運送事業者レポート
TOP運送事業者レポートtop>2014年11月

運送事業者、荷主における新たな取り組みや成功事例にスポットをあてたインタビュー記事。(毎月第1週に更新)

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【第49回】 茨城乳配株式会社(茨城県水戸市)

ISO39001認証を3営業所で同時に取得



 トラック運送業界では安全性優良事業所(Gマーク)やグリーン経営の認定・認証取得の普及に取り組んでいる。企業の社会的責任や顧客サービス向上、業界のレベルアップのためにも必要なことだ。一方、経済のグローバル化が進んでいる。国内の物流も輸出や輸入と連結した貨物が増えてくる。つまり国内輸送といえども国際物流という一貫した流れの中の一部になってくる。国内だけでトラック運送や物流事業をおこなっていても、荷主ニーズとしてはグローバルスタンダードのサービスレベルを求めるようになってくる。したがって安全、環境、品質(大手企業では会計基準)など、可能であればISO認証の取得が望ましい。

 このような中で茨城乳配(本社・茨城県水戸市、吉川信治社長)は、今年7月18日付けで本社、千葉営業所、宇都宮営業所でISO39001を同時に認証された。『安全・安心・共存』という同社の経営理念の一番最初にある安全の可視化である。

 茨城乳配の設立は1965年で、長年にわたり大手乳業メーカーの仕事を中心に運送事業を行ってきた。その後、メインの取引先である大手乳業メーカーの仕事をベースに、新たな取引先を開拓する方向を打ち出した。温度管理を要する食品を主体に、大手取引先のチャーター契約の荷物をベースにして、新規開拓した取引先の荷物を積み合せて共同輸配送する。そして共同化によって生み出せる混載差益を、チャーター契約のメインの取引先にゲイン・シェアリングする、というのが同社の基本戦略である。これは同時に、自社の適正利益の確保でもある。

 その結果、現在ではメインの取引先の売上比率が50%以下になっている。このように茨城乳配では、特定取引先への売上依存度が高い経営から、この間に経営内容の転換を図ってきた。だが定時定ルートを主体にした輸送から、積み合せ輸送に移行するにしたがって、事故も増えてきたのである。


 同社は現在、本社、千葉営業所、宇都宮営業所、水海道営業所(常総市)、湘南営業所(平塚市)がある。従業員数は約190人で保有車両数は約140台。売上高は約23億円で、売上の内訳はセンター管理運営が30%、輸配送部門が70%という割合。輸送形態としては幹線輸送と配送の両方がある。

 このような規模になる以前は、チャーター輸送がほとんどで、吉川国之副社長が6年間勤務した損保会社を退職して同社に入社した当時は、売上規模が約8億円だった。損保会社の経験から事故には関心が高かったようだが、「入社した時は思ったより事故がなかった(吉川副社長)という。吉川副社長は入社して新規開拓に努力した。「それまでは提案の経験がなかったので、試行錯誤しながらの営業開拓だったが、やがてコストダウンの方法なども提案するようになった」(同)という。だが、取引先も増加し、共同輸配送が増えてくるにしたがって事故も多くなってきた。



 とくに売上が15億7000万円から短期間に20億円にまで伸びた2012年ごろに事故が急増したという。そこで安全最優先で取り組むことにした。安全は社員の命に直結する問題でもある。同社はGマークも取得しているが、安全最優先という考え方に基づいて対面点呼を徹底している。「当社ではIT点呼はやらない。顔色や雰囲気など健康状態などを把握するためには対面点呼の方が良い」(吉川副社長)からである。

 そのような安全への取り組みの中で、安全を「統一基準にするためにISO39001を使って整理し、外部からチェックしてもらう」(同)ことにした。ISOの認証取得に向けてプロジェクトチームを立ち上げたのは昨年12月で、本社と各営業所からメンバーを選抜し、外部からはコンサルタントにも月2回加わってもらった。ISOに取り組んだのは本社、千葉、宇都宮の3営業所である。そして今年7月18日に3営業所が同時に認証された。


 ISO認証への取り組みは順調に進んだようにみえるが苦労もあった。その一つは「文言が難解で言葉を理解するのに苦労した」(吉川副社長)こと。また、「PDCAサイクルのなかでC(チェック)のところで手間取った」(同)という。トラック運送業においては、数値化が難しくチェックしづらい部分もあるからだ。
 このISO認証への取り組みでは様ざまな収穫もあった。第一は「社内に自覚を持った従業員が増えてきた」(同)ことである。もう一つは「管理職のレベルが上がった。管理職教育にも役立った」(同)ことだ。反面、「スキルの高い管理職のところはスムースに進む」(同)ということも改めて分かったという。

 同社は来年8月で設立50周年を迎える。そこで来年からの3カ年計画では年商30億円を目指す方針だ。北関東にウェイトをおき、これまでのビジネスモデルを基本に事業展開し「仕事で勝負する」(同)。そのためには安全の徹底が最重要という認識である。

<物流ジャーナリスト 森田富士夫>