業界の社会的地位やイメージ、またドライバーに対する社会的評価などは相互に関連している。一体と言っても良いだろう。そして勘違いとは、業界やドライバーのイメージをアップするためのPRが重要でもっと力を入れていかなければならない、と強調する人たちが多いことである。もちろんPRは必要であるが、もっと肝心なことは何かという点が抜けているのだ。

 先日、ある若手経営者とじっくり話す機会があった。その若手経営者は「業界を良くしたいと思っています」という。肝心なのはそのために何をするかで、その経営者は第1にすべきことは「自分の会社を良くするために努力すること」と考えている。業界の各社が良い会社になれば、自ずと社会的地位やイメージが向上し、そこで働いている人たちの評価も高まり、誇りをもって働けるようになる。働きたいという応募者も増えてくる、というのだ。

 全く同感である。評価やイメージそれ自体は抽象的なものであっても、それは具体的な実体が基になって、その実体が想像化、抽象化されたものだ。したがってPRなど抽象的な働きかけだけでは、変えることはできない。実体そのものが具体的に変わらなければ評価やイメージは変わらないのである。社会的地位の向上を声高に叫ぶことも必要だが、まず、自分の会社にたくさん応募者がくるようにすることが経営者の果たすべき仕事なのである。



運賃と従業員待遇改善
2016/7/21 更新
 ドライバーの確保には賃金をはじめ労働条件の改善が必要だ。また、運輸業には限らないが同一労働同一賃金も大きなテーマになっている。そのような中で、定年退職後に再雇用したドライバーに対して、定年前と同じ仕事をさせておきながら賃金を下げたのは違法、という判決が東京地裁でだされた。若いドライバーがなかなか雇用できないため、定年退職後も非正規社員契約で乗務させている運送事業者は多い。この判決は深刻な問題を含んでいる。

 判決の影響は、運輸業だけでなく他業種の企業にも及ぶのではないだろうか。定年退職後も本人が希望すれば非正規雇用契約で働いてもらうのは一般的だし、それに伴って賃金が下がるのも普通だ。ただし、定年前の仕事とは違う業務がいろいろあって、定年後の再雇用では定年前とは違う補助的な業務に就いてもらうのなら、先の判決は当てはまらないだろう。だがドライバーのように定年前も定年後も同じ業務内容の場合には厳しい判決だ。

 それはともかく、ドライバーの待遇改善は運送事業者にとって必須の課題である。昨年度は燃料価格が比較的低水準で推移したため、その分を従業員の待遇改善に振り向けた事業者もいる。もちろん、固定費を増やしてしまって軽油価格が再び高騰してきたらどうするのか、といった問題はあるが、少しでも労働条件を改善したいという経営姿勢は重要だ。ある中小事業者は取引先の1社からドライバーの賃金アップの状況説明を求められたという。

 この事業者は燃料価格が高騰した時に運賃を値上げした。しかし、昨年度は年間を通して低価格だったために、荷主の1社から運賃値下げ要請があった。しかし、賃金アップなどドライバー確保のために値下げできないと断った。すると、実際に賃金や賞与を上げているのかどうか資料提示を求められたという。賃金や賞与の支給実態を示したら荷主も納得したというが、なぜ資料を提示しなければならないのかなど、いろいろ考えさせられる話だ。



疲労軽減と安全性向上
2016/6/21 更新
 すでに沖縄では梅雨が明けたようだが、本州、九州、四国は梅雨の真っ盛りである。雨天の運転には注意を払わなければならない。だが、梅雨明け後の暑さにも、疲労の蓄積など要注意である。このように考えると安全運転は365日必要になるが、トラック運送事業者には、ドライバーの健康管理対策も求められる。健康管理の一環として、様ざまな機器の活用がある。また、機器とまではいかなくても、ちょっとした工夫で疲労軽減は可能だ。

 ある事業者は昨年4月から今年3月までの1年間、偏光サングラスによる疲労軽減の実証実験を行った。取材時点では、まだ年間の結果は集計されていなかったが、昨年4月から9月までの上期の結果が出ていた。ちょうど梅雨や、太陽光線の強い真夏を含んだ期間である。これからの季節の参考になる実証実験の結果といえる。秋から冬にかけて太陽光線が斜めから射してくる下期の結果についても興味があるが、それは改めて取材する予定だ。

 偏光サングラス使用による疲労度軽減効果の実証実験を行ったのは、物流センターから4t車で1店舗に納品し、高速道路を使って1日に2、3回転するような配送業務を行っている13人のドライバー。2チームに分かれて「偏光サングラスあり」と、「なし」を2週間ずつ交代しながら1年間取り組んだ。使用した偏光サングラスは晴天用で、疲労度の測定方法は出発前と帰ってきたときにフリッカー値を計測するという方法である。

 結果は、@個人的比較では偏光サングラスをした方が、しないより元気な被験者が多い。Aフリッカーの全員平均値では、偏光サングラスをした方が、しないよりも約20%疲労が少ない。B個人のフリッカー標準値からの減少率も、偏光サングラスをした方が疲れが少ない被験者が多い。C標準値からの減少率の全体平均では、偏光サングラスをした方が約16%疲れが少ない。以上から、偏光サングラスは疲労軽減効果があるという結果になった。



「スマホネイティブ」と人材確保
2016/5/21 更新
 大型連休明けにネットでニュースを検索していたら、4月の新入社員の中にはパソコン操作の苦手な人がいて、その弊害が出ているという記事があった。最初に手にした本格的なIT機器がiPhoneやスマートフォンという人たちを「スマホネイティブ」と呼ぶらしい。今年3月に大学を卒業した人たちが高校1年生の時にiPhoneが発売になったという。いわばスマホネイティブの最初の世代が社会人になり、その弊害がでているという内容だった。

 自分もPCを使いこなせないので他人のことをとやかく言える立場ではないが、スマホネイティブの人たちは、マウスの使い方が分からなかったり、キーボードの操作が苦手なようだ。以前に20歳代、30歳代の人たちは個人でパソコンを持っている割合が低くなっている、といったことをこのブログで書いたことがある。たいていはスマートフォンで事足りてしまうからである。だが、その影響がこれほど大きいとは思っていなかった。

 スマホなどの操作はタッチ式である。会社に入って仕事でPCを使うようになって、初めてキーボード入力するといった若い人たちがいるようだ。まぁ、若いからすぐに操作を覚えて、上手に使いこなすようになるだろうが、これが社会の変化なのかと考えてしまう。ところで、最近はドライバーをはじめ人材不足になっている。運輸業界の場合には中途採用が多いが、若い人の募集・採用では、対象がスマホネイティブの人たちということになる。

 すると、募集活動もスマホを主体に考えなければならない。最近は動画で職場風景などを紹介するような求人も見られるようになってきた。旧態依然たる古い発想や手法ではダメである。自動車も自動運転の実験などが行われているが、有人運転でもゲーム感覚で運転するような自動車を考えられないわけではない。レーシングゲーム機のような操作なども、若い人の自動車離れを防ぐ一つの方法かもしれない。時代は変化している。



燃料価格下落でほっと一息、だが…
2016/4/21 更新
 燃料価格の下落で、ほっと一息ついている…というのがトラック運送業界の現状である。だが、そうとばかりも言っていられない。燃料コストの削減で赤字企業の割合は改善したが、人件費アップや傭車利用の拡大などによって支出も増加し、業績の改善は限定的になっているからだ。燃料価格は外的要因である。しかも経済外的な事情によっていつ高騰に転じるか分からない。それに対して内的要因の構造改善への取り組みが経営の安定には重要だ。

 全日本トラック協会が発表した「平成26年度決算版経営分析報告書(対象期間は平成25年10月から平成27年8月で有効回答数は2192事業者)」によると、調査事業者全体の1社平均営業収益は2億79万円で前年度比−0.8%、営業利益率は−0.9%で前年度より1.4ポイント改善されたものの、依然として赤字である。営業利益率の改善には燃料価格の下落が寄与しているが、影響がまるまる反映されるのは平成27年度版になる。

 営業収益の減少に関しては、前年度の営業収益には消費税増税前の駆け込み需要が含まれていてその反動もある。輸送トン数の推移も同様である。そこで前々年度との比較では、輸送トン数も増え、営業収益は全体でも規模別でも伸びている。経常利益率も前々年度との比較では総ての規模で改善されている。営業利益の改善の大きな要因は燃料価格の下落だが、一方、ドライバー不足による時間外労働の増加や賃金アップが営業利益を圧迫した。

 売上高経常利益率は、前年度と比べ大幅に改善されている。また営業利益黒字企業が46%、経常利益黒字企業が53%と、ともに黒字事業者の割合が増加した。しかし、外的要因に頼らない生産性の高い経営構造への転換を図らないと、安定的な成長は望めない。そのために待機時間短縮、原価計算の徹底と運賃交渉、高速道路割引料金などを働き掛けていくとしているが、最も重要なのは各事業者が生産性の高い事業形態に転換することだ。



5年という時間と様々な変化
2016/3/21 更新
 東日本大震災から5年が経つ。新聞やテレビなどでは被災地の現状などをとり上げていた。この間に何度か現地を訪ねて被害に遭ったトラック運送事業者の復興状況などを取材してきた。一部の事業者を個々に見ると着実に復興しつつあるが、地域社会全体としては遅々として復興が進んでいるようには感じられない。一方、5年という歳月は、社会を大きく変化させてしまう。したがって単純に震災前に戻ろうとしてもダメなのである。

 1カ月ほど前になるが、ある会合に出席した。東日本大震災の復興に関連する物流についての研究論文の発表があったのだが、そのデータの中で、他産業と比較すると水産加工業の復興が一番遅れているのはなぜか、という疑問が出された。研究の本題とはあまり関係がなく、雑談程度の話題だったのだが、発表者もそこまで調査していないので分からないということだった。そこで雑談とことわって取材のついでに得ている程度の話をした。

 水産加工業の復興が遅れている理由は2つある。1つ目は、地元の漁業の復興が先行しなければ原材料が調達されないこと。漁業も復興しつつあるが震災前までは戻っていない。もう1つは製品の販路だ。大手の加工食品メーカーの下請けで製造していたケースでは、この間に発注先が違う産地になってしまった。また、自社製品として製造していた場合でも、主要な販路である量販店などが仕入れ産地を変えてしまった。入口と出口の変化だ。

 被災地とは関係ないがサーバーのキッティングルームをレンタルし、サーバーを輸送・搬入するサービスをしていた物流事業者がいる。大震災後の1年間ぐらいは震災被害の影響もあってニーズが多かった。その後も大震災から2、3年間は忙しかったのだが、今から2、3年前から需要が減少に転じて事業が厳しくなってしまった。クラウドに切り替わり、サーバー自体の需要が減ってきたからだ。5年という時間は様ざまな変化をもたらす。



買物難民の対極と付帯サービス
2016/2/21 更新
 「買物難民」問題は大都市にも広がっているが、とくに地方においては地域社会それ自体の存続にも関わってきている。 “増田(寛也)レポート”ともいわれる『地方消滅』をはじめ関連著書が多くの人たちに読まれているのは、そのような背景があるからと思う。同著(同論)に関しては、個人的には、どうもコンパクトシティへの政策誘導という感じがしないでもないが、それはともかく「買物難民」をどうするかは大きな社会的課題だ。

 地域社会の存続という視点からは、「買物難民」の対極に「販売難民」や「生産難民」が存在することも合わせて捉えることが重要だ。「販売難民」とは昔からの商店などである。また、「生産難民」は高齢化や後継者難の農家など第1次産業、あるいは販路が限られている地場の特産品生産者などである。ネットスーパーなど「販売強者」の物流業務は完全な受託型で収益性も低いが、弱者同士を結び付ける物流なら主体的に関われる可能性がある。


 これら「買物難民」「販売難民」「生産難民」を結合できるのは物流だ。しかもその地方固有の条件に対応するには、大手事業者ではなく、地場密着型の中小事業者の方が有利で、有望な物流新市場と言える。あまり知られていないが、人口も少ない小さなマーケットで、地理的、経済的な制約要件を逆に活かして、ユニークな事業展開をしている中小事業者も散見する。そこから見えてくるのは地域固有の諸条件に応じた創造的な物流である。


 もちろんビジネスとして成り立たせるには採算が取れなければならない。それには商品など有形の物を動かすことだけではなく、情報など無形の付加価値も物流ネットワークに乗せることがポイントである。安否確認などはその典型だが、それ以外にも考えればいろいろあるはずだ。そうなって初めて本当のライフラインになれる。その場合、誰が対価を支払うかが重要で、先の安否確認などは自治体の予算から一定金額の捻出が可能である。


人がいないのではなく応募者がいない
2016/1/21 更新
 ドライバー不足が深刻だという話は多い。だが、樋口社長が書いているように、どれだけ工夫をしているのか、である。少し以前のことだが、改善活動に力を入れているある事業者で、ドライバーで構成するサークルが自分たちで募集広告の内容を考えて募集したことがある。管理者が募集・採用を担当していたが、応募者が少なく採用しても定着率が低い。人が足りなければ自分たち現有勢力が過重労働でカバーしなければ仕事がこなせない。

 そのような状態が続いたのではたまらないと取り組んだのである。詳細は省くが、結果は応募者が増え、採用率も定着率も高まった。応募する側の視点から募集広告の内容を検討した結果だ。発想の転換がいかに重要かを証明している。発想の転換という点では、人がいないのではなく、人はいるのに応募者が少ないという認識が必要だ。労働人口減少という一般的な「常識」を疑うことから出発すれば、求職者の存在が認識できるようになる。

 周知のように、いまや非正規社員の割合が全就業者の4割に達した。だが、厚労省の「非正規雇用』の現状と課題」によると、非正規雇用労働者の18.1%は正規雇用で働くことを望んでいる。正社員になりたいが、機会がないので仕方なく非正規で働いている「不本意非正規雇用労働者」は、18歳〜44歳で173万人もいる(人数は同データを基に筆者が推計)。正社員を望む主な理由は、雇用の安定と精神的安心を得たいからである。

 このように不本意非正規雇用労働者は多数いる。「正社員として定年まで安定した働き方をしたい人を募集」「社会保険加入など安心して働きたい人を募集」「ドライバーは未経験でも、これまでの様々な職場経験は必ず役立つので、当社でそれを活かしてください」etc…。安心や安定して働ける雇用関係(社員満足度など)を築き、不本意非正規雇用労働者の人たちの心理に訴えかければ人はいる。重要なのはポジティブな思考ではないだろうか。


