運送事業者レポート
TOP運送事業者レポートtop>2016年4月

運送事業者、荷主における新たな取り組みや成功事例にスポットをあてたインタビュー記事。(毎月第1週に更新)

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【第66回】 桜運輸株式会社(愛知県弥富市)

女性支援プロジェクトで積極的にトラガール採用



 女性ドライバーの採用に力を入れる事業者が増えつつある。女性ドライバーは荷役作業がハンディになるため、宅配便などの小口荷物やキャスターのついたカーゴテナーで納品する店舗配送などで多く採用されている。また、ドライバーが自分で荷役作業をしないダンプや海上コンテナ輸送なども女性ドライバーの働きやすい分野だ。

 
海コンや工作機械などのトレーラ輸送をメインに事業を行っている桜運輸(愛知県弥富市、細江良枝社長)では、女性ドライバーを積極的に採用するために、2014年6月から女性支援プロジェクト「木桜咲弥(このはなさくや)」を社内に設置して、女性ドライバーが働きやすい環境整備などを進めている。同社の女性ドライバー支援プロジェクトでは、この間、様ざまな取り組みによって女性ドライバーが働きやすい環境整備などを進めてきた。その結果、約1年半の間に6人の女性ドライバーを新たに採用し、現在は8人になった

 桜運輸は1967年に名古屋市で設立された。創業者はそれ以前から岐阜県美濃市から印刷機械を全国の印刷会社に運ぶ仕事を行っていたが、事業免許を取得する過程で会社を名古屋市港区に移し限定免許として取得することになった。最初は有限会社で設立し1974年に株式会社に組織変更している。

 同社が限定免許を取得した1967年当時は、コンテナ船の就航などコンテナ化が進んだころでもあった。地元の陶磁器を横浜までトラックで運び、横浜でコンテナに積んで輸出されるような仕事も多かった。そのようなことから、同社の仕事も少しずつ港関係の仕事にシフトしていったのである。1978年には愛知県に本社のある工作機械の大手メーカーとの取引も始まった。この荷主は輸出が多く、同社の仕事も輸出70%、国内30%だった。輸出は主に名古屋港からで、名古屋港に入ってくる海コンの輸送も行うようになり、現在では海コン輸送がメインになっている。


 同社の売上構成は海コン輸送70%、工作機械関係10%、石油化学製品(フレコンや紙袋)とその他20%という割合。保有車両数は206台で、内訳は2t車1台、4t車1台、10tウイング車1台、10t平ボディ車2台、トレーラヘッド58台、トレーラシャーシ143台である。従業員は69人で、うち女性ドライバーは8人である。このような中で積極的に女性ドライバーを増やしていこうと「木桜咲弥」プロジェクトに取り組んでいる。

 女性ドライバーの採用に力を入れるようになったのは、細江社長が外部の勉強会などを通してこれからは女性ドライバーを採用すべきだと考えるようになったからだ。女性支援プロジェクトでは、通常は総務や経理の業務を担当している女性をマネージャーにした。女性ドライバーからするとリーダーが女性の方が何かと話しやすいからだ。この女性マネージャーは女性ドライバーの採用、面接なども行っている。



 プロジェクトの発足時点ですでに4人の女性ドライバーがいた。「女性ドライバーが目立たないことには意味がない」(細江社長)ので、女性マネージャーと女性ドライバーが中心になり、ユニホームの刷新を検討した。その結果、白いポロシャツと紺のベストというお洒落なユニホームを採用することになった。だが、2人の女性ドライバーが「そんなユニホームは着たくないという理由で辞めてしまった」(細江社長)という。

 また、港のヤードのトイレが課題に上った。夜間などに一般の人が勝手に使えないように、使用する時に声をかけないと入れなかったり、カギを借りないと使用できないようなトイレもある。相手が男だったりすると「なかなか声をかけにくい」とか、「使いにくい」などの問題点が明らかになった。そこで愛ト協海コン部会に実態調査結果を渡し、部会長を通して、港の管理者である名古屋港管理組合(愛知県と名古屋市)に改善要請をしてもらって改善された。


 社内ではセクハラ防止教育に力を入れている。また「社外にも女性ドライバーの声を伝えて対策をとってもらうようにしている」(細江社長)。女性ドライバーが納品に行った時には、先方でも女性が立ち会うようになったケースもある。運行管理面では、納品先には日が昇って明るくなってから到着するような配車などの配慮もしている。ヘルメットに記入する名前なども、つばの内側にフルネームを記入して外側は名字だけにするといった対応もしている。

 女性ドライバーが増えたことによる効果も表れてきた。第1には、なんといってもドライバー不足の解消である。それ以外にも男性ドライバーも含めて身だしなみが良くなり、会社が全体的に明るくなってきた。配車担当者の言葉遣いも変わってきて、無線応答なども良くなったという。さらに「管理者側が安全管理や安全教育に対する自分の責任などを自覚するようになってきた」(細江社長)といった予期せぬ効果もある。

<物流ジャーナリスト 森田富士夫>
(写真提供:桜運輸)