運送事業者レポート

運送事業者、荷主における新たな取り組みや成功事例にスポットをあてたインタビュー記事。(毎月第1週に更新)

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【第11回】 手塚運輸株式会社(埼玉県川口市)

独自の運送管理ソフトを開発し10月に立ち上げ

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いまやパソコンは仕事に欠くことのできないツールである。しかし、配車管理や売上管理など自社の業務実態にあったソフトを導入している中小トラック運送事業者は意外に少ないのが現状だ。

このような中で現場の実態を踏まえた管理ソフトを独自に開発し、フリーソフトとして多くの同業者にも開放していこうとしているのが手塚運輸(本社・埼玉県川口市、手塚嘉明社長)である。

同社が開発した「ブッキングブック」は、配車表を入り口に、荷主情報や売上管理、請求書の発行など一貫した管理が可能である。配車に関してみると、荷主情報とドライバーや車両の組み合わせなどを、ドラック&ドロップで操作ができ、急なオーダーや突然の配車変更などにも対応しやすい。また傭車会社や車両、荷主からの入金額と傭車先への支払額なども、配車担当者が管理できるようになっている。売上管理では、1週間ごとの車両単位の売上管理、荷主単位の売上管理などができる。

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手塚社長は13年前に会社に入ったが、驚いたのはドンブリ勘定で会社が経営されていたことであった。そこで予算を組んだり、経営計画を立てるといった初歩的なところから経営改善に取り組んだという。

事故防止にも力を入れてきた。ところが4年前、あるコンサルタントから年間に何件の事故があるかと問われた。当社は事故は少ない、年間に3回くらいと答えたところ、もし食品会社だったら3回も事故を起こしたら倒産しているだろう、といわれてしまった。そこで事故ゼロを目指した取り組みをはじめ、3年前に年間無事故を実現したのである。事故ゼロの実現で収益性が向上した。

またドライバー教育の結果として、得意先からの評価が上がる、といった効果が表れた。反面、配車担当者など管理者へのシワ寄せによって事故ゼロが実現できている、という実態も明らかになったのである。そこで管理者を増員したら、今度は人件費が増えて利益が減少してしまった。

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安全性を向上しながら収益性を上げるには、「品質管理、予算管理、ドライバー収益管理などのソフトをつくらなければ長続きはしない」(手塚社長)という認識に至ったのである。

同社の保有車両数は54台(うちシャーシ13台)で、一般輸送ではケース物、配電盤、電線コイル、プラスティック製品などの輸送。海コン輸送。重量物では、印刷機械やダイカストマシンなどの機械類の運搬と付帯作業などを行っている。その他にもプロダクションやレコード会社、代理店などをクライアントに、映画や音楽その他を宣伝車両で宣伝する仕事も行っている。

一般輸送部門の約50%は常用だが、50%はスポット便で週何回のオーダーといった荷主が多い。そのためスポット便は常用と比較すると配車などが複雑になり、売上管理や請求書発行なども作業が煩雑になる。そこで、安全管理を向上しながら収益を上げるために、自社の業務実態にあったソフトの開発が必要になったのである。

一方、管理ソフトを導入している同業者は意外に少ないことも分かった。トラック協会支部の青年部で08年に配車ソフトの導入状況を聞いたところ、ソフトを導入しているのは30社中の2社、ノートなどへの手書きが10社、ホワイトボードが10社、エクセルを加工して利用しているのが8社であった。請求書の発行も、ソフトが2社、エクセルが8社、手書きが20社だった。

このような現状を踏まえて、フリーソフトとして仲間にも開放しようと考えた。コンセプトは、①誰もが簡単に使用できるシステムである、②配車担当者の業務を簡略化して負担を軽減できるようにする、③配車時点の入力で顧客管理・売上管理・請求書発行・給料計算・財務管理などができる、④点呼記録簿など安全の資料とリンクして管理ができるようにする、⑤実運送事業者による独自のネットワークの構築を目指し、ソフト費用のコストダウンを仲間で享受できるようにする、である。

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約2年半前から着手し、今年6月に「ブッキングブック」のライトプランを完成。本格稼働は10月を目途にしており、共同利用する事業者のグループ構築も進めている。

ライトプラン、スタンダードプラン、エキスパートプランがあり、エキスパートプランでは、運転日報、給与計算、車両管理(車険・給油明細)、顧客リスト、請求管理、受注管理、傭車管理、日別売上実績表、車両別損益、ドライバー別損益、顧客台帳、傭車先台帳、経営分析表、顧客別損益計算書、部門別損益計算書、仕入管理、安全管理などができる。また各書式としては監督官庁報告書、アルコールチェック表、Gマーク認証、グリーン経営、整備記録(チェックリスト)などが作成できる。

さらにオプションとして、デジタコ、ETC、ドライブレコーダー、お届け完了メール配信なども可能だ。基本的には無料ソフトだが、専用サーバーの保守料だけはプランに応じて分担してもらうようにする予定だ。

<物流ジャーナリスト 森田富士夫>