2020年1月からコロナウイルス感染がはじまり、これまで6波におよぶ感染拡大が続き、コロナ危機の状態は3年目に突入した。こうしたコロナ危機が長期化するなかで、トラック運送業も大きな変貌を余儀なくされている。
宅配便などは特殊な状況にあるが、全体的に見ればコロナ危機のなかで経済の低迷によって貨物輸送需要は大幅に減少していった。営業用トラックの貨物輸送量は2020年以降減少しており、現在でも2019年以前の輸送量に達しておらず、依然として低迷を続けている。
こうした貨物輸送需要の減少が続くなかで、トラックの運賃は以前と異なり大きく変化した。コロナ危機以前には運賃は明確な上昇傾向にあったが、コロナ危機が続くなかで運賃は明らかに横ばいに転じて、一部で運賃の下落も生じた。スポット運賃などは需給状況を敏感に反応して、最近まで明確な下落の状態にあった。
もう一方で、コロナ危機における貨物輸送量の減少は、かつての深刻なドライバー不足の状態を緩和させることになった。経済の低迷によって全体の有効求人倍率は1に近づく状況にあるが、トラックドライバーの有効求人倍率はピーク時に3倍を超えていたものがコロナ危機のもとで2倍程度に減少している。
以前からみればドライバー不足は緩和されているが、それでも他産業に比べて有効求人倍率は高く、基本的にドライバー不足は継続している。コロナ危機で減少した貨物を運ぶにしても、依然としてドライバーが充分に確保できない状態が続いている。
かつての物流危機においてトラック運送業の大きな課題が、いかに不足するドライバーを確保するかであった。そのために必要となる根本的な対応策がドライバーの賃金を上げていくことであり、そのためには原資としての運賃の値上を実現していくことが重要となる。そしてこの時期に不十分であったがトラック運賃は上昇していった。
しかし、コロナ危機のもとでは、一部で運賃競争が行われて運賃の下落が生じるなかで、運賃の値上を実現することが困難な状況になっている。この間に運賃の値上を支援するものとして「標準的な運賃」が導入されたが、有効に活用できない状態が続いている。
ドライバー不足が緩和されているとはいえ、依然としてドライバーの確保は重要な課題である。かつての同じシナリオで、ドライバーを確保していくために賃上げの原資として運賃の値上が必要であるが、しかし、コロナ危機の貨物輸送需要が減少しているなかでそれが困難な状況にある。
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