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いすゞ、「エルフ」「フォワード」をフルモデルチェンジ

2023年3月17日(金)

 いすゞ自動車株式会社(本社:神奈川県横浜市、社長:片山 正則)は、小型トラック「エルフ」シリーズ、中型トラック「フォワード」シリーズをフルモデルチェンジする。

 地球温暖化への対応やドライバーの労働環境改善、交通事故死傷者ゼロ社会の実現に加え、事業のDX(デジタルトランスフォーメーション)化など、社会やビジネスが直面する課題は高度化・複雑化している。
 同社は、世界中のユーザーの利便性を損なうことなく、物流業界において重要なこれらの課題に対応していくため、「選べる自由、それが『運ぶ』の未来」を掲げ、開発を進めてきた。

 今回、フルモデルチェンジした新型「エルフ」は、「デザイン」「ホスピタリティ」「エコノミー」「セーフティ」「コネクテッド」「ラインナップ」の6つのポイントを中心に進化した。また、いすゞとして初の量産バッテリーEV(以下BEV)である「ELF EV」を市場投入し、商用BEVの社会実装に貢献する。
 新型「フォワード」は、高度化・複雑化する物流業界の課題に対応するため、内外装の全面刷新に加え、各種快適装備・安全支援機能の大幅拡充を行い、2023年夏頃の発売開始を予定している。


◆新型「エルフ」の主な改良点は以下の通り。

1.デザイン
 「PLEASURE to CARRY」をコンセプトに内外装を一新した。先進性とタフさ、機能性と華やかさを両立し、「運ぶ」を担うドライバーがトラックを使う楽しさを感じられるデザインを追求した。

<エクステリア>
 商用車らしい堅牢さを表現しつつ、フロントフェイスで躍動感や先進性を表現した。

<インテリア>
 親しみやすさと軽快感を表現し、長く使う道具としてのタフさやロングライフで褪せないデザインを表現した。インテリアカラーにはドライバーの多様化を意識したニュートラルな色味や素材を採用。人が直接触れる部分をブラックで表現することで、識別性を向上させ、傷のつきにくさに配慮している。


2.ホスピタリティ
 徹底したドライバー目線の開発でトラックに乗る人、使う人への深い思いやりを具体化した。

 標準キャブは、快適で疲れづらいキャブ空間を目指し、ドライバーの上方・前方・側方のクリアランスを大幅に拡大した。これにより、小型貨物キャブオーバートラックで最もゆとりあるキャブ※1を実現している。また、ドア開口部の拡大と上下2方向からアクセス可能なセミグリップ式ドアハンドルの採用により、乗降性・操作性が向上している。
 誰でも運転しやすい運転席を目指し、ステアリングの小径化やシートの材質・表皮縫製・スライドピッチの変更、ペダル位置の最適化などドライバーが運転時に触れるすべての機能を徹底的に見直し、最適なドライビングポジションを追求した。
 また、高速走行や寒い季節での運行など様々な使われ方においても快適に運転いただくために、アームレストやシートヒーターを採用し、ドライバーの労働環境改善に貢献する。

 メーターパネルには7インチのメーターディスプレイを採用し、安全支援機能の作動状況や車両コンディションを表示することで、運転時の視線移動や操作を最小限に留める。その他、ステアリングスイッチの採用やスイッチレイアウトの見直しにより操作性を向上させた。

 その他、小型トラックに求められる多彩なアイテムを採用し、収納スペースの拡大を図るなど日々の仕事に寄り添った使い勝手の良さを実現した。

※1GVW3.5t超 積載2t積クラスキャブオーバートラック(いすゞ調べ)

3.エコノミー
 内燃機関においても更なるCO2削減を目指し、新型トランスミッションの開発およびその他の改良により、燃費性能の向上を追求した。

<ISIM(アイシム)の新規設定>
 AT免許で運転可能なAMT(自動変速式マニュアルトランスミッション)として9速DCT(デュアルクラッチトランスミッション)の「ISIM(Isuzu Smooth Intelligent TransMission)」を 新開発し、燃費性に優れる4JZ1エンジンに組み合わせることで、更なる燃費性能を追求した。
 ISIMは9速に多段化したことで、エンジン回転数の上昇を抑えられ、低騒音化による運転疲労軽減を実現し、誰でも省燃費運転がしやすくなる。また、デュアルクラッチ構造による素早いシフトチェンジで、変速時のトルク抜けやシフトショックを低減し、トラックのイメージを塗り替えるドライブフィーリングを実現させる。

