運送事業者レポート

運送事業者、荷主における新たな取り組みや成功事例にスポットをあてたインタビュー記事。(毎月第1週に更新)

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【第20回】 株式会社大昇物流(宮城県大崎市)

新世代の運行体制と空間利用の最大化を追求

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大昇物流(本社・宮城県大崎市、和野昇社長)では、ハブ&スポーク方式の中ロット積合せ(新時代の運行体制)と、短期契約の荷主を組み合せた倉庫運営(空間利用の最大化)を柱に、収益性の向上に努める経営を展開している。

同社の設立は1985年11月で、地元では後発事業者の部類に入る。現在では、本社営業所の他に仙台営業所(宮城野区)、成田営業所(千葉県成田市)、石田物流センター(大崎市)、大和ロジスティクスセンター(宮城県黒川郡)を持ち、保管施設の延べ面積は約1万4700平方メートル、保有車両数は99台(軽ワゴン~20t車)で、従業員数128人の規模になっている。

また関連会社としてダイショウ・ロジ(運送事業)、ダイショウサービス(労働者派遣事業・在宅介護支援事業・車両整備業)がある。事業内容は一般貨物自動車運送事業、貨物自動車利用運送、倉庫業、精密機械などの搬入設置作業、産業廃棄物収集運搬業、特定労働者派遣事業などである。

まず、「新時代の運行体制」とは、簡単にいうとローカルネットの積合せ事業で、異なる荷物を組み合せる仕組みである。この事業では、拠点を設けて、ある程度の荷物と車両台数によって様ざまな組み合わせができるようにしなければならない。

同社ではいまから15年ぐらい前に、「単純な貸切では利益が出せない」(和野社長)と考えるようになった。ローカルネットの協同組合を設立したのは、かなり早い段階だったが、当時は貸切荷物の斡旋だった。そこで中ロットの積合せを考えるようになったという。積合せ事業を始めるキッカケは、帰り荷の積合せであった。当時、東京からの帰り荷としては飼料や肥料などの袋物が多かった。袋物は重いが、オーダーの単位は10t~12tなので、増トン車を導入すればまだ2tぐらいは積める。このようなことから仲間内で半端な荷物を融通してもらって荷物を組み合せるようにしたのが、積合せのスタートである。

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さらに主要取引先との関係で、11年ほど前に成田に営業所を出した。航空貨物を成田から引き取って地元の取引先に運び、仕分けをする仕事である。

航空貨物は小さく1パレットで1~2tだ。そこで首都圏からの帰りに1パレットを積み合せるようにして、当時の地元事業者の大型車の平均的な売上げを上回る収入を得られるようにした。

貸切で1カ所積み、1カ所降ろしの仕事に慣れているドライバーは、多カ所積みや多カ所降ろしは最初は嫌がるものだが、「給料を上げたりボーナスを出したりできるような会社になるには、他社と違ったことをしなければならない」(同)と説明した。

また、同社では多カ所降ろしの場合は高速料金がどれだけかかっても良いことにした。これは必ずしもコストアップとはいえない。時間給なので高速利用は時間短縮になる。また車両の回転率も良くなり、首都圏などの長距離輸送の合間に、地元の古川と仙台間なら1回転させることも可能だ。

このように1台の車両でどれだけ多く稼ぐかを追求し、ベースカーゴを基盤にして利益を出すための創意・工夫の積み重ねの中で、現在のような中ロット積合せシステムが徐じょに構築されてきた。石田物流センターをハブとし、約100㎞圏内は配送車が帰りに集荷しながらハブに戻ってきて翌日配送するというハブ&スポーク方式である。また、東北以外から幹線輸送されてくる荷物は早朝にハブに着き、仕分けして100㎞圏内なら当日配送、100㎞圏外の東北6県は、翌日の早朝に出発してその日に配送する。

これらの業務は、一部の傭車を除き基本的には自車両で行っている。配車は、ベースカーゴを基本にして混載する荷物を様ざまに組み合せる。全体の荷物量が多くてムリな荷物が出てきた場合には、通常は2コースのところを急遽3コースにするなど、配送コースの組み替えなどによって車両効率の向上を図る仕組みを、同社では「新世代の運行管理」と表現している。

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もう一つの「空間利用の最大化」は、倉庫もトラックと同じように「積合せ」することで収益性を高めるという考え方である。固定で長期契約なら収入は安定するが利益率は低い。

それに対して、少量で短期間だけ預かる商品の方が利益は良くなる。ベースカーゴの空きスペースに、そのような荷物を効率的に保管するようにすれば、同じスペース、同じ保管容積でも有効活用できるため投資対効果が大きい。

同社では倉庫の保管スペースの約60%が固定契約で、それ以外は季節変動のある商品などを組み合せるようにしている。たとえば農産物のピークが過ぎれば肥料などが入ってくる。輸入販売されている製品などではシーズンに関係なく、一度に大量に仕入れて船が入ってきた時に短期間預かる。なかには決算月だけ短期間預かるような商品もあるという。このようにして営業的には手間がかかるが、倉庫も貸切だけではなく「積合せ」によって利益率の向上を図っている。

<物流ジャーナリスト 森田富士夫>