運送事業者レポート
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運送事業者、荷主における新たな取り組みや成功事例にスポットをあてたインタビュー記事。(毎月第1週に更新)

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【第63回】 東群運送株式会社(群馬県桐生市)

地場産業の「繊維」を活かすサービスを検討



 地方の中小トラック運送事業者は地場産業とともに歩んできたケースが多い。とくに社歴の古い事業者は地場産業との関係が深い。だが、それだけに地場産業の盛衰に影響されやすいともいえる。

 群馬県桐生市は古くから繊維の産地として知られている。1993年(昭和8年)創業の東群運送(本社・桐生市、齋藤佳代子社長)は、桐生駅の構内で通運事業からスタート。長年にわたって両毛地域の地場産業である繊維製品を国内外に運んできた。その後、複数の地元事業者との戦時統合などを経て、戦後はそれぞれ元の会社として分離独立。同社は1949年(昭和24年)に現在の法人を設立して今日に至っている。そのため原反、帯、浴衣、その他を地元の機屋などから集荷し、それを大手特積み事業者に委託して全国に運ぶ。あるいは大手特積み事業者の集荷車に積みきれないような場合には、特積み事業者の営業所まで持ち込む、といった仕事をしてきた。

 しかし、繊維関係は以前から外国製品などに押され、また和装を着る人も減少し昔のような勢いはない。そこで同社では様ざまな分野に取扱貨物を拡げてきた。現在では繊維関連製品、医薬品、医療器具、電気部品、自動車部品、事務機器、精密部品、大手宅配便会社の幹線横持ち輸送などを行っている。保有車両数は2t車、4t車を主体に大型増トン車、軽トラック、ワンボックスカーなど合わせて35台。桐生本社の他、伊勢崎物流センター、足利営業所があり、倉庫業も行っている。従業員数は58人(パートを含む)で、2016年3月期の売上は3億7000万円の見通しである。売上比率を部門別にみると、運送が75%、倉庫15%、発送代行・梱包などが10%という構成である。取扱品目別では医薬品の売上が全体の約15%と多く、また、宅配便会社の横持ち幹線輸送も約10%を占めている。なお、関連会社として群馬商事がある。


 医療器具は注射器関連の製品で、保管などの業務は東群運送が一元的に行っているが、配送業務は同社ともう1社の2社で行っている。電気部品は地元の部品メーカーが取引先で、そもそもは自家物流だった荷主を開拓した。現在では家電部品やパネル、LEDなどを一部は在庫保管もしているが、大部分はスルーで輸送している。

 事務機器はメーカーの前橋工場からチャーターで運んでいて、納品先は新築の事務所が多いが、古い事務機器と入れ替える現場もある。現場での組み立てもあるが、同社内で組み立ててから納品するケースもあるという。

 精密部品も取引先は地元の工場だ。荷物は特殊な計測器なので、メーカーの貸出と販売のケースがあり、貸出の場合なら納品の仕事だけではなく、貸出先から引き取る仕事もある。また、販売したものでも、メーカーの工場に戻して調整するようなケースもあり、この場合には引取の仕事と調整後の納品の仕事が出てくる。



 東群運送では、自社の強みである「繊維をどのように活かしていくか」(齋藤社長)が今後の大きな課題と考えている。昔からの着物は市場が縮小してきている。また、ネット通販など流通形態の変化と、顧客のライフスタイルなどが変わる中で、地場産業の繊維企業と連携した物流業としての新たなサービスの開拓である。

 同社は現在でも時代にマッチした繊維製品を扱っている。オーガニックコットン商品の荷主の在庫管理とピッキングや梱包、出荷作業などである。繊維製の小物商品で、この作業では子育て中の女性などを積極的に雇用し、仕事と育児の両立支援も行っている。このような同社の経営が評価され2014年度の群馬県優良企業表彰(商業・サービス部門)で優秀賞を受賞し、昨年3月に表彰された。この表彰制度は群馬県が中小企業支援のため2011年に制定した「群馬県中小企業憲章」に基づき、県内の優れた中小企業を総合的に審査して表彰するもの。


 受賞の理由は、@子育て中の女性とシニアを同一職場で雇用することで仕事と育児の両立支援とシニアの活動支援を同時に行っている、Aオーガニックコットン商品を扱う会社の物流拠点を桐生に誘致し、桐生市の繊維業者の製品や技術・アイデアを紹介することで、繊維業者の販路拡大に寄与している、B障害者就労支援施設と連携しオーガニックコットンの栽培から綿繰り、販売へのルートを構築したことなどである。

 受賞は別としても物流事業者の立場で地場産業とどのように関わっていくかは、同社の今後にとって大きな課題だ。そこで現在、同社では様ざまな企画を検討している。たとえばシステム運営会社が地元の縫製工場などと連携してオーダーメイドの婦人服を手軽に買えるようなサイトを運営しているが、物流事業者の立場から、新しい流通形態や消費志向の変化などに対応しつつ、地場産業と密着した形での新しい物流サービスの開発などである

<物流ジャーナリスト 森田富士夫>