ドローン宅配
2015/12/21 更新
 国家戦略特区諮問会議は15日、千葉市を国家戦略特区に指定してドローンを活用した宅配を可能にする方針を出した。ドローンを活用した宅配事業にはアマゾンが参入する方針という。幕張新都心の東京湾に面した周辺に集積所を設け、アマゾンの場合には約10q離れたセンターからドローンを使って集積所に荷物を運ぶ。また、近くのドラッグストアーもドローンで薬や日用品などをマンションのベランダなどに宅配する計画という。

 航空法によると、高さ150m以上や人口密集地ではドローンの飛行が禁止されている。さらに目視の飛行監視も求められている。だが、国家戦略特区に指定された千葉市では、これらの規制を緩和するようだ。当面は実証実験ということだが、3年以内の事業化を目指すとしている。個人的には安全面など慎重な検討が必要ではないかと思うのだが、ともかく「国家戦略」なのだという。もし実用化されると世界初になる可能性もある。

 アマゾンとしては、世界戦略的にはどこの国でもよいからドローンによる宅配の事業化に突破口を開きたいはずだ。外資系企業だからいうわけではないが、ドローンによる宅配の解禁よりも先に政治的に取り組むべき問題はある。たとえば国内の通販会社に対する納税面における競争優位性の解消(平等な競争条件の実現)や、再販価格制度がある書籍の送料無料は実質的な値引きになるので違法ではないか、といったような問題である。

 千葉市の湾岸部とその周辺のエリアには総合スーパーの店舗も多く、ネットスーパーの宅配や店頭購入品の宅配網も構築されている。アマゾンのドローン宅配の解禁は、それらに少なからぬ影響が出る可能性もある。とくにネットスーパーは日用品などが多く、リードタイムが短いのが特徴。アメリカにおけるウォールマートのネットスーパーとの競合もそうだが、アマゾンにとっては願ったり叶ったりのエリアにおける特区指定だ。



日本的貨物版ウーバー
2015/11/21 更新
 齊藤教授が「自家用タクシーの先にあるもの」を、それを受けて樋口社長が「日本は『ウーバー化』するのか?」を書いているので、その延長での私論である。まず貨客輸送について、人口減少と高齢化が進む地方においては、今後は検討していく必要があるだろうと思う。もちろん、安全やその他についても様ざまな観点から検討しなければならない。次に日本的な貨物版ウーバーである。キーワードは営業用軽トラックではなかろうか。

 貨物版ウーバーとは称していないが、営業用軽トラックによるウーバー的な仕組みを考えている企業はある。営業登録した軽トラックなら、貨物自動車利用運送事業者がスマートフォンのアプリを利用してマッチングしても事業法上の問題はない。一方、軽トラの事業主には、@高収入が欲しい人、A年金受給までの繋ぎの人、B年金が少額なので収入補填にしている人など、各人が事情に応じた働き方を望むという労働形態の多様性がある。

 また宅配市場は、ネット通販の伸長だけでなく、リアル店舗のオムニチャネル化によって、小口荷物の出荷場所の多様化、配達先も個人宅や指定受取所への配送など錯綜としてくる。荷物の小口化、輸送距離の短距離化、発着地の多箇所化、オーダーの即時性とリードタイムの短縮化といった傾向がみられる。このような宅配市場の複雑化と軽トラ事業主の求める労働形態の多様性を組み合わせた新たなビジネスモデルが考えられている。

 既存の取引先を持っているが、売上をもっと伸ばしたいというドライバーは、スポットを組み込んで売上を増やす。自分の都合に合わせて働きたいドライバーは、スポットを組み合わせて働けばよい。この仕組みに登録する軽トラの台数が多ければ、荷主ニーズに応えることができる。さらにこの企業では、荷物を運ぶだけではなく、中小商店の荷物をまとめて配送したり、買物代行など多様なサービス展開の可能性もあるとしている。



メンタルヘルス
2015/10/21 更新
 厚生労働省の「過労死等の労災補償状況」によると、2014年度の脳・心臓疾患の請求件数は全体で763件、道路貨物運送業は120件(15.7%)で1位。支給決定件数は全体が277件に対して道路貨物運送業は77件(27.8%)で1位。精神障害では全体の請求件数1,456件で、道路貨物運送業84件(5.8%)で3位。支給件数では全体の497件に対して道路貨物運送業は41件(8.2%)で1位となっている。
 
 ここからも道路貨物運送業で働く人たちの劣悪な労働条件の一端が窺えるが、請求件数に対する支給決定件数の割合を見ると、さらに深刻さが分かる。脳・心臓疾患では請求件数と支給決定件数の割合が全体で36.3%なのに、道路貨物運送業では64.2%にもなっている。精神障害でも全体では34.1%なのに、道路貨物運送業では48.8%である。道路貨物運送業の場合、労災を申請するとかなりの割合で支給が決定されている。

 ある経営者に聞くと同社の事例では、精神障害はドライバー職よりも管理職、庫内作業員、事務職の方が深刻だという。精神的なストレスが多いということを意味している。そのような中で、改正労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度が12月1日から施行される。大規模企業では義務化となり、小規模企業では当分の間は努力義務とされているが、残業の賃金割増比率などのように、いずれ義務化されるものと考えておいた方が良い。

 このような状況を踏まえ、メンタルヘルスの専門知識を持った社員の育成を始めた中小トラック運送事業者もいる。また、すでにメンタルヘルスの授業を受講して単位を取得した経営者もいる。今後は管理職にも単位取得を促し、心身ともに従業員の健康管理ができる企業にならないと競争に生き残れない、という認識である。作業上で端末などデジタル機器が普及するにともない、メンタルケアが重要になってきている。



宅配と宅配便
2015/9/21 更新
 大手小売企業を取材していると、ほとんどが経営戦略の再検討を進めている。有店舗小売業(リアル小売)では、小売市場におけるネット通販(バーチャル小売)の伸長に対抗するため、オムニチャネル化を図ろうとしているからだ。リアル店舗においては今やオムニチャネルが勝ち残りのキーワードになっている。今後の企業戦略に関わるだけに、プロジェクトの内容はシークレットで、取材に対しては各社とも非常にナーバスになっている。

 
 バーチャル店舗側からも「逆オムニチャネル化」が進んでいる。オムニチャネルには販売・商品・物流の総合戦略が必要だ。そのような中で「宅配便離れ」についても検討されている。宅配便事業者に委託している荷物を、地場事業者を使って自前の宅配にした方がサービスレベルが向上する(現状でもオーバースペックだが)。独自の宅配エリアから外れた効率の悪い宅配荷物だけを宅配便事業者に委託したらどうか、という検討である。

 国交省によると14年度の宅配便取扱個数は36億1379万個で、13年度より2289万個の減少(−0.6%)になった。宅配便の減少は5年ぶりである。このうちトラック輸送は35億7008万個で、2498万個の減少(−0.7%)だ。減少の理由としては、消費税増税前の駆け込み需要の反動と、ヤマト運輸、佐川急便(13年度から値上げ要請)の料金値上げの影響と言われている。だが、宅配便離れの影響も否定できない。

 今後もネット通販の伸びや、オムニチャネル化によって宅配荷物の数は増加するものと思われる。だが、大手ネット通販や百貨店、量販店などの大口荷主では、宅配便離れの動きも進んでくる。つまり宅配荷物の数は増加するが、それが宅配便取扱個数にイコールとはならない。そのような宅配市場の変化をとらえて、宅配便事業ではなく宅配事業に参入しようとする事業者の動きも活発になりつつある。



ドライバーの長時間労働解消に向けて
2015/8/21 更新
 ドライバー確保難の背景には長時間労働や低賃金など劣悪な労働条件がある。このうち長時間労働の主たる原因は、荷積みや荷卸し地点での長時間待機と、長距離輸送における長時間拘束に大別できる。これらの実態は以前から明らかだったにも関わらず、なかなか改善に着手されなかった。その理由の一つがドライバーの賃金体系にある。ドライバーの賃金は歩合制が多く、長時間労働がコストとしての人件費にさほど影響しなかったからだ。

 
 したがって一部の経営者を除くと、長時間労働の解消は経営上の大きな課題という認識が弱かったのである。一方、運賃水準は長期にわたって下落してきた(ここ1、2年は上昇傾向にあるが)。歩合が変わらなければドライバーの賃金が減少するのは理の当然である。にもかかわらず、ドライバーの賃金が安いのは運賃が安いからと、責任はすべて荷主にあるかのような理屈で、自己を合理化するような経営者が存在したことも否定できない。

 ところが近年は法令順守が厳しく求められるようになってきた。拘束時間などに対する規制もそうだが、いずれ中小企業でも月60時間を超える所定外労働には割増賃金率5割以上が適用されるようになる。さらにドライバーを募集しても応募者が少ない、という現実に直面した。今後は少子高齢化で若い人が減少するため一そう大変になる。ドライバーが確保できなければ荷物があっても運ぶことができない。いわば尻に火がついたのである。

 労働時間を短縮するには、待機時間の解消と、長距離輸送における拘束時間の短縮という大きな2つの課題に取り組まなければならない。待機時間に関しては、当ブログで樋口社長が再三書かれているので参照されたい。長距離輸送における拘束時間の短縮では、中継輸送もその方法のひとつである。国交省では今年度、中継輸送に関する実証実験を行う。中継輸送にもいくつかのタイプがあるが、実験を通してそれぞれの課題を整理する予定だ。



荷主主導による物流共同化
2015/7/21 更新
 さまざまな業種で荷主主導型の物流共同化が進行している。運送事業者の労働力不足への対応というのも、その一因には違いない。輸送業務を委託している事業者で、今後ますます労働力の確保が難しくなり、ドライバー不足で業務に支障がでる可能性もあるからだ。そこで同業者同士が物流を共同化することで輸配送の効率化を図り、必要なトラックの車両数を減らす。車両を減らせればドライバーの人数も少なくてすむ、ということになる。

 
 ある業種の大手荷主数社が物流共同化を進めている。各社が出荷データなどをオープンにし、効率化のシミュレーションをした。幹線輸送は工場から大手小売業の物流センターと、全国各地にある自社の拠点への横持ちに大別できる。この幹線輸送では車両の大型化やモーダルシフトなどによって、トラックの台数を約30%削減できるという。一方、メーカー物流が主体の中堅事業者の試算でも、車両大型化で30%の台数削減が可能という。

 物流共同化を進めている荷主数社では各地の拠点も共同利用し、エリア配送車両は小型化する。1回の配送件数を少なくして、車両回転数を上げるというのが基本的な考え方だ。もちろん拠点では手待ち時間がないようなオペレーションにする。そうすると配送車両の必要台数を大都市部では約16%、地方では約30%も削減できるというのがシミュレーションの結果である。これは現在の受注、出荷量を前提として試算した数値である。

 その他の業種でも荷主主導で物流共同化が進められている。この流れは今後さらに強まってくるだろう。なぜか? 先に労働力不足への対応と記したが、それだけではない。荷主企業が物流共同化を進める本当の理由は、国内市場縮小への対応である。国内市場の縮小が進むと、現在のままの物流システムでは段だん非効率的になってくる。荷主が物流共同化を急ぐ真の目的は、労働力不足もあるが、国内市場縮小への対応なのである。



準中型免許と費用負担
2015/6/21 更新
 道路交通法改正によって準中型免許が創設される。現在の普通免許の取得年齢は18歳以上で、運転できるのは車両総重量が5t未満。中型免許は20歳以上(普通免許保有2年)で、総重量11t未満である。それが新制度では、普通免許の取得年齢は同じだが、運転できるのは車両総重量3.5t未満となる。だが、準中型免許の取得年齢も18歳以上なので、準中型免許を取得すれば18歳でも車両総重量7.5tまで運転できるようになる。

 
 この新制度には2つの意見がある。1つは、新制度では18歳でも車両総重量7.5tまで乗れるようになる、というポジティブな受け止め方。一方、新制度の普通免許では車両総重量3.5tまでしか乗れなくなってしまう、というネガティブな見方である。これはどちらが正しいか間違いかという問題ではない。どちらも事実である。ポイントは18歳で準中型免許を取得するか、それとも普通免許だけしか持たないか、という点にある。

 大都市では運転免許を取らない若い人もいる。日常生活において必要性が低いからだ。それに対して地方の若い人は、通勤や買物、遊びやその他、日々の生活において自動車がないと不便なので、たいていは高校卒業までに普通免許を取得する。普通に生活する上で、自動車(普通免許)は必需品と言っても良い。だが、たいていの人にとって、準中型免許の必要性は低い。したがって、準中型免許を取得させるためには動機付けが必要になる。

 一般的な動機付けはトラック協会などの役割である。だが、個別的で具体的な動機付けは事業者の問題だ。たとえば高校新卒採用に踏み切り、採用内定を出して会社が費用を負担して準中型免許を取らせるのも1つの方法だ。中途採用者でも3.5t未満の普通免許しか持っていなければ、採用後に会社負担で最低でも準中型免許を取得させなければならない。いずれにしても今後は、普通免許以外は事業者の費用負担と考えることが必要になる。



生産性向上への取り組みの変化
2015/5/21 更新
 トラック運送事業における生産性向上が大きな課題になっている。もちろん生産性の向上は普遍的なテーマだが、最近は成果配分の重点目的に変化がみられるようになってきた。また、荷主側の協力姿勢も大きく変わってきている。まず、荷主の協力では、従来は主に発荷主(運賃を支払う荷主)の協力だけだったが、最近では発着荷主(運賃を支払わない側もふくめて)がともに運送事業者の生産性向上に協力的になってきている。

 
 荷主企業の協力姿勢の変化の背景には、国内市場の縮小への対応や環境負荷低減のためには生産性向上が不可欠なこと。さらに、ドライバー不足などにより輸送サービスの安定的な確保が重要になってきたからである。市場縮小の進行によって物流が非効率的になる分を、生産性向上によって補わなければならない。また、安定的な輸送サービスの確保は、発荷主だけではなく着荷主にとっても重要になっているからだ。

 一方、事業者側においても、生産性向上によって生み出された成果配分が変化している。従来は利益率の向上と競争力の強化が目的だったが、最近はコンプライアンス・コストの充填に振り向けるようになってきた。生産性向上によって得られた成果を、労働力確保の原資に充当するようになってきたのである。このような点で、事業者と発着荷主の認識が一致するようになってきた。労働力の確保は事業者にとっては競争力の強化でもある。

 そこで、荷主主導型で生産性向上が進められるようなケースもでてきた。ライバル企業同士が物流面では共同化に取り組んだりしているのは、そのためである。だが、これでは事業者はどこまでいっても従属的な関係から抜け出すことができない。荷主の意識の変化をとらえ、共同して生産性向上に取り組むべきである。生産性向上への取り組みは、事業者が荷主企業と対等な契約関係を構築するためのチャンスでもある。



