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運送事業者レポート

運送事業者、荷主における新たな取り組みや成功事例にスポットをあてたインタビュー記事

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【第172回】    株式会社トマト(茨城県筑西市)

設立時から携帯電話(当時ショルダーフォン)を全員に貸与

 いまでこそスマホを全ドライバーに貸与して業務連絡や配車をLINEなどで行う事業者が増えてきた。社員教育もスマホで行い、ドライバーは荷待ち時間などそれぞれ自分の都合の良い時間に受講する。対面教育よりも時間を有効に使うことができて労働時間短縮にもなる。ところが会社設立当時から全ドライバーに携帯電話を貸与し業務連絡などに活用してきた事業者がいる。携帯電話といってもまだ「ショルダーフォン」の時代だった。肩から下げて持ち運ぶ携帯電話だ。ネットで調べてみたらショルダーフォンを最初に販売したのはNTTで1985年の9月。電電公社からNTTになったのが同年の4月なので、民営化されて間もない時期である。正式には車外兼用自動車電話といわれ、自動車電話としての契約だったので契約料金も高かった。重さが約3㎏、通話可能時間は40分で、待ち受け時間は8時間、通話料金は6秒10円とある。主に企業経営者などが利用していた。

 その後、携帯電話が販売されるといち早く切り替え、さらにガラケイの後はスマホに切り替えた。この事業者はトマト(茨城県筑西市、大久保文雄社長)で、設立は1990年。大久保社長が創業者である。はじめは貨物軽自動車運送業からスタートし、約3年後に一般貨物自動車運送事業の許可を取得して会社を設立した。「いつの時代も絶えず社会に必要な仕事がしたい」(大久保社長)ということで物流に関わる企業を立ち上げたという。貨物軽自動車運送事業を始めた当初から「安全第一」を掲げてきた。軽貨物でスタートした約3年後に一般貨物自動車運送事業の許可を得たが、7台の全車両にいち早くデジタコを搭載し、ドライバーの安全運転を機器でサポートするようにした。さらにその2年後には、ドラレコも導入した。「すでに保有車両は20台を超えていたが、あるドラレコのメーカーでデータが欲しいというので、全車両にドラレコも導入した」(大久保社長)。

 どんなに安全運転に努力しても人間が運転をする以上、残念ながら事故をゼロにすることはできない。そこで、ヒューマンエラーの発生を防ぐため、機器でサポートしようという考え方である。しかし、デジタコを搭載していると「スピードを出せないので、最初の2年間ぐらいはドライバーには不評だった」(大久保社長)。しばしばドライバーからドライブレコーダーに対するクレームがあったという。だが携帯電話は好評だったようだ。当初はコストもかかったが、「何かあった場合にすぐにドライバーと連絡が取れやすいので、荷主には喜ばれました」(大久保社長)。トマトは現在、建築資材をメインにユニットバスや精密機械資材の配送などをしている。保有車両数は30台で、内訳は4トン冷凍車5台、4トン平ボディ車3台、2トン平ボディ車22台で大型車はない。従業員数は40人で、そのうちの32人がドライバーだ。

 現在は住宅メーカーの建材がメインの荷物で輸送量の約70%を占めている。平ボディ車が多いのはそのためである。建築資材は住宅建設に必要な木材、軽量鉄骨、壁材などである。これらの建築資材やユニットバスは、市内にある住宅メーカーの工場から積み込み、関東一円の建築現場に配送している。また、時々は福島県の建築現場に運ぶこともあるという。一方、化成品はコンピュータの基盤の原材料など中間部品である。やはり市内で積み込み、関東一円のパソコンなどを製造している工場に運ぶ。関東圏内以外では、週に1回程度は大阪、山形、富山などのパソコン製造工場にも運んでいる。保有車両の中に4㌧冷凍車が5台あるが、これはコンピュータの中間部品を温度管理をしながら運ぶためだ。トマトでは、ドライバーからスマホで「いま納品が終わったというメールが入ると、翌日の配車などをメールで知らせるようにしている」(大久保社長)。

 このように同社は設立当時から全ドライバーに携帯電話を貸与して社内のコミュニケーションを図ってきた。「現在ではカーナビも付いたスマホにしている」(大久保社長)。だが、ガラケイからスマホに代替えする時に高齢のドライバーに抵抗感はなかったのだろうか。とくに通話中心からメール主体への切り替えではどうだったのだろう。「高齢のドライバーからも抵抗はなく、メールで連絡などを取り合うようになった」(同)という。もちろん心配がなかったわけではない。メールでの連絡を主にする時に、「実は、何人かは会話でないとダメかなと思っていたのだが、問題はなかった」(同)。現在は社内専用の携帯メールとしてWowTalkを導入している。業務連絡などは基本的にメールで行うが「緊急時には直接電話で話す」(同)。トマトでは、自動車運送業も「特殊技能1号」になったことも踏まえて、翻訳ソフトの導入で将来は外国人の採用なども可能と考えているようだ。

<物流ジャーナリスト 森田富士夫>