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運送事業者レポート

運送事業者、荷主における新たな取り組みや成功事例にスポットをあてたインタビュー記事

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【第106回】  富良野通運株式会社(北海道富良野市)

「一貫肥料・飼料輸配送システム」で車両の稼働効率を向上

 北海道の運送事業者の場合、季節波動と片荷輸送という2つのハンディが宿命的ともいえる。北海道では、日用品などは札幌とその周辺から道内各地に放射線状に輸送される。輸送量は比較的コンスタントだが片荷輸送という問題がある。一方、道内各地から札幌や本州などへの上りの荷物は一次産品が多く、季節波動が大きい。札幌とその周辺の事業者に比べ、それ以外の道内事業者は2つのハンディと、さらに労働時間短縮という大きな問題を抱えている。富良野市は「北海道のヘソ」と称されるように地理的には北海道の中心に位置している。だが、北海道経済の中心である札幌とは約120㎞、また、本州との海上輸送量が多い苫小牧とも約170㎞離れている。このような富良野にあって、独自のビジネスモデルを構築しているのが富良野通運(本社・富良野市、永吉大介社長)だ。同社は「一貫肥料・飼料輸配送システム」を構築して車両の稼働効率の向上を図っている。

 富良野通運は1942年創業で、戦時統合などを経て51年に富良野通運を再設立した。57年に上富良野通運と合併し、さらに06年には布部運輸とも合併している。現在は本社の他に札幌支店、上富良野営業所、びらとり営業所がある。従業員数は122人(パート含む)で、うちドライバーは57人。保有車両数は2t車からトレーラまで56台である。売上高は2019年3月期で約14億5000万円。売上比率は「JRコンテナ輸送事業が50%、トラック一般輸送事業が45%、アウトソーシング事業が5%」(藤田均会長)である。通運会社なのでJRコンテナ輸送は当然だが、50%というのは非常に高い。これには北海道という特殊条件があるのかも知れない。たとえば「富良野周辺で収穫される玉ねぎは2017年で13万6000tだが、その60~70%はJRコンテナで全国に出荷されている。その半分ぐらいを当社が取り扱っている」(永吉社長)からだ。

 地元周辺で収穫される玉ねぎの約30%を同社が運んでいることになる。大量に出荷される農産物にはジャガイモやニンジンなどもある。なお、昨年暮れから富良野発のJRコンテナの玉ねぎ輸送で一部をパレット化した。これは同社の提案によるもので、玉ねぎ輸送においては画期的な取り組みという。トラック輸送には、肥料・飼料、青果物、家畜(牛・豚)、材木、燃料などがある。燃料輸送は上富良野から苫小牧に至る広域で、農家や一般家庭に軽油、灯油、重油を配送している。家畜輸送は専用車両で、主に北海道中央地域家畜市場(旭川)や早来家畜市場に輸送する。また、「春には畜産農家の牧場から放牧場まで運び、秋には逆に放牧場から農家の牧場に運ぶような仕事もある。スポット的には、畜産農家からの依頼で品評会の会場に運ぶようなこともある」(永吉社長)という。葉物や青果は札幌や旭川などの市場に運ぶが、道内市場への出荷は少ない。

 アウトソーシング事業では、食品加工、パッキング、学校給食配送などがある。食品加工は玉ねぎの皮むきで、学校給食は富良野市内の小中学校13校への配送だ。パッキング作業は袋状の肥料をばらして小分けしたり、複数の種類の肥料をブレンドしたりしてパッキングする作業である。同社が季節波動や片荷輸送のハンディを克服して多様な事業展開をしているベースには「一貫肥料・飼料輸配送システム」がある。この一貫肥料・飼料輸配送システムをベースに、材木など発の荷物を組み合わせることで実車率の向上を図っている。肥料や飼料は道内各地の工場や倉庫から引取輸送している。引取先はメーカーや販売店など55社あり、内訳は肥料が27社(58拠点)、飼料が28社(130拠点)である。引取先は苫小牧、旭川、帯広、北見などが多いが、「車両の回転を良くするために、自分たちの都合の良い時に引取りに行く」(藤田会長)ようにしている。

 引取配車で裁量権を持つことは車両の稼働効率だけではなく、波動緩和など販売側にもメリットがある。そこでホクレンから奨励金が出され荷主、農家、同社でシェアしている。引取った肥料や飼料は自社や農協の倉庫に一時保管する。同社では農家や畜産農家の肥料・飼料の在庫管理もしており、需要予測に基づいて配送計画を立てる。消費側の在庫を管理することで自社の在庫も管理でき計画的な引取配車にもつながる。配送先は、肥料が1772カ所、飼料は119カ所で飼料タンク数は892である。このように独自の物流システムを構築しているため、「系統(農協系)と商系(商社系)の販売者を同一システムで管理している」(藤田会長)。系統と商系はライバル関係にあり、このようなケースは全国的にも珍しいようだ。このように富良野通運では、肥料・飼料の販売者、農家や畜産農家、そして自社の3者にメリットのある独自の物流システムを構築している。

<物流ジャーナリスト 森田富士夫>