トラックのオートマメーカーであるアリソンジャパン㈱は2010年9月10日、東京お台場で、4トンダンプカーの試乗会を開催した。
用意された試乗車は車種は違えど、すべて4トンのダンプカー。
マニュアル、セミオートマ、アリソン社製トルコン式オートマが勢ぞろいした。
会場は未整地のままの埋立地。アリソンジャパン㈱によって擬似的に作られた試乗コースは、まさに「現場」を彷彿させた。
「現場」ではどのような路面状況にあるか定かでないことは周知の事実。
ミッションに求められる性能は、「走破性」「耐久性」「利便性」などであろう。
シチュエーションで考えれば、「砂利道」「狭い上り坂をバックさせる」「散在する建築資材を避けながらの移動」「ぬかるみ」などで、
いかにスムーズに走行できるかがポイントとなる。
当然、マニュアル車ならば半クラッチを多用すればクラッチの寿命も縮まる。乗用車なら当たり前にある
「P(パーキング)レンジ」のないセミオートマは坂道での停車はずり落ちる不安がつきまとう。
今回、この擬似的と言えど「現場」に近いコースで試乗する機会を得た。
仕事柄トラックに乗ることは多いのだが、4トンのダンプは初めて。
ワクワクしながらイグニッションキーをひねった。その時の詳細と驚きをレポートしよう。
会場となったのはお台場はゆりかもめテレコムセンター駅横の埋立地(まだ未整地の状態であった)。
そこに大きなテントと真っ赤なテント。立ち並ぶフェンスやコーン、ダンプカーにバックホー(小型のショベルカー)
一見すると、「あぁ、ここに何か建つんだな」と思わせる風景だが、どうも違和感がある。
工事現場にしてはやけにテントがカッコいいな、現場に赤いテントもありえない・・・。
そう!ここが今回アリソンジャパン㈱が開催した4トンダンプカーの試乗会場だったのです。
待機場であった大型テントの中には、すでに多くの来場者が。ケータリング(ハンバーガーやホットドック、ドリンク)もすべて無料。さすがアリソンジャパン 太っ腹。
さらに来場時に受付でアリソンの帽子をプレゼントされました。
9月10日といえば、まだまだ暑い盛り(というより、最近の気候変動によって一番暑い時期かもしれない)。熱中症対策にということだが、こんな細やかな気遣いがとても嬉しかったね。
まずはアリソンジャパン㈱代表取締役社長アシュウィン・ゴパラスウァーミー (Ashwin Gopalaswamy)氏のご挨拶。
「ミナサマ、コンニチワ・・・・・」
おぉ日本語だ!と思いきや、まだ日本語を勉強中とのことで途中から英語でのスピーチへ。もちろん通訳さんがいました。
試乗前のブリーフィング(事前説明)。
今回用意した試乗車は「マニュアル」「セミオートマ」「アリソン社製トルコン式オートマ」。
「砂利コースでは、おそらくセミオートマでもスタックします。マニュアルではまず無理です。アリソンのオートマはアクセルを一定にしておけば脱出できます。」。
マニュアルだと無理~?私のウデをなめてるな!!という顔をした来場者が、私を含めて約7名ほどいました。
おおおお・・・なんだこりゃ!
私の眼前に、単なる埋立地に敷き詰められた砂利のプールが! 聞けば、深さ約30cm、縦20m、横10mの穴を掘り、ブルーシートをかけたのち砂利を敷き詰めたのだとか。
これはスゴイ!!まるで砂利のプールのようでした。
走行前にちょっと自分の足で歩いてみたのですが、結構柔らかかったですね。こんなとこホントにダンプで走れるのかしら??。
試乗が始まると皆目の色をかえてハンドルを握っていました。特にマニュアル車を運転する人から「絶対スタックしねえぞ~」という心の叫びが聞こえるかのように。
実は私もチャレンジしたのですが、マニュアル、セミオートマともにスタック・・・バックホーに牽引してもらうハメに。「またかよ!走れねぇんだから無理するなよ」とバックホーの操縦者が目で言っていたように思えました。(スイマセンでした)
気を取り直して、アリソン社製のオートマ車へ。「一旦停車しても、アクセルを一定にすればほとんどが脱出できます。」言われたとおりに恐る恐るアクセルを踏んでみました。
おぉ、ホントだ。ダンプカーはゆっくりながら前に進みます。マニュアルやセミオートマの場合、ここでリアのタイヤが空転しズブズブと潜ってしまったのに。これがトルコン式のオートマの良さなのですね。おみそれしました。
ここまでヒドイ現場なんてないだろ~とも思いましたが、もしこれが砂利ではなく降雪地だったり、ぬかるみだったら・・・。
それにしても、バックホーに牽引される時、皆申し訳なさそうな顔をしていたのが印象的でした。(私もですが・・・)
またまた・・・なんだこりゃ!
