運送事業者レポート
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運送事業者、荷主における新たな取り組みや成功事例にスポットをあてたインタビュー記事。(毎月第1週に更新)

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【第40回】 株式会社エコトラック(大阪府門真市)

低公害車だけの運送事業で環境推進と差別化を図る



新社屋が完成したばかりで
会社名などが入っていない時点での撮影

 トラック運送業界の大きな課題に安全と環境がある。安全や環境で優れた実績をもつ事業者を取材する中で気づくのは、これらの事業者には共通点があるということである。それは、安全あるいは環境のいずれかを徹底的に追求している、ということだ。安全ないしは環境の一方で優れた実績を上げている事業者は、相乗的に他方のレベルも向上してくる。このようななかで、今回は低公害車(CNG車とHV車)だけでトラック運送事業を営んでいる会社をリポートした。

 この事業者はエコトラック(大阪府門真市、池田治子社長)である。池田治子社長とともに同社を興した池田雅信取締役は元証券マン。証券会社を辞めて1990年に貨物軽自動車運送事業を始めた。その後、1996年にネットワークという株式会社を設立し、一般貨物自動車運送事業にも参入した。ネットワークは普通の運送会社で、現在は約30台の車両を保有して運送事業を営んでいる。

 ネットワークの保有車両数が20台弱になったころである。まだ発売されたばかりのCNG車を見た。自分も夫人の治子社長も「子供のアトピーで排ガスを良く思っていなかった」(池田雅信取締役)ので、さっそくネットワークでCNG車を1台導入したのである。そして同業他社にもCNG車の導入を奨めたのだが、あまり受け入れられなかったという。そこで2人で話し合って、低公害車だけの運送会社をつくり、自分たち自身で低公害車を普及促進していこうと決めた。

 このようにしてネットワークとは別に、1999年3月に、最初は有限会社として設立したのがエコトラックである。最低保有台数5台からのスタートだったが現在では保有車両数70台で、うちわけはCNG大型車が6台、同4t車が10台、同2t車が50台、HV車の4t車が1台、同2t車が3台である。その他にCNGの軽トラックが3台ある。売上規模は6億5000万円(2014年2月期見通し)である

 同社は「仕事があれば、それに合わせて車を増やす」(池田取締役)という方針だ。最初はある家電量販店の宅配から出発し、やがて食品関係の荷主との取引も始まった。営業もするが、荷主企業からオファーがあるケースも少なくないという。低公害車だけのトラック運送会社という“売り”は、企業の社会的責任として環境を重視する荷主にとっては魅力ある“買い”なのであろうと思われる。

 このような中で大手家電メーカーとの取引が始まったことが大きな転換になったようだ。約8年ほど前に、荷主も低公害車の導入を計画しており、低公害車の導入を同社が手伝ったのがキッカケで取引が始まった。現在では荷主の鶴見デポになり、別のセンターから夜間に運ばれてきた製品を仕分けて、スルーで配送する業務を担っている。配送車両は早朝に出発し、京阪沿線の大阪北部や京都の南部の量販店の店舗などに配送して、14時ごろには戻るのが基本的な運行パターンである。

 同社ではその他にも建材や段ボール、冷凍食品、家電宅配、特積みの集配なども行っている。近距離輸送が主で、遠方でも西は岡山、東は名古屋くらいまでである。ただし、大型車1台だけは大阪〜東京を運行しているが、これは実験事業なので例外であり、往復とも実験事業に協力している荷主の荷物が決まっている。これらをCNG車とHV車で行っているが、CNG車のイニシャルコストならびにランニングコストはどの程度なのだろうか。CNG車の車両価格については、「補助金があるので一般の車両とほとんど変わらない」(池田取締役)という。購入方法もLEVO(運輸低公害車普及機構)のリースである。また、民間のCNGスタンドが同社から5分程度の近距離に4カ所ある。大阪市環境局や大手事業者、そして同社とCNGの大口ユーザーが3社あるので、CNGスタンドの採算が取れるからだという。スタンド間の競争もあり「インタンクよりも安い」(池田取締役)という。

 同社は物流環境啓蒙賞、地球温暖化防止活動大臣表彰、新エネ大賞・新エネルギー財団会長賞、日本環境経営大賞・環境フロンティア部門地域交流賞、“賞by繁盛”大阪フロンティア賞・創業奨励部門最優秀賞、交通関係環境保全優良事業者等大臣表彰、トラック輸送振興顕彰、日本環境経営大賞・環境経営優秀賞、グリーン物流優良事業者・経済産業省大臣官房商務流通審議官表彰その他の表彰を受けている。

 また特徴的なのは平均年齢が37、8歳と従業員が若いことである。免許などの取得にも意欲的で、運行管理者34人、衛生管理者8人、安全管理者4人、大型免許42人、リフト免許55人である(重複あり、取材時点)。ドライバーで構成する「エコトラッカーズ」では自発的に改善活動などに取り組んでいて、安全面でも同社への注目度が高いので「見られているという意識が安全面にも反映している」(同)という。このように同社は低公害車の普及と差別化戦略を展開している。

<物流ジャーナリスト 森田富士夫>