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運送事業者、荷主における新たな取り組みや成功事例にスポットをあてたインタビュー記事

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【第92回】 北陸トラック運送株式会社(福井県福井市)

北陸3県の生協物流の受託を滋賀・京都にも拡大


 北陸トラック運送(本社・福井市、水島正芳社長)は、福井市新開町に建設していた福井物流センターを5月1日に竣工、5月5日から本格稼働に入った。同センターは生協の支所に日用雑貨、化粧品、衣料品などを供給する拠点機能をもつ。従来は上細江町の本社センターで北陸3県の生協支所への仕分けなどを行っていた。しかし、同社では北陸3県に加えて新たに滋賀県(全域)と京都府(京都生協の北部の日本海寄り)もカバーすることになった。そこで本社から約2q離れた新開町に新センターを建設し、北陸3県の機能も移転、集約したもの。新センターは敷地面積が1万1550u、延べ床面積が4700u(ひさし部分を含む建築面積は5640u)の鉄骨造り平屋建て。金沢から敦賀まで北陸新幹線が延伸されれば、車窓からよく見える位置に立地している。だが、線路から500m以内のために「社名などの看板の大きさが制限されてしまった」(水島社長)という。

 同社が取り扱っているのは日用雑貨、化粧品、衣料品など2000アイテム以上の商品。基本的にはスルー型で、たとえば今日、順次入荷されてきた商品は翌日の朝から仕分けして出荷するというローテーションだ。同社の京都営業所のトラックで京田辺や近畿エリアから横持ちする。また自車両の横持ちだけではなく、路線便などで入庫する商品もある。これらの商品を従来は北陸3県の生協の支所に納品していた。納品箇所は福井県が4カ所、石川県が7カ所、富山県が3カ所である。それに加えて今度は、滋賀県全域、京都府の北部で日本海側の生協支所にも納品することになった。滋賀県は7カ所、京都府が2カ所である。これを荷物量にすると、これまでは1日約2万ピースだったものが、今度は1日約4万ピースとほぼ倍増する。そこで新センターでは最新の機器を導入して処理能力を増強した。


 「これまでと同じシステムで作業をしていては1日8時間だったものが16時間かかってしまうことになる。そこで投資をして1本のラインでも8時間で作業を終了することができるように最新の機器を導入し労働環境を良くした」(水島社長)。さらにトラブルなどでラインが止まって作業できなくならないように、2本のラインを設置している。ライン作業の中核となるのはデジタル・ピッキング・システム(DPS)で、1日1500〜2000アイテムの処理を想定している。ラインでは納品先別の容積計算も自動ででき、ピッキングした商品を入れる透明の袋も1袋で入らない量なら、自動的に2袋が出るようになっている。ピッキングラインでは、商品の出荷頻度によって高頻度商品、中頻度商品、低頻度商品に分けて商品棚が並んでいる。全体としてピッキングを平準化し、最短時間できるようにしている。

 ピッキングする商品の指示は、ランプが点灯して商品の場所をピッカーに教えてくれる。まず床にランプの光が当たり、その光が該当する商品の位置に移動して誘導してくれるようになっている。いきなりピッキングする商品のところに光がいっても、ピッカーがその光の位置を探して確認するのに時間がかかるからである。その点、最初に床の定位置に光が当たり、その光がピッキングする商品のところに移動するようにした方が、ピッキングする商品を認識するまでの時間が短縮されるようだ。また、低頻度商品のエリアでは、普通のセンターと同じようなレイアウトになっているが、棚の列と列の間隔が広く、ピッキングの台車が横向きでも通れるようになっている。同センターでは小さな商品は個人別に仕分けし、大きな商品は支所別仕分けとなっていて、生協の支所でコース別に仕分けするという。また、ケース単位の仕分けもある。


 最新機器を導入したので、従業員の人たちも新しい作業システムに慣れるには多少の時間が必要だ。そこで4月29日(日)には全員で練習したという。5月4日入庫分から新センターに商品を入れ、「5日から新センターでピッキング、仕分け、出荷などの業務を本格稼働した。5月19日からは京都の2支所分も開始し、さらに6月2日からは滋賀県の7支所分の作業も開始する」(水島社長)。新センターは女性に優しく働きやすい環境整備にも工夫した。女性用トイレは10人が同時に利用でき、個室は総て暖房や擬音装置を備えている。さらに化粧などがしやすいように大きな鏡のついた洗面台も5台あり、ロッカーや休憩室なども女性が使いやすいように環境を整えた。また女性従業員には限らないが、新センターは天井を低くし、透明シートで囲いをしたりして空調効率を高めたり、照明などにも工夫をしている。これらは作業環境と同時に、省エネ効果なども狙いと思われる。

<物流ジャーナリスト 森田富士夫>
(写真の一部は北陸トラック運送提供)