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運送事業者レポート

運送事業者、荷主における新たな取り組みや成功事例にスポットをあてたインタビュー記事

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【第138回】    株式会社速水運輸(愛知県春日井市)

時短を進め35人中で残業月60時間超は2、3人

 1年後には「2023年問題」そして2年後には「2024年問題」が迫ってきた。かりに「2024年問題」をギリギリでクリアしたとしても、時間外労働の上限規制は960時間なので、月平均では80時間だ。一般則の720時間より月平均20時間長いことになる。つまり、「2024年問題」をかろうじてクリアできたとしても、「2023年問題」によって毎月20時間分は1.5倍の賃金を支払わなければならない。このように労働時間短縮は多くのトラック運送事業者にとって大きな課題である。だが、年間960時間はすでにクリアしたという事業者もいる。このような事業者は、すでに一般側の720時間の達成に向けた取り組みに着手している。昔は月の残業時間が100時間はザラだったが、現在は月の残業時間が60時間を超えるドライバーは35人中で2、3人しかいない、というのが速水運輸(本社・愛知県春日井市、速水敬志社長)である。

 同社の設立は1989年1月で最初は速水重機という社名だった。1997年に速水運輸に変更している。設立時の社名から分かるように、建設現場で使用されるリース機器の搬入、引取りを主たる業務として今日まで至っている。同社の創業は、社長の父親である速水敬二会長が重機を運んで行って自ら現場で作業をするような仕事を1人で始めた1977年だった。1989年に法人化した後、1991年4月には車両10台で一般貨物自動車運送事業の許可を取得した。「ちょうど免許制から許可制になった直後だった。同業他社は限定が多かったが一般運送事業の許可にした」(速水社長)という。同社は1997年にパソコンによる業務管理システムを導入し、翌98年にはGPSによる車両位置管理システムを導入するなどIT化への対応が早かった。「ウィンドウズが入ってきてペーパレスの時代になる。業務も変わると考えて、パソコンを独学で勉強した」(同)という。

 いち早く動態管理を導入したのは「取引先にレンタル会社が多く、レンタル機器を現場に搬入・搬出する仕事のため見える化が必要だった」(速水社長)からだ。すぐに搬入してくれとか早く引取りに行ってくれ、といった要請に即座に対応するには、経験的な車両管理ではなく、車両の現在地や実車か空車かなどをリアルタイムで把握して、取引先の要請に一番早く対応できる車両を手配するといった必要があった。「配車はタクシーに似ている。いまでも1台の車両で1日5回転ぐらいしている」(同)という。レンタルの建設機器の現場搬入は愛知、三重、岐阜の3県と、静岡県の一部のエリアが対象。また、愛知県内では東部地区と西部地区に分けて巡回便も運行している。現場への搬入や引取りだけでなく、取引先であるレンタル会社のサービスセンターへの修理品の輸送などもある。静岡から福岡などの拠点間輸送もあるが、長距離輸送は協力会社などへの委託が多い。

 同社では客観的品質の認定・認証の取得にも力を入れ、安全性優良事業所(Gマーク)、グリーン経営、健康経営優良法人、働きやすい職場認証も取得している。本社の他に三河営業所(岡崎市)、三重営業所(三重県員弁郡)があり、車両数はトレーラ、12t車、10t車、8t車、3t車など合計35台で、クレーン車や平ボディ車が多い。従業員数は40人で、そのうちの35人がドライバーである。昔は「残業が月100時間はザラだった。朝8時に現場に納品するには、点呼などに30分かかり、輸送時間が1時間半としても納品前に2時間は必要。そして夕方5時に機器の引取りに行き、現場で積み込んで帰ってきて、終業の点呼が終わるまで2時間はかかる」(速水社長)。現場はできるだけリース料金がかからないようにその日に搬入させて、仕事が終わったらその日に引取りさせる。そのためドライバーは早朝から夜遅くまで長時間拘束、長時間労働になっていたのだ。

 そこで「10年ほど前に完全週休2日制にすると宣言」(速水社長)。搬入は前日、引取りは翌日の日中にしてもらうように取引先に要請した。レンタル会社のメリットは、「法令を順守して運べる事業者を確保できること」(同)と説得した。その他、様々な取り組みをしながら、日曜日は全員休みで、もう1日は本人の希望の曜日が休めるような完全週休2日制を導入したのは4年前からだ。日曜日やドライバーの休む日は協力会社に委託し、日曜日には1.5倍の運賃を払っているという。また、その月の稼働日数、曜日や祝祭日の配列で、その月の上限拘束時間や残業時間などを決めて、毎日の拘束時間の目安と残業時間の目安を示し、実際の累計拘束時間や累計時間外労働時間が分かるよう管理している。その結果、月の残業時間が60時間を切っているドライバーが大半で、60時間超は2、3人しかいない。速水運輸ではさらに労働時間を短縮するための取り組みを進めていく。

<物流ジャーナリスト 森田富士夫>