運送事業者レポート

運送事業者、荷主における新たな取り組みや成功事例にスポットをあてたインタビュー記事。(毎月第1週に更新)

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【第8回】 三共貨物自動車株式会社(茨城県筑西市)

ミス削減と組織改革でセンター業務効率化に成果

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荷主のメインのセンターを基準に試算すると、能力的には30店舗を取り扱うのが限界と思われていた物流センターで、作業を改善して商品滞留時間を短縮し、40店舗超への配送を可能にした事例がある。この事業者は三共貨物自動車(本社・茨城県筑西市、小倉重則社長)で、当該センターはカスミ岩瀬流通センター。荷主のカスミは本社をつくば市におき、売上高2182億5200万円(11年2月期)、店舗数は139店舗(同)の食品を主体にしたスーパーである。

三共貨物自動車が同センターの業務を受託することになったのは04年6月から。カスミ中央流通センターがオーバーフローになってきたこともあり、他の小売店の既存の施設をカスミが譲受したのを機に、配送店舗数20店舗を対象としたサブセンター的な位置づけでスタートした。このような経緯もあって、中央センターとのシステムの違いもあり、同センターでは仕分けミスなどが多かった。

一方、荷主は新規出店を続け06年度には配送店舗が37店舗にまで増加。そのため仕分けミスは月間平均37.6件、事故発生率は1/1万9035ケースという状況だった。そこで同社は作業改善に取り組み、07年度後期には事故発生率を1/3万3536ケース、月間平均22.4件と約43.2%の改善を実現。その後も入庫時間のコントロールなどに取り組み、センター内で4時間以上滞留している台車数を12%削減し、約90%の商品についてはセンター入荷から3時間以内に仕分けが可能になった。

センターへの納品車両総数も約10%の削減ができた。さらに09年度では月平均の誤仕分け件数が3.8件と約83%も改善できた。入荷ケース数当たりのミス発生率も1/24万6191件と大幅な改善を実現。生産性の向上でも、08年度1人1時間当たりの平均仕分け工数は543.5個/MHであったが、09年度では795個/MHと31.9%の改善を実現した。

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この一連の取り組みでJILSの10年度物流合理化努力賞(物流業務部門)を受賞した。

取り組みとしては、08年度に作業者へのアンケートなども実施し、ミスの要因を分析。その結果、過去3年間の改善では仕分け担当者への労働強化と、社員による不十分な現場管理などで、ミスが発生しやすい環境になっていたことが分かった。 そこで ①基本動作を簡素化して1回のチェックで異常を発見する、②社員は管理業務に特化し、検収・仕分け作業は総てアルバイトができるように多能化を図ることにした。

それを実現するため、①組織改善、②教育制度の構築、③環境整備を優先課題にするという基本方針を決めたのである。

さらに、①管理者が現場指導できるDSP(必要な時間帯に、必要な作業に、必要な人員を配置するなど)の構築、②大部屋化・多能化による組織改革、③異常に気づく人・作業環境の構築、④関連部署との連携による品質向上という4つの行動目標を設定した。

さらに、①管理者の多能化(多能化習得勤務表運営、共通業務の大部屋化、専門業務の大部屋化)、②作業者の多能化(基本業務チェックシート運用、最終評価シート運用、作業内容報告書運用、パフォーマンスメジャー運用、検収作業のアルバイト化)、③環境の改善・関連部署との連携(新看板の作成、基本動作の見直しと標示、退場制度の運用と表示、レイアウト変更、「匠の技」を水平展開、配送チームとの連携)についてスケジュールを作成して取り組んだ。

たとえば商品の流れのスピーディ化では、検収した商品を通路に仮置きしていては作業効率が落ちる。これはレイアウトなどにも関連する。構内管理では、ケースを基準にした原単位から、何台車(カーゴテナー)を基本とする評価軸に変更した。また時間帯による作業のバラツキでは、同社の調達物流部と社内連携を図った。センター納品の時間を調整して平準化するために、自車両で引き取りをして時間調整するためだ。

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固定した作業でなく、誰もがどのような作業でも平準的にできるようにするため「大部屋化」した。そして、どこができて、どこができないかなどを評価するパフォーマンスメジャーで採点し、優秀なアルバイトは契約社員に登用する。

また、台車看板も作業者の視野の平行線上の位置にセットできる可動式に変更した。吊り下げ店番や床貼り店番は廃止し、台車にセットする店番だけを照合ポイントにした。照合作業のミス発生防止では、台車店番とリスト店番の両方を目視できる位置で実施する。社員は照合作業の動作をチェックし、基本通りに行っていない場合は「品質異常」として一時的な退場処分とする。退場者は社員から基本動作の訓練を受けて、再び作業現場に復帰するのが「退場制度」である。

三共貨物自動車のカスミ岩瀬流通センターでは今後の課題として①仕分けミスゼロへのチャレンジ、②センター全体の大部屋化推進、③調達物流部との連携推進に取り組んでいく。

<物流ジャーナリスト 森田富士夫>