齊藤先生、樋口社長も書いているので、三度、ネット通販と物流についてである。「送料無料」といっても、たいがいのユーザーは購入価格に含まれていると解している。だが物流事業者からすれば、配送にはコストがかからないと思われては困るということである。
もちろん宅配便事業者が値下げ要請で苦しんでいるのは事実だ。それだけではなく実質的に配送料を負担しているモールへの出店者も、手数料が高いために不満を募らせている。そこで、BtoC-EC物流を専門とする独立系物流事業者へのニーズが高まりつつある。
一方、大手BtoC-ECの一部では独自に宅配事業者を育てようとしている。関係者の話によると、物流拠点ではもはや1円〜3円という単位でしかコスト削減できないが(大物商品を除く)、配送コストはまだ数10円単位でのコストダウンが可能と考えているからだ。
「当日配送」では、当日配送のニーズなど少ない。一番の目的はキャンセル率を下げたい大手BtoC-ECの都合である。樋口社長がアメリカの例を紹介している。あくまで推測だが、ネット上で受注しても仮受注に留めておき、キャンセル発生率の高い期間を過ぎてから正式受注にすることで、キャンセル処理に要するコストを削減しているものと思われる。
ところが日本では、BtoC-ECが勢力を増す以前から、宅配便事業者が翌日配送をドメスティック・スタンダードにしていた。そこで、いまさらリードタイムを長くすることはできないため、キャンセルされる前に届けてしまうという選択肢しかないという事情もある。
その結果、逆に宅配便事業者は当日配送体制を早急に構築しないと、BtoC-ECという有望市場から見放されてしまうかも知れない状況になってきた。皮肉な巡り合わせといえる。
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