ETC2.0徹底比較 損をしないためのETC2.0の選び方

「大口・多頻度割引最大50%継続」&「特車ゴールド制度」のカギを握るETC2.0車載器

平成28年9月29日、東日本高速道路株式会社、中日本高速道路株式会社、西日本高速道路株式会社の3社は、大口・多頻度割引のうち、車両単位割引の10%拡充措置(いわゆるETCの最大50%割引)について、平成28年12月末をもって終了し、平成29年1月以降は、ETC2.0搭載車に限り適用されると発表した。また2016年1月25日からは特車通行許可を簡素化する「特車ゴールド制度」が開始された。いずれもETC2.0車載器の利用が前提だ。

ETC2.0は、これまでの通行料金の支払いのみならず、全国の高速道路上に設置された通信スポットと走行車両が双方向に通信することにより、事務所側ではGPSによるリアルタイムな動態管理などが可能となる。また運転手側では、渋滞情報や落下物情報など、これまでカーナビでしか得られなかった情報を得ることができる。
しかしながら、運送業は千差万別。すべての運送事業者に最新のETC2.0車載器が必要というわけではない。

ではETC2.0車載器を搭載した場合のメリットは? メーカーや機能に関わらずどの機種でもいいのか? そもそも大口・多頻度割引とはどのような仕組みになっているのか? 車両総重量20トンを超える・・いわば増トン車は特車扱いとなり、通行許可が必要であることなど、運送事業者であっても思いの他知られていないことを、ここで徹底的に紹介しよう。

2016年9月30日現在

「各メーカー在庫あり」「NEXCO及びトラック協会の助成金あり」と聞いているが、9月29日に発表された従来のETCの最大50%割引の報を受け、注文・取付が集中することが予測される。アルコール検知器義務化の時は、メーカーの生産が間に合わず、欠品となり混乱したことは記憶に新しい。長距離運送における高速料金の10%の違いは経営を直撃する。ぜひ早めの導入を検討されたい。

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ETC2.0のメリット1 大口・多頻度割引 最大50%の継続

対象はETC2.0車載器 2016年10月から2018年3月まで(予定)

+10%の割引の継続期間:1年間

  • 2016年4月から1年間
  • ただし、一定期間(2016年12月末まで)は従来のETC車載器でも継続

ETC2.0車載器に限る

  • ETC2.0車載器なら何でもOK
    例えば乗用車用にDCコンバーター(12V→24V)で変換して使用してもOK(メーカーの保証の限りではない)

ETC2.0車載器の場合

車1台ごとの1か月の高速代 車両単位割引 契約単位割引 合計割引
1ヶ月の高速代
(1台ごと)
契約者(協同組合でも可)の1ヶ月の高速代合計が500万円以上&車1台当たりの1ヶ月の高速代の平均が3万円以上 車両単位割引と契約単位割引の合計
5,000円~10,000円 20% 10% 30%
10,000円~30,000円 30% 40%
30,000円~ 40% 50%

今まで通りのETC車載器の場合

車1台ごとの1か月の高速代 車両単位割引 契約単位割引 合計割引
1ヶ月の高速代
(1台ごと)
契約者(協同組合でも可)の1ヶ月の高速代合計が500万円以上&車1台当たりの1ヶ月の高速代の平均が3万円以上 車両単位割引と契約単位割引の合計
5,000円~10,000円 10% 10% 20%
10,000円~30,000円 20% 30%
30,000円~ 30% 40%
例)1ヶ月の高速代が30,000円以上の場合
今までのETC車載器とETC2.0車載器との比較

大口・多頻度割引の成り立ち&なぜETC2.0?

株式会社メディアリンケージ トラックNEXT編集部調べ

大口・多頻度割引とは法人向けの別納割引制度に代わって、2005年4月に開始されたもので、 NEXCO3社が発行するETCコーポレートカードの利用者のみに適用される制度。道路公団民営化による経営の効率化を原資とした値下げで、ETC普及を後押しすることが狙いであった。

このたびの大口・多頻度割引の継続がETC2.0車載器のみに限定された背景には、このETC2.0の普及に拍車をかけたい思惑がある。
全国の高速道路約1600ヶ所に設置したITSスポットは、車載器自体と通信する機能を持つため、国や道路会社はリアルタイムに渋滞を把握することができ、ビックデータ化することができる。車側にもカーナビでなくても渋滞情報や合流地点情報や出口情報が得られるメリットがある。

かなりザックリとした、これまでの流れ かなりザックリとした、これまでの流れ

そこが知りたい!大口多頻度割引のETC2.0

株式会社メディアリンケージ トラックNEXT編集部調べ

Q1. ETC2.0車載器なら何でもいいの?

