運送事業者レポート
TOP運送事業者レポートtop>2016年12月

運送事業者、荷主における新たな取り組みや成功事例にスポットをあてたインタビュー記事。(毎月第1週に更新)

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【第74回】 SBSロジコム株式会社(東京都墨田区)

スマホ(専用アプリ)で車両1000台を動態管理


 SBSロジコム(本社・東京都墨田区、鎌田正彦社長)では、独自に開発したスマホ用の専用アプリを活用し、同社車両約800台と、子会社のSBSトランスポート(本社・東京都世田谷区、鳥海昭夫社長)の車両約200台、合わせて約1000台を動態管理し、輸送効率向上の実証実験を行っている。この実証実験で蓄積したデータの分析をもとに、年明けからは第2フェーズに移行する。 第2フェーズでは傭車やグループ各社への導入の促進を図るとともに、各支店間の連携によってグループ全体として自車両ならびに傭車を有効稼働するような段階に入る。

 この情報通信技術を活用した輸送効率向上への取り組みはカスピアン・プロジェクト。同社でカスピアン・プロジェクトを始動したのは約2年前の2015年1月。背景にはドライバー不足などがある。同社はほとんどがエリア配送で長距離輸送は主に子会社が行っているが、いずれも積載効率などが高いとは言えない。

 このようなことから、車両の稼働効率を上げて生産性の向上を図ることが大きな課題であった。効率化はドライバー不足への対応でもあり、環境にやさしい事業運営にもつながる。だが、同社では前身である相鉄運輸の時代も含めて、「これまで車両の動態管理をしたことがなかった」(営業本部輸送営業開発部・栗生浩延係長)という。そこで、まず「車の動きを可視化することで、車両がどのような状態にあるか。どこで車両が遊んでいるかなどを把握して、これまでは支店単位で車両を管理していたが、傭車を含めて支店間の垣根を越えて全体として車両を有効に稼働できるようにしたい」(同・安井俊秀課長)。このようなことから第1フェーズとしては専用アプリを開発し、自車両と子会社の車両約1000台に導入して動態管理データの収集から始めることにしたのである。動態管理の端末としてはスマホを利用。独自に開発したアプリをログインするだけで動態管理ができる。


 具体的な機能としては、動態管理(現在位置情報、作業報告、ナビ連動、渋滞情報表示、異常時報告)、運行実績(運行ルート表示=軌跡・ドット、アニメーション表示、実績CSV出力)、計画入力、空車検索(空車枠設定、空車検索)、車両稼働分析機能、自社デジタコ連動がある。ドライバーはスマホを操作するだけで、デジタコと二重に入力する必要はない。会社側で動態管理データとデジタコの記録を照合し日報も作成できるようになっている。

 今年2月下旬から自車両に順次、導入を開始して10月には子会社のSBSトランスポートの車両にも導入した。現在は、約1000台の車両の動態データを収集し、「BIツールによってビジュアライズ化して様ざまな角度から分析している。現在の段階では一度CSVファイルにデータを取り出して分析しているが、将来はデジタコのデータとの連動を含めリアルで分析できるようにする」(同社情報システム部・岡部泰廣氏)。


 予定では年明けから第2フェーズに入り、支店間の連携による自車両ならびに傭車の稼働効率の向上などに取り組む。また、傭車やグループ内での導入の拡大に努める。同社が常時契約している傭車は1200〜1300台ある。また、SBSグループ全体では約4000台の自車両がある。これらに同システムの導入を促進し、当面は利用台数を5000台程度まで拡大する予定だ。導入の促進では、グループ優先ではなく傭車と並列に考えている。というのは「傭車の稼働効率を高めることを優先して、協力事業者の収益性向上を考えている」(安井課長)からだ。これには今後、傭車の確保がますます重要性になってくる、という認識があるものと思われる。そのために「スマホを持っていない傭車先には、どのような方法にするかはまだ決めていないが、安いコストでバックアップするようなことを考えている」(安井課長)という。


 同社の約80の支店のうち車両を持っているのが約50支店で、従来は傭車も含めて支店単位で配車してきた。そこで車両の動態データを分析し、第2フェーズでは他の支店所属の車両、他支店が契約している傭車も含め、車両の効率的稼働を目指す。自車両も傭車も効率的にオペレーションすることで輸送効率を向上し、傭車の収益性も高くするというのが狙いだ。第2フェーズで開発する機能は、傭車対応(傭車用画面、計画入力、空車枠設定、日報作成、チャット機能、トラックナビ連動)、荷主対応(荷主用画面、進捗管理画面、到着通知)、空車検索(傭車対応)などである。

 当面は、自車両と傭車に既存の荷物を効率的に組み合わせ、荷主からの問い合わせにも迅速に対応できるようにする。さらに積載情報の精度を向上し、車両と荷物のマッチング機能も開発する予定だ。将来的には一般にもサービスを開放し、シェアリング・エコノミーのプラットホームへと発展させる。

<物流ジャーナリスト 森田富士夫>
(写真提供:SBSホールディングスならびにSBSロジコム)