自車両比率を高める傾向
2015/4/21 更新
 全体的に運賃水準が上がっている。主たる要因はドライバー不足で、トラックが動かなければ荷主も困るため、運賃値上げに応じざるを得ないという構造である。元請け下請けの関係でも同様だ。べつに難しいことではなく需給関係である。ということは需給関係が変化すれば再び運賃水準が下がる可能性もある。いやいや少子高齢化が進行し、拘束時間など労働条件が厳しくなるのだから、運賃上昇は続くと思っている方も少なくないはずだ。

 
 だが進んだ荷主や物流子会社、また元請け事業者などは、若年労働力の減少や拘束時間の制約などの中でも、安定的な物流確保のための方策を考えている。ある業種の大手メーカー数社では、物流事業者も1社加わって2年ほど前から物流共同化を検討してきた。詳細は割愛するが、各社の出荷データを基にしたシミュレーションでは、必要なトラック台数が大幅に削減できるという結果が出ている。ドライバーの手待ち時間もなくす計画だ。

 このようにドライバー不足への対応として、物流システムの効率化によって必要なトラックの台数を削減し、同時にドライバー確保のために拘束時間の短縮なども実現しようとしている。さらに大きな傾向としては自車両比率を増やす計画の事業者が増えてきた。実運送部門を持っている物流子会社は、増車をして自車両の比率を高める方針を打ち出している。また元請け事業者も自車両を増やして傭車を減らすというのが大きな流れだ。

 物流子会社や元請け事業者が、自車両比率を高める理由は共通している。安定的なサービスの提供である。今後は、協力会社でドライバーが確保できないといった事態も想定される。自車両を増やし自社ドライバーの比率を高めておけば、そのようなリスクも軽減できる。また、「法令順守や雇用条件の改善には一定の規模が必要」だからである。直接、自分でやった方が良いという判断だ。そうするとドライバーも条件の良い会社に移っていく。



浸透しつつある「トラガール」
2015/3/21 更新
 昨年9月から国土交通省が「トラガール」サイトを開設した。まだ約半年だが、同サイトを担当している専門官によると「トラガール」に対する反響はかなりあるという。ただ、現在のところ運送企業経営者や女性ドライバーなど業界関係者が主で、一般の女性からのアクセスは少ないようだ。一般の女性に、自分にもできそうな仕事だと思ってもらうために、今後はWeb以外にも様ざまなチャネルを活用して働きかけていく予定である。

 
 とはいえ、マスコミも少しずつ「トラガール」を話題として取り上げるようになってきた。最近、自分が関わった媒体だけでも2月24日づけ読売新聞のウーマンのページ、KBCラジオのモーニング・ウエーブ(3月9日放送)のニュース・クローズアップがある。いずれも「トラガール」に関するコメントを求められたもので、読売新聞はバスやタクシーで働く女性ドライバーも含めた特集だが、東京本社発行だけではなく全国版の掲載だった。

 このように全国紙や電波媒体などが取り上げるようになったのは、「トラガール」が浸透しつつある証左だ。「トラガール」の紹介は読者や視聴者など一般の人たちにも受け入れられる、というマスコミの判断があってのことだからである。同時に、マス媒体に取り上げられることで、さらに関心が促進されることになる。失礼かもしれないが率直に言ってしまえば、国交省の施策でこれほど効果が具体的に表われるというのも珍しい。

 1月に取材した女性ドライバーは事務の仕事をしていた。トラックのドライバーになりたくて、運送会社の募集に何度か応募したのだが、いずれも採用されなかった。そこで大型、けん引、フォークリフト、危険物取扱者乙種(4類と6類)の資格を自分で取得した。履歴書に書いて本気度を示したかったからという。女性ドライバーのために必要なハード面の課題は指摘されるが、むしろ受け入れる側の意識改革の方が大きな課題かも知れない。



業界再編成が始まった
2015/2/21 更新
 名糖運輸とヒューテックノオリンの経営統合が発表された。両社は10月1日に共同持株会社「C&Fロジホールディングス」を設立する。前者は東証1部、後者は東証2部の上場企業同士の経営統合である。物流関連の上場企業同士の経営統合は、おそらく初めてではないかと思う。両社の14年3月期の売上高を合算すると952億円で、ニチレイロジグループ本社、キユーソー流通システムに次ぎ低温食品物流3位となる。

 
 両社は同じ低温食品物流でも主たる取扱商品の温度帯が異なっていた。名糖運輸はチルド、ヒューテックノオリンはフローズンが主である。物流センターなどもエリア的にみると重複している面もあるが、機能という点では異なっている。チルドはスルーに向いた機能であり、フローズンはストック機能も備えている。したがって同じエリアにある拠点でも、機能的には重複しない。もちろん1カ所で両機能を備えた方が効率的ではあるが。

 このようなことから、当面はホールディングス(HD)の下で2社が併存する形でも、シナジー効果が見込める。お互いが取扱商品の幅を拡げることができるからだ。顧客がかぶるようなことがあればHDで調整すれば良い。物流拠点についても、今後は順次、チルド、フローズン併用型に集約化していけば、エリア的な重複なども解決できる。また、投資効果も向上するし、センター内作業などの効率化促進も期待できる。

 両社によると当面は幹線部分でのシナジー効果を図り、エリア配送は各地の配送事業者に委託する方針のようだ。低温食品物流をみると、エリア配送事業者はすでにほぼ優勝劣敗がハッキリしている。幹線部分では競合している大手事業者も、エリア配送では同一事業者に委託しているような地域もある。焦点は幹線部分を担っている大手事業者間の競争になっている。このようにみると今回の経営統合の背景が明らかになってくる。



学習能力と景気後退感
2015/1/21 更新
 今年の新年は関東などは天候に恵まれたが、北日本や日本海側の地方などでは大雪に見舞われた。帰省の自家用車もそうだが、トラック運送にはかなりの影響がでたものと思われる。宅配便でも幹線輸送に遅れがでたようだ。当事務所の近くを担当している集配ドライバーに話を聞くと、「遅延の可能性を前提に荷物を引き受ける」ようなケースもあるという。天候などの自然現象は不可抗力で仕方ないのだが、わがままな客も中にはいるようだ。

 
 ところで、昨年の暮は一昨年の年末と比べるとトラック不足がさほど騒がれなかった。日本人は学習能力に優れているので、前年の轍を踏まないようにするため、計画的に出荷するなど事前に対応したこともその理由の一つだろうと思われる。もちろん年末は荷物量が増加するのは例年のパターンだ。したがって一部にはトラック不足が生じたが、一昨年との比較ではそれほどでもなかったことになる。これは優れた対応力といえる。

 一方、それだけではない面もある。昨年暮は一昨年と比べると、荷物量が減少しているという現場の声が多い。宅配便の集配ドライバーの1人は、消費税増税の影響で前年と比べると荷物が減少した、という。建材や工業製品を運んでいる事業者も、昨年の秋以降は荷物が減少してきていると話す。日本銀行の「さくらレポート」では、昨年10月との比較で1月の景気情勢を、北海道でやや引き下げたものの、他の地方は据え置きだった。

 日銀の景気判断を信じるか、それとも自分自身の実感としての景況感によって物事を判断するかは各人の自由だ。しかし、結果に対して責任を取らなければならないのは自分である。とくに企業経営者は責任が重い。もうすぐ年度末である。昨年の年度末のようなトラック不足の状況にはならないと予測しているが、年度末には輸送量が増加することは間違いない。今から対応策を立てておかなければならないが、その判断は容易ではない。



過積載とシートベルト
2014/12/21 更新
 12月上旬にタイとカンボジアのコールドチェーンの現状を視察してきた。ASEAN(東南アジア諸国連合)加盟の10カ国は、2015年にASEAN経済共同体の発足を予定している。加盟国間でも経済格差が大きいし、関税なども2国間協議が基本なので、まだまだ道のりは遠いと思われる。しかし、東西経済回廊や南北経済回廊などのインフラは着実に整備されるつつあるようだ。それにポテンシャルとしては今後の成長が期待される。

 
 視察といっても観光も兼ねており、シェムリアップではアンコール遺跡群やトレンサップ湖の船上生活なども見学してきた。バンテアイ・スレイからアンコールワットに向かう途中のことである。ドライバーと現地ガイドと筆者の3人で、日本製の中古車に乗っていたのだが、急にスピードを落とし、ドライバーが慌ててシートベルトを締めた(実際には肩からまわして締めている振り)。聞いたところ過積載の検問をしているとのことだった。

 カンボジアでは運転者だけがシートベルトを義務づけられているという。運転免許証を見せるだけで我われはスムースに通過できたが、何台かのトラックが停められていた。ガイド氏によると、荷物をたくさん積んで走った方が収入が多くなるので、過積載のトラックが多いのだという。同じコストなら収入が多い方が良い、という単純な理屈だ。それを聞いて過積載といいシートベルトといい、どこの国でも同じだなと苦笑した。

 それにしてもASEAN10カ国の人口は約6億人である。人が多いために労働をシェアする政策もあって、荷役も機械化せず人海戦術で行っていたりする。ハンドも右か左かなど、初歩的な「非関税障壁」問題? もある。また、政治情勢の違いや経済格差、言語や宗教、歴史問題など様ざまな課題はあるにしても、今後の経済発展が期待される地域には違いない。日本の物流企業も、最近はチルド輸送などで進出が目立つようになってきた。



無人化はムリでも省人化
2014/11/21 更新
 40年も昔だが、ある大手製造会社の広大な工場で、働いている人はほんの数人しかいないような所もある、という話を経済学の先生から聞いた。工場内が広いので、働いている人はローラースケートを履いて滑走しながら計器類をチャックして周るのだという。異常がなければ良いし、何かおかしい場合には正常にするというのが工場作業員の仕事である。労働装備率の高い装置産業の場合には、そのようなこともあるのかと感心した。

 
 これは最近聞いた話である。ある大手ネット通販会社の物流センター業務を受託している会社の人が、「いまは良いように使われているが、いずれは機械化によって徐じょに人が要らなくなってくる」と言っていた。ネット通販会社は「そのような考えで機械化を進めつつある」というのだ。労働集約型の物流では装置産業のようには行かないだろうが、いかに労働装備率を高めるかが、コストダウンのポイントになってくるという予感がする。

 11月11日更新の当ブログで、樋口社長が倉庫管理システム(WMS)や輸送管理システム(TMS)について書いていたので、40年も昔のことと、奇しくも数日前に聞いたネット通販の物流センターの話が頭に浮かんだ。そして4年前の2010年6月にアメリカのピッツバーグ市で訪ねた物流会社の、研究所を併設した倉庫の情景も思い出した。詳細は省き、フォークリフト作業だけを紹介すると、フォークを動態管理していたのである。

 走行軌跡の最短移動管理だけではなく、壁と天井に貼ってある二次元バーコードを、フォークのセンサーで読み取り、どの荷物をどこに移動するかなどを指示管理していた。作業は有人で行っていたが、いずれはフォークを無人操作にすることを視野に入れているのだなと思った。また、これからは庫内作業でのロボット活用も現実味をおびてくるだろう。それにしても技術研究所を持っている物流会社が日本にあるのだろうか。



募集方法・採用基準・育成制度
2014/10/21 更新
 10月9日の「トラックの日」に福岡で全日本トラック協会の事業者大会があった。第2分科会の「トラック業界の人材確保及び育成について」の会場を取材したのだが、いろいろ参考になる点があった。パネリストは事業者が2名、高校教諭、国交省専門官である。やはり現役の経営者の発表ならびに発言は、実際に事業に関わっているだけに具体的で現実的な内容であり、参加者の多くの人が有益なヒントを得たのではないかと思う。

 
 募集してもなかなか応募者がこない。そのためにドライバー不足になっている。しかし、いくら募集しても採用できないとなると、ムリをしてでも現有勢力で仕事をこなさなくてはならない。すると過重労働になってしまう。そこで、仕事がきついために退職者が出て、一そうドライバー不足になるという悪循環に陥ってしまう。このようなことから、どのような募集をすれば応募者が増えるか、といった募集テクニックに関心が向かいがちだ。

 だが、応募者が少ないのは必ずしも募集の仕方だけの問題ではない。もっと根本的な問題なのである。分科会でのパネリストの発表や討論を聞いていて感じたのは、募集の方法はもとより、面接や採用基準が明確になっていること、さらに採用後の教育・育成の体制が確立されている、ということだった。これは経営方針がしっかりしているから可能なのである。その裏づけがあってこそ募集の仕方も内容も決まってくるというわけだ。

 さらに、採用基準や採用後の教育・育成などの背景には、将来の企業ビジョンがなければならない。目指すべき企業像があり、その実現に向かって経営計画、事業計画があるから、どのような人材を求めるのかという採用基準が明確になってくる。さらに、採用後の教育・育成の体制も同様である。このようにみてくると人材を確保できるか否かは経営のあり方によってきまる。労働力市場は企業を「面接」していると受け止めるべきだろう。



運賃・料金問題と「経営責任」
2014/9/21 更新
 9月10日に静岡県トラック協会が「人材・安全確保/適正運賃収受 緊急推進大会」を開いた。正副会長が壇上に並び、会場の出席者が自由に意見を出して、それに正副会長が答えるというもの。普通の決起大会とは違う形式の大会であった。テーマは@燃料高騰、A高速道路料金、B安全運行阻害要因、C労働力確保と賃金、D法令順守、E安全対策、Fコストに見合った運賃である。様ざまな課題に対し会員が生の意見を述べる試みだ。
 
 大会に先駆けて同協会が6月に行った「適正運賃収受に向けた運賃交渉等の取組みに関する実態調査」によると、運賃交渉の実施状況は有効回答716で「実施した(している)」28.4%、「一部の荷主に対し実施した」37.8%、「実施していない」33.8%という結果だった。約3分の1の事業者が運賃交渉を行っていない。そこで、会員に運賃交渉をしようという気持ちを喚起することが緊急推進大会の主たる目的である。

 筆者もアドバイザーとして壇上の端に座っていた。討論の途中で進行役から振られたら適宜、意見を述べるというものである。さらに討論が終わってから、全体のまとめと助言をするという役割もあった。だが最後のまとめでは、会場から出された意見や討論のまとめというよりも、日頃から考えている私見を述べたといった方が正しい。そこで強調したのは、「協会責任」、「元請責任」、「経営責任」の3つの責任についてである。

