運送事業者レポート
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運送事業者、荷主における新たな取り組みや成功事例にスポットをあてたインタビュー記事。(毎月第1週に更新)

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【第75回】 フライスター物流株式会社(神奈川県藤沢市)

複数業務ができるようにして労働時間短縮


 フライスター物流(本社・神奈川県藤沢市、富永義男社長)は、首都圏エリアでドライ食品や飲料の共同配送を中心に事業を展開している。同社では安全への姿勢を具体的な形として見える化するため、一昨年4月からGマーク認定取得に向けた取り組みを始めた。その結果、同年12月には厚木営業所で安全性優良事業所の認定を取得。所属車両は昨年1月からGマークをつけて走行している。

 Gマーク認定の取得からちょうど1年が経ったので、同社の事業概要や安全への取り組みなどについて取材した。フライスター物流の設立は1989年。設立当初は、パン粉のトップメーカーであるフライスターの商品を中心に、首都圏の食品問屋などへの配送からスタートした。その後、食品メーカーなどの取引先を開拓して共同配送を実現した。その結果、年商約12億円(2016年3月期)のうち、現在ではフライスター以外の荷主からの売上比率の方が高くなっている。

 同社は運送事業の他に貨物取扱事業、倉庫業を行っており、保有車両数は37台(10t 車12台、7t車10台、4t車11台、3t車2台、2t車1台、1t車1台)。その他に軽トラックもある。自車両の他に小口貨物は特積み事業者に委託し、共同配送の一部地域やチャーター便の一部でも協力会社に委託している。倉庫の延べ床面積は1万3530u。正社員数は55人で、そのうちドライバーが29人。正社員以外のドライバーには派遣社員などもいる。本社の他に厚木営業所(厚木市)と東日本野田PDセンター(千葉県野田市)がある。同社は共同配送の他に、幹線輸送や特積み事業者の利用なども行っている。取引先メーカーの滋賀県の工場、静岡県内の2工場から全国に出荷される小口の荷物は、同社が手配した大手特積み事業者に委託して輸送している。もちろんロットがまとまればチャーターで運ぶが、小ロットは特積みを利用する。これは商品の賞味期限が短いからである。


 共同配送は厚木営業所と東日本野田PDセンターの2カ所の拠点から、首都圏(東京、神奈川、千葉、埼玉)で行っている。納品先は食品問屋がメインで、量販店など大手小売業の物流センターもある。商品の流れはストックとスルーがある。ストックではフライスターの商品の他に、メーカー3社の荷主の商品をセンターに一時在庫し、オーダーに基づいてピッキング、仕分け、検品、共同配送をしている。これらの以外の荷主10社の荷物は夕方、同社センターに入ってきてスルーで共同配送をする。首都圏の1都3県でも遠方の配送効率が落ちるエリアは、提携している協力会社に配送を委託している。

 また、小ロットの納品先は特積み事業者に委託する。このようなことから1日の走行距離は比較的短い。「配送だけなら1日の走行距離は100q行かない」(伊藤一貴営業本部長)。それなら労働時間などもさほど問題にはならないだろうと思われるのだが、そうではないという。


 賞味期限の短い小ロットの商品は工場から特積み事業者に委託して輸送しているが、センター経由で共同配送する商品は、同社が自車両で工場から引き取りをしている。大型車の場合は集荷が毎日、何台かはある。配送が終わってからの引き取りでは長時間労働になってしまう。また、走行距離が短くても手待時間などで労働時間が長くなる。納品指定時間も大きなネックで、指定時間が重なってしまうこともある。さらに指定時間に行っても、ひどい場合には4時間も待たされることもあるという。共同配送の取引先とは、ケース単位で保管料金、荷役料金、配送料金を分けて契約している。だが、繁忙期などには納品先の荷受けの態勢が整わず、商品をそっくり持ち帰るようなこともあるようだ。そのような場合には「持ち帰りの運賃は荷主から支払ってもらっている」(伊藤一貴営業本部長)という。だが、さらにコンプライアンスを徹底するようにしなければならない。


 そこで2015年4月にコンプライアンスなどに詳しい顧問を招き、安全教育やGマーク認定取得に取り組むことにした。まず、手掛けたのはドライバーへの安全教育と、労働時間短縮などへの仕組みづくりである。たとえば、配送が終わってから工場に引き取りに行っていては長時間労働になってしまう。そこで「1人のドライバーが複数の仕事ができるようにした。複数の仕事を組み合わせて時間短縮を進めた」(湯原一成顧問)のである。あるいは納品先でのパレット積み替えの場合、先方のパレットを借りてきて出荷時にそのパレットに積んで出発する。

 さらに賃金体系の改革である。このような取り組みによって1年目で厚木営業所ではGマーク認定が取得できた。現在は野田のセンターのGマーク認定取得に取り組んでいる。厚木営業所ではGマークを取得して1年が経ったが、「安全に対する社内の意識が変わってきた。とくに古くからのドライバーは変わった」(伊藤本部長)。

<物流ジャーナリスト 森田富士夫>