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運送事業者レポート

運送事業者、荷主における新たな取り組みや成功事例にスポットをあてたインタビュー記事

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【第102回】 株式会社丸総(静岡県榛原郡)

22年3月までに車両とドライバーをほぼ倍増予定

 丸総(静岡県榛原郡吉田町、橋口智規社長)は、2022年3月期までに保有車両を現在の約80台(シャーシを除く)から150台(同)に、ドライバーも現在の75人から150人まで増員する計画を、4月からスタートする。同社はすでに3月には牧之原市に新たな物流センターも稼働させている。さらに2020年秋には中京営業所(名古屋市緑区)、2021年には関東営業所(神奈川県川崎市)の大型化も計画している。本社倉庫(1号、2号)や清水物流センター(静岡市清水区)も含めたこれらの施設を活かして、輸送サービスにおける定期・混載・リレー方式の「トリプル・ウィン・ルート」構想を推進する計画だ。丸総は1971年の設立で、関東~中部の企業向け幹線輸送をメインに事業展開してきた。したがって大型車やトレーラなどが多く、保有台数は80台(その他にシャーシが14台)、従業員数は110人で、うちドライバーは75人である。

 丸総の取り扱い荷物は、紙の原料と製品、プラスチック原料やアルミ原料、医療用輸液、加工食品、飲料、精密機械その他である。このうちメインは加工食品、飲料、医薬用輸液となっている。加工食品は首都圏や中部圏から地元静岡への幹線輸送である。とくに三重県と北関東間では、同一の取引先の荷物が往復ともコンスタントにある。付加価値向上のために、この間、力を入れてきたのが医薬品分野だ。清水物流センターは医薬品の荷主の物流業務を受託するために建設した。同社は人工透析などに使われる輸液の物流を大手倉庫会社経由で請けている。工場で製造された輸液は、一旦、丸総の物流センターに横持ちする。透析液は製造されてから出荷するまでに出荷判定が必要で、この出荷判定に一定期間(3週間~1カ月)を要する。その間、スペースの関係などで工場内に在庫しておくことができないため、同社のセンターで保管し、その後、出荷が認められて流通する。

 同社物流センターから全国に出荷されるが、同社の輸送範囲は主に関東と中部、そして静岡県内である。関東や中部は倉庫会社のDCへの横持ちと、医薬品問屋の物流センターへの納品など。一方、県内の輸送先は病院への納品だ。「病院では人工透析室まで配達している」(橋口社長)という。紙関係の仕事では清水港に揚がったロール状の紙をパッケージ化する工場に運ぶ。パッケージ工場からは製品を食品工場などに運ぶというのが基本的な業務である。つまり紙関係では原料と製品という流れで仕事を受託している。また、丸総ではこの間に新たな事業領域への参入も進めてきた。その1つが関東営業所(川崎市)の受託業務である。同営業所では昨年5月から、倉庫会社の委託を請けて神奈川県内における食品の小口配送の仕事を始めた。現在は神奈川県内の海よりのエリアにある問屋、小売店、あるいはイベント先などへの配送で、これらの業務を現在は2t車5台で行っている。

 だが、今年10月からは神奈川県内全域に配送エリアが拡大する予定で、物量が現在の5倍ぐらいになるため、この仕事だけでも15台増車して20台は必要になる。さらにDCとTC間の横持ち輸送なども予定されており大型車6~8台が新たに必要になる。また、別の取引先の仕事でも加工食品の共同配送の話が進んでいる。このような小口の配送への本格的参入は、「従来にはなかった新しい事業領域への進出」(橋口社長)である。さらに関東営業所や中京営業所を物流拠点として配送網を構築していく構想もある。そのため中京営業所や関東営業所の大型化が必要なのである。また、3月に稼働した牧之原の物流拠点は、「浜松と富士の間では需要が拡大しているのに倉庫が足りない状態」(橋口武俊会長)という事情も踏まえての開設である。メインの飲料を取り扱うほか、製茶関連の機械や、精密機械の流通加工など、新たな領域への業務拡大も伴っている。

 以上のように3年間で車両を現在の80台から150台にする計画も、仕事の裏付けがあってのことである。同社では19年4月から22年3月までの3年間に、車両に7億円弱の投資を計画している(代替え含む)。売上高も19年3月期の18億円から、22年3月期には30億円まで伸ばす予定である。そのためには人材確保が不可欠で、ドライバーも3年間で現在の75人から150人にする計画だ。そのためには労働条件の改善が必要で、「今年10月からは基本給と残業代それに諸手当という給料体系にします」(橋口社長)。生産性向上への取り組みでは、定期化、混載化、リレー輸送方式という「トリプル・ウィン・ルート」の構築を目指している。荷主にとっては単発の荷物でも、混載して定期便化し、幹線輸送にリレー方式を取り入れる。牧之原物流センターはその中継基地の役割も持つ。コンプライアンスと採算の両立を図る付加価値の高いサービス構想である。

<物流ジャーナリスト 森田富士夫>