運送事業者レポート
TOP運送事業者レポートtop>2017年2月

運送事業者、荷主における新たな取り組みや成功事例にスポットをあてたインタビュー記事。(毎月第1週に更新)

バックナンバー一覧はこちら

【第76回】 株式会社サンキューコーポレーション(東京都府中市)

ネット通販物流で独自のサービスを構築


 独立系のネット通販物流事業者として実績のあるサンキューコーポレーション(本社・東京都府中市、秋山悟社長)は、現在、約120社のネット通販会社と契約し、フルフィルメントのサービスを提供している。同社の創業は1963年2月で、会社設立は1965年10月。

 当初は大手路線事業者の配送業務を行っていたが、全国各地への路線荷物の発送業務にも進出。さらに自ら積合せ輸送にも参入した。その後、物流サービスメニューとして「速・戦・力」を商品化し、エリア別共同配送システムを開始する。さらに2温度帯同時輸送の共配便「冷・度・涼」を開始。トランクルーム・サービス「収納館in八王子」や、ネット通販(EC)物流にもいち早く参入した。現在は本社の他、三多摩地区に収納館in八王子、首都圏共配TC(国立市)、八王子ロジスティックスセンター、さらに関西地区にも京阪流通センター(京都府八幡市)がある。従業員数は約200人(臨時雇用を含む)。

 同社のサービスには、@物流サービス(食品共同配送システム「速・戦・力」、クール便共同配送システム「冷・度・涼」、センター代行アウトソーシング、流通加工、倉庫DC、物流診断など)、Aトランクルーム・サービス(収納館in八王子)、BEC支援サービス(八王子ロジスティックスセンター)などがある。このうち共同配送システムでは、サービスエリアを従来の首都圏(東京23区・三多摩・埼玉県の一部・千葉県の一部・神奈川県の一部)から三多摩地区に絞り込み、また同時積合せによる共同配送から「時間帯積合せ」による共同配送への移行を図るなど、ここ1、2年で大きな転換を図ってきた。このようなサービス内容の転換は、ドライバーの労働条件を改善しなければならないという考え方に基づいている。たとえば同時積合せによる共同配送(普通の共同配送)では、積載率が高い現状では運賃の単価を上げない限り、ドライバーの賃金を上げることができない。


 だが、運賃値上げにも限度があり、ドライバーの賃金を上げていくにはサービスの仕組みを変える必要がある。そこで発想を変えて「時間帯積合せ」への転換を図った。「時間帯積合せ」とは、貸切の配送業務だが、配送時間帯の異なる複数の荷主と貸切契約することで「時間軸」による積合せ共同配送というコンセプトだ。法的に許容される労働時間の範囲内で、貸切契約による時間帯の違う配送業務を複数組み合わせることで、生産性を高め労働分配も増やしていく。また、首都圏エリアから三多摩地区への配送エリアの絞り込みも、国立市にある首都圏共配TCを起点にした配送距離を考慮したものである。労働時間を短縮するためには走行距離の短縮を図らなければならない。八王子ロジスティックスセンターで行っているネット通販(EC)物流でも日祭日出荷や当日配送の契約はしない、という方針で臨んでいる。土曜日の作業は一部で受託しているが、日祭日の作業は請けていない。

 同社では、ネット通販会社との新規取引が月に2、3件あるが、反対にネット通販から撤退する取引先も年に何件かはある。これら新規契約に際しては「日祭日の条件なども含めて取引先を判断している」(水谷まゆみ取締役センター長)という。「労働条件を考えて仕事を取らないと従業員のモチベーションに関わってくるし、生産性の向上にならない」(秋山悟社長)からだ。作業時間は社員が8時〜17時30分ぐらい。パートは9時〜16時ぐらいである。もちろんパートは様ざまな勤務形態があり、作業に合わせて出勤するようにしている。また、同社センターには大手宅配便会社からの常勤出向者が、多い日には4、5人いる。これはネット通販の荷物が多いからで、出荷作業が終わった荷物から、出向者がハンディで読み取って仕分けして方面別カーゴテナーにつめる。センターと宅配便会社の営業所間は、専用のシャトル便(8t車)が毎日4便ないしは5便往復している。


 このように毎日、膨大な個人情報を取り扱っているので、同社では2006年にプライバシーマーク認定を取得した。顧客の購買行動ではPCからスマホに移行しつつあり、スマホからのオーダーが増えているという。同社が取り扱っているネット通販商品は、食品、サプリメント、医療機器、アパレル、ペット用品、雑貨、飲料、寝具など多岐にわたる。そこで取引先ごとに専任担当者をおき、出荷波動などにも対応できる態勢にしている。物流面からみた最近のネット通販の特徴では、「ジャンルは同じでも企業によって差がある」(水谷センター長)ようだ。廃業したりネット通販から撤退する取引先も出てくる。これはネット通販会社でも売り方などが違うということを意味している。そこで同社では「店舗の売り方によってセンターでの保管や作業の工程が違う。当社ではそのネット通販会社に合ったベストのサービス形態を選んで対応している」(水谷センター長)という。

<物流ジャーナリスト 森田富士夫>
(トラックの写真はサンキューコーポレーション提供)