運送事業者レポート
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運送事業者、荷主における新たな取り組みや成功事例にスポットをあてたインタビュー記事。(毎月第1週に更新)

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【第36回】 五光物流株式会社(茨城県筑西市)

FRPなどの産廃を長距離の帰り荷として確保


 長距離輸送では帰り荷の確保が必須である。とくに燃料価格が高騰している昨今では帰り荷は絶対に必要な条件だ。しかし、同業者から斡旋してもらうだけでは採算が厳しいのも事実である。そこで競争の少ない帰り荷をいち早く開拓して、独自の運行形態を構築した事業者がいる。この事業者は五光物流(本社・茨城県筑西市、小林章三郎社長)で、今から約20年前にFRPなど特殊な産業廃棄物を帰り荷とするような仕組みを構築した。

 同社の設立は1965年で、現在の事業内容は一般貨物自動車運送事業、自動車運送取扱事業、倉庫業、産業廃棄物収集運搬業、流通加工などである。売上高は25億7720万円(2013年3月期)で、比率はトラック輸送57%、保管・倉庫23%、流通加工15%、環境3%となっている。保有車両数は48台(3.5tシャーシ2t車16台、大型車25台、バキュームなど特殊車7台)、その他に毎日約50台の傭車に荷物をだしている。

 同社の取引先は多いが、メインの荷主の一社にグラスファイバーの原料メーカーがあり、地元の工場から北は仙台、西は九州、四国まで運んでいる。納品先は住宅関連メーカー(建材メーカー、浴槽や浄化槽のメーカーなど)や造船会社などである。これらの長距離輸送では帰り荷が絶対に必要だ。そこで昔は各地の同業者から帰り荷を斡旋してもらっていた。

 だが、バブル崩壊後の運賃下落に直面し、廃棄物を帰り荷として独自に開拓することにしたのである。廃棄物でもFRP(繊維強化プラスチック)という特殊な廃棄物をメインにしたことで、競争が少なく比較的容易に帰り荷を確保することができた。売上構成で環境が約3%と低くなっているが、これは帰り荷の産廃収集運搬を運賃収入に分類しているからである。産廃収集運搬の運賃を環境に分類すれば、環境の比率はずっと高くなる。それはともかく、産業廃棄物を帰り荷として開拓したことで収益構造が改善された

 FRPはガラス繊維強化プラスチックで、普通のプラスチックと違い廃棄物の処理が難しかった。FRP関連業界でも廃棄物処理に困っていたが、FRP廃棄物を処理する方法が考えられた。FRP廃棄物の一番の需要先はセメント工場である。FRPの廃棄物を裁断して他の燃焼カロリーの高いプラスチックと混ぜればセメント工場の燃料にできる。さらに、燃え残ったガラス成分はセメントの原料になるのである。

 このようなFRPの中間処理場が栃木県真岡市にできたのをキッカケに、FRPの廃棄物を帰り荷として開拓することを考えた。五光物流の本社所在地である茨城県筑西市は真岡市に近い。そこで同社は1995年に産業廃棄物収集運搬を各地で一斉に取得した。グラスファイバーの輸送先は広域にわたるため、産業廃棄物収集運搬を東北なら青森県、秋田県、宮城県、山形県、郡山(福島県)、関東はもちろん、西は岡山までの多数の地域で収集運搬ができるようにしたのである。

 同社は農薬の原料や製品なども大型車で輸送しているが、独自の帰り荷の確保に努めている。現在では自社で帰り荷が確保できない場合だけ、同業者から斡旋してもらうようにしているという。環境事業では、プラスチック容器の洗浄、廃棄処理なども行っている。化学品などの輸送に使われたポリ容器の廃棄物は、容器内を洗浄してから廃棄処分しなければならない。

 五光物流では2004年に二宮物流センター内にプラスチック容器の再利用やリサイクルのための洗浄業務を行う洗浄装置を設置した。さらに五光物流ではPCB(ポリ塩化ビフェニル)の廃棄物収集運搬も行っている。PCBはトランス(変圧器)などに使用されている危険な物質である。そのためPCBの処理場は限られている。同社の場合には茨城県、栃木県、群馬県から収集したトランスは北海道の処理場に、その他の日本環境安全事業・東京事務所管内から収集したトランスは東京の処理場に運搬している。

 流通加工ではマットレス用スポンジのブロックを、オーダーに応じてマットレスのサイズに切断し、布カバーに入れて最終製品化するという業務も行っている。基本的には荷主の物流センターに納品するが、量販店の店舗に直接配送もするという。さらにTVショッピングやネット通販で販売された商品は、大手特積み事業者に委託してエンドユーザーに宅配もしている。

 五光物流では2t車による積み合わせ配送「STEP20システム」も行っている。地元の荷主の工場などから集荷した荷物に、自社の倉庫で保管している荷物の配送を組み合わせたシステムで、毎日、2tバン車14、15台で関東全域を配送エリアに配送している。集荷先は地元の工場などで、配送車両が帰りに集荷してくるという仕組み。ハブ&スポークが基本になっているが、集荷した荷物と自社の倉庫で保管している荷物をプラスするというシステムといえる。つまりハブ&スポーク+倉庫からの出荷である。

<物流ジャーナリスト 森田富士夫>