 「協会責任」では、会場から出された意見を真摯に受け止め、今後の協会事業に反映することで、より会員の役に立つ協会になること。「元請責任」では、仕事を出すだけでなく、出した仕事に見合う対価を払う。それを可能にする運賃・料金を荷主に交渉することが元請責任であることを指摘した。「経営責任」は、自分自身の経営責任を棚上げし、行政や協会、荷主や元請の責任にするのではなく、経営責任の認識が最も重要であると強調した。



オムニチャネル時代の物流
2014/8/21 更新
 今年に入ってから、物流以外の様ざまな業界の企業や団体などから仕事のオファーが入ってくるようになった。物流に対する関心が高まっているのである。より正確にいうと今後の「物流の変化」に対する関心だ。たとえば金融機関や証券業界、外資系機関投資家などの人たちは、物流自体ではなく今後の物流の変化の予測を先取りしたいのである。もちろん投資判断のためである。そんなことで物流以外の業界の人たちとの接触が増えてきた。

 これは自分にとって勉強になる。物流業界を常に客観的な立場から観て分析するように努めてきたつもりだが、物流以外の業界の人たちと接すると、結局はムラの中での「客観性」に過ぎなかったことに気づく。従来とはまったく違った視点から物流をみることの必要性を強く感じるようになってきた。その一つがオムニチャネル時代の物流である。オムニチャネル化が進むと、主に消費財ではあるが、物流が大きく変わることになる。

 アナリストや機関投資家などは、リアル店舗の大手小売業(CV、GMS、SM、百貨店、家電量販店、家具量販店、ドラッグストアなど)のサバイバルに注目している。国内市場が縮小する中で大型小売店の勝ち残り競争はますます激しくなってくる。それだけではなくリアル店舗はネット通販との競争にも勝ち残らなければならない。その勝ち残りのキーワードがオムニチャネルである。オムニチャネル化の可否が勝敗のカギを握っている。

 そしてオムニチャネル化に成功するか否かは、オムニチャネル時代の物流システムが構築できるかどうかにかかっているというのが、アナリストや機関投資家の共通認識である。しかし、その物流システムがどのような形になるのかが皆目分からない。そこで当方にオファーがくるという次第なのだが、つくづく感じるのは、ほとんどの物流業界の人たちはそこまで考えていないということである。良い意味での危機感と先見性が必要ではないか。



不適正事業者の退出促進
2014/7/21 更新
 国交省と適正化実施機関は昨年10月から速報制度を導入した。適正化機関の巡回指導で重大で悪質な法令違反を確認したら運輸支局に速報し、支局では速やかに監査に着手して法令違反が確認されたら行政処分などをする制度だ。それによると13年10月〜14年3月の半年間で、速報数が75件で、監査が37件(うち行政処分3件)、行政指導が32件、監査着手前の自主廃業が6件となっている。監査後の事業休止は3件であった。

 この件数が多いか少ないかは別として、監査・速報の効果的な運用によって、悪質事業者の排除と、法令違反の速やかな是正に、それなりの効果があることは事実だろう。このように国交省では、不適正事業者の指導強化、さらには退出を促進するとしている。一方、優良事業者へのインセンティブも考えている。ここでは、不適正事業者の市場からの撤退促進について考えてみることにしよう。産業としての健全化には必要な方策である。

 まず、不適正事業者は大きく2つに分類できる。1つは、どうしようもない不適正事業者である。いわば確信犯ともいえる事業者で、このような不適正事業者には撤退してもらわなければならない。もう1つは、適正な事業運営をしたいと考えていても収入などから適正事業ができない事業者である。コンプライアンス・コストなどを軽視することで、経営を維持している事業者で、いわば不適正な事業を余儀なくされているともいえる。

 このような事業者には適正な事業運営ができるように、行政は政策によって、業界団体は事業を通してバックアップすることが重要だ。だが、これらの事業者も2つに分かれる。行政や業界団体のバックアップで立ち直れる事業者と、それでも適正事業ができない事業者である。後者は経営能力の不足であり、やはり市場から撤退させる必要がある。従業員や利用者にとっても、社会的にも、産業の健全化のためにも、その方が良いのである。



人が応募してくる企業(経営)になることが重要
2014/6/21 更新
 物流業界に限らず労働力確保が大きな課題になっている。日本人の人口が減少し、高齢者が増えて若年者が減っているのだから争奪戦が激化するのは当然である。だが、今春の大卒者や高中卒者の就職率のデータをみて感じるのは、「人手」確保は激しくなっているが、「人材」確保は各企業とも慎重で、より狭き門になっているということだ。誰しも社会人としてのスタート時に「人手」になりたくないから、「人材」募集に応募者が殺到する。

 物流業界をみると、まず認識を転換しなければならないのは業界内的な発想である。ドライバーの人たちの転職は業界内での移動が多いのが実態だ。しかし、業界内的な視野で労働力不足の問題を考えていては抜本的な解決の方向は見えてこない。労働力市場は、あらゆる産業のあらゆる企業のなかで、自社がどのように評価されているか、という問題なのである。先月の当ブログで書いたような中小事業者の考え方や行動が基本である。

 国交省ではドライバーの資格認定制度の創設を検討している。現在の時点では運転のスキルを評価する「トラックマスターズ」と、さらに経営的な知識なども認定要件とした「トラックスーパーバイザー」が考えられている。今後さらに検討して具体化されることと思う。ドライバーのレベルアップと職業に対する誇り、社会的評価の向上、引いてはトラックドライバーを希望する人たちが増えるように、という思いも込められた制度である。

 このような制度の創設に対しては、ほとんどの業界関係者が賛成であろうと思う。だが、有資格者のインセンティブは? という問題である。有資格者には毎月いくらの資格手当を出せるのだろうか。その原資は? このように、ドライバーの資格認定制度の創設という一事だけをとっても、労働力確保の問題は結局のところ経営のあり方に行き着く。つまり、あらゆる業種のあらゆる企業との競争に負けない経営の実現ということになる。



少数ながら創意工夫をしている中小事業者もいる
2014/5/21 更新
 齊藤教授が5月1日づけで、アメリカのネット通販物流で頭角を現している中小事業者を引き合いに、日本では市場がそこにあるのに、中小事業者が市場に見合ったビジネスを展開していないと書かれた。それを受けて樋口社長が11日づけで、中小事業者も企画力、営業力を持って「ここで儲けている」と明確に説明できるようにならなければいけない、と書かれている。その流れに乗って今回は「後だしジャンケン」で行くことにした。

 保有車両13台で従業員17人の中小事業者が、今年1月から平均1万円のベースアップを行った。また、年齢の高い人たちが安心して働けるように諸手当の見直しも行い、諸手当を含む賃上げは平均1万6000円である。この人件費増の原資は4月からの平均18%の運賃料金値上げである。3%は消費税増税分なので、実質値上げは15%だ。中小事業者なのに運賃料金値上げがなぜ可能なのか? 大方の感心はここにあるだろう。

 同社は1995年に軽トラックでスタートし2001年に一般事業に参入した。当初は下請けだったが下請けからの脱却を掲げて、元請収入の増加を図りつつ下請けから徐じょに撤退。同時に独自のサービスも創造した。下請けから脱却した後は、独自サービスの収入増に応じて貸切契約の仕事からの撤退を進め、今年1月末で最後の貸切を止めた。その結果、2月からは自社主導型で運賃料金を決められる分野の収入構成が95%になった。

 そこで、新年度から独自サービスの本格的展開を開始して規模拡大を図って行く方針だ。そのためには企業の将来ビジョンをより明確にし、中期経営計画や人事政策も確立しなければならない。「人手」対策ではなく「人事」政策でありキャリアパスも示していく。その一環としてベースアップを先行したのである。齊藤教授が3月1日づけで書かれていたバックキャスティングといえる。このような事業者も存在するが、極めて少数なのが残念だ。



ガバナンスの基軸
2014/4/21 更新
 流通経済大学の野尻俊明教授が『貨物自動車政策の変遷』(流通経済大学出版会)を上梓された。過去から今日に至る貨物自動車運送事業の政策の変遷を検証したもので、同教授のライフワークの中間総括ともいえる研究書である。当方は法学の素養がないので内容を理解する能力に乏しいのだが、素人なりに勉強させていただいた。自分レベルの解釈で恐縮だが、トラック運送事業の基本的課題は昔から何も変わっていないように感じた。

 同著の帯には「事業のガバナンスの根拠を何処に求めればよいのか、改めて考える」と書かれているが、結局、そこに行き着いてしまう。もちろん業界が内包する諸課題はそれぞれの時代によって具体的な現象は異なる。だが、政策的にはガバナンスの基軸をどこにおくかで振り子のように揺れ動いてきたし、現在も本質は変わっていない。それは法令などに基づく行政による統治か、ガバナンスの基軸を市場におくのかという問題である。


 規制緩和の弊害が現れていることは事実だ。そこで規制見直しが提起されている。この規制見直しの一つは、ガバナンスの基軸を市場に移したのに弊害が出てきたのだから、再び行政による統治を強化すべきだとする主張である。一方、規制緩和の弊害は市場メカニズムが正常に機能しなかったことに主原因があるという認識に立てば、基軸は市場においたままで市場メカニズムが機能するようにするための見直しという方向になる。


 ガバナンスの基軸を行政の統治に戻すという考え方は、事業者保護の色彩が強い。ガバナンスの基軸は市場において、市場原理が機能するような方策を採り入れるという考え方は、利用者の利便性を強調することになる。これはトラック運送事業の公共性の度合いをどのように理解するかの違いともいえる。一方、これからは経済のグローバル化が進展するなかで、国内におけるトラック運送を産業として捉えるという観点も必要になってくる。


運送業界の健全化・活性化
2014/3/21 更新
 3月12日に第1回「トラック産業の健全化・活性化に向けた有識者懇談会」が開かれた。これは国交省自動車局長の諮問機関という位置づけの懇談会である。従来の「トラック産業の将来ビジョンに関する検討会」では2010年7月に中間整理を発表し、それを受けてワーキング・グループ、さらに作業部会と検討を重ねてきた。そこで議論された内容は、参入時の要件強化、荷主勧告、書面化、その他の具体的な施策に反映された。

 そこでトラックビジョンは一段落とし、新たに有識者懇談会を発足して6月には何らかの形を示す予定という。当ブログを執筆している齋藤教授、樋口社長それに私も同懇談会のメンバーである。トラックビジョン委員会でも3人は一緒だった。思い起こせば国交省で2005年度から06年度に行った「若手トラック経営者等によるトラック事業の明るい未来を切り開く方策等を検討する研究会」でお2人とご一緒したのが最初である。


 この時の若手研のメンバーは、その後もNS物流研究会という任意の研究会として活動を続けている。昨年11月に当ブログで紹介した「物流関連ゼミ学生の研究発表会」は、そのNS物流研究会が主催しているコンペだ。若手研からは、すでに10年近くが経った。メンバーはいまや若手ではない。だが、それぞれの企業で創造性、独自性を発揮して経営者として活躍している。経営の健全化、活性化を実践しているのである。


 そこで健全化、活性化に向けた懇談会だが、健全な経営ができている企業は活性化している。逆に健全経営ができていなければ活性化はない。健全化と活性化は不可分の関係ともいえる。そして活気のある事業者が増えてくれば、自ずと業界全体が活性化してくることになる。そのような業界にするにはどうすべきか。懇談会では当ブログを執筆している3者3様に、それぞれの立場から率直な意見を出していく(教授、社長そうですね?)。


今年は厳しさが予想される
2014/1/21 更新
 年末だけではなく正月3が日も、一部では深刻な人手不足で車両の確保ができないといった状況である。これから年度末にかけて、消費税増税前の駆け込み需要が予想され、年末よりも大変なトラック不足になるのではないか、といった予測もある。それに伴って運賃水準も上昇機運にあるようだ。しかし、4月以降にその反動がくると、輸送需要は落ち込む。トラック運送業界も単純に売り手市場とばかりは行かないのではないだろうか。

 日本銀行が1月9日に発表した「生活意識に関するアンケート調査(2013年12月)」によれば、1年前と比べた景況感では「悪くなった」という回答が21.5%で、前回調査(13年9月)よりも0.9ポイントほど高くなっている。前々回(13年6月)との比較では3.5ポイントの上昇だ。1年後の予測では「悪くなる」という回答が29.9%で、これは前々回よりも13.1ポイント、前回よりも4.1ポイント、それぞれ多い。

 以上は一般の人を対象にした意識調査だが、物流面でも厳しい見通しが出されている。日通総合研究所が昨年12月に発表した「2013・2014年度の経済と貨物輸送の見通し」では、2013年度の国内貨物輸送量は48億4220万トンで、前年度対比1.4%増だが、2014年度では47億4810万トンと、13年度よりも1.9%の減少を予測している。これは12年度と比べても2710万トンも少ない輸送量である。

 つまり、年度末までは深刻な人手不足、トラック不足であっても、4月以降は需給関係がガラリと変化することも想定される。もし、問題なく人手が確保できるような状況なら増車する事業者もいるだろうが、人手不足がブレーキとして作用しているので設備投資が押さえられているという側面もある。新年度に入って輸送需要が減少するとすれば、増車しなくて良かったということになろう。いずれにしても今年は厳しさが予想される。



業績の格差が拡大する中で
2013/12/21 更新
 今年も最後のブログである。この1年で一番印象に残っているのは、とにかく暑かったということ。そして秋がなく、夏から直接、冬になったような気がする。10月15日、11月15日、12月10日と、奇しくもほぼ1カ月間隔で仙台に出張したのだが、10月には夏服でちょうど良かったのに、11月にはコートを着ていった。冬服でコートなしという時期がなかったことになる。短い期間に大きく温度が変化した。

 さて、このような気候と同じように、物流業界も業績の企業間格差が拡大した1年ではなかったかと思う。中小事業者でも、なかには二けた台の経常利益率という好業績の事業者がいる一方、燃料費の支払いにも窮するような事業者もではじめた。荷物を回してもらったりしている中堅事業者からプレートを借りて燃料を補給し、傭車運賃から差し引いてもらって窮状を凌いでいるようなケースもある。このように企業業績も両極化が進んだ。

 運賃・料金はほとんど変わらないのにコストが上昇している。燃料価格もそうだが、これは可変的である。それに対してコンプライアンス・コストは不変的な要素だ。とくに労働時間の順守と残業代や夜間、休日などの割増手当が大きな課題になっている。労働時間を厳守しながら、いかに車両の稼働効率を上げるか。このアンチノミーは営業、配車、乗務員が一体となって取り組まなければ解決できない。それには経営者の自覚が不可欠だ。

 このようななかで取引停止覚悟で交渉した結果、取引先が運賃の値上げに同意し、さらに手待ち時間の解消にも協力してくれた、というメールが中小事業者から届いた。法令を順守する健全経営の会社にして後継者に譲る決意を固めた、という嬉しい知らせである。



