運送事業者レポート
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運送事業者、荷主における新たな取り組みや成功事例にスポットをあてたインタビュー記事。(毎月第1週に更新)

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【第79回】 マルソー株式会社(新潟県三条市)

企業主導型保育事業の助成制度を活用し社内託児所開設


 人材の確保には各社が苦労している。基本的には賃金や労働時間など労働条件の改善が必要だが、同時に働きやすい職場環境の整備などを進めなければならない。とくに女性の活用では、子供を預けて安心して働けるような環境整備が重要だ。このようなことから内閣府が昨年度から始めた「企業主導型保育事業」の助成制度を活用して、今年2月1日に本社の敷地内に社内託児所を開設、さらに新潟市内にある大手コンビニの専用センター内に2つ目の託児所の建設を進めているのがマルソー(本社・新潟県三条市、渡邊雅之社長)。同社では企業主導型保育事業のメリットを活かして、各物流センターにおいて順次、社内託児所を設置する予定だ。同社の創業は1913年で設立が1954年。現在では三条市の本社を中心に、新潟県内にある11拠点のほか、埼玉県1営業所、長野県1センターで事業を行っている。また、グループ会社や関連事業として社会福祉法人もある。

 マルソー本体では流通系物流を行っており、平ボディ車による重量物輸送、重機運搬と作業はそれぞれ別会社で行うなど役割分担を明確にしている。また三条タクシーやファースト・ブレインのほか、関連事業で三条福祉会がある。いずれは「ホールディングス制も視野に入れている」(渡邊雅之社長)ようで、具体的な時期は設定していないが、「できるだけ早く」(同)と考えている。2016年10月現在の保有車両数はグループ全体で約550台、従業員数もグループ全体で約630人(パートを含む)となっている。このうち物流センター内の作業の主力であるパートの女性が約300人いる。さらに今後はドライバーとしても女性を積極的に採用していく方針だ。女性は戦力としてはもちろんだが、「女性が増えると職場環境も一変して明るくなる」(同)という副次的効果も期待できる。だが、若い母親に働いてもらうには子供の預け先を確保しなければならないという問題がある。


 このようなことからマルソーでは昨年4月から内閣府が創設した企業主導型保育事業の制度を活用して託児所を開設することにした。同社は、関連事業として社会福祉法人三条福祉会が認可保育園を運営している。これは三条市が市立「一ノ門保育所」を民間に移行するにあたって、同社が引き受けたもの。だが市立からの民間への移行に際しては、株式会社には移管できないということがあって、社会福祉法人を設立して受け入れたもので、2012年4月に「一ノ門わくわく保育園」として開園した。さらに2013年にも、市立「田島保育所」の民間移行を受け入れ、「田島わくわく保育園」として運営している。このように同社には保育園運営のノウハウがあったことも、企業主導型保育事業にいち早く申請できた理由の一つである。企業主導型保育事業は内閣府の直轄なので、認可保育園とは制約が違う。認可保育園よりも様ざまな制約が少ないのが特徴だ。

 そこで同社では企業主導型保育事業が成立するとすぐに申請の準備に入った。同制度は昨年4月1日からだが、昨年6月には申請して9月には承認されている。認可保育園でのノウハウがあったことも有利な条件だったようだ。そこから建設などを進め今年2月1日に本社敷地内に社内託児所「マルソーグループ月岡わくわくちびっこ園」を開設した。定員によって建物の大きさなどは違ってくるが、同社の社内託児所は定員が12人。園庭の面積も決められているが、近くに公園があればそれでも認められるという。都市部にある企業でも開園しやすいような制度のようだ。同社の場合には約4500万円かかったが、建設費の4分の3を国が助成してくれる。固定資産税優遇措置もあるという。本社に開設した託児所は保育士が園長を入れて3人だが、運営などにおいても認可保育園と違って様ざまな制約が少なく、保育だけに専念できることが保育士の求人でも有利に働く。


 本社関連で対象になる女性は約30人しかいないので「保育のニーズには不安があった」(渡邊社長)が、まずは本社からということで本社敷地内に開園した。すると、仕事の募集に対して「保育もセットで応募してきた人が3人ほどいた」(同)という。女性活用という面では早速、効果があったことになる。企業内託児所には地域枠もある。定員の枠内であれば、現在預かっている社員の子供の人数と同人数を社外から預かることができる。5月現在では社員の子供が7人、地域枠の3人と合わせて10人の0歳児から3歳児を預かっている。マルソーでは2つ目の社内託児所の建設を9月開園予定で進めているが、各拠点に順次、開園していく考えだ。保育士はファースト・ブレインの雇用にしているが、同社ではグループ外企業に対するサポート事業として、企業主導型保育事業の申請から開園、さらに運営までのノウハウを提供するコンサルもしていくという。

<物流ジャーナリスト 森田富士夫>
(写真の一部はマルソー提供)
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