(公社)全日本トラック協会(星野良三会長)は2014年10月9日、福岡市のヒルトン福岡シーホークで第19回全国トラック運送事業者大会を開催した。
同大会は、トラック運送業界における交通事故防止や人材不足など多岐にわたる解決に向けた打開策を探る場と位置付けられたものであり、九州トラック協会(会長:福岡県トラック協会 原重則会長)が中心となり準備が進められ、当日は例年に引き続き全国から1500人を超える運送事業者やトラック協会の職員が一堂に会した。
大会の全体会議では、まずは開催地ブロックを代表して(公社)福岡県トラック協会会長 原重則氏が挨拶。次いで(公社)全日本トラック協会会長星野良三氏による挨拶ののち、議長団が選出された。全体会議はここで一旦中断、2つの「分科会」に分かれコーディネーター・パネラーともに事業者というパネルディスカッションが行われ後、九州旅客鉄道株式会社相談役 石原進氏による記念講演、大会決議、福岡県知事小川洋氏・国土交通省自動車局長田端浩氏による来賓挨拶、次回大会開催地ブロック協会会長挨拶、ガンバローコールと続き、盛会のうち閉会となった。
(公社)福岡県トラック協会専務理事 川崎 和文氏
(写真左)
(公社)福岡県トラック協会会長 原 重則氏
(写真右)
星野会長は冒頭、前日に飯塚市でトラックの森記念植樹式を行い、地球温暖化防止や環境保全に業界として貢献していきたいと述べたのち、7月末に竣工した全日本トラック総合会館について、近年頻発している自然災害において、その災害対策としても国や関係機関と迅速に連携が取れるよう防災司令塔として、機能をいかんなく発揮することを紹介した。
さらにその後、燃料高騰・労働力不足など、日本の経済を支え、ライフラインを守るトラック運送事業者が厳しい経営環境から存続の危機に直面し、安定した輸送力を確保していくことが困難な状況になりつつあると言及した。
特に、燃料高騰は大きな問題であることから燃料高騰対策本部を設置、軽油引取税の暫定税率廃止を盛り込んだトラック運送業界に係る署名活動を全国一斉に実施し、当初の目標であった100万人を大幅に上回り2倍になる約200万人の署名を集めたことを述べ、今後は政府や与党に対して強く訴えていくこと方針を示した。
また最後には、トラック運送事業者が抱える様々な諸問題に対して、業界が一丸となってり組んでいくのに絶好の機会であるとし、明るい未来を自らの手で切り開く英知と総力を結集し、ともに頑張っていこうと呼び掛けた。
議長 九州トラック協会 (公社)福岡県トラック協会会長 原 重則氏
副議長 (公社)佐賀県トラック協会会長 馬渡 雅敏氏 (公社)長崎県トラック協会会長 塚本 政治氏
(公社)熊本県トラック協会会長 岩下 哲三氏 (公社)大分県トラック協会会長 青木 建氏
(一社)宮崎県トラック協会会長 草水 正義氏 (公社)鹿児島県トラック協会会長 黒木 一正氏
(公社)沖縄県トラック協会会長 圀吉 保武氏
<コーディネーター> 株式会社プロデキューブ 代表取締役 高柳 勝二氏 |
<パネリスト> 株式会社丸山運送 運行管理室管理室長 丹野 秀行氏 |
<パネリスト> 株式会社ロジックスライン 代表取締役 沢田 秀明氏 |
<パネリスト> 久保運送株式会社 代表取締役社長 久保満氏 |
第1分科会では、中小運送会社においてコストを抑えて交通安全対策を推進し、良好な結果を出している効果的な「取り決め(社内ルール)」や「取組み(指導)」の事例を3名のパネリストから紹介された。
まずパネリストの丸山運送株式会社は、毎年実施する事故防止決起大会の一環として団体競技形式による安全輸送シミュレーションを実施。また運行前点検では、わざと不具合箇所を設け、見つけることができるかなど総合的にチーム表彰を行っている。それ以外にも様々な取り組みを実施していることを発表した。
次に株式会社ロジックラインは、創業当初安全労務管理には興味すら示さなかったが、労働基準監督署の指導、運輸支局の監査を契機に安全優先を経営に取り込まなければと決意。以後、デジタコやドラレコの機器の導入・活用、積極的なセミナーや啓蒙活動で成果を上げていることを発表した。
最後の発表となった久保運送株式会社では、 デジタコ・ドラレコの活用はもちろんのこと、運ぶだけではなく、運んだあとの作業の安全性にも注力していることが挙げられた。特に建設系のメーカーであるお客様と連携した安全日本一への取り組みについて発表した。
<コーディネーター> 日本PMI コンサルティング株式会社 主席コンサルタント 小坂 真弘氏 |
<パネリスト> 鳴海急送株式会社 代表取締役社長 酒井 誠氏 |
<パネリスト> 株式会社ケイシン 代表取締役社長 丸山 英之氏 |
<パネリスト> 希望が丘高等学校 自動車自動車専攻科科長 安倍 幹也氏 |
<パネリスト> 国土交通省 自動車局貨物課 専門官 神澤 直子氏 |