<2025年度燃費基準(JH25モード重量車燃費基準) 達成状況>
キャブの空力改善や省燃費タイヤの採用拡大により燃費性能の向上を図った。2025年度燃費準に対して、全車達成しており、中でも2t積 ISIM搭載車(ecostop※2付)は+15%達成を実現し、CO2削減に貢献する。

※2アイドリングストップ&スタートシステム。排出ガスの削減や燃料の節約、停車中の騒音防止に役立つ。

4.セーフティ
 交通事故死傷者ゼロ社会の実現を目指して、先進安全装備およびドライバーをサポートする運転支援機能の充実化を図った。

 今回の改良では、ステレオカメラの性能向上に加え、近距離ミリ波レーダーおよびドライバーステータスモニターを追加し、以下の9つの安全支援機能を新規設定する。また、ドライバーが対象物を直接見ることができる視界の改善、ドライビングポジションの最適化、足回りの改良やISIMの新規設定により誰でも運転がしやすい車両を実現している。

1)プリクラッシュブレーキ(右左折時)<国内小型トラック初搭載※3>
 交差点右左折時に、対向歩行者と衝突の可能性があると車両が判断した場合に警報および緊急制動を行い、被害軽減に貢献する。

2)全車速車間クルーズ<国内小型トラック初搭載※3>
 設定した車間距離を維持するように、全車速域で加速/減速/発進/停止の制御を行い、ドライバーの疲労軽減、安全運行に貢献する。

3)レーンキープアシスト<国内小型トラック初搭載※3>
 走行車線の左右白線をカメラで検知し、システムがステアリング操作を電動アシスト制御することで線維持/逸脱防止を支援し、ドライバーの疲労軽減、安全運行に貢献する。

4)ドライバーステータスモニター
 ドライバーの脇見、開眼、運転姿勢の状態をインパネ中央部に搭載されたカメラでモニターし、前方への注意不足を検知すると警告を発し注意喚起する。過度な眠気を検知した場合には エアコンを制御し、冷風を作動させることで注意喚起を行い、居眠り運転等の事故抑制に寄与する。

5)ドライバー異常時対応システム<国内小型トラック初搭載※3>
 走行中にドライバーが急病などで安全な運転を継続することが困難な状態に陥った場合に、車両システムがドライバーの異常を自動検知、または、ドライバー自身のスイッチ操作により、車両を緊急停止させる。

6)可変配光型LEDヘッドランプ<国内小型トラック初搭載※3>
 ハイビーム走行時、先行車や対向車の光をカメラで検知し、光が当たる箇所を自動的に遮光する。ハイビーム走行による夜間の視認性を向上させ、安全運行に貢献する。

7)標識認識機能
 通標識(制限速度・車両進入禁止・一時停止・追い越し禁止・高さ制限)を認識し、メーターディスプレイに表示し、ドライバーの交通標識の見落としを防ぐ。

8)標識連動型スピードリミッター<国内小型トラック初搭載※3>
 標識認識機能が認識した「最高速度」標識の制限速度に対し、制限速度を上限に車両側でスピードリミッター制御を行い、速度超過による事故抑制に貢献する。

9)フロントブラインドスポットモニター<国内小型トラック初搭載※3>
 車両直前の歩行者や自転車を検知し、発進時に衝突の可能性があると車両が判断した場合に、メーターディスプレイで警報を行う。

 安全支援機能は装着が義務化されている機能を中心に構成している「BASIC」を基に、都市内配送で有効な機能を加えた「STANDARD」、自動車専用道での走行時に有効かつ利便性の高い装置を含む「ADVANCE」、そして操舵制御まで行う「PREMIUM」の全4種のパックオプションで設定し、お客様のニーズや運行形態に合わせ選ぶことができる。

 また、配送トラックに求められる安全性の向上として、自動作動機能付き電動パーキングブレーキを標準設定し、パーキングブレーキのかけ忘れや引き不足による自走事故防止に貢献する。
 その他、路上故障で多くを占めるタイヤトラブルへの対応として、タイヤの空気圧や温度をドライバーが確認監視できるタイヤ空気圧モニタリングシステムをオプション設定。万が一に備え、キャブの乗員・歩行者保護性能を高め、事故発生時の被害を低減する。