物流関連ゼミ学生の研究発表会
2013/11/21 更新
 11月9日に「第5回物流関連ゼミ学生による研究発表会」が東京海洋大学(越中島キャンパス)で開かれた。この発表会はNS物流研究会が主催するもので、当ブログを執筆している川崎陸送の樋口恵一社長が同研究会の会長で、神奈川大学の齊藤実教授、それに小生も同研究会の個人会員である。そのようなことから5年前の第1回からずっと、発表会当日は写真担当として大活躍? している。

 発表会は回を重ねるとともに内容も充実してきた。また、今回は参加校も発表大学順に神奈川大学(齊藤ゼミ)、流通経済大学(小野ゼミ)、大阪産業大学(浜崎ゼミ)、東京海洋大学(黒川ゼミ)、流通科学大学(森ゼミ)、目白大学(橋本ゼミ)と6校にまで増えた。当初はさらに2、3の大学が参加する意向だったが、諸般の事情で今回は参加を見送ることになり、「物流6大学」による発表会になった。

 運輸政策研究所の今橋隆主席研究員を審査委員長に、審査員の皆さんの厳正な採点の結果、東京海洋大学「知識の連携でトラック業界を生き残れ!〜需要創造のための経営改善」が優勝。準優勝は神奈川大学「買い物支援サービスによる運送業者の事業拡大」、敢闘賞は目白大学「3PLによる食品ライフサイクル・サポート・ビジネスの可能性について」が選ばれた。努力賞は、流通経済大学「少子高齢化が物流業界に与える影響とその対策」、大阪産業大学「タブレットを活用したピッキングの生産性向上と定性的効果に関する事例研究」、流通科学大学「若年ドライバー不足に対する改善案〜大学新卒への採用拡大に向けて」であった。

 望まれることは、これらの学生が積極的に就職を希望するような業界になることである。



自社の実情に応じた計数管理
2013/10/21 更新
 10月9日に全ト協の事業者大会が札幌で開かれた。大会では全体会議、記念講演会、分科会でのディスカッションなどが行われた。

 分科会は、第1分科会が「トラック業界の安全対策の構築について」、第2分科会が「トラック業界の経営基盤の強化について」がテーマである。いずれもトラック運送業界にとって重要なテーマだ。しかし、両方には参加できないので、第2分科会に参加した。

 第2分科会は当ブログの執筆者の1人でもある川崎陸送の樋口恵一社長がコーディネーターとなり、エイチビーケーサービスの斉藤博之社長、茨城流通サービスの小倉邦義社長、ロジコムの鳥屋正人社長の3人がパネリストで、各社の発表と討論を行った。

 パネリストの3者とも、それぞれ独自の事業展開をしている。斉藤社長は営業用トラックのドライバーをしていたが、アイスクリームの共同配送を発想・提案して元請事業者に出向し、共同配送を行っていた。しかし、諸般の事情で20歳代で独立して自分で事業を始めた。その後、分社経営を展開して最近はシンガポールにも現地法人を設立している。小倉社長は倉庫と運送事業を行っているが、運送では従来の貸切からハブ&スポーク方式の中ロット積合せ事業に転換して高収益企業になっている。鳥屋社長は建設関連輸送を主としているが、長距離からは撤退し、福祉関連物流、ネット通販物流なども展開している。

 3社とも事業内容は異なるが共通点がある。それは自社の実態に見合った独自の計数管理をしている、ということである。原価計算は必要だが、重要なのは原価を上回る収益を上げるにはどうするかである。そのためには独自の計数管理が必要になる。



東日本大震災から2年半後の危機管理
2013/9/21 更新
 東日本大震災から2年半が過ぎた。被災地の復旧、復興はまだまだである。一方、被災地以外では、テレビニュースの映像でみた当時の無残な被害の衝撃などを忘れかけている人が多いのではないかと思われる。

 先日、トラック運送事業者を対象にして、2日間にわたる危機管理をテーマとしたセミナーが開かれた。1日目は講演で、2日目はディスカッションである。小生は中小運送事業者の経営の危機管理について話したのだが、そのなかで強調したのは平時において経営の基本に忠実であること、であった。普段から経営の基本ができていなければ、つまり平時の管理ができていないのに、危機の管理などはあり得ない。もう一つ指摘したのは、東日本大震災からすでに2年半が過ぎているのに、いままで何もしていないということは、経営者の認識や姿勢の問題である、という点だった。

 危機管理というと、携帯電話もつながらない状況で連絡を取るにはどうすべきか、燃料の確保はどうするか、といったことが大きな関心事になる。これらに共通するのは、ご一緒した学者の方が指摘していたように自分が無事であることを前提にしている点だ。同時に強く感じるのは、危機管理ではなく危機対処に関心が偏っているということである。

 経営における危機管理は、危機以前の経営が重要なのである。たとえば自社の被害は軽微であったとしても、売上のほとんどを依存している荷主企業が壊滅的な被害を受ければ経営再建は難しくなる、といった点には気づいていない人が多い。これは平時における経営の基本的な問題だ。平時において経営の基本に忠実であることが最大の危機管理である



高速ツアーバスの規制強化
2013/8/21 更新
 今年のお盆休みは、10日、11日と、17日、18日の土日を絡めて休む人に大別されたのではないだろうか。12日(月)〜16日(金)の通勤電車が、通常よりは混んでいないものの、例年のお盆の時期と比べると乗客の数が多いように感じた。中には9連休という会社もあるだろうが、多くの人は連休といっても土日を含めて5、6日程度だろう。

 土日も関係なく事務所に出て働いている当方にとってはお盆休みもほとんど関係ないのだが、通勤電車の混雑が緩和されるのは有難い。といったことで毎日、新宿の事務所に通っていて、ふと気づいたことがある。それは新宿駅西口にずらりと並んでいた高速バスの少なさである。8月から「新高速乗合バス」になったからだ。

 周知のように従来の高速ツアーバスという業態が7月末で廃止になり、ツアーバス事業者は新たに新高速乗合バス事業者になった。国交省の7月30日の発表によると、新高速乗合バス事業の許認可は49者(43都府県、197路線、721便/日)である。また、新高速乗合バス事業者と運行委託契約を結んで、実際の運行ができる高速乗合バスの管理の受委託の許可事業者が30者である。これまでの高速ツアーバス事業者は2012年9月時点で、企画会社が58社、運行を請け負う貸切バス事業者が228社だったので、大幅に減少したことになる。いわゆる規制強化である。

 今回の規制強化で、これまでお盆休みに高速ツアーバスを利用していた人の中には、不便を感じた人もいるに違いない。だが、規制緩和はただの安売り競争ではない。安全を担保してなおかつ廉価というのが理想である。これはトラック運送業界にも共通する。



再び「書面化」に関して
2013/7/21 更新
 樋口社長が書面化について書かれている。私は書面化が必要だという立場に立っているが、書面化が必要なのはスポット的な受委託である。常用の傭車契約などでは契約書を交わすことが当然で、その場合のスポット的な仕事に関しては基本契約に基づけばよい。問題はスポット的な取引関係しかないケースである。この場合には、仕事を委託する側が依頼書を出すべきだと思う。実際の仕事のやり取りは電話などで行うが、その後、できるだけ速やかに仕事を依頼する側がFAXやメールで依頼書を出す。仕事を受託する側は、受託者欄にサインをして送り返す。あくまで仕事を出す側に書面化を義務づけるべきだと考える。

 スペースの関係で簡略化するが、その都度、実際に以下のような内容の委託・受託書を交わしている利用事業者がいる。参考までに項目のみを列挙する。
 
発注日(年月日)、
荷物の種類(荷物の種類・重量・体積・個数・形状等)、
使用車両(t車・積載重量s・車種)、
必要機材(固縛等)、
台数、
運転者の条件(運転免許の他に運行上で必要な資格名・荷役等の付帯作業等に必要な資格名)、
発地(住所・会社名・電話・担当者名・積込等開始予定時間・出発予定時間)、
着地場所(住所・会社名・電話・担当者名・到着予定時間・荷卸等終了予定時間)、
運賃(円)、
付帯作業等(円)、
高速(有料)道路等利用(インター〜インター間・円)、
諸料金(円)、
消費税(円)、
合計金額(円)、
支払条件(日締め・日支払)、
受託日(年月日)

 なお、実際に出発した時間や荷卸終了時間をドライバーが報告し、待機時間が発生した時には元請事業者が荷主に交渉している(必ずしも対価が支払われるとは限らないが)。



「書面化」に関して
2013/6/21 更新
 国土交通省はこの間、いくつかのパブリックコメントで、様ざまな意見を募集してきた。その中の一つである「書面化」については、パブリックコメントの募集期間を1カ月延長することになった。この募集期間の延長は書面化を実施するかどうかを判断するためではない。書面化を実施するに当たって、書面化の目的や意義などについて、時間をかけて説明をするためのものである。国交省では、これまでも各地で説明してきたが、さらに地方に出かけて行って説明する考えのようだ。

 業界の現状を観ると、大手荷主は委託事業者と契約書をちゃんと交わしている。それは当然で、キチンとした企業であればコンプライアンスなどには充分な対応をしているからだ。それに対して、全体的にみると業界内の元請、下請け、孫請け、曾孫請けといった関係において、契約内容が曖昧なままで取引されているケースが多い。この多層構造が抱える問題点を改善するための方法の一つとして書面化が重要なのである。

 多層構造でも専属傭車などの取引なら、契約書を交わしているのが当然である。もし契約書もなく恒常的な取引をしているならば、それは論外といわざるを得ない。したがって書面化の主たる対象はスポット傭車である。スポット的な取引でも、委託と受託の取引内容を文書として残す。このような基本的なところから取引の正常化が始まる。

 現実にスポット取引でも委託と受託、仕事の内容と運賃・料金などを1件ずつ文書で交わしている利用事業者もいる。そのような事業者は書面化を業界全体で行うようにならないと、業界は良くならないと話している。



物流業界と非関税障壁
2013/5/21 更新
 最近、TPPが物流に及ぼす影響などについて、いくつかの媒体から問い合わせがあった。なかには他の省庁に比べると国交省は反応が鈍いのではないか、といった質問もある。経産省や農水省などは管轄している産業に直接的な影響が予想されるので、プラス、マイナス両面からの影響度や対応策などが大きな政策課題の一つになってくる。それに対して物流は、関税撤廃という点では直接的な影響を受けることが少ない。自社が取引している荷主企業や荷主産業がどのようになるか、という間接的な影響である。

 だが、関税撤廃では間接的な影響であっても、物流業界においては非関税障壁の撤廃という面からの影響を予測し、対応策を考えておくことが重要だろう。物流業界における非関税障壁とは、許認可など事業に関わる規制と、車両などハード的な面での規制である。このうち事業の許認可に関する非関税障壁がどのようになるかは、将来の業界構造の変化につながってくる。また、個々の企業にとっては、経営や事業のあり方をどうするか、という企業戦略の問題だ。物流の国際化がさらに進むなかで、どのような事業展開をしていくか、である。そのような点では、たしかに物流業界のTPPに対する反応は鈍いといえる。取引している荷主がどうなるかという間接的影響については関心があっても、自分たち自身への直接的影響という関心は全体的に低いように感じられる。

 しかし、これは物流業界に限らない。関税撤廃の是非については議論されるが、TPPにともなって非関税障壁がどのようになるかについての関心は全体的に低い。非関税障壁撤廃の方が、これからの日本の社会におよぼす影響がはるかに大きいと思うのだが…。



BtoC-ECの「送料無料」と「当日配送」
2013/4/21 更新
 齊藤先生、樋口社長も書いているので、三度、ネット通販と物流についてである。「送料無料」といっても、たいがいのユーザーは購入価格に含まれていると解している。だが物流事業者からすれば、配送にはコストがかからないと思われては困るということである。

 もちろん宅配便事業者が値下げ要請で苦しんでいるのは事実だ。それだけではなく実質的に配送料を負担しているモールへの出店者も、手数料が高いために不満を募らせている。そこで、BtoC-EC物流を専門とする独立系物流事業者へのニーズが高まりつつある。

 一方、大手BtoC-ECの一部では独自に宅配事業者を育てようとしている。関係者の話によると、物流拠点ではもはや1円〜3円という単位でしかコスト削減できないが(大物商品を除く)、配送コストはまだ数10円単位でのコストダウンが可能と考えているからだ。

 「当日配送」では、当日配送のニーズなど少ない。一番の目的はキャンセル率を下げたい大手BtoC-ECの都合である。樋口社長がアメリカの例を紹介している。あくまで推測だが、ネット上で受注しても仮受注に留めておき、キャンセル発生率の高い期間を過ぎてから正式受注にすることで、キャンセル処理に要するコストを削減しているものと思われる。

 ところが日本では、BtoC-ECが勢力を増す以前から、宅配便事業者が翌日配送をドメスティック・スタンダードにしていた。そこで、いまさらリードタイムを長くすることはできないため、キャンセルされる前に届けてしまうという選択肢しかないという事情もある。

 その結果、逆に宅配便事業者は当日配送体制を早急に構築しないと、BtoC-ECという有望市場から見放されてしまうかも知れない状況になってきた。皮肉な巡り合わせといえる。



BtoC-ECによる流通構造の変化と物流
2013/3/21 更新
 前回に続いてBtoC-EC(ネット通販)と物流についてである。取材を進めていくと、ネット通販の物流動向が物流業界に与える影響は、当初の予想をはるかに超えて大きくなりそうだ。また、ネット通販の売上が拡大すると流通構造も大きく変わってくる。

 たとえば消費財のメーカーなどでは、従来の流通チャネルだけでなく、ネット通販に力を入れていく方向にある。国内市場の縮小が進行すれば、従来の流通チャネルによる販売は自然減少が避けられない。そこでダイレクト販売に注力することになる。もちろん国内市場が縮小すればこれまでの流通チャネルによる販売と、ネット通販による販売を合計しても、売上が自然減少する可能性がある(ネット通販の分野で競合他社よりもシェアを拡大すれば別だが)。だが、問屋や小売店を通さないのでダイレクト販売は利益幅が大きい。

 消費財のメーカーは、現在でも大手のショッピングモールに出店している。だが、大手のBtoC-ECに頼らず独自サイトを強化しようとしている。それに併せてネット販売商品の物流も独自に構築(物流事業者の通販物流システムのカスタマイズ化)しようという動きが水面下で進んでいる。当初は従来の流通チャネルの物流と、ネット通販の物流が2本立てになるが、いずれは前者を後者の物流システムに統合しようという動きも一部では始まっている。通販物流でピース・ピッキングや宅配ができるセンター運営事業者なら、ケース・ピッキングと店舗配送は容易だからだ。その逆のケースでは少し時間がかかる。そうなると従来の流通チャネルで物流業務を受託していた事業者には大きな打撃になる。

