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運送事業者レポート

運送事業者、荷主における新たな取り組みや成功事例にスポットをあてたインタビュー記事

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【第168回】    株式会社萠運輸(北海道苫小牧市)

カンボジアにリサイクル店を開設して10年

 中小トラック運送事業者でもアジアに進出するようになってきた。主要荷主の海外展開に伴って進出するパターンが多い。だが、リサイクル物流の一環として海外にリサイクルショップを出店するケースもある。萠運輸(北海道苫小牧市、近澤洋太社長)もそのような一社だ。同社がカンボジアにリサイクルショップを開設したのは2014年7月(店舗オープンは10月1日)だった。店舗開設からちょうど10年になる。同社は1978年に貨物軽自動車運送業を開業した。1999年に有限会社を設立し、同時に一般貨物自動車運送事業に参入。さらに2007年には株式会社に組織変更した。この間、2006年には「トマト引越便」を商標登録して引越事業を行っている。そして2014年にはカンボジアにリサイクルショップをオープンした。カンボジアの現地法人はモエ・トランスポート・カンパニー・ホッカイドー(店名はリサイクルショップしろいとり)である。

 萠運輸がカンボジアにリサイクル販売店をだすキッカケは、2013年12月に近澤社長が、リユース品をASEANに送って再販売しないかというセミナーに参加したことによる。翌2014年2月にプノンペンを視察してカンボジアへの進出を即断したという。同社の現在の事業内容は一般貨物運送事業が売上の約70%を占め(傭車も含む)、倉庫業が25%、リサイクル事業(引越事業や古物商、産業廃棄物収集運搬、カンボジアのリサイクルショップなども含む)が5%という比率である。従業員数は18人、保有車両数は軽からトレーラまで計13台。2024年9月期の売上は2億2000万円を見込む。売上の7割を占める一般貨物輸送事業は、売上の4分の一を占める倉庫事業と密接に関連している。海外などから北海道に入ってきた荷物を倉庫で一次保管し、道内主要都市の問屋や販売店などに一次配送するのが同社の基本的な事業になっているからだ。

 主要な取り扱い荷物は事務機器、電線や電設資材、タイヤ、肥料や飼料、フレコン(フレコン自体を荷物として取り扱っている)などである。フレコンはフレコンを取り扱っている問屋や販売店に納品している。アメリカや中国から輸入された肥料や飼料は、苫小牧市内に借りている2カ所の倉庫で一次保管し、大きな農家には直接配送するが、飼料では飼料メーカーへの輸送もある。飼料メーカーでは様々な飼料をブレンドして各酪農家のニーズに応じた飼料にして販売しているからだ。タイヤも中国など海外から輸入され、札幌と苫小牧のタイヤの販売店から問屋やカー用品店などに輸送している。このように萠運輸では倉庫と絡めた運送に力を入れている。ドライバー不足も深刻化する中で、単純な輸送では付加価値がつけにくい。そこで倉庫に力を入れて、倉庫での一次保管と関連付けた輸送に力を入れていく方針である。

 それと併せて事業拡大に努めているのがリサイクル事業だ。リサイクル事業には引越事業やリサイクルショップの販売なども含めているが、まだ売上全体の5%と比率は少ない。だが、今後の有望市場として力を入れていく。同社が引越事業に進出したのはずっと以前で、貨物軽自動車運送業の当時から行っていた。現在は「トマト引越便」の商標でサービス展開をしている。そもそもは地元の生協が「トマト」の名称で引越サービスを行っていたのだが、生協が引越から撤退することになった。そこで萠運輸が引き継いで、2006年に同社のサービスブランドとして「トマト引越便」を商標登録したのである。引越事業では同業他社と同じように不用品をゴミとして処分することを以前から行っていた。しかし、まだまだ使用できるような家財などがゴミとして処分されているのが実態である。そこで、もったいないので何か有効活用できるような良い方法はないかと考えていた。

 カンボジアでリサイクル品の再販売を開始したことで、顧客が処分したいという家財などもリサイクルできる物は再販売などの有効活用を提案できるようになった。もちろん古物商の許可も取得している。リサイクル事業は引越に伴うものと、家の整理などに大別できる。引越に伴うものは新居には運ばないで処分する物である。一方、最近増えているのが家の整理などのリサイクル需要である。これには「空き家の整理や物置の解体、遺品整理などがある。有価物は無料回収してティッシュなどと交換する。カンボジアに送って販売してはじめて収入になるが、仕入れコストがないので安く売ることができます」(近澤社長)。一方、廃棄物は仕分けをしてそれぞれに廃棄処分する。顧客からは収集運搬料と仕分け作業料を収受する。これらリサイクル事業の営業は新聞広告や口コミだが、カンボジアで販売する有価物を「毎月40ftコンテナ1本はだしている」(近澤社長)という。

<物流ジャーナリスト 森田富士夫>

(一部の写真は萠運輸提供)