運送事業者レポート
TOP運送事業者レポートtop>2013年11月

運送事業者、荷主における新たな取り組みや成功事例にスポットをあてたインタビュー記事。(毎月第1週に更新)

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【第37回】 株式会社野村運送(埼玉県入間市)

11月から省エネ運転の取組を本格スタート


 燃料価格が高騰し、省エネ運転がいっそう重要になっている。全日本トラック協会の調べによると、2013年9月の全国平均の軽油価格は1リットル当り(いずれも消費税抜きの価格)、スタンド平均価格が118円34銭、ローリー平均価格が111円16銭、カード平均価格が117円39銭である。

 過去のピークはリーマンショック前の2008年8月で、当時はスタンド平均が148円93銭、ローリー平均が143円58銭、カード平均が148円12銭だった。その後、一時的に値下げ基調となり、2009年3月がボトムで、スタンド平均が79円78銭、ローリー平均が72円85銭、カード平均が78円53銭にまで値下がりした。

 しかし、その後は再び値上がり基調に転じてジワジワと上昇している。一方、運賃・料金の値上げは難しい現状にあり、せめて燃料サーチャージが望まれているが、それすら厳しい状況にある。

 したがって省エネ運転の推進は企業の収益性に直結し、「環境」にやさしいトラック運送事業といった社会的な課題以前に現実的な経営問題になってきた。このような状況にあっては、建前論ではなく本音で取り組む必要がある。

 そこで野村運送(本社・埼玉県入間市、野村孝博社長)では、従来から取り組んできた省エネ運動を一新し、事故削減・燃費向上運動に本格的に取り組む方針を打ち出した。10月15、16の両日にキックオフし、11月1日からスタートする。同社は1931年に八高線開通と同時に、金子駅前で鉄道省指定取扱人として開業。その後、戦時統合により八高通運の金子営業所になったが、戦後に同店をいったん解散し、1959年12月に野村運送店を新たに創業して今日に至っている。現在では一般貨物自動車運送事業、自動車運送取扱事業、特積み、倉庫業、労働者派遣業、自動車運転代行業、タイヤ修理販売などを行っている

 野村運送は、本社の他に第一事業部、第二事業部、寄居営業所がある。第一事業部はユニック車に特化した事業部で、主として現場資材や住宅建材などを取り扱っているが、その他にもトレーラやタンクローリーなどで様ざまな荷物を運んでいる。それに対して第二事業部はウイング車を中心にした業務を行っているが、食品や家電製品などの倉庫管理やセンター業務なども行っている。

 主な輸送内容としては自動車部品の定期輸送、コンビニのルート配送、家電配送、リネン集配、その他の業務を行っている。認定、認証ではISO9001、安全性優良事業所(Gマーク)を取得。2012年度の売上高は13億6800万円で、従業員数は120人である。また、関連会社では野村商事、アポロ代行があり、関連会社も含めると保有台数は140台(シャーシを含む)で、2t車からトレーラまでの車両を揃えている。

 同社は様ざまな輸配送業務を行っているため、車種もユニック車、ウイング車、平ボディ車、バン車、タンクローリー車など多彩なラインナップになっている。このように保有車両が多様であり、業務内容も様ざまである。そのため、なかなか統一したエコドライブへの取り組みが難しかったのである。

 もちろん、これまでもエコドライブには取り組んできた。トラックメーカーの講師によるエコドライブ講習なども行ってきたし、独自の省エネ運転キャンペーンなどに取り組んできた。また、事故削減を目指して毎月1回の安全ミーティングなども行ってきた。しかし、たとえば同じ2t車や4t車でも車種が異なって業務内容も違っているので、燃費のベンチマークなどの設定が難しかった。そこで、給油した量と走行距離を自分で記入することで、燃費に対する意識の高揚を図ったりしてきたが、このような社内的な取り組みだけではなかなか実効性が乏しかったのも事実である。

 このようなことから「全体的にはエコドライブへの取り組みが風化していた」(野村孝博社長)ことも否定できない。そこで今回は、外部のコンサルタント会社と契約し、本格的に省エネ運転に取り組むことにしたのである。

 同社がコンサルタントに委託するのは今回が初めてだが、ローカルネットの同業者の実績などから、コンサル契約を結んだという。11月1日からは外部の指導も受けながら、給油量と走行距離などの正確なデータを取り、それに基づいた省エネ運転に具体的に取り組む。月2回の事業所ごとのミーティングや、管理職を除いてドライバーたちだけで本音を出し合ったり、あるいは少人数でのヒアリングなどを通して、自社に合った現実的で具体的なエコドライブを推進していく。

 当初の計画では、まず第一段階として、1年半をかけて省エネ運転に取り組む。これまでエコドライブに本格的に取り組んでこなかっただけに、同社では「伸び代」があると期待している。

<物流ジャーナリスト 森田富士夫>
※写真提供(中央写真・下写真):株式会社野村運送