運送事業者レポート

運送事業者、荷主における新たな取り組みや成功事例にスポットをあてたインタビュー記事。(毎月第1週に更新)

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【第21回】 株式会社シズナイロゴス(北海道札幌市)

全車両のドアに「安全運転宣言」ステッカー

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安全はトラック運送事業者にとって重要な課題である。各社各様に取り組んでいることはいうまでもない。安全への取り組みには様ざまなアプローチがあるが、昨年10月からドライバー名を書いた「安全運転宣言」をトラックのドアに貼り、車両に乗り込む際には必然的に自分の目に入るようにして安全意識の高揚を図っているのがシズナイロゴス(本社・北海道札幌市、伊藤昭人社長)である。

同社は本社の他に、2支店(札幌・苫小牧)、1営業所(静内)、7センター(札幌・白石・菊水・発寒・石狩・恵庭・千歳)、1事業部(ホームセンター)があり、従業員数が約220人、車両数が約120台、倉庫やセンターが約2万6000㎡の規模である。事業内容としては、3PL事業、共同配送、運送(特積・一般)、運送取扱、物流センター運営、流通加工、倉庫、物流コンサルティング、国内旅行代理業、燃料販売などを行っている。

同社では、GPSつきのデジタコを5年ほど前から導入した。苫小牧営業所はドライブレコーダーも付けている。これらの記録に基づいて社内コンテストも行い、成績優秀者には米をプレゼントするといったこともやってきた。その結果、燃費は18%ほど良くなった。しかし、事故は50%減少を目標にしたにも関わらず20%しか減らなかった。

そこで3年前に社内の制限速度を決め、一般道路は60㎞/h、高速道路は80㎞/hにして速度厳守の徹底を図った。同社ではコンプライアンス手当を毎月1万5000円支給しているが、社内制限速度の厳守を徹底するために、一般道では60㎞を1㎞でもオーバーすると、コンプライアンス手当の支給を3カ月間停止する。これは速度をオーバーした本人だけだが、高速道路の場合は誰か1人でもオーバーすると、全員が3カ月間、高速道路の使用を禁止する。高速道路を使えないと着時間を厳守するために出発を早めないといけない。

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このような厳しいルールの徹底で、5年前と比べると事故が60%減った。燃費もデジタコのデータ管理で18%良くなっていたが、さらに5%ほど改善され、5年前と比べると23%良くなった。そこで社内コンテストもやめることにした。

さらに昨年10月からは「安全運転宣言」ステッカーを導入するようにしたのである。これは、ある経営者の話を参考にして、同社で独自に作成して導入したのである。「安全運転宣言」ステッカーは、各ドライバーの名前を書いて、運転席のドアのところに貼る。車両は本社、苫小牧、静内で約120台あり、ドライバーが140人いるが、1人1枚ずつ自分のステッカーを持っている。乗務する車両がその日によって替るので、マグネット式にし、自分が乗務する車両のドアに貼るのである。

こうすれば、運転席に乗る時に自分の名前を書いた「安全運転宣言」を必然的に見ることになるので、いつも安全運転の気持ちを忘れないようになる。

この成果は顕著に表われてきた。今年に入って1月から6月中旬(取材日)までの間、1件しか事故を起こしていない。それもバックの時に軒下に接触した事故という。シズナイロゴスではバックアイカメラも付けているが、バックアイカメラでも上をみることはできない。北海道では冬は雪が積もるために、同じ場所でも軒下までの高さがその日によって違うことがある。いつも大丈夫だからと習慣でバックすると軒下に接触する事故が発生することがある。

そこで同社では、車両の後部をシャッター式から観音開きに徐々に入れ替えている。観音開きなら荷卸場のホームに着ける手前で、必ず運転席から降りて開けなければならないため、軒下に接触しないかどうかを確認できるからだ。雪の積もり具合で軒下までの高さが違う、といったことは北海道ならではの事情だが、北海道固有の事情ということでいえば、キツネが飛びだしたり、冬場の地方の道路では急に滑る場所もある。

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事故件数といっても、事業者によってどこまでを事故としてカウントするかの違いがあるが、同社ではもらい事故でも1件と数えている。そして安全意識を高めて事故を減らすために、毎年2月に経営方針の発表に合わせて安全発表会を開く。また、7月には安全大会を開いて1月から6月までのデータの発表などもしている。

このように安全に力を入れるのは、今後の競争に勝ち残っていくためである。それには車両1台当たりの生産性を高める努力とともに、安全などサービス品質の向上を図らなければ企業の発展は望めない。

シズナイロゴスでは今後の事業展開として、「海外との物流を考えながら道内に集中してサービス向上を図る」(伊藤社長)という考えを持っている。そのためには荷主でも「花開く企業」と「萎む企業」を見分け、将来性のある荷主との取り引きを増やさなければならないが、優良荷主から選ばれる事業者になるには安全が最も基本になるという考えだ。

<物流ジャーナリスト 森田富士夫>