運送事業者、荷主における新たな取り組みや成功事例にスポットをあてたインタビュー記事。(毎月第1週に更新)
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エコドライブを切り口に安全・環境・品質を追求
交通エコロジー・モビリティー財団は、エコドライブを普及・促進する活動の一環として「エコドライブ活動コンクール」を実施している。これはエコドライブ活動に取り組んでいる企業に参加を呼び掛け、応募した企業の中から優れた取り組みをしている企業を表彰する制度。
(1) 取組体制の整備=どのような社内体制で活動を行っているか
(2) 教育の実施=従業員にどのようなエコドライブの教育・指導を行っているか
(3) 燃費管理=どのような仕組みで燃費データを収集・管理しているか
(4) 活動成果と評価=どの程度の燃費向上を達成しているか、また燃費以外の効果とエコドライブ活動に対する評価をどのように行っているか
(5) 継続実績と方策=エコドライブ活動を継続するため、どのような取り組みを実施しているか
の5項目で審査をする。
このコンクールで2011年度の最優秀賞を受賞したのが茨城流通サービス(本社・茨城県古河市、小倉邦義社長)である。
同社は輸配送業務、倉庫保管業務、物流センター業務、包装や流通加工業務を行っていて、輸送業務は長年にわたって貸切輸送を主体に行ってきた。しかし、バブル崩壊後は単純な貸切輸送では成長が見込めない状況になってきた。
一方、顧客ニーズも小ロット化が進んでくる中で、ハブ&スポーク方式の積み合せ輸送へと輸送部門の大転換を図ったのである。事業転換に具体的に着手したのは1998年からである。核になる顧客の荷物をベースに、中小ロットの荷物を組み合せるという手法で、さらに集荷や積み替え作業などにできるだけコストをかけない。そして収益性を重視して配送エリアや取扱貨物を絞り込み、同業他社とのアライアンスによってネットワークを構築し、広域の輸配送ニーズにも対応できるようにした。
現在のサービス名は「エコネット便」である。積み合せ輸送を始めて3年後には運送部門の売上の50%を超え、その後、さらに比率が高くなってきた。
しかし、その過程で様ざまな諸課題が顕在化してきた。それらをクリアするために力を入れて推進したのが、情報システム化、輸送品質の向上、環境に配慮した配送だ。
積み合せ輸配送は積載効率などの面から環境にやさしい輸送形態である。そこで05年からエコドライブ活動を積極的に推進することにした。06年1月にはほぼ全車両にデジタコを導入し、同年4月には改正省エネ法の施行とともに特定荷主への情報提供をするようにした。社内体制も整備し、環境方針や行動計画の策定などを行うようにした。
このような経緯から07年度にコンテストに初めて応募した。一番の目的は、第三者から客観的に評価してもらい、自分たちの取り組み水準を検証して、さらにレベルアップを図ることである。内部だけでは一所懸命に取り組んでいると自己満足になる懸念もあるからだ。その結果08年度、09年度、10年度と続けて入賞し、11年度には最優秀賞を受賞したのである。
同社では様ざまな取り組みをしている。第1は「安全運転ランキング」の公表で、毎月デジタコの集計データと成績のランキングを発表する。第2には社内研修会で、4グループに分けて各グループが2カ月に1回、年6回の社内研修会を実施している。
この研修会では燃費目標に対する結果発表や、次回の目標の設定などを行う。同社ではエコドライブの自己評価表を各人が記入するが、デジタコのデータなどを基に小集団による改善活動を行い、エコ運転技術の講習や車両点検の実地研修などもしている。
また、11年度からは自発的なグループミーティングも実施しするようにした。さらに2カ月に1度の輸送品質向上研修会では、安全、品質、環境、営業などトータルな内容を取り上げ、週1回の管理職会議もトータルな内容を話し合う。さらに班長会議も月1回開催している。
長年エコドライブに取り組んでくると成果が少なくなってくる。またドライバーも2極化してくる。そこで11年度は、燃費の悪い人の底上げを図るためにベンチマークを設定した。そして同一購入、同一仕様の車両なのに燃費に差が出るのはなぜかを証明するために、乗務する車両を一定期間替えて燃費データを取った。
このようにして同じ車両でも技量や意識の持ち方で燃費に差が出るということの「気づき」を与えた上で、技術的な指導をしたのである。さらに夏場には、(1) 朝晩のエアコンの使用を控え、(2) 日中もエアコンのオン・オフ切り替えをこまめに行い、(3) 内外気切り替えは内気循環にし、(4) 日陰など駐車位置を工夫し、(5) 1分以上のアイドリングはしないようにした。その結果、燃費の悪いドライバーは目標をクリアし、良いドライバーは、さらに燃費アップを実現したのである。
同社ではエコドライブを切り口に、安全、環境、品質の向上に取り組んでいく。
<物流ジャーナリスト 森田富士夫>
(写真提供:茨城流通サービス株式会社)