運送事業者レポート
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運送事業者、荷主における新たな取り組みや成功事例にスポットをあてたインタビュー記事。(毎月第1週に更新)

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【第52回】 株式会社ボルテックスセイグン(群馬県安中市)

保育園を開設し女性の雇用促進を図る



 物流業界に限らず、いまやあらゆる業種の企業で労働力不足が深刻になっている。少子高齢化の進行によって若年労働力が減少しているからだ。このような中で定年退職者の雇用延長など高齢者の活用と、女性の雇用促進が大きなテーマになっている。トラック運送業界においても定年退職したドライバーの雇用を延長するなど、高齢者の活用が拡がりつつある。

 一方、女性の活用も重要なテーマだが、トラック運送業界ではまだまだ女性ドライバーが少ないのが現状である。それには様ざまな理由があるが、その一つに女性が働きやすい職場環境の整備が進んでいないことがある。これまでずっと長年にわたって「男社会」できたために、女性が働きやすい職場になっていないのである。そこで女性を積極的に活用していく方策の一環として、社内保育所をつくり、認定後は一般保育園にする計画を進めているのがボルテックスセイグン(本社・群馬県安中市、武井宏社長)である。

 ボルテックスセイグンは1951年(昭和26年)6月の設立で、2013年6月現在の社員数は436人(うち正社員286人)。運送業、倉庫業、通関業、産業廃棄物収集運搬業、業務請負、特定労働者派遣業、引越サービスなどを行っている。営業拠点は本社物流センター(人見、横野平、鷺宮の各物流センターを含む)、上越物流センター(新潟県)、白河営業所・白河事業所(福島県)、千葉営業所、長野営業所がある。

  その他にグループ会社として、ボルテックスセイワ(自動車整備)、ボルテックスアーク(観光バス)、ヒューマンサポート(人材派遣)、ボルテックスピース(保険業)、アークタクシー(タクシー)、三栄運輸(運送業)がある。このような中で、女性のトラックドライバーは本社に4人いるだけ。「本社は様ざまな業務があるので女性ドライバーを活用できるが、営業所では女性ドライバーを採用するためのハード面が整っていないから」(武井社長)である。


 同社は日用雑貨の大手荷主の仕事なども行っているが、全体的にはメーカー物流が主体で車両も大型車が多い。基本的に長距離輸送は行っておらず、大型車による中距離輸送が主である。4人の女性ドライバーの中にはトレーラに乗務している人もいるが中型車が主である。物流センターの作業に従事している女性は多い。

 「最近は男女を問わず大型車の免許を取る人が減少している。いずれにしても労働力が不足する中で女性の活用が重要になり、女性の雇用を促進していかなければならない。そのためには女性が働きやすい職場環境を整えていく必要がある。とくに小さな子供がいる若い女性の場合には、子供をどうするかという問題がある」(武井社長)。このような認識から、「2013年ごろから社内保育所の構想をもっていた」(同)という。まずは本社からで、当初は昨年4月にスタートする予定だったが、補助金の関係などから最初の計画よりも1年遅れでの開所となった。



 補助金を申請したのは昨年7月だった。会議室とドライバーの仮眠所を兼ねた建物があったが、仮眠所はそのままとして会議室を改築して保育園にするという計画である。申請に対する認定がでたのが9月で、11月に改築工事に着工し12月24日に完成した。保育所は保育室、乳児室、調理室、事務室などからなっている。改築費用は約3700万円で、その他に遊具などに約300万円かかった。補助金の対象になるのは改築費の約3700万円で、上限を2300万円として建築施工費の3分の2までの補助となる。

 最初はボルテックスセイグン託児所として年明けの1月5日からスタートした。社員の子供3人の保育から始め2月からは4人になる。このように実態を先行して変更申請をし、申請に対する運営状況訪問確認を経て認定されると4月からは一般保育園になる予定だ。安中市から保育士などの人件費に対する助成もでるようになる。


 保育園の名称は「うずまき保育園」で経営はボルテックスセイグンだが、運営は市内にある民間保育園の「あさひ保育園」に委託している。「目的は女性の雇用促進のための労働環境の整備で、社内的にはあくまで福利厚生の一環。当社で経営するが利益などを求める考えはいっさいない」(武井社長)。

 認定されて4月から一般保育園になると社員以外の子供の受け入れもできるようになる。すでに取引先企業からも、荷主企業で働いている社員の子供の保育受け入れなどについての問い合わせが来ているという。社外の子供の受け入れが多くなれば、社員の子供はわざわざ本社内にある保育園に入園させるよりも、住まいの近くにあるあさひ保育園にあずけた方が良いケースもある。その場合でも、保育料の差額分などは会社が福利厚生費として補填すれば良いので柔軟に対応していく方針である。これからは女性雇用促進のために社内保育所なども必要になってくる。

<物流ジャーナリスト 森田富士夫>