運送事業者レポート
TOP運送事業者レポートtop>2015年7月

運送事業者、荷主における新たな取り組みや成功事例にスポットをあてたインタビュー記事。(毎月第1週に更新)

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【第57回】 東京ユニオン物流株式会社(東京都武蔵村山市)

乗務員の疲労度を見える化し睡眠や急発進との関連も把握



 トラック運送業にとって安全への取り組みは最重要課題である。そのため各社各様に安全管理をしているが、今回はドライバーの疲労度を見える化し、具体的なデータに基づいて事故の未然予防、運転時の注意喚起、オフタイムの健康管理などに取り組んでいる事業者の事例を紹介する。

 この事業者は東京ユニオン物流(本社・東京都武蔵村山市、原垣内重幸社長)で、同社は東京システム運輸ホールディングス(本社・東京都東大和市、河端常男社長)のグループ会社である。ドライバー疲労度の見える化は、始業時と終業時にフリッカー疲労検査法によって疲労を計測(注)。計測されたフリッカー値に基づいて疲労の状況を認識することで安全運転の意識を喚起したりするというもの。このフリッカー値では、前日の睡眠時間との関係や、デジタコに記録されている急減速の回数などとの相関関係も分かり、日頃からの健康管理などにも役立たせることができる

 東京ユニオン物流は、本社およびクロスドッキング・センター(ターミナルX)の他に、川口営業所(埼玉県川口市、ターミナルX2)、横浜営業所(神奈川県海老名市、ターミナルX3)、立川営業所(東京都武蔵村山市)、日高営業所(埼玉県日高市、Jマート物流センター)がある。保有車両数は150台で、従業員数は295名(うち正社員は170名)。年商は約31億円(2015年3月期)である。業務内容は、本社のターミナルX、川口営業所のターミナルX2、横浜営業所のターミナルX3がクロスドッキング・センターで、全国各地から幹線輸送されてきた、主に中ロットの荷物を配送コースごとに仕分けて配送車で配送するという仕組みである。また、3つのクロスドック・センター間の「首都圏トライアングル」での横持ち輸送も行っている。一方、立川営業所はチルド車による食品スーパーの配送をしており、日高営業所はJマートの専用センターで配送業務を行っている。


 このように東京ユニオン物流の独自のサービス・システムは、クロスドック・センターを核とした首都圏エリアにおける積合せ配送である。3つのクロスドック・センターには0時ごろから午前2時ぐらいにかけて、全国各地から幹線輸送の納品車が到着する。到着した荷物のうち当該センターの配送エリア内に納品するものは配送コースごとに仕分けて配送車両に積み込む。他のセンターの担当エリアに納品される荷物は、3つのセンター間で大型車による横持ち輸送を行う。

 配送地域は東京、埼玉、神奈川の1都2県の各センターから半径50〜60qのエリアで、千葉県は基本的に配送エリアに設定していない。配送車両の全体の1日平均走行距離は100qぐらいという。また、横浜営業所からは静岡県の沼津市や下田市までチャーター便を出している。さらに、小さな荷物でも同社のクロスドック・センターに持ち込めば共同配送のシステムに乗せて配送するサービスもある。



 このような業態の中で、東京ユニオン物流ではフリッカー疲労検査法による疲労度の見える化を図った。同社が導入したシステムは、パソコンにインストールし、1人のドライバーが1測定に要する時間は50秒程度。

 パソコンの画面(バックは黒)に、上下左右に4つに分割された白い○が表示される。4分割されたうちのどれか1つの白い部分が高速で点滅する。点滅が高速で繰り返されると、見た目は白で、点滅しているようには見えない。点滅の速度を少しずつ遅くするに従って、4分割された中のどの部分が点滅しているかが認識(感知)できるようになる。点滅している部分が上か下か右か左かが分かった時に、パソコンのキーボードの上下左右の矢印のいずれかを押す。どの点滅速度で認識できたかを計測したものがフリッカー値である。測定結果はパソコンに自動保存でき、プリントもできる。点呼時に管理者、ドライバーの双方で疲労度を確認することが可能である。


 人によって疲労度の個体基準は異なるので、1週間ぐらい測って上位3つの計測値を基にその人の基準値(=100)を設定する。この基準値に対してマイナス5%の数値が出ると疲れていると判断し、さらにマイナス10%の数値が出ると運行管理者に相談して下さいとしている。

 たとえば、朝の計測でマイナス5%の数値が出たら、今日はどうするか、となる。疲労していることを自覚して、より注意して安全運転に努めたり、自己コントロールで休憩などを取ったりする、といった対応である。出発前と帰ってきてからの2回測定し、疲労の自己申告(自覚的疲労指数)から、客観的な判断に基づく対応にしたのである。さらに日高営業所では今年4月から、角度によって光の反射を防ぐサングラスで疲労を軽減する実験も始めた。4月は天気の良い日が少なかったが、それでも半数以上のドライバーで、サングラスの効果がフリッカー値に反映しているという結果が出ている。

<物流ジャーナリスト 森田富士夫>
注)フリッカー値=高頻度に点滅する光がチラついて見える限界の頻度値。労働科学分野において疲労度の測定などに用いられる。