A
はい。
業務支援用ETC2.0車載器=特殊用途用GPS付発話型ETC2.0車載器でなくても、 ETC2.0車載器なら何でも大口・多頻度割引+10%の対象です。

Q2. 業務支援用ETC2.0車載器って、通常のETC2.0車載器と何が違うの?

A
特殊用途用GPS付発話型ETC2.0車載器とも言いますが、 ETC2.0 のサービスに加え、特殊車両通行許可簡素化制度(特車ゴールド)などに対応しています。
もう少し説明すると、通常のETC2.0車載器はプライバシー保護から発着地が分かりませんが、業務支援用は発地から着地まで、すべてのルート軌跡がデータで集積されます。

Q3. 大口・多頻度割引最大50%割引の継続っていつまで?

A
ETC2.0車載器の利用を前提に1年間延長ですので、+10%の割引アップは2017年3月まででしたが、全日本トラック協会より国土交通省に要望書を提出するなどの働きにより、さらにもう1年2018年3月末まで延長されることとなりました。 これは政府が8月24日に閣議決定した平成28年度第2次補正予算に、このETC2.0搭載車の大口・多頻度の最大50%割引継続ための費用として国費105億円が計上されたもので、平成28年度の予算の余剰分も充当される予定です。(2016年9月現在)
今までのETC車載器ならば、2016年12月で+10%の割引はなくなり、大口・多頻度割引最大40%となります。

ETC2.0のメリット1 特車ゴールド制度

国土交通省が平成28年1月25日13:00から開始したサービスで、業務支援用ETC2.0車載器を装着し、あらかじめ登録した車両は、大型車誘導区間における経路選択を可能とする許可を行う。
そのため、大型車誘導区間内であれば渋滞や事故、災害等による通行障害発生時の迂回ができ、輸送を効率化できる。
また、許可更新時の手続きを自動化し、手続きが従来に比べ簡素化される。

現 行

申請・許可された経路のみ通行可能
(一本一本の経路毎の大量の申請が必要)

特車ゴールド

大型車誘導区間を走行する場合、経路選択可能
(複数経路を一つの申請に簡素化)

特殊車両とは?

一般制限値

2.5m
長さ 12.0m
高さ 3.8m
総重量 指定道路(最大)25トン、その他道路一律20トン
軸重 10トン
隣接軸重 18~20トン
輪荷重 5トン
最小回転半径 12m

どれかひとつでも超える場合特殊車両
つまり、トレーラや大型トラックの「増トン」はすべて特殊車両

特殊車両通行許可

一般制限値を超える車両(=特殊車両)で道路を走行するときは、車両の諸元、積載物の内容、通行経路、通行の日時等を所定の書類に記入し、道路管理者に申請を行い、許可証の交付を受けなければならない。

許可がでるまで通常約20日…大型車誘導区間のみを通行する場合なら最短で3日

大型車誘導区間

平成26年10月から運用開始

  • 高速道路(原則全線指定※) 9,660 km
  • 直轄国道(原則全線指定※) 21,450 km
  • 地方管理道路(主要港湾・空港・ 鉄道貨物駅を結ぶ道路等を指定) 2,720 km

※都心部の区間、バイパス整備後の直轄国道現道の区間等を除く…全道路の約3%の指定により、特殊車両の通行の約8割

特車ゴールド制度のメリット

  • 大型車誘導区間内では、迂回経路の申請が不要
  • 更新時の手続きが簡素化
  • 大型車誘導区間内の迂回経路分の申請手数料がかからないため手数料が削減
  • 1の車両単位で利用登録できる

特車ゴールドの成り立ち&なぜETC2.0?

