運送事業者レポート
TOP運送事業者レポートtop>2014年7月

運送事業者、荷主における新たな取り組みや成功事例にスポットをあてたインタビュー記事。(毎月第1週に更新)

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【第45回】 ダイセーエブリー二十四株式会社(愛知県一宮市)

グローバル化に対応しすでに4カ国に進出



 経済のグローバル化に対応し、物流事業者の海外進出が進んでいる。現在のところアジアが主になっているが、荷主企業の生産拠点の海外シフトなどに伴って進出するようなケースが多い。海外に進出した荷主企業は、現地の物流を日系の物流事業者に委託したいというニーズを持っているからだ。国によって法体系などが違うために、100%の外資では倉庫や運送事業をできないような国も少なくない。そこで実運送は現地事業者を使っているようなケースが多いが、合弁などで進出した日系物流事業者に元請として委託した方がサービス品質などの面で信頼がおける。

 このような背景の中で、2011年5月にタイ(バンコク)、2013年6月に中国(上海)、2013年11月にマレーシア(ペナン州スブラン・プライ郡)、そして2014年5月にはインドネシア(ジャカルタ)へと進出したのがダイセーエブリー二十四(本社・愛知県一宮市、田中孝昌社長)である。

 ダイセーエブリー二十四(以下ではエブリー24と表記)は、ダイセーグループの一社で、同グループにはダイセーロジスティクス、ダイセーエクスプレスシステム、ダイセー倉庫、ダイセー物流その他がある。同社の業務内容はチルド食品を中心とした配送業務ならびに物流センター業務で、多数のメーカーや問屋からの荷物を混載して大型量販店やコンビニなどの物流センターに納品するというのが特徴である。各地にスーパーハブセンター、ハブセンター、センターを配置し、それらと納品先を結ぶ幹線ネットワークを構築している。

 この幹線輸送は定時のダイヤグラムがあって、出発センターから行き先別に出発時間、納品開始時刻、納品完了時刻、商品カテゴリーなどが一覧になっている。電車やバス、航空機の時刻表と同じだ。荷主はこのダイヤグラムをみて自社の荷物を何時発、何時着の何々センター行きに載せたいと選択。出発1時間前までに商品を持ち込めば良い。

 エブリー24では、このような物流サービスの展開で149億3900万円の売上を上げている(2013年12月期)。そのうち海外の売上は8400万円であるが、この間、積極的に海外進出を図っており、「2019年12月期では海外売上を50億円」(田中孝昌社長)にする計画である。

 海外進出の理由は、「基本的には種まきをしておかなければいけない」(田中孝昌社長)からだ。現地で製造した商品の日本への輸出もそうだが、将来的には現地でのコールドチェーンの構築も視野においている。だが、これまでは基本的に現地から来てくれという話しがあっての進出で、あくまで「自分たちにできる範囲でしか出て行っていない」(田中社長)。それでも、温度管理やサービス品質での差別化にはなっており、現地の市場動向などをみながら、自分たちのペースで事業の拡大を図りつつ、いずれはアジアの広域でコールドチェーンのネットワーク事業展開を構想しているようだ。



 最初に進出したタイは、市場の将来性は当然だが、グループ会社のジェットエイトがすでに進出しているということもあったという。合弁なら自車両を保有することが可能で、すでに15台の車両をもって事業を行っている。13年6月の上海は、荷主が工場をつくるのに伴ってオファーがあったので進出した。上海は独資企業だが、これは物流会社としてではなくコンサルティング会社として進出している。もちろん、将来は自社の車両での事業展開を視野に入れているが、法的な制約などもあって、現在は可能性を探っている段階だ。13年11月に進出したマレーシアは現地法人との合弁だが、相手は物流企業ではなく、品質の高い農産物の生産事業を行っている会社である。カボチャやオクラ、水耕レタス、唐辛子などの生鮮野菜を生産し、マレーシア国内や日本に出荷している。今後は東南アジアを中心に他の国への輸出も計画しており、それらの物流業務を行う。

 マレーシアでは車両も「最近ようやく1台が納車になった」(田中社長)ような状況だが、いずれはクアラルンプールに倉庫をもち、同市近郊に進出している日系のコンビニや小売店、レストランなどへの配送も計画している。インドネシアの新会社は、日系の現地外食企業との共同出資で設立。今秋に営業開始の予定で、共同出資の外食チェーンの店舗で使用する食材の輸入や物流業務からスタートする。そのために常温倉庫(約300u)と軽トラック1台を準備する。インドネシアでもコールドチェーンの浸透状況などを見極めながら施設などを整えていく予定で、将来的には物流ネットワークの構築を構想している。

 エブリー24は、国内市場では幹線ネットワークの拡充などによってシェアの拡大に努め、海外市場では将来に向けた「種まき」と市場動向を見極めながら事業拡大を図りつつ、アジアにおけるコールドチェーンのネットワークを構築していく方針のようだ。

<物流ジャーナリスト 森田富士夫>