運送事業者レポート

運送事業者、荷主における新たな取り組みや成功事例にスポットをあてたインタビュー記事。(毎月第1週に更新)

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【第28回】 平和みらい株式会社(静岡市駿河区)

静岡県内で菓子とドライ食品の共同配送を展開

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物流事業者の経営戦略には経済地理的な要素が関連してくる。全国ネットなら別だが、一定地域に経営資源を集中して事業を展開する場合には、地形的特徴と経済規模や産業構造などの条件を踏まえなければならない。

平和みらい(本社・静岡市駿河区・淺原諒蔵社長)は静岡県内で倉庫、運送などの事業を行っている。静岡、焼津、沼津、浜松の4支店をもち、倉庫面積は27拠点で合計79,200㎡、保有車両数は42台(大型車30台、中型車12台)、その他に協力会社の車両が約110台である。

同社のコアビジネスは2つで、消費財を中心とした小口の共同配送と、メーカーの生産物流やジャストインタイムの調達物流である。同県は沼津などの東部、静岡を中心とした中部、浜松などの西部、それに伊豆に分けられる。同社はそれぞれの地域特性に応じて、東部は工業製品物流、中部は消費財物流、西部は自動車や2輪車などの部材の化学品物流などを行っている。

平和みらいは1950年に倉庫業としてスタートしたが、1963年に運送会社を設立(2000年に合併)して運送業にも参入した。これは倉庫と運送のシナジー効果を目的としたものである。コアビジネスの一つである消費財の物流では、運送分野に進出した1963年ごろから自然な流れで一部ではあるが共同配送を始めている。その当時は「伊豆に翌日配送」をキャッチフレーズにしており、これらが配送効率の良くない伊豆方面のその後の展開にも有利に作用してきたという。

菓子の取扱は1952年に大手メーカーとの取引から始まった。その後、取引メーカーが増えるにしたがって、個別に保管している倉庫を回って共同配送するという形で、自然に共配に入ってきたのである。しかし、最初は倉庫で預かる形から、だんだんスルーになってきた。一番大きな転機になったのは大手食品メーカーが他社に先駆けてスルーに切り替えたことだった。

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昭和40年代には、その後の共同配送のベースカーゴになる大手食品メーカーの商品を取り扱うようになった。当初はストック型であったが、昭和50年代に入ると在庫を持たないスルー型に移行した。このように食品のスルー型の共配もはじまったのである。

最初はカテゴリー共配ではなくエリア共配だったが、その後、菓子とドライ食品というカテゴリー別の共同配送に移行している。このように同社では、自然の流れで共同配送に入ってきたが、大きな転機になったのは1997年の焼津物流センターのオープンだ。それ以前は菓子でも大手荷主それぞれの専用倉庫を集荷して共同配送する形だったが、焼津物流センターのオープンを機に在庫も1カ所にまとめた。同時にスルーが増えてきたのである。

そこで焼津物流センターの開設を機に共同配送というサービス・コンセプトを明確に打ち出した。従来なら倉庫だったのを物流センターと称するようになったのがその象徴である。

現在では焼津物流センターを核にして大手の菓子メーカー5社をメインに、その他のメーカーを含めて約20社の共同配送をしている。ドライの食品の共同配送も以前は焼津物流センターで菓子と一緒にやっていたが、昨年4月にオープンした藤枝物流センターで行うように分離した。

このように平和みらいでは静岡県内の共同配送をコアビジネスの一つに据えた事業展開をしているが、それには経済地理的な条件も大きい。高速道路などの交通インフラもその一つ。またメーカーの拠点センターとの距離という条件もある。静岡は関東の拠点と中部の拠点の中間だからである。さらにボリューム的にも、関東と中部の中間に在庫するには需要が少ない。これらが早い段階からスルーの共同配送になってきた条件といえる。したがって共同配送による荷主のメリットも大きい。菓子の共同配送の分野で、大手菓子メーカー5社に関して共配による効率化効果を試算した数値がある。

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それによると、焼津物流センターがオープンする前と後では効率が大きく違っている。物流共同化を研究している津久井英喜、中光政、藤原廣三の3氏と淺原社長の試算によると、共同配送以前(個別配送)の5社合計では、配送総重量1,217,384㎏、ケース数152,173ケースで、推定配送トンキロは121,738トンキロ、車両台数(推定)が810台であった。

それに対して焼津物流センターの稼働後には、同じ配送総重量とケース数で、配送トンキロは104,512トンキロとなり、車両台数(実績)は679台となっている。効果推定では、車両台数は16%削減、1ケース当りの輸送トンキロは0.800から0.687へと14%削減、1㎏当りの輸送トンキロは0.100から0.086へと14%削減という結果だ。

これらの実績を踏まえ、同社は今後、国内の市場が縮小する中で共同配送可能な商品の開拓に力を入れて行く方針である。

<物流ジャーナリスト 森田富士夫>