トラック情報サイト「トラックNEXT」

トラックNEXTは、トラックユーザーとトラック関連メーカーをつなぐトラック情報サイトです

運送事業者レポート

運送事業者、荷主における新たな取り組みや成功事例にスポットをあてたインタビュー記事

バックナンバー一覧はこちら

【第162回】    鮫川運送株式会社(福島県矢吹町)

11月に仙台に完成予定の「デポ&クロスドック」で時短推進

 鮫川運送(本社・福島県矢吹町、芳賀篤徳社長)は、東北を営業基盤に独自の事業展開をしている。今年3月期の売上高は約98億円を見込んでおり、20年前と比較すると約3.3倍になった。創業は1960年7月で、福島県東白川郡鮫川村で芳賀運送店として開業した。1969年に鮫川運送有限会社として設立し、1982年に株式会社にしている。同社の社歴をみると発展の大きな転機になったのは1987年の国道4号線沿いへの本拠地移転と、1991年の倉庫業への参入だった。倉庫と運送を組み合わせて事業を展開し、東北地方を中心に経営の基盤を構築してきた。本社(矢吹町)、本店(鮫川村)の他に、山形支店、仙台支店があり、営業所としては福島営業所、古川営業所、山形営業所、秋田営業所、青森営業所、川口営業所、棚倉営業所、盛岡営業所、久喜営業所、伊勢崎営業所がある。さらに倉庫・センターが16カ所となっている。

 保有車両は310台で、そのうちの約半分の車両は3t 車でコンビニの配送を行っている。他の約半分は大型車である。倉庫面積は延べ13万8600㎡。従業員数は710人(うち正社員が620人)である。関連会社はサンウェイ、鮫川商事、サメックスプラス、サメックス、福島中央貨物自動車がある。このうちサンウェイブは取引先の構内作業を専属で行っている。また、鮫川商事は倉庫などの不動産管理である。福島中央貨物自動車は郡山市にある運送会社で、約3年前にM&Aで子会社化したもの。保有車両は平ボディのユニック車15台で、建材や電柱の輸送をしている。鮫川運送にはない分野の運送なので傘下に加えたが、「それぞれ長年にわたって培ってきた企業風土があり、収益性にも差があることなどから、M&Aはなかなか難しいことが分かり勉強になりました」(芳賀社長)という。同社の事業をセグメント別にみると、CVS事業、運送事業、倉庫事業になる。

 CVS事業は大手コンビニの店舗配送で青森、山形、宮城、福島の全県と岩手県の約半分の店舗に配送している。CVS部門の売上は売上全体の約30%を占めている。倉庫部門の売上比率は全体の約20%。運送部門の売上が大きく全体の約50%である。運送部門はさらに輸配送、調達物流、共同配送、国際複合一貫輸送、リバース物流に分けられる。輸配送では協力会社も含めて全国輸送を可能にしている。調達物流は引取り輸送も含めて各サプライヤーから調達したものを一括管理し、工場にジャストインタイムで納品している。また共同配送は、「荷主の了承を得て、たとえば4t車2台分の荷物を大型車1台に仕立てて輸送する。あるいは10t車でまだスペースに余裕があれば、そのスペースに積める荷物を積み合せるなどケースバイケースで様々な積み合わせをして効率化を図っています」(芳賀社長)。これらの荷物の組み合わせは社内で個々のタイミングで行っているという。

 国際複合一貫輸送は、倉庫で預かっているある荷主の「輸出用の荷物を当社でバンニングして港まで運び、通関などを行う国際物流事業者に届けます。東京港や横浜港がほとんどです」(芳賀社長)。リバース物流は産業廃棄物の運搬で、倉庫で扱っている荷物のうち古くなった製品を倉庫内で破砕処分し、それを荷主の工場に運んで原料として再利用する業務で、倉庫から工場までを産業廃棄物収集運搬しているという。このように同社は東北を中心に、国道4号線沿いに北関東の一部も営業エリアにしている。今後の事業展開としては「経営の基盤は東北を中心に東日本におきます。競争の激しい関東にまで行くよりは、東北を中心に事業展開した方が自社の強みを発揮できます」(同)という。それは「運送から取引をはじめて、ドライバーの労働時間などコンプライアンスの面から東北に拠点をおくように提案するといった新たなパターンの新規開拓」(同)も見込めるからだ。

 「2024年問題」への対応やコンプライアンスという点では、鮫川運送は現在、今年11月の完成予定で仙台に「デポ&クロスドック」の建設を進めている。仙台東部自動車道の仙台東インターから約2分という好立地で敷地面積は5280㎡。「デポ&クロスドック」の主たる目的は、トラックの中継拠点としての役割である。鮫川運送では埼玉県の川口市から青森市までの長距離幹線輸送をしている。これは大手荷主の拠点間幹線輸送だが、自車両のドライバーだけでなく、傭車のドライバーも含めて、日帰り運行を実現するために中継拠点を設ける、というもの。「仙台に中継拠点を設ければ、青森~仙台間は往復で約10時間、仙台~川口間は往復10時間弱なのでそれぞれ日帰運行が可能になります」(芳賀社長)。中継は荷物積替え方式を考えているようで、「中継拠点ではパレット限定で荷物を積み替えます。そのためフォークの専用作業員をおきます」(同)という。

<物流ジャーナリスト 森田富士夫>

(写真提供:鮫川運送)