 このような動きが水面下で進行しており、物流の変化に加速がついている観がある。



にわかに慌ただしくなってきた川下物流
2013/2/21 更新
 経済産業省の産業構造審議会(流通部会)の配布資料(2012年4月27日)をみると、1店舗当たりの平均売場面積が大きく、店舗数の少ない小売業態が苦戦しているようだ。それに対して1店舗当たりの平均売場面積が小さく、店舗数の多い小売業態が業績面で健闘しているという傾向が読み取れる。これは小売業におけるリーディング業態の推移をも暗示しているなと受け止めた。百貨店から量販店へ、そして現在はコンビニである。

 そのようなトレンドから、今後はネット通販(BtoC-EC)の市場がますます拡大していくだろうと思われる。ネット通販における「店舗」は、インターネットへの接続可能なPCの総てといえる。これはものすごい「店舗」数である。しかも「売場面積」はディスプレイの大きさなのだから極小だ。さらに販売商品のアイテム数は無限大といってもよい。したがって、いずれはネット通販が小売業におけるリーディング業態になる可能性がある。

 ネット通販の大手企業は、現在、物流のインソーシング化を進めている。物流拠点を独自に構築し、その拠点のエリア内では当日配送にするという動きだ。取扱商品は無限大なので、現在は宅配便で届けているような小口の商品だけでなく、2マン配送や納品先でセッティングが伴うような総ての商品を対象にしている。それに対して、ネット通販の第2グループは物流面でのアライアンスによって大手に対抗しようとしている。

 宅配便事業者などは、このような流れに対抗(対応)できるサービス体制への再構築が迫られてきた。川下物流の業界がにわかに慌ただしくなってきた理由である。そのような視点から最近の各社の動向を分析すると、10年後の川下物流の姿が見えてくる。



名脇役としての誇りをもつ
2013/1/21 更新
 物流は裏方であり地味である。これは業種としての特性であり、善し悪しの問題ではない。表舞台に出ようとするよりも、縁の下の力持ちに徹すれば良いのではないだろうか。

 映画や演劇などでも脚光を浴びるのは主役である。しかし、脇役の存在なくして主役は引き立たない。一方、脇役が主役になろうと努力しても、不可能とは言わないまでもかなり難しい。人にはそれぞれの適役があるからだ。自らの特徴を知ることで、自己を最大限に発揮できる役柄に徹し、脇役なら名脇役と評価されるようになれば良いのである。

 何かで読んだことがあるのだが、野球選手で守備の名プレイヤーと評されている人は、ファインプレイが少ないそうだ。並みの選手ならギリギリでやっと追い付いて捕球し、間一髪でアウトにするようなファインプレイでも、名選手は楽々とさばいて余裕を持ってアウトにしてしまうからだという。いわゆる玄人好みの選手ということになる。ファインプレイが多い選手は、一見、華やかである。それに対して名選手は素人目には地味に映る。

 物流業界はスポットの当たらない役割を果たしている。つまり地味な脇役である。これは業種としての性格上の特性であり、業界や業界経営者の責任ではない。そこで、国民生活と日本経済を主役とし、その主役を引き立たせる名脇役に徹するべきだろうと思う。

 そのためには何が必要か。経営者が自分たちの社会的な役割と、それを担っている自社に誇りを持つことである。外部要因に責任転嫁し、行政がバックアップしてくれないなどと嘆いてばかりいるような経営者の下で、社員が誇りを持って働けるはずがない。まず経営者が、誇りを持った言動をするようになること。そうすれば時間はかかるかもしれないが、「玄人技」を見抜く力量を持った人材が集まってくるようになる、と楽観している。



プラットフォームを考える
2012/12/21 更新
 一部のコントラクト・キャリアの人たちがプラットフォームという表現をするようになったのは、10年ぐらい前からと記憶している。コモン・キャリアにとってはプラットフォームは不可欠である。それに対してコントラクト・キャリアは特定顧客にオーダーメイドのサービスを提供してきたが、それだけでは高い収益性が見込めなくなってきた。そこで複数の荷主(多数ではない)に対して、パターンメイド化したサービスを提供し、収益性の向上を図るためのシステムや物理的基盤をプラットフォームと呼ぶようになった。だが、プラットフォームに定義はなく、実態は各社各様の概念である。

 ある事業者の物流センターは、主たる営業エリアが異なる県内の食品ローカルスーパー5社の共通センターだ。定番商品は一番安く仕入れているスーパーに仕入れ窓口を一本化する。窓口のスーパーはバイイング・パワーが増してさらに安く仕入れられるようになる。5社の在庫もセンター内の相互融通で、トータル在庫量を削減する。1社でヒットしたPB商品は、5社共通のPBにする。そして事業者は商品開発にも協力して産地調査などもするし、店舗条件によって宅配サービスも行う。店舗配送もカテゴリー別仕分けや通路別仕分けなど柔軟な対応をしている。

 これはナショナルチェーンに対抗する、荷主5社と事業者によるアライアンスで、物流センターはその戦略的プラットフォームという位置づけだ。事業の拡がりでは他県の隣接エリアを基盤にしているローカルスーパーなら理論上は可能だが、事業者の収益向上のためのプラットフォームという点からは、配送距離など採算性も重要なファクターになる。



何に対して一生懸命かが重要
2012/11/21 更新
 齊藤教授が、経営者が何をしなければならないかを突き詰めていくと「身を粉にして働いて精一杯頑張ること」に行きつくと書かれている。それに対して樋口社長が、基本を知った上で自社のなすべきことを徹底的に考える。それが自分なりの答えと書かれた。

 取材を通して感じるのは、本当に精一杯頑張っている経営者と、頑張っているつもりの経営者がいる、ということである。そして後者は自分の努力が報われないと嘆き、責任を経営環境や事業条件に転嫁するという傾向が観られる。たしかに一生懸命に努力しているのだが、何に対してどのように努力すべきかが分かっていない、という共通点もある。

 東日本大震災で社屋とほとんどの車両を失いながら、半年後には80%程度まで回復した事業者がいる。その経営者が「内部留保を持っていないと再建は難しい」と言っていたので、失礼ながら地方の中小事業者にそのような経営ができるのかを取材したいと現地を訪ねた。被災前にどのような事業展開をしていたかなどを詳しく聞いた結果、これなら財務内容も良く、内部留保が持てるだけの収益性があると納得できた。それは特別なことではなく、トラック運送事業者としての経営の基本に忠実だったからである。

 震災後にBCPを策定した中小事業者は、コンサルタントから月末に1カ月分の流動資金を持てるような経営にすることを強調されたという。この経営者は、先の被災事業者についての筆者のリポートを読んでいた。そして、リポートに書いてあったように最大の危機管理は経営の基本に忠実であることだと、BCP策定を通して実感したという。

 つまり、平時でも非常時でも経営者に求められるのは「基本を知った上で」(樋口社長)、「精一杯頑張ること」(齊藤教授)というのが今月の結論のようだ。なお、なぜ筆者が毎月下旬に当ブログを担当するかといえば「後出しジャンケン」が有利だから? でもある。



ガラパゴス化とグローバル化の狭間
2012/10/21 更新
 樋口社長が「オーバースペック」と「原価以上の収入を得る問題」はともに中小企業には悩ましい問題と書かれ、物流サービスの「ガラパゴス化」も指摘している。

 日本の物流事業者も海外に積極的に進出すべき、という意見もある。海外進出については様ざまな考え方があるが、実際にいち早くアジアに進出して成功している事業者もいる。ところで自社の強みは「365日24時間稼働で1日3回配送」とEUなどで営業展開したらどうだろうか? おそらく「深夜に配送などされたら困る。なぜそんな必要があるのか」と不思議に思われるのではないだろうか。まさに物流サービスのガラパゴス化である。

 このように荷主の物流に対する要請は、国際的にみたらオーバースペックといえる。だが、国内でしか通用しない荷主ニーズでも、事業者は仕事を請けるためには対応せざるを得ないという形で、物流サービスのガラパゴス化が進行してきた。

 一方、物流サービスに対する対価はどうか。ガラパゴス化した物流サービスを提供するには相応のコストがかかる。だが、それに見合う対価が支払われているとは言い難い。これをマクロ的にみると、荷主はガラパゴス化した物流サービスを求めながら、物流コストは国際競争に勝ち残れるような水準に抑える、という構造なのである。この矛盾のシワ寄せが物流事業者にきており、さらに現場で働く人たちの労働条件の悪化につながっている。

 しかし、日本社会の構造をどう変えるべきか以前に、経営は現状を踏まえた具体的なものである。どのような状況下にあっても、勝ち残っていかなければならない。原価を上回る収入を得るにはどうすべきかを考え、実行していかなければならない所以である。



中小トラック運送事業者の疲弊
2012/9/21 更新
 中小企業金融円滑化法が来年3月末で終わる。問題の先送りに過ぎず、むしろ事態を悪化させるだけと、そもそも評判の良くない法律だし、おそらくこれ以上の延長はないだろうと思われる。すると業種に限らず同法の適用を受けている企業の相当数が、経営破綻するだろうと予想されている。すでに今秋から倒産などが増えてくる、という見方もある。

 トラック運送業界でも、水面下で大手・中堅事業者に助けを求める中小事業者が増えてきている。筆者にも、何台規模の某社が来月に資金ショートする云々、といった話が入ってくることがある。これまでの経験では、それらの情報はほとんど当たっている。だが、大手・中堅事業者が傘下におさめれば倒産はしない。また、社名や社長もそのままで事業を続けさせるようなケースでは、表面的には分からないのである。

 先日あるところで、燃料代を現金で早く支払っている事業者ほど高い価格で買っているという話になった。信用度が低いためにスタンドで現金買いするしかないからである。一般的には支払いサイトが長い方が単価が高くなるのが普通だ。しかし、手形が発行できるような事業者は信用があるので、燃料単価も安いという傾向があるのだという話だった。これでは毎日、企業間格差の拡大が進行していることになる。

 車両の代替えも同様で、代替えしたくてもできない事業者もいるようだ。金融機関からの借り入れはもとより、リース契約すらできないような経営状態にまで陥っている事業者である。こうなると経営者が何とか金を工面してきて、現金払いで中古車に代替えするしかない。中小事業者の一部では疲弊が進んでおり、業界構造の変化が予想される。



業界の一般「常識」と調査結果と現実と
2012/8/21 更新
 全ト協の「小規模事業者の経営実態に関する調査」によると、保有台数10両以下の小規模事業者(n=667)でも67.6%が荷主と直接取引あり、と回答している。荷主と直接取引をしている小規模事業者は少なく、大部分の小規模事業者は同業者からの下請け、孫請け仕事というのが業界の一般的な「常識」であった。しかし、同調査結果をみる限り、その「常識」が必ずしも正しいものではなかった、といわざるを得ない。

 また、60.2%が見積りをだして取引先と運賃交渉できる、と回答している。交渉しした結果、契約運賃がいくらで決まるかは別として、見積りを出せるということは原価計算ができることを意味している。中小事業者には原価計算すらできない経営者が多いといわれてきたが、この「常識」も正しかったとはいえないような調査結果だ。

 実は、中小企業であっても原価計算ができないような経営者はいない。経営者なら、この仕事をいくらで請けたらどのくらい儲かる、ということは頭の中で瞬時に計算できる。ただ厳密な原価計算ではなく、また厳密な計算の仕方は知らなかったとしても、経験的に計算できるのである。そうでなければ経営などできない。もっとも、それを「どんぶり勘定」といわれればそれまでだが、ともかく経験的ではあっても原価計算はできるのである。

 問題は赤字と分かっていながら、なぜ仕事を請けるのかという点にある。それは原価を上回る収入を得るにはどのようにしたら良いかが分からない経営者が圧倒的に多いからだ。したがって、厳密な原価計算の仕方と同時に、原価を上回る収入を得るにはどうするかという研修も必要なのである。原価計算が正確にできるだけでは経営は改善できない。



倉庫・トラック両派の長所の体得が高利益に
2012/7/21 更新
 またまた樋口社長が「倉庫派vsトラック派からの脱却」について書いている。運送からスタートして倉庫にも進出し、それぞれの利益の出し方の違いを学んだこれまでの変遷をたどりながら、現在の課題と今後の展開について示唆している。簡単にいえば、倉庫派とトラック派という発想ではなく、両派のノウハウを体得して有機的に組み合せることで収益性の高い企業を目指そうとしているのだな、と読み取れた。しかも、それを実現していく上で重要なポイントは、現場における小集団活動と認識されているようだ。

 筆者は前回の当欄で「『倉庫派vsトラック派』ノウハウの違い」を書いた。樋口社長のブログは、あたかもそれに対する同社としての回答のようである。高利益を実現している事業者の秘訣は、簡単にいうと倉庫派とトラック派それぞれのノウハウを取り入れて、独自の現場力を構築している点にある。

 樋口社長の前の回の当ブログで、齊藤教授がハマキョウレックスの5期連続最高益の秘訣に触れていたが、実は同社の高収益のポイントは正にここにあるといっても過言ではない。センター内作業におけるローコストオペレーションと配送車両の効率的オペレーションの組み合わせである。とくに同社のビジネスモデルでみると、センター内におけるパート労働者の労働生産性の高さが高収益の一番のポイントであると筆者はみている。これは必ずしも時給などのインセンティブではない。従業員のモチベーションをアップして、潜在的な能力を自ら発揮するような仕組みづくりに長けているのだ。

 倉庫派であれトラック派であれ、物流業は強い現場力が利益を生み出す源泉である。



「倉庫派vsトラック派」ノウハウの違い
2012/6/21 更新
 齊藤教授、樋口社長と「倉庫派vsトラック派」について書いている。そこで樋口社長の「亜種」を受けて、亜種ではない正統派? の倉庫派とトラック派の差異について書くことにした。両派とも生業に一所懸命に取り組んでいる事業者についてである。

 倉庫派もトラック派も事業領域としては接近している。倉庫業者もトラック運送業を行っているし(子会社化している場合も含めて)、トラック運送事業者も倉庫業に参入したり、物流センターを運営したりしている。このように両者とも事業領域としてはほとんど変わらない。しかも、進んだ業態の事業者はいずれも倉庫や物流センターを核として、受発注代行、保管や流通加工などの庫内作業から輸配送までの一貫した業務を受託している。

