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運送事業者レポート

運送事業者、荷主における新たな取り組みや成功事例にスポットをあてたインタビュー記事

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【第165回】    株式会社丸総(静岡県吉田町)

4月19日申請で6月1日には経産大臣よりDX認定

 ドライバーの労働時間短縮や賃金アップのためにはコスト上昇分を運賃・料金に転嫁して原資を確保することが不可欠だ。同時に生産性の向上を図らなければならない。そのためにはDX戦略に基づくDX化が必要で、物流業界でもDX化の推進が求められている。そのような中で6月1日に経済産業大臣より「DX認定」を取得したのが丸総(本社・静岡県榛名郡吉田町、橋口智規社長)だ。DX認定は、「情報処理に関する法律」の第31条の規定に基づいて経産大臣が認定する。認定企業のメリットは、①認定制度ロゴマークの使用、②中小企業対象の金融支援措置(日本政策金融公庫による金利優遇、民間金融機関の融資では中小企業信用保険法の特例で別枠の追加保証や保証枠拡大)、③税制支援措置(デジタル関連投資に対する税額控除や特別償却措置)、④人材育成の支援措置(訓練費用や訓練期間中の賃金の一部助成)などがある。そして、企業のDX戦略の推進効果である。

 丸総は以前からDX化を目指していたが「DX認定」の取得に向けて具体的にスタートしたのは今年に入ってから。ITコンサルティング会社のグローバルナレッジ(横浜市、杉山良仁社長)と契約して認定取得への取り組みを開始したのは今年3月。認定の申請をしたのが4月19日だったので、6月1日づけでの認定は異例ともいえる早さだった。丸総の設立は1971年。現在は吉田町の本社ならびに同地内の整備事業部の他に、牧之原物流センター(牧之原市)、運輸事業部としては本社営業所、清水物流センター(清水営業所、静岡市清水区)、中京営業所(東海倉庫、東海市)、本社利用運送事業部、関東事業部としては関東営業所(神奈川県川崎市)、神奈川物流センター(川崎市)、神奈川第2物流センター(横浜市)、首都圏配送センター(浦安営業所、千葉県浦安市)がある。また今年10月竣工の予定で本社に危険物倉庫を建設中で、保税蔵置場の承認も得る計画である。

 丸総の経営ビジョンは①独自の物流ネットワーク構築、②高付加価値化シフト、③変革による企業価値向上で、その結果として「顧客の物流戦略への貢献を果たす」(橋口社長)というもの。独自の物流ネットワークとは、多品種少ロットの荷物と幹線輸送、それに各エリアの配送を組み合わせた「MEL(マルソー・エキスプレス・ライン)リレー輸配送便」である。概要は①長距離貨物の中継輸送、②メーカー物流のエリア配送、③中ロット貨物の集荷・配送、④拠点在庫と集荷貨物の幹線輸送などである。同社では幹線輸送とエリア集配を定期化し、物流センターからの出荷も含めて混載輸送を行う。幹線輸送ではリレー輸送方式を取り入れて、ドライバーの拘束時間や労働時間の短縮も進める。そのため、2025年10月には兵庫県西宮市に関西の拠点を開設して関西までのネットワークを構築。また、2027年には群馬県高崎市に拠点建設を計画し、北関東エリアの拡充を図る。

 さらに2028年内には北陸にも拠点開設を予定している。このネットワーク構築と同時に進めるのが高付加価値化シフトである。丸総は食品や日用雑貨、ケミカル、メディカルなどの荷物を取り扱っている。そのよう中で、「2024年問題があったので、ケミカルやメディカルの荷主から話を聞いてもらえるようになり、30%の値上げが通るようになってきました」(橋口社長)という。そこでケミカルやメディカルの分野に力を入れていくという方針を打ち出した。メディカルでは神奈川、静岡、愛知の病院や卸業への配送だけではなく、医薬品や医療機器などの院内補給にも参入していく。また、ケミカルでは、危険物の保管や輸送・配送を手掛ける方針だ。10月竣工の予定で現在、建設を進めている本社危険物倉庫では、保税蔵置場の承認を得る予定で、ケミカルの輸入原料の取り扱いを計画しており「すでに荷主18社との話が進んでいる」(同)という。

 丸総ではメディカルやケミカル分野のメーカー物流にも進出し、サプライチェーンに沿った一貫物流サービスができる事業者を目指す。ケミカルではISO危険物コンテナによる高圧ガスの輸送も計画。メディカルではGDP(医薬品適正流通基準)の車両も大型車2台を保有して運行している。変革による企業価値向上では人材の確保で新卒採用と育成に力を入れていく。これらとあわせて取り組みを強化しているのがDX活用と業務変革だ。今年4月には社内にDX推進室を創設して専任者を配置し、運輸事業部、センター事業部、整備事業部、管理事業部、開発事業部の各事業部にもDX推進者が1人ずついる。DX推進室と各事業部の定期ミーティングの他、各事業部内でも月1回のミーティングを行っている。外部専門家とも連携してDX推進室を中心に部門横断型タスクフォースを立ち上げ、全員参加型の社内プロジェクトによってDX戦略を推進していく計画だ。

<物流ジャーナリスト 森田富士夫>

(写真提供:丸総)