運送事業者レポート
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運送事業者、荷主における新たな取り組みや成功事例にスポットをあてたインタビュー記事。(毎月第1週に更新)

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【第77回】 株式会社曙運輸(埼玉県越谷市)

拠点を増やし収益性を向上して週休2日制を目指す


 最近はトラック運送業界でもM&Aが盛んになってきた。そのような中で、一昨年10月に現役の県トラック協会長の会社を買収して注目されたのが曙運輸(本社・埼玉県越谷市、大野祐肇社長)である。買収したのは笠原運送(栃木県宇都宮市、当時の保有台数約40台)で、「赤字の会社だったが一昨年末には損金で落としてドライバーに賞与を出した。1月決算だが昨年12月までで12%の経常利益が出ており、今年1月期の決算では黒字になる見通し」(大野社長)という。

 これにより、トランスサーブ(自動車の整備並びに自動車販売の事業も行っている)を持ち株会社に、事業会社として曙運輸(本社の保有台数30台、東北営業所=福島市=26台)、関西曙運輸(京都府八幡市、40台)、九州曙運輸(福岡県八女市、49台)、アロハトラストライン(越谷市、27台)、笠原運送(45台)、リアルブレッセ(不動産賃貸ならびに管理)という体制になった。

 曙運輸は、アイスクリームや冷凍冷蔵食品、菓子などの食品を取り扱っている。メーカー物流が主で川上、川中の物流だが、全体的なニーズとしては小口化が進んでいるという。また構造的な変化としては、地方の人口減少で需要の主体が首都圏、中部圏、関西圏になってきたために地方工場から大都市圏へ、という輸送の流れが増えてきた。このような中で同社では、関東から名古屋、関西、九州では自車両を中心にし、関東から北は基本的に傭車にしていた。これは北海道などでは帰り荷の波動が大きいからである。北海道への下りの荷物はコンスタントにあるが、上りの荷物が少なく、季節波動もあるために地元の事業者が首都圏にきた帰り荷として出した方が効率面で良い。北への荷物は関東からだけではなく、九州、関西、名古屋から東北、北海道への荷物もある。しかし、ドライバーの確保難などもあって、東北の傭車が不足気味になってきた。


 そこで2013年に福島に営業所を開設し、その後、冷凍倉庫(東北物流センター)も建設。このように九州から東北までは自社でカバーできる体制を構築したのである。一方、同社もドライバー不足は切実で、とくに本社所在地では募集が厳しくなってきた。そこでこの間、地方での採用を増やしてきた。福島営業所も、東北の傭車確保が厳しくなってきたことにもよるが、福島でのドライバー採用という狙いもあった。給料体系は本社を基準にした体系なので、地方のドライバーからすると給与水準などが高いために有利だ。同時に働きやすい環境も整えて行かなければならない。持ち株会社で整備や自動車販売の事業会社でもあるトランスサーブの敷地内に宿泊施設も整えた。また、これからはドライバー確保という問題もあって、北海道を除けば、傭車に頼るよりも自力(グループとして)でネットワークを整えた方が良いという考えから拠点を増やす方針を打ち出してきた。

 同社は以前から安全管理、品質管理を徹底してきた。基本はデジタコとGPSで全車両の位置情報から温度管理までリアルタイムで本社が管理し、夜間の無人の時(積み置き)の冷凍機の事故にも対応できるように24時間管理体制をとっている。また夜間運行では24時を過ぎると、朝、納品先に到着するまでの間、2時間単位で点呼を実施している。笠原運送もそのシステムに組み込んだ。そして笠原運送では約1年半の間に15人ほど新たなドライバーを採用した。冷凍部門での採用である。車両も順次、冷凍車に入れ替えてきた。ただし新車ではなく、本社やその他から古い冷凍車両を回し、償却費を少なくして黒字化を図った。ところで笠原運送では約1年半の間に15人の新規採用をどのようにしたのだろうか。実は、福島営業所での募集では応募者がかなり広域から集まってきていた。「福島営業所で募集したら栃木県の北部エリアからの応募者もいた」(大野社長)のである。


 曙運輸ではドライバーの勤務や車両代替え、配車態勢などを転換しつつある。配車業務では昨年4月から女性担当者の採用を始めた。新規採用して運行管理者に育成する方針である。昨年4月に募集したら「5人の採用予定に80人の応募があった。正社員になりたい女性が多い」(大野社長)という。配車はドライバーのベテランが担当していたが、ベテランは現場責任者として欠勤者への対応や労働時間調整などドライバー不足を補う。配車は応募者が多い女性に切り替える。本社で成功すれば関西や九州でも取り入れていく。また、これまでは1車に複数人の交代勤務だったが1車1人にする。車両代替えも80万qか7年または8年だったが、10年で100万qにする。箱と冷凍機も従来の15年から、グレードの高い箱にして20年使用に切り替える方針だ。このような方針転換で収益性を高め、週休2日制の導入を目指す。また、拠点を増やしM&Aも積極的に進める方針だ。

<物流ジャーナリスト 森田富士夫>
(写真提供:曙運輸)