トラック情報サイト「トラックNEXT」

トラックNEXTは、トラックユーザーとトラック関連メーカーをつなぐトラック情報サイトです

運送事業者レポート

運送事業者、荷主における新たな取り組みや成功事例にスポットをあてたインタビュー記事

バックナンバー一覧はこちら

【第108回】  株式会社永尾運送(大阪府摂津市)

新聞と食塩の共同輸送に9月からは紅茶やジャムも追加

 6月に国土交通省、農林水産省、経済産業省から総合効率化計画の認定を得て新聞(夕刊)と食塩の共同輸送を開始したのは永尾運送(大阪府摂津市、永尾弘社長)だ。物流総合効率化法(物効法)に認定されたのは日本マクドナルド、読売新聞グループ本社、永尾運送、HAVIサプライチェーン・ソリューションズ・ジャパン(マクドナルドの物流などを担当)の4社による「食塩と新聞の共同輸送」で、国交省だけではなく農水省と経産省を含めた3省による認定は初めてのケースになる。共同輸送は6月3日からスタートし、まだ僅かな期間だが順調に推移している。そのため9月からはマクドナルドの紅茶(ティーパック)やジャムも共同輸送の品目に追加した。なお、永尾運送では9月9日に東京・港区の報知新聞社内に保有車両数5台で東京支店を開設。今後は読売新聞グループが推進する、朝夕刊輸送以外の分野での共同輸送業務などを受託する予定である。

 永尾運送は1957年の創業で、最初は出版取次から雑誌配送の仕事を受託していた。配送していた雑誌の中には、当時の「週刊読売」もあり、その関係から読売新聞の新聞輸送の仕事が始まった。現在の保有車両数は4t車6台、2t車38台の44台で、ほぼ全車両が新聞輸送を専門にしている。また、関連会社として1982年設立の誠弘運輸(吹田市)があり2t車から4t車まで15台(冷凍冷蔵車などを含む)を保有している。永尾運送のドライバーは正社員25人、アルバイト90人(うち女性ドライバーは16人)である。車両数に対してドライバー数が多く、1台当たり約3人の割合になる。これは「朝刊と夕刊の輸送を分離して残業0、有給消化率100%」(永尾社長)にしているからだ。新聞輸送では朝刊輸送から夕刊輸送までの空き時間があるため、拘束時間が長くなってしまう。そこで永尾運送では5年以上前から朝刊と夕刊を分離する勤務体制を整えてきた。

 朝夕刊を分離するにはドライバーを増やさなければならないが、正社員では経営的に厳しいためアルバイトなどの雇用形態で人員増を進めてきた。その結果、トラック運送業界では働き方改革への対応が迫られているが、同社では「早くから朝夕刊分離をしてきたことが結果的には幸いした」(永尾社長)。朝夕刊分離の勤務ローテーションで、読売新聞の茨木工場、神戸工場、大阪(北区)工場、京都工場、高石工場の仕事をしている。輸送先は大阪、京都、福井、鳥取、兵庫、岡山で同社が担当する新聞販売店である。このような中で、昨年12月にマクドナルドの食塩の共同輸送の話しが読売新聞東京本社から永尾社長に直接入ってきた。仕組みとしてはさほど難しくないので、「実施しようと思えば3月ぐらいからスタートできた」(同)という。6月からのスタートになったのは、国交省だけではなく農水省と経産省の3省の認定を得るのに手続きなどに時間を要したためのようだ。

 読売新聞(夕刊)と共同輸送するのはマクドナルドの店舗でポテトに使う食塩だが、運ぶのはHAVIのデポ間ということになる。新聞と食塩という異質の積合せになるが、荷物特性による問題はなかったという。しかし、「コース選定は2t車なので積載重量の問題があり、夕刊で積載率の低いコースを選んだ」(永尾社長)。一方、マクドナルドの方では様ざまな食材や資材などがあるが、常温で年間トータルして需要が一番安定しているのが食塩だったので、食塩から共同輸送をスタートしたようだ。また、コース選定にあたっては積載率だけではなく、「ドライバーの労働時間も前提条件にしている。1日8時間で週休2日という勤務体制のドライバーもいるので、食塩の共同輸送はその人たちに頼んでいる」(同)。これらの諸条件を検討した結果、大阪工場(北区)から兵庫県西宮市の新聞販売店に輸送する夕刊の空きスペースを利用して食塩を共同輸送することにした。

 共同輸送の概要は、車庫(摂津市)を10:30に出発→食塩積込場所(大阪市大正区)11:30着→印刷工場(大阪市北区)12:00着で休憩後の13:30分に夕刊積込→新聞販売店(兵庫県西宮市)への配送15:30終了→食塩納品先(神戸市)16:00着→車庫(摂津市)17:30着である。それでも8時間労働には余裕があり「朝刊輸送で2時間コースがあるので組合せている」(永尾社長)。このように複数の仕事の組合せが可能なのは、「以前から作業の細分化を図って朝夕刊を分離し、さらに朝刊でも何時間コース、夕刊でも何時間コースと時間単位で作業を細分化していたから」(永尾社長)である。これまでは食塩を年間に4t車約230台で運んでいた。今度は2t車による混載輸送なので1台当たりの輸送量が減るため輸送回数は多くなる。それでも効率化効果としてCO2排出量は約1.1t/年の削減が見込まれている。

<物流ジャーナリスト 森田富士夫>