※3GVW3.5t超 積載2t積クラスキャブオーバートラック(いすゞ調べ)


5.コネクテッド
 コネクテッド技術の向上を図り、進化する情報基盤と合わせることで、様々なシステムとの連携が可能となった。従来の運行管理サービスおよび高度稼働サポートを更に進化させていくだけではなく、ユーザーが抱える課題解決への新たなソリューションを創出していく。

 2022年10月にサービス提供を開始した商用車情報基盤「GATEX(ゲーテックス)」を利用した商用車テレマティクス「MIMAMORI」※4および、いすゞ独自の稼働コネクテッドサービスである高度純正整備「PREISM(プレイズム)」を新型エルフでも提供する。
 また、EVの普及を見据え、商用BEVの稼働を支えるPREISMと運行管理、充電マネジメントを両立するMIMAMORIを新規開発し、GATEXからの遠隔充電管理機能※5と多様な連携機能により様々なエネルギーソリューションを提供する。
 PREISMにおいては、スマホアプリの機能を拡張し、車両だけではなく、ドライバーとも“つながる”ことでユーザーの安心と安全な稼働をサポート。さらに、PREISMで用いているコネクテッド技術を活用した、架装物のモニタリングシステム(架装コネクテッド)※6に対応する新開発デバイスを新型「エルフ」、「フォワード」へ2023年中に車両実装※7し、架装物の稼働も支えることで、ユーザーの車両(シャシ・架装)の安心と安全な稼働を幅広くサポートする。


※4「MIMAMORI」は、データ通信とインターネットを活用し、遠隔で車両の運行情報(燃費、CO2・NOx・PMの排出量、車両現在位置情報、ドライバーの運転操作情報など)を収集、解析するクラウド型の運行管理システム。DX(デジタルトランスフォーメーション)やカーボンニュートラルなどの社会課題解決に向け、運行指示書と連携した「商用車ナビゲーション」や「動画ドライブレコーダー」、2024年問題に向け労務管理機能や動態管理機能を提供している。なお、MIMAMORIを利用するには、別途有償契約が必要。

※5 遠隔充電管理機能は2023年中に対応予定。
※6 詳細は2021年2月9日プレスリリースにて。
※7 オプション設定

6.ラインナップ
 同社は、カーボンニュートラル社会の実現に向けて、ラインナップに、世界中のユーザーの多様なニーズにも対応するBEV、「ELF EV」を追加した。同社の商品開発の基盤である「I-MACS」※8を用いることで、様々な動力源を搭載することが可能となり、「選べる自由」を提供する。
 BEVにおいては、標準キャブのGVW3.5t未満車からワイドキャブのGVW7.5t車まで幅広いラインナップを実現している。また、車両の操作系やレイアウトをディーゼル車と可能な限り共通化することで、これまでディーゼル車で使っていた様々な架装にも対応できることとなり、ユーザーは利便性を損なうことなくBEVを導入できるようになる。

※8 Isuzu Modular Architecture and Component Standardの略称。
技術の進化や車型展開の更なる広がりを見据えて、多様なニーズに合わせ、様々なコンポーネントや部品、デバイスなどの組み合わせを可能とする開発手法。

主な特徴は以下の通り。

1)コンパクトなバッテリーパック(20kWh/個)を開発し、車格や使われ方に応じて高電圧バッテリーを2パック(40kWh)から最大5パック(100kWh)搭載するモジュール方式を採用した。

2)普通充電と急速充電に対応しているほか、専用の機器を通して外部へ電力供給を行うことが可能。

3)高電圧バッテリーの温度を常にモニターし、低温下では車両停車時でも自動で温度管理を行い、寒冷地においても運行が可能。

4)キャブ内空調による消費電力を抑え航続距離を延ばすため、ヒートポンプ式空調システムの採用に加え、シートヒーターを標準設定した。また意図しない不要な暖房使用を抑制するため、ヒーターのON/OFFを行う専用スイッチを設けた。

5)2024年度中に、特装架装向けシャシ(塵芥車・高所作業車)と荷室への移動が可能なウォークスルーバン「ELF EV Urban Transporter」を展開予定。

6)商用BEVの導入検討サポート、導入課題の解決、導入効果の定量化と拡大化提案によるカーボンニュートラルの実現に向けたトータルソリューションプログラム「EVision」を提供。