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運送事業者レポート

運送事業者、荷主における新たな取り組みや成功事例にスポットをあてたインタビュー記事

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【第101回】 株式会社フコックス(東京都江東区)

特殊車両通行許可申請などの費用転嫁実現に取り組む

 来年の東京オリンピック・パラリンピックに向けて、競技場や選手の宿泊施設の建設などが進められているが、セメントを使う土木系の基礎工事はすでに終わり、バラセメント輸送は一段落したようだ。現在の建築は昔のような鉄筋コンクリートではなく、工場で製造した部材を現場で組み立てるような工法になっているため、基礎工事が終わるとセメント需要は少なくなる。このような中でバラセメント輸送の大手であるフコックス(本社・東京都江東区、鎮目隆雄社長)は、特殊車両通行許可の申請手続きにかかるコストを運賃とは別に収受するような取り組みを進めている。同社は1936年設立で、長年にわたってバラセメント輸送を主に行ってきた。だが、セメント協会の資料によると、国内のセメント需要のピークは1990年度で8628万tだった。それに対して2017年度では4187万tと、ピーク時の半分以下になっている。

 このようなセメント需要の縮小に対応するため、フコックスではこの間、バラセメント輸送以外の分野にも進出。現在では3PL事業、食品事業、環境事業、粉粒体事業(バラセメント)を行っている。このうち3PL事業では、トラックの架装品メーカーをはじめとする取引先を対象に、熔接、研磨、部品組み立てなどの作業もしている。また、食品事業では、サンドイッチ、焼菓子、米菓、チョコレートなど、OEMで製造、加工、詰め合わせ、包装などの作業もしている。環境事業では製造業、建設業、不動産業、商社やサービス業などからの産業廃棄物収集運搬をしている。収集した産廃は、セメント工場に燃料や原料として納入したり、リサイクル、再資源化などをしている中間処理場や、最終処理場への運搬もしている。この環境事業では、酪農家から排出される牛などの糞尿に特殊な菌を加えて飼料にするプラントを開発するなど、独自なサービスを展開している。

 このようにフコックスでは、バラセメント需要の縮小に対応して事業の多角化を図ってきたが、メーカー直ではない関連商社などの仕事を含めると、やはり売上の約50%を粉粒体(セメント)事業が占めている。なお、普通セメントは昔は持ち込み渡しだったが、現在では工場渡しになっている。これらセメントメーカーの製品輸送は縦系列でほぼ運送事業者が固定している。そのためメーカーの子会社もあるが、フコックスは独立系で昔からの取引の流れから住友大阪セメントの製品を運んでいる。バラセメント輸送業界は、セメントメーカーの各地の工場やサービスステーションごとに昔からの指定事業者がいる。住友大阪セメントの首都圏エリアに関しては、メーカー系の事業者とフコックスの2社で2分している。さらに同社は新潟と山形も担当しており、粉粒体運搬車(バラセメント・バルク車)、バルク・セミトレーラやトラクタなどの車両を多く保有している。

 バラセメントの輸送先は生コン工場やコンクリート2次製品の工場などである。また、大規模工事では現場への納品もある。大きな工事では、現場に移動プラントを設置して、その場で生コンをつくるからだ。移動サイロは1本が25tなので25t車で運ぶのだが、1本しかサイロがない現場ではバラセメントの納入時間が厳しい。25tサイロにまだセメントが残っている間は納入作業ができないからだ。反対にサイロが空になっているのにトラックが到着しないと、現場の作業がストップしてしまう。ジャスト・イン・タイム納品が求められるのである。だが、工程の進捗状況や、工法によっても使用ピッチが違ってくる。そこでフコックスでは、「現場サイロの在庫管理も任せてもらいたいと申し込むのだが、答えは否」(鎮目社長)なのだという。このような中でフコックスでは、現在、特殊車両通行許可の申請に要するコスト負担を荷主に要請する取り組みを強化している。

 バラセメント輸送では特殊車両通行許可がないと通れない道路が多い。許可を取ると2年間は有効だが、工事現場は場所が変わる。それに「申請を出しても許可が下りるまで3カ月ぐらいが必要」(鎮目社長)という。さらに1日5台が必要とすると1台ごと申請して5台の許可を取らなければならない。だが、1台が車両故障などで動かせなくなった場合を想定すると、余分に車両を申請しておく必要がある。また、最大積載重量が25tの車両でも、橋の関係で23tまでしか通行できないと、「25tの車両を23tまで減トン手続きをして許可を取らなければならない」(同)。これらの申請には1台ごとに印紙が必要だが、それ以上に大変なのは申請書類の作成だ。だが、「印紙代ぐらいしかもらっていなかった」(同)。そこで、フコックスでは、特殊車両通行許可の申請手続きにかかっている「必要最小限のコストを収受するように荷主への働きかけを全社的に展開している」(同)。

<物流ジャーナリスト 森田富士夫>

(一部の写真はフコックス提供)