全日本トラック協会は、2013年10月9日、北海道札幌市の「ニトリ文化ホール、ホテルさっぽろ芸文館、ロイトン札幌」で第18回全国トラック運送事業者大会を開催した。大会は、北海道トラック協会(伊藤昭人会長)・札幌地区トラック協会(奈良幹男会長)を中心として運営され、全国のトラック運送事業者約1,500人が参加。また、高橋はるみ北海道知事、上田文雄札幌市長、坂明北海道警察本部長をはじめ、多数の来賓が出席した。
大会冒頭、星野会長は燃料価格が高止まりしていることを言及。平成21年3月と比較してリッターあたり40円値上がりし、業界全体で年間6650億円もの負担増になっている。こうした状況が続けば、我が国の経済活動や国民生活を支える多くのトラック事業者が事業存続の危機に直面し、安定した輸送力を確保することが困難となると訴え、全ト協としても燃料高騰対策本部を設置し、都道府県トラック協会とともに政府・与党に補助金の創設など救済措置を強く求めていくとともに、燃料サーチャージの導入促進を図るため、荷主への要請や全国紙の朝刊に全面広告を掲載するなどを積極的に展開していくとした。また、中型免許問題についても、有識者検討会を設置し、制度改正に向け前進している。業界にとってより良い制度改正を期待しているとした。事業者大会は業界の諸課題に一丸となって積極的に取り組んでいる姿を広く世の中に訴える貴重な機会。トラック運送事業の明るい未来を自ら切り開くため、業界の総力を結集し、精神一到、ともに頑張りましょう」と呼びかけた。
第18回全国トラック運送事業者大会
今回で18回目になるこの大会であるが、今年も昨年に引き続き全国から1500人を超える運送事業者やトラック協会の職員が一堂に会した。
全体会議では、まずは開催地ブロックを代表して北海道トラック協会会長 伊藤昭人氏が挨拶。次いで(公社)全日本トラック協会会長 星野良三氏による挨拶ののち、議長団が選出された。
全体会議はここで一旦中断、2つの「分科会」に分かれコーディネーター・パネラーともに事業者というパネルディスカッションが行われ後、株式会社YOSHIMI代表取締役オーナーシェフ勝山 良美氏、および国土交通省自動車局長田端 浩氏による記念講演へと続いた。
再開された全体会議では、トラック輸送振興顕彰「鈴木賞」の紹介、大会決議、来賓挨拶、次回大会開催地ブロック協会会長挨拶、ガンバローコールと続き閉会となった。
全国から1500人超が集結
会場となったのはニトリ文化ホール、ホテルさっぽろ芸文館、ロイトン札幌。
全体会議、第1分科会はニトリ文化ホール、第2分科会がホテルさっぽろ芸文館、懇親会がロイトン札幌で行われた。
右の写真はほぼ満席状態となったニトリ文化ホール。
開催地ブロックである北海道トラック協会からの参加者数は実に211名であった。
トラック輸送振興顕彰「鈴木賞」の表彰
「鈴木賞」とは運送事業の高度化・効率化を図るため、トラック輸送において優れた業績を挙げた個人または団体を表彰するもの。
公益社団法人福岡県トラック協会
筑後緊急物資輸送センター・筑豊緊急物資輸送センターの建設など、救援物資輸送体制の充実を図ってきた取り組みが評価された。
公益社団法人全日本トラック協会青年部会
東日本大震災直後より、独自の支援物資輸送や募金活動を行い、被災地の小学校にソーラー扇風機や学用品などを寄贈。また「親子観戦プロ野球・東京観光ツアー」を企画し、被災地の親子162人を招待するなど、被災地への支援活動が評価された。
大会決議
私たちトラック運送事業者は、我が国の国民生活、産業活動を物流面で支えるとともに、災害時には被災者に向けた救援物資輸送の担い手として、重要な使命を果たすべく、日夜懸命に努力している。
しかしながら、少子高齢化や産業の空洞化による輸送量の低迷及び円安による燃料価格の高騰に対処すべく、徹底した省エネやコスト削減に努めているが、再生産可能な運賃の収受ができず、収支のバランスは好転する兆しが見えない状況にある。今や多くの事業者が事業存廃の岐路に立たされている。
こうした危機を突破して、トラック運送事業者が担うライフラインとしての重要な使命を達成するため、トラック運送業界一丸となって
政府に対し、燃料価格高騰対策の実現、高速道路料金の引き下げ、規制緩和の見直しの促進、過重な税負担の軽減など、その実現を可及的速やかに求めるものである。
我々は、今後とも、交通安全・事故防止や環境保全・温暖化対策に率先して取り組み、更に公正競争・法令遵守に努め、事業者が創意工夫を図り、国民生活、産業活動に不可欠な物資の輸送に万全を期すものである。
トラック運送業界が社会との共生を図りながら重要な使命を果たし、その社会的地位の向上を図り、将来に希望の持てる産業として発展を遂げるためには、今こそ、トラック運送業界の叡智と総力を結集して、これら当面する諸課題に勇気と英断をもって果敢に対応していかなければならない。
このため、本日、第十八回全国トラック運送事業者大会にあたり、我々は、本大会の総意をもって、以下のとおり決議する。
一、軽油高騰対策の推進及び軽油引取税の当分の間税率の廃止
一、高速道路料金の引き下げ及び大口多頻度割引制度の拡充
一、規制緩和の見直しの促進
