運送事業者レポート
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運送事業者、荷主における新たな取り組みや成功事例にスポットをあてたインタビュー記事

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【第97回】 エイコー運輸株式会社(静岡県浜松市)

FAXDMや立地条件を活かした乗り継ぎ方式で新規取引を開拓


 最近はSNSなどを活用して様ざまな情報を発信している運送会社の経営者が散見されるようになってきた。そのような中でもエイコー運輸(静岡県浜松市)の鳥海祐二社長は広く知られている。鳥海社長が発信している各種情報は、@LINE=「2代目社長再生の専門家」と称して自分が実践している仕事術をつぶやいている、AYoutube=「販路拡大・値上げ・求人採用」という社員50人以下の中小企業の3大問題に対する「速攻解決ちゃんねる」として情報発信、BFB=「ボンクラ2代目社長」、Cブログ=「THE2代目社長の帝王学」、DTwitter=毎日6時10分に配信(水曜日には12時にも配信している)、などである。さらに、印刷・郵送の「浜松緊急便.Com通信」も毎月発行している。メルマガを始めたのは約3年前からで、現在は「約1700人に配信しているが、そのうちの800〜900人は名刺を交換した人たち」(鳥海社長)という。

 エイコー運輸の設立は1978年。当時、同社が所在する地域は製材工場が多かった。そのため同社は、地場産業である製材工場から、材木を東京の木場などに貸し切りで運ぶ典型的なトラック運送事業者としてスタートした。同時に、浜松は自動車、バイク、楽器などの大手企業の工場と協力会社の部品工場が集積している。同社でも部品輸送の比率が徐じょに高くなり、リーマンショック前は、直接取引ではなかったが部品輸送が売り上げの約70%を占め、残り30%が材木、板紙、青果物、肥料などであった。そのためリーマンショックの影響をもろに受けた。そのような状況の中で、鳥海社長が父親の先代社長に代わって社長に就任したのは、リーマンショックの翌年の2009年だった。そこで始めたのがDMやFAXDMによる顧客開拓である。定期契約の仕事は安定しているが利益率が低い。DMでスポットの仕事を開拓し、利益率を高めようという取り組みである。


 現在のエイコー運輸は保有台数は38台(4t車28台、15t車10台)で、従業員数は41人。そのうちドライバーは38人で、女性ドライバーが3人いる。この2、3年間でみると大型車の比率を高めてきた。その理由は「4t車の方が利益率が低い」(鳥海社長)からである。また、定期契約とスポットとの売上比率も、定期の割合がやや増加して95%になっている。スポットの荷物開拓で効果が高いのはDMやFAXDMだ。同社のDMはA3版を2つ折りにしたもので(A4版4ページ)、FAXではそのうちの1面だけを送る。営業対象は静岡県西部地区の製造業で、5500社ほどをリストアップしてある。実際には3500社ぐらいに月に1回FAXしていた。郵送は3カ月に1回ぐらいの割合でおこなっていた。だが、スポットは利益率が高いので、「スポットをやりたくても、当社も傭車先も人がいないので仕事が入っても対応できないため」(同)、一時中断しているという。

 同社のDMはコンセプトが明確になっている。@緊急の荷物がターゲット、A運賃料金の明確化(浜松市中区役所を起点に全国主要都市の市役所までの距離に基づいて算出した車種別の運賃表を提示し、さらに自社から荷主(集荷場所)までの距離を加算。フェリーや橋通行料金、有料道路指定などは別途に実費請求し、待機時間料金や荷役料は車種別に30分単位で表示)、B受発注は専用電話をフリーダイヤルにし、配車担当者の顔写真とメッセージ、電話受付→受注→アフターフォロー(終了後の担当者への連絡)なども紹介、C緊急便を利用した荷主の担当者の顔写真と感謝の声も紹介、D初回お試し運賃は50%オフ。ざっと以上のような内容だが、「スポット狙いでも定期のオファーもある。これまで自家用トラックで納品をしていたが、最近は人手不足で困っている荷主がいる。また、緊急輸送が必要な時のリスクヘッジとしてDMを保存している荷主もある」(鳥海社長)。


 さらに同社では大型車の長距離輸送で新たな展開を始めている。同社は三重県と群馬県の長距離輸送もしているが、ドライバーの労働時間短縮といった課題がある。そこで事業所が浜松という立地条件を活かした運行形態を導入した。新東名高速道路の浜松サービスエリアは同社から5分ほどなので、サービスエリアでドライバーが交代乗務する仕組みを導入したのである。三重〜浜松は往復約8時間、浜松〜群馬は往復12〜13時間に納めることができる。浜松〜群馬は三重〜浜松よりも距離が長いが、どちらも1日運行が可能で、ドライバーは日帰りできる。高速道路から出てしまうと料金が高くなるので、トラックは高速道路から出ずに、自社のドライバーがサービスエリア内で乗務を交代するという方式だ。労働時間もクリアでき、コンプライアンスという面からも荷主は安心できる。そこで関東と関西間の輸送でも、この中継方式を提案して新規の取引先と交渉している。

<物流ジャーナリスト 森田富士夫>