運送事業者レポート
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運送事業者、荷主における新たな取り組みや成功事例にスポットをあてたインタビュー記事。(毎月第1週に更新)

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【第2回】 太陽運輸倉庫株式会社(鹿児島県鹿児島市)

社内に引越・家具教育研修センターを開設し品質向上図る


 太陽運輸倉庫(本社・鹿児島市)は、10月1日づけで創業者の重久紘三社長が代表取締役会長に、重久修一氏が代表取締役社長に就任した。

 
重久会長は1968年に鹿児島県職員から一念発起して太陽小型運送(現太陽運輸倉庫)を設立。本社所在地の鹿児島と、九州経済の中心地である福岡に拠点をおく「2眼レフ体制」の経営で事業を展開し、今日の経営基盤を確立してきた。現在は鹿児島以外に福岡支店と福岡物流センター、佐賀県の鳥栖に第一ならびに第二センター、宮崎にも物流センターがある。大分、熊本、長崎は鳥栖の拠点から配送して九州全域をカバーするという体制だ。宮崎のセンターはコンビニ配送をしているが、今後は一般物流にも参入していく方針である。しかし、九州を経営基盤にした事業展開でも、東京など荷主の本社にアプローチすることが必要と考えている。

 新社長も従来からの基本路線を踏襲しつつ、時代の変化に対応する経営を進めていく。

 同社は現在、大別すると運送が70%、倉庫が30%という売上比率である。全体的には倉庫部門(物流センター機能)にウエイトを移行する方向にある。同時に人材の確保、育成に力を入れていく方針だ。

  現場では、拠点・作業・輸配送などの立ち上げと現場管理ができる能力。企画部門では、企画・分析・提案ができ新規顧客を開拓して取引を固定化できる人材。それから情報システム能力や、現場力を高める事のできる徹底した実務家などの育成に力を入れていく。そのため、今年4月からは大学新卒者を5名採用し、また来年4月には大卒5名と新たに高校新卒者も2名の採用を内定している。

  このような中で、今年10月28日から本社物流センターの2階の一角に引越・家具教育研修センターを開設した。引越部門の売上は全体の約5%であるが、同社は家具の2マン配送も行っている。研修センターでは家具の配送を行っている社員も個人宅への納入の研修ができる。

 このような研修センターを開設したのは、これまで引越シーズンが終わった後で毎年、反省をしてきたが「もう少し早くトレーニングをしておけば良かった、といった反省がだされていた」(重久社長)からである。

  引越サービスでは、ピーク時にアルバイトなど臨時の作業員を多く必要とする。これらアルバイトの事前トレーニングもそうだが、社員の引越担当者も異動で定期的に部署を変わる。また、ピーク時は全事業所から引越現場に応援に入ったりもする。このようなことから自前の研修センターを作り、通年でトレーニングができるようにしたのである。

  研修センターには模擬玄関があり、まずは挨拶などの訓練を行う。玄関を入るとすぐに直角に曲がった狭い通路になっており、家具などの搬入訓練ができる。もちろん階段その他も設置されている。リビングルームにはテレビやソファー、食卓、家財道具などが備えられており、梱包用資材を使った梱包作業の訓練もできる。

 また、たとえば洗濯機では水道や排水のセッティングも訓練できるようにしている。水周りのセッティングなどは無料サービスになっているのが実態だ。しかし、引越後に水が漏れたなどの苦情がないように完璧な作業をしなければならない。

  これらのトレーニングは3人の指導員で行う。いずれもベテランである。すでに事務職の社員も含めて全員が1回はトレーニングをした。普段は動きが鈍いと思われていたような人が、家具などを持って要領よくテキパキとした動きをするので、一緒にトレーニングをした他の社員から拍手がわくなど、作業レベルの向上だけではなく、社内の融和と結束にもつながっているという。また、事務職の社員たちも実際の現場の状況を体験できたことになる。

  これまでは電話でオーダーを受けるだけだった人も、現場の状況が頭の中に描けるので、顧客からの問合せに対する応対も変わってきたなど副次的効果も出ているようだ。

 重久社長は「勝ち残るには機能を特化することがポイント。荷主と対等のパートナーになることが重要だが、そのためには物流のプロとして進化しなければならない。自社の位置づや特徴を知り、自社の強みは何かを明確にすることが必要」という。そのような認識に基づいて各部門別の方針を打ち出している。

  家具の2マン配送部門では、他社との競合が少ない市場だが、数量が少ない、曜日波動が大きいなどの課題もある。そこで複数の荷主を組み合わせることで収益性を高める方向である。これは一般家庭配送と法人向け配送の比率や組み合わせなどになる。そこで営業面での優位性を構築するためにも、研修センターの有効活用を考えているのだ。

  引越分野でも、研修センターを活用して品質向上を図り、法人引越に関連する周辺業務も取り込んでいく。また、介護などシニアの引越のためにケアマネージャーの有資格者なども確保して行きたい、としている。

<物流ジャーナリスト 森田富士夫>