一、五トン超車両を十八歳から運転可能な制度の実現
一、地球温暖化対策税の還付制度の創設及び自動車関係諸税の簡素化・軽減
一、交通・労災事故撲滅及び環境・省エネ対策の積極的な推進
一、原価管理の徹底及び適正運賃収受
一、法令順守の徹底と輸送秩序の確立
一、事業後継者の育成と少子高齢化に対応した労働力の確保
一、大規模災害時における緊急輸送体制の確立
記念講演(1)「ゼロから創る発想がこれからの経営だ」
株式会社YOSHIMI代表取締役オーナーシェフ 勝山 良美氏
講師紹介
1951年北海道美唄市出身、足寄町育ち。
飲食店経営の傍ら世界各国を食べ歩き、料理に対する独創的な世界観を構築。
「YOSHIMI キュイジーヌ」という独自のコンセプトもと、ジャンルにとらわれない料理を生み出し、現在はオーナーシェフとして、日本全国に無国籍・創作料理レストランを13店舗展開。加えて、道産素材を生かした新しい食のプロデュースや、YOSHIMIならではのお土産品開発も行っている。2013年6月に発売された全国紙「日経トレンディ」では、「2013年上半期ご当地ヒット賞」に選ばれるなど、手がけた商品は軒並み大ヒット中。その実績から業界の注目を集め、ラジオやテレビにも多数出演。食に対する情熱を発信し続けている。
記念講演(2)「トラック業界を巡る現状と課題」
国土交通省自動車局長 田端 浩氏
講師紹介
1957年生まれ。
1981年東京大学法学部卒業。同年運輸省に入省。
自動車交通局旅客課長、航空局飛行場部管理課長、大臣官房参事官(大臣官房人事課)、大臣官房人事課長、観光庁観光地域振興部長、大臣官房審議官(鉄道担当)、鉄道局次長を歴任。
2013年8月より現職。
恒例の 「ガンバローコール」
大会の最後は恒例となった「ガンバロー」コール。
会場に集まった1,500人超による「ガンバロー」は実に威勢がよく、会場となったニトリ文化ホールに響き渡った。
パネルディスカッション 第1分科会「トラック業界の安全対策の構築について」
<コーディネーター> 株式会社プロデキューブ 代表取締役 高柳 勝二氏 |
<パネリスト> 丸吉運輸機工株式会社 代表取締役社長 吉谷 隆昭氏 |
<パネリスト> 白金運輸株式会社 代表取締役社長 海鋒 徹哉氏 |
<パネリスト> 七福運送株式会社 代表取締役 鈴木 祥太氏 |
<会場> |
― テーマ:ドライブレコーダーの映像を活用した事故防止
第1と第2に分かれた分科会。昨年同様、コーディネーター(司会)もパネラーも事業者というパネルディスカッション形式が採用された。丸吉運輸機工株式会社 吉谷社長からは、7年前にドライブレコーダーを導入し、KYT活動やドライバー教育に活用した結果、事故件数がゼロになり保険料率の割引率が最高の75%になった。しかしながら最も重要なのはドライバーとのコミュニケーションだと思うという意見があった。
また白金運輸株式会社 海鋒社長はドライブレコーダーの映像によって、自車の過失がないことを証明でき、結果900万円の保険料の削減につながったと説明。
七福運送株式会社 鈴木社長は同様に自車の過失がないことを証明できたばかりでなく、10.8%も平均燃費の向上につながった営業所があると活用の成功事例を発表した。
パネルディスカッション 第2分科会「トラック業界の経営基盤の強化について」
<コーディネーター> 川崎陸送株式会社 取締役社長 樋口 恵一氏 |
<パネリスト> 茨城流通サービス株式会社 代表取締役社長 小倉 邦義氏 |
<パネリスト> 株式会社ロジコム 代表取締役社長 鳥屋 正人氏 |
<パネリスト> 有限会社エイチビーケーサービス 代表取締役 斉藤 博之氏 |
<会場> |
― テーマ:原価意識の向上について
昨年に同じテーマとなった第2分科会「トラック業界の経営基盤の強化について」。コーディネーターも2年連続で川崎陸送株式会社の樋口社長が受け持った。
テーマは原価意識の向上について。まず有限会社エイチビーケーサービスの斉藤社長が口火を切った。同社では事業ごとに分社化し、それぞれの会社に社長がいる。各社は独立採算性をとっておりこれまで従業員だった者が社長になることで「自分がやらなければ」という意識が変わり好循環になっているという。
次に茨城流通サービス株式会社の小倉社長は、「市場運賃」から「適正な利益」を引いたものを「コスト」とし、いかにコストを下げ効率を上げて利益を確保するかが大事であると語った。そのため同社では積合わせ主体の輸送へ事業転換を行っており、各所でコストカットを進めている。またドライバーの給与明細には、運行実績を変わりやすく記載。コスト意識を持たせているという。
株式会社ロジコムの鳥屋社長は徹底した「見える化」を推進しているという。例えば、担当者別の売り上げは社内ブログで見れるようになっていたり、配車担当者が使う運行管理システムでは、売上を配送完了時点にリアルタイムで計上、1時間ごとに固定費、変動費が変化し、担当者売り上げと車両売上が表示される仕組みになっているという。
3社ともに経営基盤の強化における取り組みは異なるものであるが、共通しているには共に「見える化」を進めているということであった。