運送事業者レポート
TOP運送事業者レポートtop>2017年11月

運送事業者、荷主における新たな取り組みや成功事例にスポットをあてたインタビュー記事。(毎月第1週に更新)

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【第85回】 京運商事株式会社(栃木県塩谷郡)

社員満足の向上目指し長距離か短距離か転換点に


 中小事業者にとってコンプライアンスや働き方改革などの諸課題をどう乗り越えるかが大きな問題だ。これまでの事業展開から、ドライバー不足など経営環境の変化を踏まえて、今後の方向性を新たに打ちださなければならないという中小事業者も少なくない。これからは社員満足度の向上も重要だ。このように中小事業者の多くは過度的な段階を迎えているといえる。京運商事(栃木県塩谷郡高根沢町、田村大介社長)もそのような事業者の1社だ。田村社長は「労働時間などの問題もあり、今後どのような方向に進むべきか迷っている」という。近距離が良いというドライバーもいれば、長距離をやりたいというドライバーもいるからだ。まずは同社の概要から紹介することにしよう。京運商事の設立は1973年7月。最初は地元の段ボール・メーカーの専属として製品を運んでいた。その後、中国地方に本社のあるボイラーなどのメーカーの宇都宮工場の荷物を運ぶようになった。

 また、大手特積み事業者の大田原支店の集配業務の代行と、チャーターの仕事も請けている。さらに同社では、大手ホームセンターで販売しているガーデニング用の土も取り扱っているほか、大手メーカーの地元の工場から出る航空貨物の仕事も、大手事業者から受託して行っている。さらに地元には自動車、電子機器、スナック菓子などの大手メーカーの工場があり、これらメーカーと取引している一次サプライヤーも多数ある。京運商事では、これら近場での横持ち輸送などの仕事も行っている。現在の保有車両は2t車16台、4t車15台、5t車6台、11t車2台、10t増トン車17台、トレーラヘッド4台、トレーラシャーシ5台の合計65台。ドライバーは50人で、ドライバー以外の従業員は10名(うち2人は倉庫作業員)である。年商は約7億円という規模だ。本社の他に宇都宮営業所、大田原営業所、南那須倉庫がある。


 本社は事務などの機能だけで、宇都宮営業所が本社車庫になっている。また、大田原営業所は大手特積み事業者の仕事を専用に請けている営業所である。さらに南那須倉庫は、そもそもは大手事業者の海外引越事業の業務を受託するために建てたものだが、現在はホームセンターのガーデニング用の土の物流センターとして在庫管理から配送業務などを行っている。ガーデニング用の土はメーカーから引き取ってセンターに入庫し、ホームセンターの店舗に配送している。配送先は茨城と千葉を主に埼玉、東京、神奈川、それに隣県である福島県の須賀川の店舗にも配送している。会社設立時からの取引先である段ボールなどのメーカーの仕事は、主に2t車で工場から工場間の納品の仕事をしている。また、ボイラーなどのメーカーの仕事では、宇都宮工場から荷主の滋賀工場や下関工場に幹線輸送。また、盛岡、仙台、新潟、長野、静岡などへの輸送もある。

 幹線輸送以外では、ユニットバスなど水回り製品の配送が多い。納入先は住宅の建築現場が多く、また水回りの工事を請け負う工事会社にも納品している。使用車両はほとんど2t車で、車種は箱車かウィング車である。新築などの需要が多い関東では積合わせ輸送が可能だ。1台のトラックで2セットは積載できるので、1回で複数カ所に納品するという。これら荷物の組合せは荷主の方で事前に計画するが、事前の組合せがない場合には同社が単独で同一方面の荷物を組合せるようにして生産性の向上に努めている。ただし、やはり需要の多い関東でないと積合せはなかなか難しいようだ。このように京運商事では、荷主を分散して特定の取引先への過度な売上依存を避けるような経営をしてきた。だが、現在は大きな転換点に差しかかっている。その理由の1つは、ドライバー不足である。保有車両数は65台(トレーラシャーシを5台含む)に対してドライバーは50名。


 これは「ドライバーが入らないからで、荷物によって車両をかえるようにしているが、今後の方向で迷っている」(田村社長)という。取引先を増やして特定荷主に売上依存度が偏らないようにしてきたが、それでも「今までは荷主主導だった。社員が会社に不満を持っていたら、良いサービスは提供できないと2年ぐらい前から考えるようになってきた」(田村社長)。そこで社員満足度をいかに高めるかが大きな課題になっている。一方、トラック運送事業を取り巻く環境はますます厳しくなっており、最大の課題は労働時間短縮だ。長距離輸送もあれば関東一円の配送業務もあり、当然ドライバーの勤務形態も異なる。「近場の方が良いというドラバーもいれば、長距離が良いというドライバーもいて両方の考え方がある」(田村社長)。どのような運送事業の在り方が自社に適しているのか。同社ではできるだけ早く今後の基本的な方向性を打ち出していく予定である。

<物流ジャーナリスト 森田富士夫>