次に私の眼前に現れたのは、1m以上は掘られたと思われる大きな穴が!おいおい、ダンプが20度くらい傾いているじゃないか。
実際に運転席から見ると、これが結構恐い。例えるなら、スキー場で下から見ればたいしたこと無いと思えたコースが、いざ頂上に立ってみると「こんなに急なの?」と思えるように・・・。しかもクルマの構造上、真下は見えないですよね。だからこの穴に降りる時はまるでジェットコースターに乗っているような感覚です。意を決してアクセルを踏むと、これが結構楽しい。穴を降りて上がって・・・。
「ここでストップしてください」同乗していたアリソンジャパンの社員さんの指示が。
「マニュアルもセミオートマも、ここで停車するにはギアをニュートラルに入れサイドブレーキをかけるしかないですよね。でもアリソンのオートマはPレンジがありますので、ギアをPにしてくれればずり落ちることはありません。」
なるほど。 実際にギアをPに入れフットブレーキを外してみたが、確かにピクリともしない。実は今回の試乗会、砂利道の走破性よりも何よりも、これが一番感心したのでした。
砂利道、大穴越えの試乗を終えると、次に案内されたのが生産性コース。生産性?聞きなれない言葉だったが、ブリーフィングを聞いていると、どうやら使い勝手の良さとかそうゆうことが体験できるコースであるということが分かった。
百聞は一見にしかず。まずは乗ってみよう。
最初はバックで車庫入れ。砂利道コースにあった大きなほどじゃないが穴が掘られている。ここをバックで入れる。穴はVの字に掘られているので途中からは上り坂になるので微妙なアクセルワークが要求される。
試乗したのはアリソン社製オートマ搭載車であったが、ここは難なくクリア!
実感したのは、マニュアル車だと半クラッチを使わなくてはならないので、面倒くさいなということ。
ご覧の通り、試乗コースにはフェンスにコーン。
のぼり。テントが無ければどこかの工事現場の写真といっても分からないだろう。
ちなみにこの日は台風一過の日本晴れ。
前々日の夕方に台風が直撃した時は、あたり一面水浸しで、まるで巨大な釣堀のようだったとか・・・。
バックで車庫入れのあとは、直径3m程度の盛り土の周りをグルっと一周。
中2回ほど「STOP」の看板があり、停車する。
旋回時でも、クラッチがない分左右に視線を集中できる。
ストップ後の再発進の際にもアクセルワークだけでいいので「あぁ楽だな~」というのが実感できました。
こんな現場ホントにありそう。
そう思えるほどのフェンスにコーンで仕切られた狭道。
ここでもクラッチが無い分左右に注意を払える。
トルコン式オートマの特徴であるクリープ現象(アクセルを踏まなくてもスルスルと動く現象)を使って慎重にハンドルを回す。
マニュアル車では、当然半クラッチを多用することになるだろうし、セミオートマでは確かクリープ現象がないため、恐る恐るアクセルを踏まなくてならない。しかも以前試乗したセミオートマはアクセルを踏んでから発進するまでワンテンポ遅れた記憶がある。そのため「あれ?」と、ついアクセルを踏み込んでしまい急発進し、何度が恐い目にあいました。
ここでそんなセミオートマで走れと言われたら、正直かなり神経を使うだろうなと思った次第でした。