運送事業者レポート

運送事業者、荷主における新たな取り組みや成功事例にスポットをあてたインタビュー記事。(毎月第1週に更新)

バックナンバー一覧はこちら

【第12回】 マルソー株式会社(新潟県三条市)

新規事業の着手や共配センター開設などを急展開

運送事業者レポート 画像

マルソー(本社・新潟県三条市、渡邊雅之社長)では、9月1日から新潟共配センターを大幅拡張した。さらに10月には長野県松本市に4950㎡の甲信共配センターを新たにオープンする。これら共配センターの増強は、酒類・飲料、食品、日用雑貨、菓子などの共同配送分野の取扱が増えているからである。また、これにさきがけ8月からは2つの新事業も始めた。

同社の創業は1949年(昭和24年)で、最初は個人経営の運送業としてスタートした。1954年(昭和29年)に丸惣運送株式会社として法人化し、2004年(平成16年)10月1日にマルソー株式会社に社名変更して今日に至っている。現在では3PL事業、物流センター運営、共同配送、流通業の納品代行、小口ルート配送、冷凍・冷蔵輸送、中距離幹線輸送、米穀低温倉庫、海上コンテナ輸送、引っ越しサービス、産業廃棄物収集運搬、その他、幅広い業務を行っている。

同社は長年にわたり地元の大手事業者として様ざまな輸送を行ってきたが、大きな転機となったのは2000年に、ある大手コンビニの仕事を受託したことである。コンビニのTCの運営と店舗配送を受託し、業務を遂行する中から得たノウハウがその後の新たな事業展開への道を拓いたといっても良い。

そこで2001年には提案型企業を目指すという方向を明確に打ち出した。その成果が具体的に目に見えるようになってきたのは03年ごろからであった。センター運営と配送業務を荷主が自社で行っていた県内最大手の菓子問屋への提案、あるいは同じく県内最大手の酒類問屋にも効率化の提案をしている。さらにソフトドリンクの一貫共同輸配送のシステムの提案なども行った。各メーカーの工場から新潟県内向けに出荷される商品を引き取り、自社のセンターで仕分けして県内で共同配送を行うという、サプライチェーンの流れに沿った一貫物流サービスである。

運送事業者レポート 画像

川上の工場などからの引き取り輸送、センター管理・運営、川下の共同配送という一貫システムは経営的にも効果が大きい。収益性向上の面からは実車率の向上が図れる。

同社の場合には、地元から多数の大型車が関東をはじめ各地に毎日、荷物を運んでいる。帰り荷のコンスタントな確保は収益性に直結するからだ。また、小売業のセンター運営はコスト競争が激しくなっているということも、川上への進出を推進してきた理由だ。

とくにホームセンターの物流から、紙製品のメーカーへの接近を図って堅実に実績を伸ばしてきた。現在ではほとんどの大手製紙メーカーと取引をしている。10月に松本市に開設する甲信共配センターは、ある製紙メーカーの工場からの引き取り、センター管理・運営業務、長野、山梨両県への配送をベースカーゴにしている。もちろん共配センターなので、化粧品、日用雑貨、家庭用品、ペット用品などを取り扱っている卸業などの物流業務も行う。

国内市場は全体としては縮小傾向にあるが、紙製品でいえば紙おむつなど介護関連や医療関連などの製品は今後の伸びが期待される。また紙製品はメーカー直送型が多い。このような諸条件から複数メーカーの共配が可能になる。たとえばスーパーやドラッグストアー、ホームセンターなどの小売店が、紙おむつ、ティッシュペーパー、トイレットペーパーなどを、それぞれ異なるメーカーから仕入れている場合でも、納品先は同じ店舗なので共配が可能だ。

このようにマルソーでは、提案営業、共同配送、川上指向を一体とした営業展開を図っている。それだけではなく、さらに8月からは2つの新事業をスタートした。レントラ便とLEDの販売だ。レントラ便はハーツ(東京都品川区、山口裕詮社長)の商標で、ドライバーつきレンタル・トラックをコンセプトにした時間制運賃を基本とした運送サービスである。マルソーはFC契約で8月8日から新潟県内でサービスを開始した。

運送事業者レポート 画像

地元でレントラ便の知名度を短期間に高めるため、研究所や病院、企業、学校のサークルなどにチラシをもって営業展開している。さらに引越分野の新たな切り口として、小さな引越や女性向けの引越サービスの市場開拓に結び付ける考えだ。

また、8月からLEDの販売も開始した。LEDは環境や省エネなどの面から普及が期待されるが、これまでのLEDの欠点は照度という。一般家庭用では問題ないが、工場や物流センターなど業務用では照度が充分ではない。

このような課題を解決したのがNEXT FORCE(本社・福岡市博多区、中村秀智社長)で、マルソーは東日本における販売総代理店として8月から販売を開始した。販売エリアは愛知・岐阜・福井県から北海道までだが、物流分野については全国的に販売できる。これまで物流で取引のなかった工場などには、オールLED化の提案で電気料金のコスト削減を図り、それを切り口に物流営業にも結びつけていく方針のようだ。

<物流ジャーナリスト 森田富士夫>