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運送事業者レポート

運送事業者、荷主における新たな取り組みや成功事例にスポットをあてたインタビュー記事

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【第103回】 株式会社暁興産(三重県三重郡川越町)

自社サイトで採用者を増やし、ジムやプチ食堂で定着率向上

 1966年に創業の暁興産(三重県三重郡川越町、伊藤康彦社長)は石油製品の輸送からスタートした。現在は、従業員数が102人で、保有車両数は69台(トレーラはセットで1台換算)。保有車両の内訳は、ローリー事業部門のアスファルト輸送でアスファルトローリー車39台、アスファルト乳剤車1台、アスファルト再生添加剤車3台、ホイールトラッキング供試体作製車1台、同事業部門の石油燃料輸送で白油車11台、重油車3台、LPG車1台、物流事業部門で大型ウィング車4台、大型平ボディ車3台、ウィングトレーラ3台である。同社はトレーラや大型車が多く、また特殊な車両が多いのが特徴である。事業部門別の売上高構成比はアスファルト輸送が50%、石油燃料輸送が30%、物流事業が20%となっている。だが、一般貨物輸送で長年の経験をもっているドライバーでも、「アスファルト輸送」と聞いてすぐに業務の内容をイメージできる人は極めて少ない。

 ドライバー経験者でも分からないのだから、他業種からの転職者では全く分からないといっても過言ではない。そこで、「なぜ人が集まらないのかというのが、採用で工夫をするようになったキッカケ」(伊藤公一専務)という。「流体アスファルト輸送といっても、ほとんどの人には分からない。仕事の内容が分からなければ、自分が働いている姿が想像できない。イメージできるかどうかが重要」(同)ということに気づいたのである。そこでスマホ検索を前提に、すぐに業務内容が分かるようにし、エントリーまでつながるような工夫をして採用に結び付けるようにした。自分がこれからする仕事が、どのような内容なのかを理解してもらえるようにしなければいけない。「応募者が業務内容を容易に理解でき、安心感を持ってもらえるようにする。そして周りの人に『その会社でどんな仕事をするの』と聞かれても仕事内容を説明できるようにし工夫した」(同)のである。

 若いスマホネイティブの人たちは、「はじまりとしてスマホから入ってくる」(伊藤専務)。そして、まずWebで調べるウェブルーミングという行動パターンである。したがって「入り口はスマホとして、マイクロモーメントという考え方を採り入れた。容量を重くしないで、できるだけ軽くしてすぐに検索できるような工夫」(同)である。一般にローディングに3秒以上かかるサイトは飛ばされる傾向があり、あるデータでは40%の人が検索を止めてしまうという。さらに導入の入り口として「影響力の大きな求人サイトに力を入れ、そこから自社サイトに誘導するようにした」(同)。結果を出すための仕組みとして、影響力のある求人サイト➝自社サイトに誘導➝求人観覧➝エントリーというスムースな流れをつくったのである。また、求職者の利便性を重視して、応募にまで至るような一貫した導線を整備することが重要だ。同社では「できるだけストレートな表現が良い」(同)という。

 「ストレートな内容で、自分のライフスタイルに合うかどうかが分かるようなキャッチフレーズが良い」(伊藤専務)。13文字以内が目安だが、スマホで2行になるようなら1行で収まるような文字数にする。読ませるのではなく、「感じさせる」ことで、自分のライフスタイルに合うかどうかを判断させる。エントリー方法としては①電話、②LINE、③エントリーフォームから選択できる。エントリー数の割合は、電話25%、LINE25%、エントリーフォーム50%の比率で、電話は40歳代、50歳代、60歳代の応募者が多く、エントリーフォームは20歳代、30歳代、40歳代が多い。だがLINEは年齢的には様々で特定できないという。これらエントリー者の「70%ぐらいが採用になっている」(同)。応募した時点ではほぼ同社に就職しようと決めていることが分かる。入口からエントリーまでの間に、就職を決断させるようなプロセスになっていることの証明である。

 暁興産では社員満足度向上のため「暁ジム」を開設した。「何も使っていなくて物置のようになっていた部屋で、筋トレをしている人たちがいたので、その人たちに呼び掛けて、自分たちで部屋をかたづけて整備し、器具も自分たちが家で使っているものを持ち込んでジムにした。そうしたら利用者が増えて、健康に対する意識が自然に高まってきた」(伊藤専務)という。さらに、24時間営業のセルフ社員食堂も始めた。これは、プチ食堂「オフィスおかん」で、株式会社おかんと契約して行っているもの。30日ぐらい保存がきく冷凍パックのご飯や各種総菜を冷凍庫に入れておき、従業員は1パック100円で購入して、24時間いつでもレンジで温めて食べることができる。このような様々な取り組みも含めて同社では従業員の健康管理に力を入れており、今年2月には経済産業省(日本健康会議)から健康経営優良法人(中小規模法人部門)の認定を受けた。

<物流ジャーナリスト 森田富士夫>

(写真提供=暁興産)