運送事業者レポート
TOP運送事業者レポートtop>2017年12月

運送事業者、荷主における新たな取り組みや成功事例にスポットをあてたインタビュー記事。(毎月第1週に更新)

バックナンバー一覧はこちら

【第86回】 株式会社柳川合同(福岡県柳川市)

高速道やフェリー利用と中継輸送で時短推進


 ドライバーの労働時間短縮は大きな課題である。しかし、具体的にどのように取り組むかは各社の条件の違いによって異なってくる。柳川合同(本社・福岡県柳川市、荒巻哲也社長)では、高速道路利用、モーダルシフト(フェリー)さらに中継輸送を組み合わせて労働時間短縮に取り組んでいる。柳川合同は利用運送と倉庫業で、実運送は関連会社の柳川合同トランスポート(東大阪市)、合同サービス(柳川市、大川市、大刀洗町、佐賀市)、関東柳川合同(埼玉県吉川市、杉戸町、神奈川県平塚市)が行っている。柳川合同トランスポートは10t車を主に108台を保有して長距離輸送中心の事業。合同サービスは2t車を中心に52台を保有して九州における共同配送や定期配送。そして関東柳川合同は、大型車28台と2t車7台の35台を保有して長距離輸送や共同配送を行っている。同グループには、その他にハーティーカンパニーという関連会社もある。

 柳川合同の設立は1954年で、「スタートは平ボディで肥料や漬物などを運んでいた」(荒巻社長)。現在では売り上げの大きな柱の1つになっている家具は、「最初のころは地元の同業の下請けでスタートしたので後発」(同)という。現在は地元九州、大阪、関東などに8事業所(実運送会社と併設)、グループの車両保有台数195台、倉庫面積が4万520u。グループ従業員数は320人で、売上高は約33億円(2017年3月期)である。取扱商品をカテゴリー別にみると、家具が売上の30%、家電20%、コンビニなどの雑貨が20%、残りの30%は同業他社からの売上という構成になっている。同グループは九州、関西、関東に拠点を持ち、@九州〜関西〜首都圏間で積合せによる幹線の定期便輸送、A各地の拠点発の貸切長距離便、B幹線輸送で拠点に運んで保管などをして拠点からの2次配送。これら3つのパターンを基本的なビジネスモデルとしている。


 このうち、とくに労働時間短縮が課題になっているのは@とAだ。上りの荷物は主に家具と自動車用タイヤで、下りの荷は主に家電製品である。家具は大阪や関東への幹線輸送をし、関東では家具を共同配送している。大阪の家具配送は少しで、大阪ではコンビニの雑貨配送が主になっている。家具の地元配送では、佐賀、大牟田、熊本などの店舗への共同配送をしている。このように九州からの上りの主たる荷物は家具と自動車のタイヤで、関東からの下りの荷物の多くは家電製品である。家電製品については、栃木県の宇都宮から九州、静岡県の袋井から九州、兵庫県の尼崎から九州という幹線輸送がある。この幹線輸送の車両は九州からの家具やタイヤなどを帰り荷として運んでくるというオペレーションだ。幹線輸送で九州に運んだ家電製品は、鳥栖やその他のセンターから、幹線輸送の荷主の荷物をベースカーゴにして他メーカーの製品も積合せて共同配送している。

 このような中で同社は、2009年9月から300q以上の輸送では全線高速道路を利用するようにした。これによって年末などでは月500時間もあった拘束時間が、300時間台にまで短縮することができた。さらに時間短縮を進めるために同社が取り入れたのがモーダルソフトである。2016年4月から、名門太陽フェリーの北九州門司港〜大阪南港の航路を利用するようにした。なお、このモーダルシフトは今年5月31日に物流効率化法の認定を受けることができた。従来は九州から大阪まで山陽高速自動車道を走っていたが、門司港〜大阪南港をフェリーにすると、乗船時間は約12時間で、労働時間は7時間半ぐらい減ることになる。同社では高速道路利用で時間短縮を図り、さらにフェリー利用で労働時間を月230〜240時間にし、残業時間も60時間に近づけることができた。さらに今年11月からは中継輸送に着手して、いっそうの時間短縮を推進する計画だ。


 同社は2015年度に国交省が行った中継輸送の実証実験に参加した。この時は「中継」というよりも「リレー」あるいは「駅伝」輸送といった方が良いぐらいの複雑な試みだった。このような経験も踏まえて、同社では自社グループ内での中継輸送に取り組んでいくことにした。まず東大阪を中継基地に平塚〜柳川間で実施する。1つは東大阪でドライバーが乗務する車両を交代して双方にIターンするもの。もう1つは柳川から乗務したドライバーは東大阪でIターンし、そのトラックには東大阪のドライバーが乗務して平塚に向かうというもの。平塚に来た東大阪のドライバーは、今度は平塚から東大阪まで乗務するというパターンだ。「大阪から埼玉では労働時間が2、3時間オーバーしてしまうため平塚〜柳川で導入するが、柳川〜東大阪での中継輸送、東大阪〜平塚での中継輸送も構想している。さらに埼玉〜九州ではフェリー航送を組み込んだ形で考えている」(荒巻社長)という。

<物流ジャーナリスト 森田富士夫>
(写真提供:柳川合同)