運送事業者レポート
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運送事業者、荷主における新たな取り組みや成功事例にスポットをあてたインタビュー記事。(毎月第1週に更新)

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【第68回】 カンダコーポレーション株式会社(東京都北区)

買い物代行「はこびぃまーと」をスタート


 買い物弱者に対する関心が高まってきた。過疎化が進む地方だけではなく、高齢化が著しい都市部でも、買い物弱者を支援する仕組みづくりが社会的な課題になっている。買い物弱者への支援には、大きく2つある。1つは移動販売であり、もう1つは買い物代行である。前者は食品や日用品などを買い物弱者の近くまで運んで販売、後者は注文を受けた商品を購入して届けるという仕組みだ。移動販売は昔でいえば行商であり、買い物代行は御用聞きともいえる。古くから日本にあった商行為の現代版である。

 いずれにしても買い物弱者を支援する仕組みは、何らかの形で「物流」が伴わなければ成り立たない。これは物流事業者にとっては新たなビジネスチャンスである。このような背景の中で、カンダコーポレーション(本社事務所・東京都北区、勝又一俊社長)では、4月1日から新潟市中央区の全域と西区の一部地域を対象に、買い物代行サービス「はこびぃまーと」を始めた。

 「はこびぃまーと」の買い物代行サービスを利用するには、事前に会員登録が必要だ。入会金や年会費は無料である。会員には商品カタログを配布する。この商品カタログは3カ月ごとに新しく発行する。4月のサービス開始時の加盟小売店はマツモトキヨシと地元食品スーパーのキューピットで、カタログには両社の商品の本体価格と税込み価格が掲載されている。なお、生鮮食品などは「当日価格」となっている。

  達時間帯は、@11〜13時、A14〜16時、B17〜20時。前日の注文なら@ABの中から都合の良い時間帯を指定することができる。当日11時までの注文では、ABのいずれかの指定で、当日14時までの注文では配達時間帯はBのみとなる。受注センターは都内にある同社のBtoC推進室で、会員はフリーダイヤルの電話だけでなくFAXやWebでの注文も可能だ。受注内容は新潟営業所でもリアルで確認でき、受注伝票をプリントする。


 この受注伝票に基づいて、営業所の担当者が加盟店にいって商品をピックアップして通常のレジで精算をする。商品購入代金を同社が立替え払いする形で、会員からは配達時に代金引換(現金支払い)で回収する。商品代金の他に、配送料が1回、買い物カゴ(505×360×250)1個分で350円(税抜き)。1カゴを超える場合は、1カゴにつき200円(同)を追加する。また、不在で1度持ち帰って再配達の場合には、再配達料が300円(税抜き)追加になる。さらに1商品当たり買い物代行手数料が30円(同)となっている。

 当初は商品1点当たり30円としていたが、同じ商品を複数買うと代行手数料が高くなるので、開始から2週間後には1商品当たり30円に変更した。その結果、「同じ商品の複数注文が増えてきた」(菊地隆幸・新潟営業所所長)という。1回の購入金額の上限は3万円(消費税抜き)で、加盟店のポイントの付与も可能となっている。



 スタート時のサービスエリアは新潟市の中心地域で、中央区は市内8区の中では1番面積が狭いが人口は18万3000人余(2月1日現在の推計)と1番多い。一部地域だけをサービス対象にしている西区も人口が16万2000人余(同)で、両区を合わせた世帯数は約11万7000世帯である。

 同社では「はこびぃまーと」の専用車として軽のバン車を2台導入した。現場の専用スタッフは女性4人で、ローテーションを組んで就業している。基本的には365日サービス(加盟店が開店していれば)である。加盟店は当初は前述の2社から始めた。一方、会員募集は「チラシのポスティング、地元紙『新潟日報』への新聞折り込み、加盟店の店頭など」(菊地所長)である。まだスタートして約2カ月しか経っていないが、徐じょに会員数も増加。「2年以内に採算ベースに乗せる」(菊地所長)方針で、@加盟店と取扱商品の拡大、Aサービスエリアと会員数の拡大が検討課題だ。


 サービスエリアでは、「現在のサービスエリア以外の人たちからも買い物代行サービスを望む声が寄せられている」(菊地所長)という。たとえば「江南区の一部地域には古い団地があります。東区も買い物が不便です」(同)。

 一方、取扱商品の拡大ももう1つの課題だ。「加盟店を増やして7月号のカタログからはメニューを増やすことを検討している」(同)。だが、現在の加盟店の商品とバッティングしない小売店を開拓する必要がある。たとえばパン屋、洋菓子屋、和菓子屋などである。また、酒類の取り扱いなども検討しており、税務署とも話し合っているという。酒類の販売には資格がいるが、特定商取引法との関連でいえば同社は売買関係には法的に関わっていない。だが、税務署の解釈とは多少の齟齬があるようで、酒類の取り扱いはもう少し時間を要するようだ。いずれにしても「はこびぃまーと」はカンダコーポレーションの商標で、従来にないBtoC市場への参入である。

<物流ジャーナリスト 森田富士夫>