運送事業者レポート
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運送事業者、荷主における新たな取り組みや成功事例にスポットをあてたインタビュー記事。(毎月第1週に更新)

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【第70回】 株式会社富士宮運輸(神奈川県川崎市)

初めての申請で「3つ星」評価


 東京都では2012年度から、CO2削減を推進する一環として、貨物運送事業者のエコドライブへの取り組みを評価する「貨物輸送評価制度」を実施している。@日常的なCO2削減の努力を分かりやすく評価、A事業者のCO2削減の努力と実績をアピールすることで受注機会の拡大につなげる、B荷主による環境に配慮した事業者の選択を促進して一層のCO2削減を目指す、といったことが狙いである。都内に貨物を運送する貨物自動車運送事業者が対象で、営業所単位ではなく会社全体を対象に評価する。審査事項は、@ドライバーへの教育訓練・指導体制構築の状況、A燃費管理の状況、B燃費データベース構築の状況である。評価方法は、東京都トラック協会のグリーン・エコプロジェクトで蓄積した月単位の燃費データから、車種、重量などによって設定した52区分の平均燃費値を基に、実走行燃費の偏差値を算出し、各事業者の全車両の平均偏差値で評価するというもの。

 3つ星は58.5以上、52.6以上58.5未満が2つ星、52.6未満が1つ星である。今年度は、3つ星事業者が21社になった。2つ星事業者は106社、1つ星事業者が137社である。今年度に新たに3つ星事業者になった8社の中の1社が富士宮運輸(川崎市多摩区、雨宮貴廣社長)である。ちなみに3つ星21社のうち東京都以外に本社のある事業者は8社である。

 富士宮運輸が東ト協のグリーン・エコプロジェクトに参加したのは昨年3月だった。「1年経過して2年目になったので、どのように評価されるか試してみよう」(雨宮貴廣社長)と、初めての申請で3つ星の評価を得ることができた。同社は1968年8月に、雨宮國廣代表取締役会長が設立した。現在は富士宮グループとして富士宮運輸の他に、富士宮興業、ジャパン通商、東西企画産業、富士コントロール、富士インターナショナル、富士宮商事、ジャパン開発、甲斐路興産がある。


 このうち甲斐路興産は保有台数10台の運送会社で、富士宮運輸のメインの取引先の山梨における運送業務を行っている。富士宮運輸の保有車両数は51台(4t車1台、3t車3台、2t車47台)で、バン車と平ボディ車だ。従業員数は48人で、そのうちドライバーは46人。輸送品目は住宅資材、事務機器、精密機械、医療機器、引越サービス、その他である。このうちメインの輸送品目は住宅資材で、売上全体の60%を占めている。メインの輸送品目の住宅資材は、埼玉と横浜にある荷主の配送センターから、工務店や建築現場などに輸送している。同社の配送エリアは東京都内と神奈川県内である(山梨県は甲斐路興産が輸送)。納品先は工務店やビルダーが主でルート配送になっている。しかし、直接現場に納品するようなケースもあるようだ。また、機械関係では配電盤などを工場間輸送している。このような業務内容の中で、都内に入る車両が半分ぐらいはある。

 現在の本社は川崎市だが、当初は都内だったので東ト協太田支部に所属している。そのようなこともあり、昨年3月から東ト協のグリーン・エコプロジェクトに加わった。同社では、以前から安全と環境にはずっと力を入れて取り組んできた。社内研修会は毎月1回開催し、その他にも必要に応じて随時実施している。勤務時間は朝の5時ないしは6時からで、17時ぐらいにはほとんど仕事が終了する。また、主要な取引先は基本的に土日が休みになっている。走行距離も短く、「1日の走行距離が60、70qから130q、長くても150qぐらいで、全車両の平均では1日100qぐらいしかない」(雨宮社長)。そのため「長時間労働という面では、当社の場合はほとんど問題がない」(同)。とはいっても全員が一堂に会せるのは年間でも何回かしかない。そこで月1回の研修は「いくつかのチームに分け、集まりやすい職場に出向いて行っている」(同)。


 省エネ運転の評価でも以前から1台ごとの実績を月間一覧表、年間一覧表にするなどデータの蓄積があった。昨年3月からグリーン・エコプロジェクトに参加したが、「以前から自社でやっていたデータがあり、それをグリーン・エコプロジェクトの様式にしただけ」(雨宮社長)である。そのデータも1年分(2015年4月〜2016年3月)まとまり、「グリーン・エコプロジェクトも今年4月から2年目に入った。そこで、自分たちの1年間の取り組みがどうだったかを評価してもらおう」(同)と、東京都の貨物輸送評価制度に申請したという。その結果、初めての申請で3つ星の評価を得ることができた。そこで同社は、省エネ運転の取り組みを通して、安全運転の推進はもとより、今後は車両修繕費の削減や消耗品費の削減などにも力を入れていこうとしている。省エネ運転の取り組みを通して、安全や経営改善にもつなげていこうという考えである。

<物流ジャーナリスト 森田富士夫>