今後のトラック業界では、場当たり的な人数合わせのような労働力確保ではなく、「中核人材」の採用・育成が重要とし、パネリストによる討論が行われた。
鳴海急送株式会社では、まず人材採用において未経験者でも安心して応募できることを印象づけた求人広告をはじめ、イメージDVDを作成、自社の特長を決め統一した訴求を実施していることを発表。また育成においては、ドラコン優勝者による指導。社内でもドラコンを実施していることを挙げた。
株式会社ケイシンでは、一般的な求人情報媒体では効果がないことから会社のホームページにスマホ対応の求人コーナーを作成。さらに新卒高校生の採用活動も始め、来春の入社を見込んで活動中と発表した。育成としては思いやりと感謝の理念を徹底。亀岡市の通学路で「いつも止まってくれてありがとう」という保護者からのメールを披露した。
これに対して希望が丘高等学校からは、「トラック野郎のイメージが強い」「時間的・肉体的に過酷なイメージ」等、生徒や教員からのイメージについて言及。さらに教員がトラック業界の現状を知らないなどの問題点を挙げ、もっと積極的な会社説明会や見学会の実施。学校とのコンタクトの継続等を要請する他に、業界挙げての取り組みが必要とした。
最後に国土交通省からは、適正運賃の収受等業界の健全化対策が最重要課題としつつも、ドライバーのキャリアアップイメージが描きにくいことからドライバースキルの「見える化」を検討するとした。また中型免許制度改正への積極的対応や、女性ドライバー(トラガール)の活躍促進に向けた取り組みについても紹介した。
JR九州の石原進相談役は講演の中で、苦しんだ経営が極めて困窮した国鉄時代から、JRとして再生した歴史を語り、サービス改善に努めたり、経営戦略として列車デザインに注力したことで集客につなげたことなどを説明した。
石原氏は、その上で、「国鉄分割民営化当時、再建は難しいだろうといわれたJR九州の再生が、少しでもトラック業界の参考になれば幸いです」と語った。
私たちトラック運送事業者は、我が国の国民生活、産業活動を物流面で支えるとともに、災害時には被災者に向けた救援物資輸送の担い手として、重要な使命を果たすべく、日夜懸命に努力している。
しかしながら、少子高齢化に伴う若年労働者不足が顕在化しており、人材の確保が急務となる一方、長引く燃料価格の高騰に対処すべく徹底した省エネやコスト削減に努めているが、再生産可能な運賃の収受ができず、収支のバランスは好転する兆しが見えない状況にある。今や多くの事業者が事業存廃の岐路に立たされている。
こうした危機を突破して、トラック運送事業者が担うライフラインとしての重要な使命を達成し、国民生活に必要な安全で安心な物流サービスを提供できるよう、トラック運送業界が一丸となって政府に対し、燃料価格高騰対策の実現、高速道路料金の引き下げ、規制緩和の見直しの促進、過重な税負担の軽減など、その実現を可及的速やかに求めるものである。
特に、2008年以来の高値となっている燃料価格の高騰に苦しむ我々は、全国一斉に署名活動を展開し、全国から百万人超の賛同を得た次第であり、今後、各方面にトラック運送業界の切実な現状を訴えていかなければならない。
我々は、今後とも、交通安全・事故防止や環境保全・温暖化対策に率先して取り組み、更に公正競争・法令遵守に努め、事業者が創意工夫を図り、国民生活、産業活動に不可欠な物資の安定輸送に万全を期すものである。
トラック運送業界が社会との共生を図りながら重要な使命を果たし、その社会的地位の向上を図り、将来に希望の持てる産業として発展を遂げるためには、今こそ、トラック運送業界の叡智と総カを結集して、これら当面する諸課題に勇気と英断をもって果敢に対応していかなければならない。
このため、本日、第19回全国トラック運送事業者大会にあたり、我々は、本大会の総意をもって、以下のとおり決議する。
右、決議する。
平成ニ十六年十月九日
第十九回全国トラック運送事業者大会
専門家の派遣、金融支援など、福岡県としてのトラック運送業への取り組みの紹介。また今後も業界の健全な発展のために、事業者への積極的な支援ならびに協会の事業にもできる限りの協力をしますと挨拶した。
また、「福岡県は玄界灘の海の幸、ラーメンに水炊きと美味しいものがたくさんあるとともに、NHK大河軍師官兵衛ゆかりの地であり、ぜひ福岡の食・文化・歴史を堪能していただきたい」と述べた。
燃料高騰問題やトラガール推進など労働力不足について、全力で取り組んでいくと述べたのち、太田国土交通大臣の祝辞を代読した。
以下はその祝辞の内容
「トラック産業は我が国経済と国民生活を支え、ライフラインをして極めて重要な産業です。一方現下の燃料高騰などによりトラック運送事業者には厳しい経営を強いられていると承知しております。国土交通省としても負担の軽減に向けて全力で取り組んで参りますので、皆様のご理解・ご協力をいただけますようお願いいたします。」