株式会社メディアリンケージ トラックNEXT編集部調べ

道路法により、狭い道路に大型車を通行させたり、一定の大きさや重さをこえる車を通行させる時は、道路管理者の許可を受ける必要がある。(これを特殊車両通行許可申請という。)

これまでは事前に申請・許可された経路のみ通行が可能となっており、1本1本の経路毎の大量な申請が必要だったため、行政書士などに依頼するケースが多くなっている。あらかじめ帰り荷などを想定した複数経路で申請していても、事故や渋滞など想定外の状況の場合、申請と異なる迂回路を通ることができなかった。
この制度の導入により、深刻なドライバー不足が進行するトラック輸送について、渋滞や事故を避けた効率的な経路選択が可能となり、物流効率化への効果を期待できるとしている。

この制度が成立した背景には、ETC2.0による通信が可能となったことがある。ETC2.0は、これまでの通行料金の支払いのみならず、全国の高速道路上に設置された通信スポットと走行車両が双方向に通信することにより、これまでカーナビだけの技術であった位置情報の取得や渋滞情報や落下物や合流注意地点情報もETC2.0車載器で取得することができるようになった。
ここで乗用車のカーナビを連想してもらいたい。カーナビでは走行履歴を残す機能があるがETC2.0でも同様の機能を有する。つまり、双方向の通信であるがゆえに、どこをどう走ったかがすべて国土交通省のサーバーに集約され、地図で表示することが可能となったので迂回経路の申請が不要となったのだ。

かなりザックリとした、これまでの流れ

国土交通省の資料によれば、現地取締や自動重量計測で基準を超える車両を計測。ETC2.0の通信を使いデータベースにアクセスして許可の有無等を判定。
判定を活用して、違法走行を繰り返す事業者に対しては、通行許可書を発行しないなどの処置を実施するとしている。

業務支援用ETC2.0車載器とは?

業務支援用ETC2.0 車載器とは、ETC2.0 のサービスに加え、特車ゴールド制度などに対応した特殊用途用GPS 付き発話型車載器のこと

通常のETC2.0車載器との違い

1.GPS 付き

現在位置が分かる=会社の事務所のPCでリアルタイムな動態管理が可能&国土交通省のサーバーに走行履歴を蓄積

2.発話型

ETC2.0車載器にスピーカーが付いており、カーナビがなくても「この先渋滞、注意してください」などのアナウンスをしてくれる

3.業務支援用

通常のETC2.0車載器はユーザーのプライバシー保護のため出発・到着地点周辺の位置情報をITSスポットに提供しないが、業務支援用は起終点の位置情報もすべて国土交通省のサーバーに蓄積される。

ETC2.0車載器の購入に関する情報

助成金情報

※それぞれに予算枠があるので注意

  1. NEXCO3社及び日本高速道路保有・債務返済機構  10,000円/1台
  2. 全日本トラック協会               4,000円/1台
  3. 各都道府県トラック協会             各協会ごとに設定

ここがETC2.0に載せ換えた方がお得!になる月額高速料金のボーダーラインだ!

(金額や期間はすべて仮)

前提その1

購入価格

ETC2.0車載器購入費(39,800円)+取付工賃(5,000円)+セットアップ(3,000円)=合計47,800円(税込50,624円)

前提その2

助成金

NEXCO3社(10,000円)+全ト協(4,000円)+各都道府県ト協の助成金(2,000円)=16,000円

前提その3

ETC2.0車載器による+10%の割引が2018年3月で終了

前提その4

従来のETCでの大口多頻度割引の延長が12月末で終了

前提その5

有料道路の+5%、運送協同組合の手数料は考慮していません

株式会社メディアリンケージ トラックNEXT編集部調べ

当てはめてみよう

①:支払額(本体+工賃+セットアップ)
②:助成金合計
③:+10%の継続期間(2018年3月末までなら「24」
④:これまでのETCとETC2.0の差(高速道路10%)
計算式

