運送事業者レポート
TOP運送事業者レポートtop>2017年8月

運送事業者、荷主における新たな取り組みや成功事例にスポットをあてたインタビュー記事。(毎月第1週に更新)

バックナンバー一覧はこちら

【第82回】 幸楽輸送株式会社(北海道札幌市)

輸配送網と施設を活かし物流で北海道の活性化に貢献


 北海道の物流の特徴は、鉄道やフェリー輸送などを介さないと、道外とのトラックによる直接輸送ができないことである。また、道内だけでも長距離幹線輸送が必要でドライバーの労働時間問題も深刻だ。さらに少子高齢化と人口減少、そして札幌とその近郊への人口集中など日本の縮図ともいえる。地元の主要な生産物である第一次産品は季節波動が大きく、札幌とその近郊から道内各地に輸配送される消費財は、シーズンによっては片荷輸送を余儀なくされる。このような諸条件の中で幸楽輸送(本社・札幌市清田区、不動直樹社長)は、北海道コカ・コーラボトリンググループの運送会社として、グループの各種商品の物流をベースに、道内において多様な物流サービスを展開している。同社は1969年の設立で、本社事業所の他、十勝(河東郡音更町)、旭川(旭川市)に事業所があり、さらに石狩センター(石狩市)、江別センター(江別市)がある。

 従業員数は139人。保有車両数はトラクタ38台、トレーラ60台、小型トラック3台、軽トラック1台、ISOタンク3台、フォークリフト36台である。16年度の売上高は約40億円で、構成はコカ・コーラ社が39%、原材料・他ボトラー輸送が20%、一般荷主輸送が41%である。これを業務内容でみると清涼飲料輸送、一般貨物輸送、小口配送、倉庫事業に分類できる。清涼飲料輸送は札幌工場で生産された製品を、道内の配送センター、その他に輸送するもの。一般貨物輸送は農産物、食料品、乳製品、日用雑貨、農業資材や肥料、その他の荷物を取り扱い、道内だけではなく全国へ、全国から道内へとフェリーやJR貨物を使っての輸送もしている。また、小口配送では新千歳空港ビルへの配送の他、札幌市内とその近郊での小口配送を2t車で行っている。空港にある自動販売機に配送し、帰りは恵庭などから札幌市内に販売される商品を積んで帰ってくる仕組みだ。


 ベースカーゴの清涼飲料では、「札幌から道内各地の主要都市に、毎日22tトレーラ約100セットで幹線輸送している」(不動社長)。そのうち自車両は約40セットという。ベースカーゴの清涼飲料類は荷動きのピークが6、7、8月の夏場になる。一般輸送は農産物が多いが、農産物の繁忙期は夏から秋にかけての8、9、10月になる。そこで冬から春にかけてどのようにボトムアップするかが重要になる。もう1つは帰り荷の確保が生産性向上のポイントである。これらの諸条件を踏まえて自車両比率を考えているようだ。さらに同社が現在、力を入れているのは清涼飲料関連の資材物流の一括化である。石狩新港地区に保有している一類倉庫では現在、調達物流、販売物流の保管だけでなく一般貨物の保管も行っている。この石狩センターは資材の一括物流の拠点としての立地条件が良い。そこで札幌工場への資材の補給基地として最適な条件をフルに活かそうというのだ。

 関連する各種資材を在庫管理し、工場の生産工程に合わせて一括納品するような仕組みを構築すれば、バラバラに納品されていた資材の物流を効率できる。工場側でも必要な時に必要な量だけ供給されれば作業効率が向上する。そこで第1弾としてペットボトルの一部のキャップの保管・管理を行っている。だがキャップの種類もたくさんあり、それ以外の資材も含めて物流を一括化するなど、資材物流の効率的なシステムを提案し、受託に向けて取り組みを進めている。また、輸送効率の向上も幸楽輸送が目指す課題の1つだ。同社では毎日100台の22tトレーラが札幌から道内の主要都市に清涼飲料を輸送している。これら拠点への輸送は、商品によっては必ずしも毎日運ばなくても良い。そこでグループ外の荷物を積み合わせて輸送効率を高められるような可能性の追求である。もちろん清涼飲料の安定供給が前提だが、輸送効率の向上には様ざまな工夫の余地がある。


 幹線だけでなく営業所から先のルート配送も同様だ。4t車や8t車によるルート配送網は北海道全域をカバーしている。幹線輸送もルート配送もベースカーゴは安定した輸送量が確保できている。そこに他の荷物を組み合わせて混載輸配送すれば輸送効率化やドライバー不足への対応になる。また、道内幹線輸送における長時間労働は北海道のトラック運送事業者にとって大きな悩みだ。そこで同社では旭川営業所や十勝営業所の立地条件を活かし、様ざまな中継輸送システムの提案によって一般貨物の開拓にも取り組んでいる。「経営資源を活かした提案営業を基本的スタンスにしている」(不動社長)からだ。同時に「物流面で北海道に貢献したい」(同)と考えている。たとえば、ある地方の商店街の小売店約10店がまとまって仕入れることで仕入れ単価を下げ、まとめて運ぶことで物流コストも削減して商店街の再活性化を図る、といった構想も地元自治体を含めて検討している。

<物流ジャーナリスト 森田富士夫>