 このように同じような業務を行っていて、優れた事業者はいずれも適正な利益を出しているのだが、倉庫派とトラック派では利益の源泉ともいうべきノウハウに微妙な違いが見られるのだ。倉庫から出発しているか、トラック輸送からスタートしたのか、つまり同じような業態にはなっていても、出自の違いがそのまま現在のノウハウに反映している。

 倉庫派は倉庫(または物流センター)という経営資源の活かし方に優れており、その部分で他社よりも多くの利益を生み出す術に秀でている。それに対してトラック派は、倉庫(同前)からの輸配送を得意としており、他社よりも利益を多く生み出せるような効率的な車両オペレーションのノウハウを持っている。これは倉庫派もトラック派も高いレベルでの差異であり、一見、違いが分からない。どちらも優れた事業者なのである。しかし、現場の業務の仕組みを深く取材していくと、倉庫派とトラック派の特徴が見えてくる。



ツアーバス事故はトラック運送業界にも共通
2012/5/21 更新
 大型連休のスタートから関越自動車道でツアーバスによる悲惨な事故が発生した。

 この事故はツアーバス業界の構造的な問題点を象徴するような事故である。ツアーを企画する旅行業者→バス運行仲介業者→バス運行元請け会社→下請けバス運行会社という多層構造。また、実際にバスを運行する会社の安全管理、運行管理、雇用形態や雇用条件、そして名義貸し…。さらに旅行会社の管轄が観光庁で、バス運行会社は自動車局という縦割り行政の問題も浮き彫りにした。そして旅行会社の格安料金は、最終的には運転者の雇用や労働条件にシワ寄せすることで成り立っている、という実態も曝け出したのである。

 これはトラック運送業界にも共通している。筆者は第一種利用運送(貨物利用運送事業法)や貨物自動車利用運送(貨物自動車運送事業法)は、「安全管理やコンプライアンスに問題のない営業用トラックを利用して貨物を運ばせることができる」と規定すべきだと主張してきた。自家用トラックを利用すれば違法だが、それに準拠するような考え方である。そして実運送事業者が重大事故などを起こした場合、安全管理やコンプライアンスが主たる原因であれば、その事業者を利用して運ばせた側にも責任が及ぶようにすべきだ。

 このようにすれば、参入障壁(最低保有台数)を高くしたりしないでビジネスチャンスをできるだけ公平に与えても、安全管理やコンプライアンスに問題のある事業者には仕事が行かなくなるので淘汰されていく。また、実運送事業者にとっては、市場の商取引を通してコンプライアンス・コストを賄って事業を再生産できる運賃水準が形成されるようになる。これなら規制強化ではなく、コンプライアンスの徹底なので異論は出ないはずだ。



ごく僅かだが情けない実態も否定できない
2012/4/21 更新
 先日、事務所の近くを走っているトラックをみて唖然とした。旅客・貨物を問わず、運輸企業にとって安全は至上課題である。それなのに、このトラックを保有している事業者は、どのような社員教育をしているのだろうかと驚いてしまった。

 一見したところトラックの大きさは1.5tないしは2tの平ボディ車であった。そのトラックが後ろのあおりを下ろしたまま走っていたのである。ボディの前から3分の1ぐらいにブルー・シートがかけてあった。おそらくシートがかかっている部分に荷物が積んであったものと思われる。荷物の積んでいないスペースには台車が載せてある。たたんで裏返しにしてあるならまだしも、荷物を載せれば運べるような状態のままだった。

 そのトラックの後ろには乗用車が何台か続いていた。もし、ブレーキをかけたはずみで台車が後ろに転がって落ちたりしたら、後続の車が事故に遭う可能性がある。このトラックのドライバーは、そんな単純で基本的なことすら分かっていないのだろうか。そこで瞬間的に運送会社の社名を判読したのだが、会社名は公表はしないことにする。

 荷物を積んでいるのに、しかも台車をそのまま載せた状態で、後ろのあおりを下げたままで車を走らせれば危険だという程度のことは、誰にでもわかることだ。これは教育以前の、ドライバーの基本的資質の問題かもしれない。しかし、運送を生業としている会社でありながら、安全に対する初歩的なドライバー教育すらしていないという実態も現している。そのような事業者はごく僅かかも知れないが、実に情けない。

 安全は初歩的で基本的な動作を忠実に実行することから始まる。



「単に経験した」だけでは通用しない時代に
2012/3/21 更新
  樋口社長が直前のブログで、ベティー・キルドウ氏の言葉として「経験から学んだ」と「単に経験した」だけについて書かれている。同氏は樋口社長が翻訳出版した本の著者で、「日本語版に寄せて」の中の一文である。

 たしかに、経験から学んだことをその後の経営に活かすのではなく、単に経験しただけという経営者がトラック運送業界には多くみられる。それはなぜか? 

 これまでは単に経験しただけでも経営がそれなりに維持できていたからではないだろうか。経験から学ぶのはもっぱら荷主企業であった。荷主が経験の教訓を活かして物流システムを変え、今度はこのような仕組みで作業しなさいと指示されれば、事業者はそれに忠実に従っているだけでも良かった。だから自分が経験から学ぶ必要がなかったのである。

 ところが、これからは違う。東日本大震災の経験から荷主企業が学んだことの一つにサプライチェーンがある。その教訓から、今後はサプライチェーンの見直しが進んでいくだろう。もちろんサプライチェーンといえば一義的には原材料や部品調達の方法などであり、その再検討である。しかし、サプライチェーンを敷衍すれば、二義的には物流部門での事業者の見直しも、下請け関係などの多層構造も含めて検討課題になってくるはずだ。そうすると危機管理などの対策ができていない事業者は取引再検討の対象になってくる。

 東日本大震災の「経験から学んだ」教訓を活かして、当社なら非常時でもこのように対応できる、という体制を構築したような事業者が荷主企業から選ばれることになる。ただ「単に経験した」だけで、相変わらず指示待ちでは通用しない時代になってくる。



平均時速56q/h×12時間/日×30日=?!
2012/2/21 更新
 小生のところには全国の運送事業者からメールや電話が入ってくる。どこの地方かは割愛するが、ある中小事業者の話はエッ! と驚くような内容だった。この事業者は自車両の他に同業者に仕事を出しているのだが、傭車先との取り引きを止めたという話である。

 ある荷物の輸送先は距離的に3日運行である。したがって同じドライバーが4日目に集荷に来るなら不思議ではないが3日目に集荷にきた。そこで疑問に思ってそのドライバーからいろいろ聞き出したところ、1カ月の走行距離がなんと2万q以上という実態なのだという。すると平均走行速度56q/hで1日12時間ハンドルを握り、1カ月30日間休みなしで働いたとして約2万qということになる。運転時間以外にも荷積み荷卸の作業時間があり、食事もとらなければならない。休憩や休息は、と考えると恐ろしい。この事業者は、とてもそのような事業者に仕事を頼むわけにはいかない、と取引を止めたという。

 また、ある傭車先から、依頼したよりも小さい車両で集荷にきた。荷物を積む前に過積載になることが明らかなのに、荷物を積ませることはできない。そこで、その傭車先の社長に電話をすると、その車両でも積めます、大丈夫ですから荷物を出して下さい、と懇願されたという。この傭車先に対しても仕事は依頼できないと断ったという話だった。

 あきれるような話はまだまだ続くのだが、このような実態を切々と訴えてきた。そして最後に、どこも信用できないから小生に電話した、業界の現状を何とかしてくれという。だが、当方にそんな力などあろうはずがない。そこで機会があったらしかるべき場で行政関係者などに話をしましょう、ということにしたのだが……、如何ともしがたい。



ムダな費用の出費か、有効な設備投資か
2012/1/21 更新
 国交省は「トラックにおける運行記録計の装着義務付け対象の拡大のための検討会」で、運行記録計の装着を義務づける対象車両の範囲を拡大する方向で検討を進めている。現在は車両総重量8t以上、最大積載量5t以上のトラックにデジタコの装着が義務づけられている。だが、安全性を向上するために、それ以下の大きさのトラックにも義務づけの範囲を拡げようという趣旨である。ちなみに、欧州では車両総重量3.5t以上のトラックにデジタコの装着が義務づけられているという話を聞いた。

 これに対して、トラック運送業界の一部には義務づけ対象車両の拡大に反対する声もある。デジタコ装着にともなう費用負担が大きい、というのが主な反対理由だ。

 一方、装着が義務づけられている車両は当然だが、対象外の小型の車両にもデジタコを導入している事業者もいる。なかにはデジタコだけでなく、ドライブレコーダーも併せて装着しているケースもある。このような事業者を取材すると、安全性の向上だけではなく、省エネ運転など環境面でも成果を出している。安全にしても環境にしても、経営面からみるとコスト削減という効果につながっている。

 もっとも、これらの機器を装着すれば、それだけで自動的に大きな成果が表れるというものではない。機器はあくまで道具にしか過ぎないからだ。重要なのはその道具をいかに有効に使うかである。どんなに優れた性能をもった機器でも、使いこなせなければただの“物”に過ぎない。 したがって装着のために要する金は、ムダな費用の出費となる。反対にその機器を上手に使うことのできる事業者にとっては、有効な設備投資となる。



実際には「想定外」の連続が日常なのである
2011/12/21 更新
 今年最後のブログである。この「業界人ブログ」は1月から始まったので、1年が経ったことになる。スタート時には、まさか東日本大震災が起きるなどとは夢想だにしなかった。まさに「想定外」である。地震と津波にともなう原発事故も、不安を完全には払しょくできないという一抹の危惧は抱きつつ、まさか現実になるとは思ってもいなかった。その他の自然災害なども含めて、今年は「想定外」に見舞われた1年といえる。

 そこで「想定外」という言葉が頻繁に使われたのだが、よく考えてみると、現実の日常は「想定外」の連続なのではないかと気づいた。自然現象はもとより、企業活動も、人びとの毎日の営みも、ことの大きさに違いはあるが、実際には絶えず「想定外」の連続なのである。小さな「想定外」のできごとなら、影響も少ないのでさほどの苦労もなく対処しているだけに過ぎない。我われはそのようなことをごく自然に繰り返しているのである。

 これは企業活動においても同様で、「想定外」が全くないとしたら、経営計画通りに総てが進み、何の苦労もないことになる。間違った計画を立てたのなら実現できないのは当然だが、正しく計画しても実現するのが大変なのは、絶えず「想定外」に遭遇しているからである。そのつど「想定外」に対応しながら計画を実現するために努力しているのだ。

 したがって、「想定外」に直面したとき、いかに速やかに的確に解決策を打ち出して対応できるかが重要になる。ただ「想定外」の大きさによって、どのレベルで判断するかが違ってくるし、対応の規模も異なってくるだけである。このように考えてくると、平時、非常時に関わらず、企業経営の基本に忠実であるか否かに行きつくのではないだろうか。



参入規制(最低保有台数)も非関税障壁!?
2011/11/21 更新
 野田総理がTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)への実質的な交渉参加を表明した。TPP加盟で大きなダメージが予想される農業団体は強固に反対している。だが、影響が予想されるのは農業だけではない。たとえば医療分野では自由診療に道を開き、国民皆保険制度の崩壊につながるという意見もある。このような危惧を敷衍すれば、すでに制度疲労している年金制度などは、401Kに取って代られるかも知れない。労働市場では外国人労働者の流入に道を開き、ホワイトカラー・エグゼンプション(労働時間規制適用免除制度)の導入も予想される。このようにTPP加盟は日本の社会構造を大きく変えることになる。

 トラック運送業界はどうか。「トラックビジョン」の中間整理では、トラック運送事業者がアジアなどに進出する必要性に言及している。反対にTPP加盟で海外の運送事業者が日本に進出する可能性もあり得る。韓国はFTA(自由貿易協定)を選択したが、たとえば関釜フェリーなら荷物を積んだトラックの日本上陸は可能で、実際、過去にそのような話があったと聞く。あるいは外国の運送会社が日本に進出する場合、非関税障壁は参入規制(最低保有台数)ということになる。これらの課題も将来は俎上に上ることが予想される。

 一方、グローバル化は時代の趨勢であり、日本の将来を見すえるとグローバル化に対応しなければならない。問題はいかに対応するかであろう。その際に重要なのは、グローバル化=アメリカ化ではない、という視点である。だが、どのような方法でグローバル化に対応しようとも、国内だけで仕事をしているトラック運送事業者も影響が避けられない。国家百年の計とはいわないが、せめてトラック運送業界十年の計の視野が必要だ。



輸送キャリアという方向もある
2011/10/21 更新
 今月の当欄では、齊藤教授が物流事業者と荷主企業との交流の場が日本にはないと書かれ、それを受ける形で樋口社長は、全ト協の事業者大会の実感なども踏まえて、輸送という単独サービスは基本的に下請け契約しかないのではないか、と書かれている。そこで今回は「輸送キャリア」という業態と取引関係について私見を述べることにした。

 部品産業をみると、メーカーが示したスペック通りに製造・納品している部品メーカーが圧倒的に多い。典型的な下請けで、資本関係がなくても実質的には特定メーカーの系列下にある。しかし、あるパーツに関して独自の製品をもっている企業も一部にはある。このような独立系の企業は、どのメーカーとも取引きしている。そして発注者と受注者という立場の違いはあるが、契約は対等であり上下関係ではない。

 それと同様に、運送という単品サービスだけを提供する「輸送キャリア」という業態はあり得る。ただし、その前提には独自の輸送サービスを提供できるネットワークなり、効率的な車両オペレーションのノウハウやシステムが必要だ。そのような輸送専門の事業者なら、荷主企業と対等に交流することもできるし、契約上では直接的な発注者となる物流事業者との取引も、元請け下請けという上下関係ではなく水平分業関係となる。

 西日本などから東北に運ぶ荷物では、帰り荷がないために、運賃が少し上昇しているようだ。しかし、往きの運賃が上がっても帰り荷を確保できなければ採算が悪くなってしまう。一方、東北でも被災していない地域からの荷物を開拓したり、途中で荷物を中継したり組み合わせたりしている事業者は、東北向けの運賃が上昇した分だけ利益が増えている。



公共交通機関の社会的役割
2011/9/21 更新
 今年は電車との相性が良くない。1月下旬に秋田県横手市に行った時のこと。新幹線で北上に行き、北上線で行く予定が雪のため不通で、秋田新幹線の大曲経由になった。約束の時間に10分程度の遅刻ですんだが問題はその後である。横手から新庄に向かう予定が積雪のため全線不通で、タクシーでの移動になった。ただチケットは東京〜北上〜横手〜新庄で購入していたため、タクシー代(2万9000円強)はJR負担なので助かった。