 [50,624円-16,000円] ÷ 24ヶ月 ÷ 10% = 14,427円

ETC2.0車載器の種類

株式会社メディアリンケージ トラックNEXT編集部調べ

トラック業務用ETC2.0比較表

製品名をクリックすると、「カタログ請求」「見積り依頼」のページにリンクします。

  品番 価格 料金支払い

大口多頻度
電源電圧 GPS内臓
発話型

(音声案内)
カーナビ
との連動
VICS電波ビーコン5.8GHz

(ITSスポットサービス(DSRC))
従来のVICS情報

光ビーコン、電波ビーコン(2.4GHz)やFM体重放送
デジタコとの連動 こんなことができる
安全運転支援

渋滞回避支援

災害時支援
経路情報を活用したサービス 特車ゴールド
渋滞等を迂回する経路を走行したドライバーを優遇 商用車の運行管理支援  

業務支援用ETC2.0車載機器(GPS内蔵発話型)

三菱電機 EP-E216SBG 30,000円前後 12/24V × ×
古野電気 FNK-M100BV 税抜19,800円 12/24V × × ×
FNK-M100RS1 税抜19,800円 12/24V × ×
矢崎エナジー
システム
ETC-YP200 39,800円 12/24V × ×
ETC-YD201 予定35,000円 12/24V × ×
デンソー DIU-A011 予定35,000円 12/24V × ×
パナソニック CY-ET5000GD 39,800円 12/24V × × ×

24Vトラック対応ETC2.0車載器

パイオニア ND-ETCS10   12/24V × × × ×
デンソー DIU-A010  32,832円 12/24V × × ×
三菱電機 EP-A015SB 28,000円前後 12/24V × 同社製のみ カーナビで対応 カーナビで対応 × カーナビで表示 ×
EP-A013DSB  28,000円前後 12/24V × 同社製のみ カーナビで対応 カーナビで対応 × カーナビで表示 ×
EP-E216SB 30,000円前後 12/24V × × ×
古野電気 FNK-M100 税抜19,800円 12/24V × × ×
クラリオン DSC012 34,215円 12/24V × 同社製のみ カーナビで対応 カーナビで対応 × カーナビで表示 ×

12V専用ETC2.0車載器

デンソー DIU-A050 25,800円 12V専用 Andoroid
連携
× × × スマホで表示 ×
DIU-B040 23,979円 12V専用 × ケンウッドのみ 光のみ〇 × カーナビで表示 ×
パナソニック CY-DSR140D 20,905円 12V専用 × kenwood&同社製のみ 光のみ〇 × カーナビで表示 × ×
CY-ET2000D 18,468円 12V専用 × 同社製のみ × × カーナビで表示 × ×
パイオニア ND-DSRC3 32,888円 12V専用 × 同社製のみ オプション ビークルアシスト? カーナビで表示 × ×
富士通テン DSRC113 33,739円 12V専用 × 同社製のみ 光のみ〇 × カーナビで表示 × ×
アルパイン HCE-B110V   12V専用 × 同社製のみ × × カーナビで表示 × ×
ケンウッド
CY-DSR140D

DIU-B040
パナソニック製 20,905円 12V専用 × kenwood&同社製のみ 〇(一部) × カーナビで表示 × ×
デンソー製 23,979円 12V専用 × ケンウッドのみ 光のみ〇 × カーナビで表示 × ×

   は、現在調査中

  • デジタコ連動についてはメーカーや製品により連動できない場合があるため、ご購入時にご確認ください。
  • 12V専用はDCコンバータ(12V→24V)を使用して装着することは可能だが、メーカーの保証の限りではない
  • 価格は当編集部調べ
VICS受信機
FM多重放送:県単位
 ――2022年(平成32年)以降もサービス継続
ビーコン受信機
(ユニット)
光ビーコン:主要な一般道
 ――2022年(平成32年)以降もサービス継続
電波ビーコン2.4GHz:主に高速道路
 ――2022年(平成32年)サービス終了
ITSスポット
(5.8GHz)
電波ビーコン5.8GHz:主に高速道路
 ――ETC2.0へ
安全運転支援
落下物や合流注意地点、事故多発地点などを事前に図形と音声で注意喚起
渋滞回避支援
首都圏全体の所要時間を受信でき最適ルートを選択
災害時支援
災害発生と同時に災害発生状況と併せて、支援情報を提供
経路情報を活用したサービス
渋滞等を迂回する経路を走行したドライバーを優遇
商用車の運行管理支援
国交省が得たビックデータは取得可能。ただし各メーカーで運行管理ソフトの提供が必要
特車ゴールド
ETC2.0装着車への特車通行許可の簡素化