運送事業者レポート
TOP運送事業者レポートtop>2017年4月

運送事業者、荷主における新たな取り組みや成功事例にスポットをあてたインタビュー記事。(毎月第1週に更新)

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【第78回】 シンバホールディングス株式会社(沖縄県浦添市)

あんしんでは運送と物流の勝ちパターンを推進


 シンバホールディングス(本社・浦添市、安里享英社長)は、物流事業をはじめ不動産、広告・コミュニケーション、流通、ロジスティクスなど、沖縄におけるワンストップ・ソリューションを目指すトータルな事業展開をしている。中核事業会社は物流企業のあんしんで創業は1965年(設立は1981年)。保有車両数は223台で協力会社も含めると約400台になる。取引先は400社以上にのぼり、売上高は約70億円。沖縄県内におけるBtoB物流では断トツで、「暮らしをはこぶ、物をはこぶ、あんしんはアイディアをハコぶ」をモットーに、沖縄での衣食住の物流を担っている。そのために利用運送で入口から入り、デリバリーまで、あらゆる品種の物流プラットホームを構築している。沖縄には29の有人離島があるが、これら周辺離島への発送も海上や航空で行っている。離島内の輸配送は海運会社や島内の事業者と代理店契約をしてカバーしている。

 ホールディングスの売上高は145億円だが、中核事業会社である運送業のあんしんが推進している総合物流の勝ちパターン、運送事業の勝ちパターンについてみることにしよう。同社では総合物流戦略において、「沖縄向け物流の総合最適化をトータル・プロジュースしていく」(安里社長)としている。そのため沖縄本社と東京、大阪、福岡で荷主のトータル・ニーズの把握とバックアップに努めている。物流機能の強化では、利用航空運送事業や港湾関連事業を行っている。また、多数の物流センターが近くに分散している。これは会社の発展にしたがってその都度、増やしてきたからだが、この分散したセンターの統合化、拠点整備も進めている。業務的には要冷凍統括、第1統括、第2統括、運輸統括、関連統括に分け、荷筋、温度帯を再整備してマーケットのトレンドをキャッチアップしながら進んでいくという戦略だ。


 あんしんの直接原価でみると、運送の原価は3割ぐらいしかない。東京、大阪、福岡そして鹿児島から沖縄向けの荷物を船に積んで運んでくるのが1次輸送で、2次輸送がトラック、3次輸送には輸入もあるが海外向けなどである。運送は2次輸送の部分なので3割ぐらいになる。この運送部門で推進している勝ちパターン戦略の1つが分社化である。運送事業のBtoBでは沖縄県内で圧倒的なシェアを持っている。その運送部門で現在、取り組んでいるのが販売物流を整えていくためのルールや仕組みで、その一つが分社化である。運送戦略ではスピードの低下、一体経営の欠如が課題だった。そこで分社化を進めるようになって2年目で、現在、分社を2社設立して事業を行っている。分社は保有台数が30台程度で1社1拠点。対面点呼などコミュニケーションが図れるような適正規模にしている。トラック部門はメンタル面が重要だからで、同じような分社を増やしていく計画だ。

 オフバランスではなくオンバランスで信頼関係やモチベーションアップ、コンプライアンス、利益の追求が分社の社長の役割だ。さらに、分社でしっかりマネジメントができれば、本社の幹部になっていけるようにする。このように運送では分社の運営を確立し、協力会社を含めて総マンパワーを構築する方向で勝ちパターン戦略を進めている。あんしんは現在、「分社化と統合化という再構築の段階に来ている」(安里社長)。このような中で取引先とは条件変更プロジェクトを進めている。「当社のコーポレート上の甘えを取引先に押し付けるのではなく、リードタイムを短くするための店舗オペレーションなど、ルールや仕組みを変えていくように提案している。利益相反、リスク相反で取引先には迷惑をかけないが、時勢を考えたスタンスにしていく」(同)、という考え方だ。単価以外でも変えることができる仕事もある。


 ドライバーの労働条件を改善し、荷主にも効率化になるような条件の見直しである。これらに共通しているのは、どこかにムリがあった、何かが過剰だったということで、そのような状況なら現状レベルに歩みよる。歩み寄りの余地がなければ取引終了も止むを得ない。条件変更と同時に進めているのが、人材、協力会社、車両などいわばサービス体制強化のプロジェクト。人材確保では、これまでのような求人活動だけではなく、合同説明会なども開いている。また、入社してからの教育や、職場に配置した後のケアなども含めて、従来のような現場任せではなく、会社として計画的に取り組むようにした。さらに協力会社13社とは定期的な意見交換会を開き、人材確保、協力会社、車両をトータルしたサービス体制の構築を推進している。そして4月からはあんしんの本社を事業本部に移す。安里社長は会長になり、社長、副社長、専務などの役員人事も行う予定(3月6日時点)だ。

<物流ジャーナリスト 森田富士夫>
(写真の一部はシンバホールディングスのHPより)