 次は3月11日である。震災が起きた時は名古屋近郊にいた。名古屋駅までは順調に戻れたが、それからが大変だった。1泊しようといくつかのホテルに電話をしたが、すでに予約でいっぱい。そこで中央線の塩尻経由と考えたが、塩尻〜新宿が不通で開通の見通しがたたない。結局、新幹線に座って待つしかなく、東京まで10時間以上かかった。

 さらに5月には東北地方で、7月には中部地方で在来線の遅れにより、新幹線への乗り継ぎが予定通りにいかなかった。いずれも特別な理由があって遅延したわけではない。

 そして8月、名古屋から津に向かう途中の四日市駅に停車した快速電車がなかなか発車しない。すると「車掌がいないので出発できません。しばらくお待ちください」と運転士が車内放送した。運転士に聞くと前の停車駅の桑名で、車掌が電車から降りたまま発車してしまったという。四日市駅は業務を外部委託しているので対応できず、別の電車で代わりの車掌がくるまで待って下さいとのこと。約束の時間に1時間ほど遅刻してしまった。

 自然災害は如何ともしがたいが、公共交通機関の社会的役割は大きい。これは物流事業者も同様である。



高速無料化と業界の実態
2011/8/21 更新
 水戸ICや白河ICで高速道路を下り、近くでUターンして再び高速に上がるトラックがマスコミで大きく採りあげられている。東日本大震災からの復興を促すための今回の高速道路無料化の趣旨からすると、明らかに目的外利用(一般的に表現すれば悪用)である。中には目的地とは逆方向に走って水戸や白河で1回下りて無料にし、再びそのICから上がって無料として中部や関西あるいは西日本方面などの長距離を走る、といったことが行われているようだ。しかも首都高を避けるために距離的にはかなりの遠回りをしている。

 先日、テレビでUターン車両を追いかけた映像を観ていて驚いた。ナンバーや運送社名は画面から特定できないように処理してあったが、Gマークはハッキリ映っていた。トラック協会ではGマークを宣伝して一般の人たちの認知度を高めようとしている。だが、目的外利用しているGマークトラックが大きく映しだされたのでは逆宣伝になってしまう。

 そのテレビ番組では、Uターンしたトラックの会社にも取材をしていた。管理者らしき人物が対応していたが、そのコメントにガッカリした。このような行為を止めるようドライバーに指導するか、という問いに対して、指導しないと毅然?と答えていた。さらに、その理由が情けない。高速料金はドライバーの個人負担だから、負担を減らそうという行為を会社として止めろと指導するつもりはない、というのだ。しかも堂々と、である。

 たしかにUターン禁止の所でUターンすれば違反になるが、そうでなければ法令や制度違反ではない。だが仕事で高速道路を利用するのに、料金はドライバーに負担させているという説明は、一般の人には理解されないだろう。他産業界の経営者も驚くに違いない。業界内ではそれが珍しくない実態や、恥ずかしいと思わない感覚はやはりおかしい。



物流効率化の追求とリスクヘッジ
2011/7/21 更新
 トラック運送事業者の最近の大きな関心事は、東日本大震災による今後の物流の変化と、BCP(事業継続計画)である。前者は市場の変化予測と対応であり、後者は災害などに遭遇しても会社を存続できるようにする対策だ。経営者としては当然の関心事といえる。

 大企業では以前からBCPを策定していた。しかし、中小企業でBCPを策定している会社は業種・業態に関わらず少ない。東日本大震災という未曽有の事態を体験し、危機的状況に遭遇しても、企業を存続するための計画を策定しておく必要性が実感されたのである。

 東日本大震災を踏まえて、今後、日本の物流はどのように変わるのだろうか、という関心が高まってきたのは5月の連休明け以降である。震災直後の約1カ月間は、多くの事業者が荷主からの緊急輸送要請などへの対応に忙殺された。4月中旬になると緊急体制も定着し、作業的にはルーティン化した。そして大型連休中に、大震災を受けて今後の日本の物流はどのように変化するのだろうか、と多くの経営者が考えるようになったのである。

 大震災を踏まえた今後の変化では、基本は従来と変わらない。近年の日本経済はグローバル化と国内市場の縮小が同時進行してきた。それに沿って物流も変化してきた。このトレンドは今後も変わらない。大震災による変化は、その流れを加速するという点である。

 もう一つ重要な視点は、グローバル化と国内市場の縮小に対応する荷主企業のビヘイビアにおいて、常に利益(費用対効果や物流効率化)が追求されるということである。物流効率化という普遍的なテーマに、リスクヘッジという要素が従来以上のウエイトで加わるようになった。このようなフレームの中で、自社の荷主の変化を予測することが重要だ。



サプライチェーンと運送業界の下請け構造
2011/6/21 更新
 経団連は大震災からの復興を目指して「復興・創生マスタープラン」を策定した。その中で「サプライチェーンの再構築」について触れている。部品産業に被害が発生し、生産活動に影響が出たことを踏まえ、サプライチェーンの再構築が必要になったからだ。

 ひるがえってトラック運送業界を見ると、多層な下請け構造は部品産業と共通性がある。ある事業者は、地震発生の情報をキャッチすると素早く、東北地方の太平洋側にいる車両のドライバーに、トラックから離れて高台に避難するように指示を出した。そのため人的な被害は最小限にとどめることができたという。一方、同様の指示をドライバーまで伝えられなかった事業者がある。前者は自車両だが、後者は総て傭車だからである。協力会社には指示を出せても、2次、3次それより先の下請け事業者には直接、指示することができない。荷物の被害状況の把握など、荷主に対する元請けとしての対応にも差がでる。

 製造業における部品の供給連鎖と、運送業における下請の多層構造には、需要波動の緩衝や、コストダウンという点で共通性がある。しかし、決定的な違いもある。部品製造ではどれだけ下請けの連鎖が長くなっても、発注者が示したスペック通りに部品を製造できなければ取引を解消されてしまい、企業として存続できない。つまり検収によって品質が担保されている。それに対して、運送業は生産過程が同時に消費過程(生産的)という特殊性もあり、生産から消費までの間で品質をチェックすることができない。だから運送業における品質保証としては客観的品質が重要になる。運輸業におけるサプライチェーンの見直しという観点からも、Gマークやグリーン経営などを位置づけることが必要だ。



運送事業者的な支援の一方法
2011/5/21 更新
 東日本大震災では大きなダメージを受けたトラック運送事業者も多い。同業者の立場からの支援の一つとして、定期的な車両代替え時に、通常なら下取りに出す車両を被災した事業者に低価格で融通するという方法がある。

 トラック運送会社のコア事業は、あらためて言うまでもなく運送業務である。そしてコア事業を行うための最も重要な経営資源はトラックだ。ところが、そのトラックを失ってしまった事業者がいる。新車のトラックはもとより、中古トラックでも入手が困難になっている。さらに、求めているような中古トラックがあったとしても価格が上昇している。それでは被災した事業者が、努力して事業を再興しようとしても難しい。

 そこで、被害を受けなかった事業者が代替え時に、下取りに出さずに車両を融通するような仕組みを業界内でつくったらどうか。業界の実態からすると、下取り金額も資金計画に入れなければ代替えができない、という事業者も少なくないだろう。そのような事業者は、ディーラーの下取りの見積り金額と同額で融通すればよい。それなら融通する事業者は資金計画通りだし、融通してもらう事業者は中間マージンがないのだから助かる。また、多少でも余裕のある事業者なら、下取りの見積り金額の何%オフまでなら協力・支援できるかを各社がそれぞれに考えて、できるだけ安く融通すればその方がよい。

 その際に支払の仕組みが重要になる。車両を融通する側には全額を、融通してもらう側は分割払にしなければ現実的な支援にならない。そこでトラック協会がコーディネーターになり、金融機関などの協力も得て事業者同士の相互支援の仕組みを構築するのである。



ロジスティクス的発想の重要性
2011/4/21 更新
 東日本大震災は広域にわたって甚大な被害をもたらした。お亡くなりになられた方々のご冥福をお祈りします。また、被災された皆様にはお見舞い申し上げます。

 今回の大震災では物流の役割や重要性が広く認識されるようになった。避難所に救援物資が届かない。被害のなかった地方でも一部の商品が品薄状態となり、物不足の状況を呈した。ガソリンや軽油などの石油製品も円滑な供給に支障がでた。さらに製造業や流通業におけるサプライチェーンの問題点なども浮き彫りになった。このようなことからマスコミも物流に注目したが、なかには不遜な振る舞いもあった。当欄とリンクしている樋口社長の社長ブログ(3月15日)に書かれている日テレ「スッキリ!」のディレクターを紹介したのは小生でありご迷惑をおかけした。テレビや雑誌では過去に何度か苦い経験があるので、それ以後は取材コンセプトを確認して協力するかどうかを判断するようにしている。今回は大丈夫と思ったのだが甘かった。お詫びするとともに反省する。

 ともかく物流が注目されたことはまぎれもない事実である。だが、実は明らかになったのは単に物流なのではない。もちろん物資の供給など直接的には物流の問題であるが、より本質的な問題はロジスティクス的発想の欠如である。避難民の移送や施設の確保、医療品や生活物資の補給、救助隊の投入や復旧作業に必要な機材の輸送など、インフラが崩壊した状況の中で、どこにベースを構築して大量輸送するか、さらにその先の補給態勢をどうするかなど、燃料の確保と供給も含めて、人も物も総合的に対応するのがロジスティクス=兵站である。しかし、政府の今日までの対応をみると、ロジスティクス的な発想が欠如しているように思われる。ロジスティクスに関する研究の必要性を痛感する。



業務効率化による「コストダウン」だけなのか?
2011/3/21 更新
 齊藤教授が書かれているように、関連性のある一連の業務を総合してシステム化すれば、作業の効率性が高まることは言うまでもない。個々の業務を個別に行うよりも、全体の作業がスムースに流れ、生産性が向上してコストダウンになる。それだけなら3PLから業務を受託して作業を遂行する事業者(一般に実運送事業者と表現されている)から、何ら批判は出てこないだろう。しかし、3PLと称する事業者が、はたして効率化によるコストダウンだけで荷主から業務を元請けしているのだろうか? どうも疑問である。

 一方、樋口社長が書かれているように、旅行でもパッケージツアーは安い。だが同じ「○○島3泊4日」でも、出発日によって料金が違う。これは航空会社やホテルなど、実際に顧客を受け入れる側が需給バランスなどを基に価格を設定し、旅行代理店と契約しているからだ。もちろん、厳しい価格交渉はなされているのだろうが、少なくとも実際にサービスを提供する事業者の主張も反映して顧客に提示する料金が決められている。

 つまり、旅行代理店は顧客と実際にサービスを提供する事業者との間に入って、双方の利害を調整する役割を担っている。ユーザーとキャリアの両方のメリットを引きだすという社会的な機能によって、一つの業態として成り立っているのだ。まさに第三者(サードパーティ)であり、そこに旅行代理店が存立する合理的根拠を見出すことができる。

 3PLを標榜する事業者が、実際に業務を遂行する事業者と価格交渉した上で荷主に料金を提示しているかは疑問だ。効率化によるコストダウンは当然であるが、さらに作業単価も一方的に引き下げることで荷主から受注しているのが実態ではないのだろうか。



私的で体験的な3PLについて
2011/2/21 更新
 当ブログが軌道に乗ってきたら、テーマを設定してリレー方式で三者三様に意見を出し合えば面白いと考えていたのだが、すでに2巡目にして自然とそのような形になってきた。そこで極めて私的で体験的な3PLを記すことにしよう。

 若いころからコリ性で、マッサージには頻繁にかかってきた。

ケース1=肩が凝っているので頼むと肩だけ、腰が凝っていると頼むと腰だけのマッサージだった。

ケース2=肩を揉んでほしいと頼んだら、「お客さんの肩コリは腰とも関連しているので両方を揉みましょう」。「そんなことを言われたのは初めて。さすがにプロですね。よろしく頼みます」。「ところでお客さん。10回分の料金で11回できる回数券はいかがです」。「買います」。「では今後はうちの若い者の中からお客さんの担当者を選任しましょう」。

ケース3=料金がかなり高かったが頼んだ。すると「この凝り方はひどい。マッサージ代も大変でしょう」。「1週間に1回ぐらいかかります」。「自分で心がければ軽くなる方法がありますが、良かったら教えましょうか」。「お願します」。「お客さんのコリ方の場合なら、バスタオルをこのようにして、この部分に当てて仰向けで寝るようにすれば2週間ほどで少しずつ効果が出てきます。月に1回程度のマッサージでも大丈夫になりますよ」。それ以来、毎日続けたら確かにその通りになった。

 これは実体験を少しデフォルメした話だが、業界になぞらえるならケース3が3PLであろう。ところがケース2の人たちが3PLと称し、「うちの若い者(下請け)」を安い賃金と劣悪な労働条件で使うことで、1回分お得な回数券の販売を可能にしている。このような構造はずっと以前から続いてきた。ただ最近になって安全管理体制やコンプライアンス・コストの面から問題がクローズアップされるようになってきただけではないかと思う。



年末年始の天候は現在の日本を象徴?
2011/1/21 更新
 年末年始の天候は、あたかも現在の日本の社会・経済構造を象徴しているかのようだった。首都圏は連日、好天に恵まれた。しかし、その他の地方では晴天が長続きせず、それどころか降雪で散々な年初になってしまった地域もあった。テレビの天気予報で全国の天気図をみながら「太陽光線の一極集中」「天候の地域間格差」などと感じた次第である。

 昨年の特徴のひとつは、荷主企業も物流事業者もともに企業間格差が進行したことだった。今年は「陽の当たる」企業とそうでない企業の差がより拡大するだろう。主たる要因はグローバル化と国内市場の縮小という経済環境の変化に対応できたか否かである。

 経営が厳しくなった荷主からは、昨年も運賃・料金の値下げ要請があった。そして値下げに応じた事業者はますます苦しくなっている。一方、採算性の低い荷主や不採算部門から撤退した事業者もいる。このような事業者は一時的に売上が減少したものの、収益性が向上して体質強化を図ることができた。国内市場が縮小する中では、戦略的にも合理性のある経営判断といえる。もちろん今後は、再び拡大路線に転換することも可能だ。

 日本の物流サービスは「ガラパゴス化」のひとつである。国際的に最高水準のサービス・レベルになっている。しかし、輸出企業の荷主は「国際標準」の運賃を求めている。それに対して、ドメスティックな荷主の運賃はデフレスパイラルの影響が大きい。それでも廉価商品は海外で製造されているのだから、経済のグローバル化にかわりはない。

 気象などの自然現象は人の力では如何ともしがたい。だが、企業は経営次第で陽が当たるようにすることができる。そのためには景気変動よりも構造変化への対応が肝要だ。