運送事業者、荷主における新たな取り組みや成功事例にスポットをあてたインタビュー記事
バックナンバー一覧はこちら
【第169回】 株式会社ナカムラ(熊本県宇土市)
立地条件を活かした独自の共同配送を展開
人口減少などによる国内経済の縮小に伴って荷物も中ロット化の傾向にある。幹線輸送でも積合せ輸送が増加し、川下は共同配送が普及していく。今や共同輸配送は一般的なサービスになりつつあり、それ自体ではサービスの差別化にはなりにくい。共同輸配送でも他社との違いを出さないと独自性、優位性は打ち出せなくなってくる。このような中で古くから共同輸配送を主体に事業を行ってきたナカムラ(熊本県宇土市、中村茂社長)は、沖縄県を除く九州全域を営業エリアとしているが、とくに熊本、鹿児島、宮崎の南九州3県では立地条件を活かした独自の共同配送の仕組みを構築している。同社は1937年に合資会社中村商店として設立された。その後、1964年に社内に運送部を発足させ、九州一円の輸送事業を開始した。1989年には倉庫部門の営業を開始するとともに、ナカムラ商運倉庫に社名変更。1996年に株式会社ナカムラとしている。
現在は社員数が49人で、保有車両数は48台(2㌧車からダブル連結トラックまで多彩なラインナップ)。倉庫面積は5445㎡である。また、関連会社として協同組合スカイネット物流(熊本市、組合員6社)、有限会社スカイネット福岡(福岡県粕屋町、社員数21人)がある。スカイネット福岡はスカイネット物流の組合員のうちナカムラを含む3社が共同出資して設立したもの。ナカムラの取り扱い荷物は食品が売上の約40%で、その他にはペットフードが約20%、建材関係が約20%、日用雑貨が約20%、その他となっている。これらをサービスの形態で分類すると、食品などを主に共同配送をしているのが60%(引取輸送なども含む)。日用雑貨などはドラックストアの店舗への配送をしている。また建材関係は工場への引取輸送をして、自社拠点からの配送と鹿児島への横持ち輸送をしている。同社は熊本という立地条件を活かした事業展開に特徴がある。
たとえば倉庫(センター)では、引取輸送した荷物や、他社が運んできた荷物の保管はもとより、九州発着荷物の中継拠点、関東や関西からの荷物のリレー輸送の拠点、多カ所から運ばれてくる荷物(同社集荷もある)を配送コースごとに仕分けて共同配送するクロスドックセンターといったように、多様な機能を持たせている。また、高速道路や主要幹線道路にも近いという有利な条件を活かして中継輸送やリレー輸送の拠点としての機能も提供している。各地から幹線輸送されてきた荷物(引取輸送もある)を同社の拠点で方面別(納品先別)に仕分けて同社のトラックで納品する。長距離輸送をしてきたトラックで複数個所に納品しては、長時間労働になってしまう。同社がリレー輸送ないしは中継輸送することで、他社の長距離ドライバーの労働時間短縮にも貢献できる。また地元発で遠方に輸送される荷物はその反対に、幹線輸送してきたトラックに委託することもできる。
各荷主が契約した事業者のトラックで同社のセンターに荷物が持ち込まれ(引取輸送もある)、納品先、配送コースごとに仕分けて共同輸送する。基本的にはスルーの荷物のクロスドック方式である。複数荷主の荷物を積合せる共同配送への需要は今後ますます増加してくるものと思われが、ナカムラは熊本県内への共同配送だけではなく、隣接する鹿児島県と宮崎県の南九州への配送の基点として有利な立地条件を活かした共同配送の仕組みを導入している。たとえば売上比率が40%と一番高い食品・飲料では、ダブル連結トラックで主要取引先の福岡の拠点に引取に行く。この引取輸送ではセミトレーラ3セットやその他の増トン車でもナカムラの本社に運ぶ。そして鹿児島向けは鹿児島市内にある提携事業者まで輸送する。同様に宮崎県向けの荷物は都城市にある提携事業者に横持ち輸送する。それらを除く地域はナカムラが自車両で共同配送している。
また建材関係は複数の荷主(同業者もある)と取引しているが、ある取引先の仕事では、同社に運ばれてきた建材のうち「3分の1は熊本県内の現場配送で、自車両で配送している。3分の1は宮崎県内向けで、そのうちの約3分の2は他の荷物と混載して自車両で共同配送し、3分の1は宮崎県の事業者に持ち込む。鹿児島県内の現場に納品する残り3分の1の荷物も、そのうちの約3分の2は宮崎県内と同じように他の荷物と混載して自車両で共同配送している。鹿児島県向けの荷物の3分の1は、鹿児島県の事業者に持ち込んでいる」(中村社長)。自車両で県内配送しているプレカットなどは「現場では荷物をまとめて降ろすようにし建物の2階への納品はやらない」(同)。あるいは内装材なら積合せて何カ所かへの納品が可能だ。そこで「納品先の現場と納品日を調整し、巡回して1回の配送で複数カ所降ろしが可能になるように効率化を図っている」(同)という。
<物流ジャーナリスト 森田富士夫>