運送事業者レポート

運送事業者、荷主における新たな取り組みや成功事例にスポットをあてたインタビュー記事。(毎月第1週に更新)

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【第14回】 株式会社中田商事(三重県伊賀市)

時間給導入で改正労基法をクリア

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昨年4月から改正労働基準法が施行された。改正労基法のポイントは、①時間外労働の限度に関する基準の見直し(限度時間を超える時間外労働の抑制)、②法定割増賃金率の引き上げ(月60時間を超える時間外労働に対する割増賃金率の引き上げ、代替休暇)、③年次有給休暇の時間単位付与などである。

このうちトラック運送事業者にとって大きな課題は法定割増賃金率の引き上げであろう。これまでも残業代の支払は経営的に大きな課題であった。中小企業の場合は3年間の猶予期間があり、2013年3月がリミットである。正確には施行後3年を経過して猶予措置に検討を加え、その結果、必要な措置を講ずるとされており、猶予期間延長の可能性もある。

だが、いずれは改正労基法をクリアできるような経営に転換しなければならないことは事実だ。コンプライアンスはもちろんだが、人材の確保などの面からも、残業代その他の諸課題への取り組みを避けて通れない。

このようななかで昨年10月から、ドライバーの賃金をそれまでの歩合給制から時間制賃金に切り替え、労働基準監督署などからも評価を得ている事業者がいる。この事業者は中田商事(本社・三重県伊賀市、中田純一社長)で本社の他に岡山営業所、四日市営業所があり、保有車両数は48台で従業員数は75人という規模の事業者である。

このようななかで昨年10月から、ドライバーの賃金をそれまでの歩合給制から時間制賃金に切り替え、労働基準監督署などからも評価を得ている事業者がいる。この事業者は中田商事(本社・三重県伊賀市、中田純一社長)で本社の他に岡山営業所、四日市営業所があり、保有車両数は48台で従業員数は75人という規模の事業者である。

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賃金体系を見直して残業代などの問題を解決し、改正労基法に早めに対応しようと検討を始めたのは昨年4月からであった。そして昨年7月に、時間制賃金の10月1日からのスタートを告知。9月中旬から1人ひとりと個別に面談して時間制賃金を説明し、雇用契約書を締結していった。

時間制賃金は、デジタコのデータをベースにした時間管理による時間給である。歩合給からの移行に当たっては、過去1年間のデジタコデータと過去1年間の給与支払い実績という、年収ベースでのデータを基にシミュレーションした。

最低賃金を上回り、しかも過去よりも安くならないという前提で、会社としての支給総額は5%アップまでを許容範囲に経営計画を立てた。1人ひとりのシミュレーション結果を示しながら、9月中旬から個別に話し合いを持ったのである。説明するとすぐに了解して雇用契約を交わす人もいれば、何度も話し合いをした上で雇用契約を交わした人もいる。

時間制賃金は、デジタコ記録をエクセルベースの勤務記録表に落とし込み、毎日、拘束時間、休息時間が分かるようにして時給計算する仕組みだ。拘束時間には運転時間、待機・作業・点検、荷積・荷卸、休憩があるが、時間給の対象になるのは休憩を除く時間である。

待機と休憩の判断は難しいが、違いを規定して契約書に明記した。デジタコ記録の判断で難しい所があれば事務員は管理者に判断を仰ぎ、さらにドライバーから事情説明を受けて分類の確認をとる。だが約9割のドライバーは、デジタコへの入力段階でキチンと操作しているという。

8時~17時が同社の法定時間で、その他では残業、早朝、深夜、休日出勤など、改正労基法に基づいて割増賃金を支払う(定期運行の一部のドライバーはみなし残業)。1週間40時間の所定時間以上の残業も1.25%としている。また、それとは別に日報作成や洗車などにかかる時間をみなし残業として、1日1時間×出勤日数を支払う。

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基本時給は従来からの人事考課を継続し、半期ごとにランクが変わる仕組みである。また、勤務記録表で改善基準のチェックができるようにしてあり、拘束時間の警告、休息時間の警告、運転時間の平均なども一目で識別できるようにして管理している。

時間給の導入によって経営的な面でも徐じょに成果が出てきた。営業担当者の受注の仕方も歩合給から時間給を前提にした発想に転換でき、管理者も乗務員も時間管理に慣れてきたために、今年度上期では、売上対比の賃金比率が前同期よりも1.5%下がったのである。

そこでドライバーを増やして1車1.1名~1.15名態勢にするため募集にも力を入れている。すでに昨年10月から、有給休暇を月に1日はとってもらうようにしたが、さらに来年4月からは計画的な有給休暇の取得を促していく。同社では定年を70歳とし、当面は60歳以上の定年退職者を活用しつつ、新卒採用で長期的な人材育成に努めて行く方針だ。

<物流ジャーナリスト 森田富士夫>